ゲスト
(ka0000)
【初夢】キスしないと出られない部屋
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/01/07 22:00
- 完成日
- 2018/01/09 23:54
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ぶっちゃけて聞きますがタイトルを見て興味持ってクリックした時点で貴方にこれ以上何か説明が必要なんでしょうか。
ええおおむね想像した通りのもので合っているかと思われます。と言うわけでやるべきことがピンときたあなたはそのまま一緒に入るべき相手と打ち合わせしてくれて了承が取れたら参加ボタンを押してくれればそれでいいですはい。
じゃあそういう事でと言いたいんですが最低字数ってもんがあるんで一応説明しますがつまり貴方は気付けばよく分からない部屋によく分からないうちに誰かと二人で閉じ込められています。そしてその相手とキスしなければ絶対にこの部屋から出られないことは何故か分かっています。この状況における貴方とパートナーが取りうるべき反応を600字で述べよ。
まあ夢シナリオですので。どちらかが見ている夢です。付き合いたてだったり未だ片思いだったりそんな同士で入ってひとしきりもだもだしたのちにオチを考えるというのが基本パターンと思われますが、あえてこいつとキスするとか絶対ないという関係のご友人同士でぶちこまれてひとしきり悪あがきしてからの正月早々ぐんにょりした気分で目覚めるとかいうコメディパターンもありですね。あと、キスしなければ出られないという事を逆手に取るとですね、キスしない限りは絶対に二人きりでいられるという事で逆にキスだけは我慢してイチャイチャするというラブラブカップルパターンと言うのもあったりします。
その他私が想像もつかないようなパターンがありましたら是非ともよろしくお願いいたします。但し本当、これだけは言っておきますがキスしなければ出られない。それだけは絶対のルールです。それ以外に脱出方法はなく、そしてこれが夢だと気付くこともありません。出られないという焦燥感はリアルであるものとします。では挑戦者求ム。
ええおおむね想像した通りのもので合っているかと思われます。と言うわけでやるべきことがピンときたあなたはそのまま一緒に入るべき相手と打ち合わせしてくれて了承が取れたら参加ボタンを押してくれればそれでいいですはい。
じゃあそういう事でと言いたいんですが最低字数ってもんがあるんで一応説明しますがつまり貴方は気付けばよく分からない部屋によく分からないうちに誰かと二人で閉じ込められています。そしてその相手とキスしなければ絶対にこの部屋から出られないことは何故か分かっています。この状況における貴方とパートナーが取りうるべき反応を600字で述べよ。
まあ夢シナリオですので。どちらかが見ている夢です。付き合いたてだったり未だ片思いだったりそんな同士で入ってひとしきりもだもだしたのちにオチを考えるというのが基本パターンと思われますが、あえてこいつとキスするとか絶対ないという関係のご友人同士でぶちこまれてひとしきり悪あがきしてからの正月早々ぐんにょりした気分で目覚めるとかいうコメディパターンもありですね。あと、キスしなければ出られないという事を逆手に取るとですね、キスしない限りは絶対に二人きりでいられるという事で逆にキスだけは我慢してイチャイチャするというラブラブカップルパターンと言うのもあったりします。
その他私が想像もつかないようなパターンがありましたら是非ともよろしくお願いいたします。但し本当、これだけは言っておきますがキスしなければ出られない。それだけは絶対のルールです。それ以外に脱出方法はなく、そしてこれが夢だと気付くこともありません。出られないという焦燥感はリアルであるものとします。では挑戦者求ム。
リプレイ本文
ガンッ、と、重たい音が響く。
「キスしないと出れないとか何だそれ」
言いながらジョージ・ユニクス(ka0442)の拳が壁に叩き込まれた音だった。だが、一見一般的な家屋の壁に見えるそれにはヒビ一つ入らない。
手加減無用かと、今度は全力で一撃を加える。……結果は、変わらない。木製に見える扉も。窓も。物は試しにと調度品すら叩いて回るが、どれ一つ傷つけることは叶わなかった。
半ば分かってはいたのだ。条件を満たさない限りこの部屋からは決して出られないと。分かっていてなお、試さずにはいられなかった──ハンターとしての腕前は上がっていても、女性関係においてはまだまだ純朴な少年、なのだ。
意を決して、振り返る。そこには彼の憧れの初恋の人にして心友の元妻、ミリア・ラスティソード(ka1287)が居た。
「別に君が嫌ならボクは部屋を出ずとも構わないが」
「いえ! 嫌とかそういうのではなく!? 出ないなんてそんなわけにもいかないですし!」
「そうか? なら逆に、さっさと出てしまおう」
出るなら早い方が良いだろ? とそう言うとミリアは躊躇いもなくその唇をジョージに差し出そうとした。……その躊躇のなさは、単純な親愛故にではないだろう。彼女は、自分のキスに価値などないと思っている。そんな彼女を見て、ジョージはさらに決意を固める。
「い、いえ! それは男の方から行くべきだと思いますのです”””!!」
あからさまに力の入りすぎた声。茹蛸もかくやとばかりに真っ赤になりながら彼が宣言する。
対し、彼女はやはり平然と、まあ君がそうしたいならとあっさりと、目を閉じて待つ体制になった。
ジョージがぐっと顔を上げる。……そのまま数分ほど、そのままだった。ミリアは何を言うまでもなく、目を閉じて待ち続けている。
やがて彼はミリアの肩を掴むとぐいっと一気に行こうとして──その勢いに、彼女の身体が傾き後ろに倒れ込んでいった。
床に衝撃が走り、揺れる音。
「おいおい、怪我するだろ落ち着けよ」
ミリアの声は相変わらず静かだった。その声と共に、彼は柔らかな感触を覚えて──
「!?!?!?!!!?!?!?」
それこそ、火の噴くような勢いで赤い顔を更に真っ赤にした。
倒れた衝撃から自分を守ったものは何だったのか。体格の差から、ジョージの顔に来る位置に当たるミリアの部位。
肩を掴み飛び込むような勢いで押し倒してきたジョージに、ミリアは逆らわずに素直に押し倒された。そのまま、胸のクッションで彼を受け止めたのだ。
彼女からしたら自然な流れで押し倒されたつもりだったのだが、どうやら彼は単純に加減を間違えただけらしい。
彼は今彼女の胸元からは顔を上げ、彼女の方の横に両手をつく形で彼女を見下ろす姿勢になっている。
そのまま、可愛そうになるくらい慌てふためいた表情で、どうすることも出来ずに硬直している。
彼女はふう、と息を吐いて、しなやかに両手の指先を彼のそれぞれの頬に向けて伸ばした。
暫く指先が優しく頬をなぞる。強張った身体はその感触が届いているのかすら怪しい。
「ボクに任せろ、ちゃんと出してやるから」
動かない彼に囁くと、彼女は掌を広げて彼の頬を包んだ。
軽く力をこめる。彼の顔をしっかりと固定するために。安全かつ間違いなく──遂行するために。
腹筋を使って、横たえられた彼女の身体が、顔が軽く持ち上げられる。……二つの顔が、近づいていく。
真正面から。
互いの唇が、しっかりと、合わさった。
カチリ。
その瞬間。錠前が外れるような音が、確かに響くのが聞こえた。
「……あ、あの、ミリア……さん?」
今度の感触は、きちんと伝わったようだった。彼女の両手に包まれたままの頬から、ゆっくりとこわばりが解けていく。
ジョージが片手を持ち上げ、指先で己の唇をなぞる。それとは異なる、残る感触に、間違えようのないものを彼は理解して。
彼女が自分にしてくれたこと、捧げてくれたものに……泣きそうなほどの癒しを感じた。
ああ。どうか。
伝えられは、しないだろうか。
彼女の唇に価値が無いなんてとんでもない。何よりの宝だと。
「えっと、その、ありがとう。ございます」
そうして彼は、ただ心からの感謝を、彼らしい言葉で、必死で伝えるのだった。
立ち上がり、彼は元貴族として身につけた礼節をもって、恭しく彼女に手を差し出す。
横たわる彼女を丁寧に起こしてやり手を取り合うと、二人並び、互いに手を取って、開かれた扉の向こうへ。
そして、二人は光に包まれた。
……瞼の裏に感じた光に、少しずつ目を開く。
扉の向こうから溢れた、と感じたそれは、窓から伸びる朝日のもので。
ジョージはそれを一人布団の中で浴びていたのだった。
「……なんて夢見てるんだ、俺……」
目覚め、すべてを理解した彼は、暫くすさまじいまでの自己嫌悪で何も言えなかった──
●
「キスしないと出られない部屋……って言われてもね?」
葛音 水月(ka1895)は肩を竦めて、さして困った風でもなく感想を述べる
「これって障害になってなくない?」
そう言って彼は傍らの存在に目を向けた。ステラ=ライムライト(ka5122)。愛しい恋人。……彼女と二人きりの空間でキスをしろと言われても別に何の問題もない。
彼は手慣れた動作で彼女の肩を抱き寄せ、その顔に手を添えてこちらを向かせた。このまま顔を近づけてしまえばそれでクリアー。そう思って実行しようとするも、それを遮ったのは意外にも、彼女の掌だった。待て、をするように、軽く彼女の手が彼の唇を覆う。
「ちょっと待って、できればもっと甘えたいなぁ……?」
甘やかな声と上目遣いで、ステラが言う。きょとんとする水月に、ステラは告げた。キスをしなければ出られない、と言うのは、逆も言えるのではないか──すなわち、条件を満たせばここから追い出されるのではないか、と。
ふむ、と水月はあっさりと納得した。なんだかんだで、家族がいたりで完全な二人きりになれるという事は稀だ。たまには邪魔されない空間もいいだろう。
「ん? ……ステラにおねだりとあれば。危ない感じはしないしね」
水月が答えると、ステラは嬉しそうに彼に身を摺り寄せてきた。
真正面に回り、絡ませるように腕を彼の背に回して抱き着く。スリスリと身体を動かしながらくっついて、すんすんと鼻を鳴らした。
「……えへへ、水月の匂いだぁ……♪」
そんなステラの様子に、水月は仕方ないなあと言う顔をしながらも満更ではないようで、愛おしむようにさらに深く抱き寄せる。押し付けられるように密着する身体。より濃密に香る空気に、ステラは深く息を吸う。
「もう、すっかりわんこー?」
揶揄うような声にすらステラは身震いして歓喜を表す。言葉。香り。温もり。染み込んでいく。足りないものを満たすように。
それらをたっぷりと堪能してから、彼女は小さく首を振って顔を上げた。
「私だけなのも不公平だもんね。おいでおいで♪」
──攻守交替の、宣言。甘えた分、相手にも尽くしたいと思う。
ぽすんとソファに座ると膝をポンポンと叩いて彼を招く。
誘われるままに、水月はステラの柔らかく張りのある膝にゆっくりと頭を乗せた。ステラが覗き込むように顔を俯かせる。普段と違う角度で見合わせる顔もまた幸せで。
その幸せに浸るように水月は彼女の膝に頬ずりをして、添えた片手を悪戯に動かし、彼女がしたようにすんすんと彼女の香りを嗅ぐ。その度の反応。彼もまたそれらを十分に堪能してから、彼女の膝から体を起こすと、並び座った状態から彼女を抱き寄せた。
彼女に横向かせる形で膝の上に座らせる。緩く抱き合い、軽く額をぶつけるようにして顔を寄せ合って、お互いに温もりと柔らかさを楽しみあう。
……間近までに寄せられた顔に、ステラの唇がムズムズと動いていた。瞳が、何かを訴えるように水月を見つめる。
「キスせずここにいたいって言ったのはステラでしょ」
唇を、綺麗な笑みの形に象って。水月は意地悪く笑う。少し顔を離すと、彼女の頬にそっと片手で触れる。……そして、親指で彼女の唇を──他の箇所より、薄く敏感な皮膚を──なぞり上げる。
ビクン、と彼女の身体が跳ねた。焦らされて過敏になった感覚と堪えきれない欲求がゾクゾクと背筋を震わせる。潤んだ瞳に非難の色が灯って……その視線に、水月は昏い満足を覚える。ああ、それだ。どうか僕にもっと執着して。離れられなくなるほどに。
だからまだ、焦らす。もっともっと、彼女が本当に我慢できなくなるまでに。
そうして、魅惑の果実が十分に熟れる頃を見計らって。鳥がそれを啄むように。水月はステラの唇を淡く食んだ。
「はぁっ……」
奥底から身体が震え、吐息が零れる。互いに。その吐息を飲み込むように再び唇を啄みあう。
扉の鍵が開く音が聞こえた──だから何?
二人にとって、とっくにそんなことはどうでも良くなっている。今はただ、目の前の存在を求めあって、貪るように口付けを深め合っていく──……
長い時間をかけて。絡めあった舌が、唇が、濡れた音を立てて離れていった。
「……えへへ、水月のあまぁい……♪」
余韻が抜けきるまでの時間。互いの存在に満たされ合うのを感じながら、やがて、二人は手を繋いで立ち上がる。
そうして、そのまま扉へと向かって外へ出ると、温かく柔らかな気配が、二人を包んでいった。
その、優しい感覚を残したまま、水月は布団の中で目を覚ます。夢の記憶はまだそこにあって──そして、傍らには現実の、愛しい人。
夢の続きをせがむように身を寄せ、顔を近づけると、ステラもまた薄く眼を開く。
まだ半分眠りの世界にいるような表情で彼女は、キスする寸前の体勢の水月に驚くことなく、そして彼女もまたせがむように彼の首に腕を絡めた。──散々我慢させられた反動、とでも言いたげに。
別々に夢を見ていたはずの互いの行動を、しかし不思議に思う事もなく。二人は甘い気配に身を委ねて。
やがて、再び幸せな眠りに就いた。
●
「今年こそ彼氏を……お神酒もっとじゃんじゃん持ってきやがれですぅ! ……あれ?」
片手に一升瓶。片手に盃。その盃を高く掲げた姿勢で、星野 ハナ(ka5852)は動きを止めた。
先ほどまで自分がどうしていたかを思い出す。
初代☆酔いどれ女王の称号持ちのウワバミが本気で大酒かっ喰らって晴れ着姿で絶賛絡み酒。
その記憶に間違いは無い筈だ。手にした一升瓶、その中身が三分の一ほどであること、それもまた、彼女が実感する直前の状況と一致している。
だが、今いるのは明らかに先ほどまでとは違う場所だった。
そして、それを認識した瞬間理解する。『キスしないと出られない』というルールを。
彼女は、肩を震わせ、そして。
「我が世の春来ましたワ~~~~!」
……大絶叫を、上げた。
「神さまが可哀想な私に正月早々プレゼントですぅ? ……ぅおっしゃー、やったるでぇぇぇ~~~!」
そうして彼女は、先ほどまでぐしぐしと泣いていた眼をこすると両手を振り上げて雄たけびを上げたのだった。
「熊でもキツツキでも持って来いですぅ、カムヒャーーー!」
その様、まさに煩悩全開放。哺乳類・鳥類・爬虫類までならディープキスも構わないといわんばかりの迫力である。
「あら、ふふふぅ……良い男見つけましたぁ」
そうして彼女が初めに歩み寄ったのは、壁に書かれた肖像画だった。その顔めがけて濃厚に口付ける。……完全なる酔っ払いの所業である。
状況が変化した様子はない。彼女はまたふらふらした動作で、部屋の内部に向かって振り向いた。
「ぐへへへ……逃がしませんよぅ……」
そうして、揺れる視界の中で捉えた何かの気配に向けて、彼女は符を掲げた。
「地縛符地縛符地縛符ですぅ……あれぇ?」
視界が定まっていなければ手元も不確か。結果として地縛符は無駄に連打され、部屋のあちこちが泥濘と化す。更に彼女は式神に捕まえさせようと呼び出して……そして、暫く後に何を間違えたのかその式神にもしっかりと口付けていた。
実体を持った式神とのディープな口付けにも、部屋の扉は反応した気配は無い。
なぜならこの部屋のルールはこうだ。『誰かと二人で』閉じ込められる。『その相手と』キスしなければ絶対に出られない。たとえ手違いでここに呼び出されたのだとしても、だ。
これまで、完全に彼女の一人芝居に見えて。この部屋には確かに、居た。もう一人。
「……あぎゃ」
ハナがバランスを崩してよろけた。そして──誰かの腕が、その身体を咄嗟に支えた。
「──しっかりして。ハナちゃん?」
……。
「ええと……あなた誰ですぅ?」
覚えはない。自分をそんな風に呼ぶ、恋人に囁くような低く甘い声には。
見上げて、その顔を確認しようとする。酔った視界は霞んでよく見えなかった。彼はその口元に、しぃ、と言う風に優雅な動作で人差し指を当てる。
「ごめん。今はまだ──内緒。でも、いつかきっと君と出会えるから」
それは……どういう意味だろうか。いつか出会う、まだ知らない誰か、とでも?
思考が纏まる前に、抱きすくめられてその姿は完全にハナの視界からは確認できなくなる。酔いを醒まそうかとするように、大きな手が、頭を、肩を、ポンポンと撫でた。
気付く。よくよく考えてみたらこんなのは夢に間違いないと。それなら。
「うふふ~。あったかいですぅ幸せですぅ」
相手の首に腕を絡め、着物なのに足も絡めるようにして笑う。
「ハナちゃん。目、閉じて」
耳元を擽るように囁く声に、彼女は従う。
くい、と、顎に手を添えて上向かされると、柔らかな感触はしっかりと、唇へと押し当てられた。
──カチリ、小さな音がして。安堵によって浮遊していく感覚に彼女は完全に身を委ねた。
「……まあなんだ。広義の2.5次元だとでも思ってくれ。概念的には非実在のキャラクター相手な訳だから、絵にキスしたのと意味は同じだ。君にとってはそんなのノーカンでいい、だろ?」
そうして。伊佐美 透(kz0243)は腕の中で寝落ちたハナに静かにそう言った。
……彼にとっては、義務でキスしろと言うのはそれほど重い話ではないのだ。そういう台本だと思えば、経験上、惜しむ唇でもない。
だからこそ。彼にとっては勿論罪悪感はあるわけだが。
「でもすまない。ここから出ないという選択は出来ない……叶えたい想いがあるから」
だから彼女が式神と熱烈なキスをしたのを見て、決意した。彼女がそこまで何でもありなら、これ以上気の毒な姿を見ているよりも俺も肚を括ろうと。
「まあ、いずれちゃんと相手が見つかるんじゃないかな、と思ってるのは本当だよ。君なら」
だから自棄になるのもほどほどにな、と最後に呟いて。着乱れた彼女にコートを纏わせて抱き上げると、部屋を出た。
「キスしないと出れないとか何だそれ」
言いながらジョージ・ユニクス(ka0442)の拳が壁に叩き込まれた音だった。だが、一見一般的な家屋の壁に見えるそれにはヒビ一つ入らない。
手加減無用かと、今度は全力で一撃を加える。……結果は、変わらない。木製に見える扉も。窓も。物は試しにと調度品すら叩いて回るが、どれ一つ傷つけることは叶わなかった。
半ば分かってはいたのだ。条件を満たさない限りこの部屋からは決して出られないと。分かっていてなお、試さずにはいられなかった──ハンターとしての腕前は上がっていても、女性関係においてはまだまだ純朴な少年、なのだ。
意を決して、振り返る。そこには彼の憧れの初恋の人にして心友の元妻、ミリア・ラスティソード(ka1287)が居た。
「別に君が嫌ならボクは部屋を出ずとも構わないが」
「いえ! 嫌とかそういうのではなく!? 出ないなんてそんなわけにもいかないですし!」
「そうか? なら逆に、さっさと出てしまおう」
出るなら早い方が良いだろ? とそう言うとミリアは躊躇いもなくその唇をジョージに差し出そうとした。……その躊躇のなさは、単純な親愛故にではないだろう。彼女は、自分のキスに価値などないと思っている。そんな彼女を見て、ジョージはさらに決意を固める。
「い、いえ! それは男の方から行くべきだと思いますのです”””!!」
あからさまに力の入りすぎた声。茹蛸もかくやとばかりに真っ赤になりながら彼が宣言する。
対し、彼女はやはり平然と、まあ君がそうしたいならとあっさりと、目を閉じて待つ体制になった。
ジョージがぐっと顔を上げる。……そのまま数分ほど、そのままだった。ミリアは何を言うまでもなく、目を閉じて待ち続けている。
やがて彼はミリアの肩を掴むとぐいっと一気に行こうとして──その勢いに、彼女の身体が傾き後ろに倒れ込んでいった。
床に衝撃が走り、揺れる音。
「おいおい、怪我するだろ落ち着けよ」
ミリアの声は相変わらず静かだった。その声と共に、彼は柔らかな感触を覚えて──
「!?!?!?!!!?!?!?」
それこそ、火の噴くような勢いで赤い顔を更に真っ赤にした。
倒れた衝撃から自分を守ったものは何だったのか。体格の差から、ジョージの顔に来る位置に当たるミリアの部位。
肩を掴み飛び込むような勢いで押し倒してきたジョージに、ミリアは逆らわずに素直に押し倒された。そのまま、胸のクッションで彼を受け止めたのだ。
彼女からしたら自然な流れで押し倒されたつもりだったのだが、どうやら彼は単純に加減を間違えただけらしい。
彼は今彼女の胸元からは顔を上げ、彼女の方の横に両手をつく形で彼女を見下ろす姿勢になっている。
そのまま、可愛そうになるくらい慌てふためいた表情で、どうすることも出来ずに硬直している。
彼女はふう、と息を吐いて、しなやかに両手の指先を彼のそれぞれの頬に向けて伸ばした。
暫く指先が優しく頬をなぞる。強張った身体はその感触が届いているのかすら怪しい。
「ボクに任せろ、ちゃんと出してやるから」
動かない彼に囁くと、彼女は掌を広げて彼の頬を包んだ。
軽く力をこめる。彼の顔をしっかりと固定するために。安全かつ間違いなく──遂行するために。
腹筋を使って、横たえられた彼女の身体が、顔が軽く持ち上げられる。……二つの顔が、近づいていく。
真正面から。
互いの唇が、しっかりと、合わさった。
カチリ。
その瞬間。錠前が外れるような音が、確かに響くのが聞こえた。
「……あ、あの、ミリア……さん?」
今度の感触は、きちんと伝わったようだった。彼女の両手に包まれたままの頬から、ゆっくりとこわばりが解けていく。
ジョージが片手を持ち上げ、指先で己の唇をなぞる。それとは異なる、残る感触に、間違えようのないものを彼は理解して。
彼女が自分にしてくれたこと、捧げてくれたものに……泣きそうなほどの癒しを感じた。
ああ。どうか。
伝えられは、しないだろうか。
彼女の唇に価値が無いなんてとんでもない。何よりの宝だと。
「えっと、その、ありがとう。ございます」
そうして彼は、ただ心からの感謝を、彼らしい言葉で、必死で伝えるのだった。
立ち上がり、彼は元貴族として身につけた礼節をもって、恭しく彼女に手を差し出す。
横たわる彼女を丁寧に起こしてやり手を取り合うと、二人並び、互いに手を取って、開かれた扉の向こうへ。
そして、二人は光に包まれた。
……瞼の裏に感じた光に、少しずつ目を開く。
扉の向こうから溢れた、と感じたそれは、窓から伸びる朝日のもので。
ジョージはそれを一人布団の中で浴びていたのだった。
「……なんて夢見てるんだ、俺……」
目覚め、すべてを理解した彼は、暫くすさまじいまでの自己嫌悪で何も言えなかった──
●
「キスしないと出られない部屋……って言われてもね?」
葛音 水月(ka1895)は肩を竦めて、さして困った風でもなく感想を述べる
「これって障害になってなくない?」
そう言って彼は傍らの存在に目を向けた。ステラ=ライムライト(ka5122)。愛しい恋人。……彼女と二人きりの空間でキスをしろと言われても別に何の問題もない。
彼は手慣れた動作で彼女の肩を抱き寄せ、その顔に手を添えてこちらを向かせた。このまま顔を近づけてしまえばそれでクリアー。そう思って実行しようとするも、それを遮ったのは意外にも、彼女の掌だった。待て、をするように、軽く彼女の手が彼の唇を覆う。
「ちょっと待って、できればもっと甘えたいなぁ……?」
甘やかな声と上目遣いで、ステラが言う。きょとんとする水月に、ステラは告げた。キスをしなければ出られない、と言うのは、逆も言えるのではないか──すなわち、条件を満たせばここから追い出されるのではないか、と。
ふむ、と水月はあっさりと納得した。なんだかんだで、家族がいたりで完全な二人きりになれるという事は稀だ。たまには邪魔されない空間もいいだろう。
「ん? ……ステラにおねだりとあれば。危ない感じはしないしね」
水月が答えると、ステラは嬉しそうに彼に身を摺り寄せてきた。
真正面に回り、絡ませるように腕を彼の背に回して抱き着く。スリスリと身体を動かしながらくっついて、すんすんと鼻を鳴らした。
「……えへへ、水月の匂いだぁ……♪」
そんなステラの様子に、水月は仕方ないなあと言う顔をしながらも満更ではないようで、愛おしむようにさらに深く抱き寄せる。押し付けられるように密着する身体。より濃密に香る空気に、ステラは深く息を吸う。
「もう、すっかりわんこー?」
揶揄うような声にすらステラは身震いして歓喜を表す。言葉。香り。温もり。染み込んでいく。足りないものを満たすように。
それらをたっぷりと堪能してから、彼女は小さく首を振って顔を上げた。
「私だけなのも不公平だもんね。おいでおいで♪」
──攻守交替の、宣言。甘えた分、相手にも尽くしたいと思う。
ぽすんとソファに座ると膝をポンポンと叩いて彼を招く。
誘われるままに、水月はステラの柔らかく張りのある膝にゆっくりと頭を乗せた。ステラが覗き込むように顔を俯かせる。普段と違う角度で見合わせる顔もまた幸せで。
その幸せに浸るように水月は彼女の膝に頬ずりをして、添えた片手を悪戯に動かし、彼女がしたようにすんすんと彼女の香りを嗅ぐ。その度の反応。彼もまたそれらを十分に堪能してから、彼女の膝から体を起こすと、並び座った状態から彼女を抱き寄せた。
彼女に横向かせる形で膝の上に座らせる。緩く抱き合い、軽く額をぶつけるようにして顔を寄せ合って、お互いに温もりと柔らかさを楽しみあう。
……間近までに寄せられた顔に、ステラの唇がムズムズと動いていた。瞳が、何かを訴えるように水月を見つめる。
「キスせずここにいたいって言ったのはステラでしょ」
唇を、綺麗な笑みの形に象って。水月は意地悪く笑う。少し顔を離すと、彼女の頬にそっと片手で触れる。……そして、親指で彼女の唇を──他の箇所より、薄く敏感な皮膚を──なぞり上げる。
ビクン、と彼女の身体が跳ねた。焦らされて過敏になった感覚と堪えきれない欲求がゾクゾクと背筋を震わせる。潤んだ瞳に非難の色が灯って……その視線に、水月は昏い満足を覚える。ああ、それだ。どうか僕にもっと執着して。離れられなくなるほどに。
だからまだ、焦らす。もっともっと、彼女が本当に我慢できなくなるまでに。
そうして、魅惑の果実が十分に熟れる頃を見計らって。鳥がそれを啄むように。水月はステラの唇を淡く食んだ。
「はぁっ……」
奥底から身体が震え、吐息が零れる。互いに。その吐息を飲み込むように再び唇を啄みあう。
扉の鍵が開く音が聞こえた──だから何?
二人にとって、とっくにそんなことはどうでも良くなっている。今はただ、目の前の存在を求めあって、貪るように口付けを深め合っていく──……
長い時間をかけて。絡めあった舌が、唇が、濡れた音を立てて離れていった。
「……えへへ、水月のあまぁい……♪」
余韻が抜けきるまでの時間。互いの存在に満たされ合うのを感じながら、やがて、二人は手を繋いで立ち上がる。
そうして、そのまま扉へと向かって外へ出ると、温かく柔らかな気配が、二人を包んでいった。
その、優しい感覚を残したまま、水月は布団の中で目を覚ます。夢の記憶はまだそこにあって──そして、傍らには現実の、愛しい人。
夢の続きをせがむように身を寄せ、顔を近づけると、ステラもまた薄く眼を開く。
まだ半分眠りの世界にいるような表情で彼女は、キスする寸前の体勢の水月に驚くことなく、そして彼女もまたせがむように彼の首に腕を絡めた。──散々我慢させられた反動、とでも言いたげに。
別々に夢を見ていたはずの互いの行動を、しかし不思議に思う事もなく。二人は甘い気配に身を委ねて。
やがて、再び幸せな眠りに就いた。
●
「今年こそ彼氏を……お神酒もっとじゃんじゃん持ってきやがれですぅ! ……あれ?」
片手に一升瓶。片手に盃。その盃を高く掲げた姿勢で、星野 ハナ(ka5852)は動きを止めた。
先ほどまで自分がどうしていたかを思い出す。
初代☆酔いどれ女王の称号持ちのウワバミが本気で大酒かっ喰らって晴れ着姿で絶賛絡み酒。
その記憶に間違いは無い筈だ。手にした一升瓶、その中身が三分の一ほどであること、それもまた、彼女が実感する直前の状況と一致している。
だが、今いるのは明らかに先ほどまでとは違う場所だった。
そして、それを認識した瞬間理解する。『キスしないと出られない』というルールを。
彼女は、肩を震わせ、そして。
「我が世の春来ましたワ~~~~!」
……大絶叫を、上げた。
「神さまが可哀想な私に正月早々プレゼントですぅ? ……ぅおっしゃー、やったるでぇぇぇ~~~!」
そうして彼女は、先ほどまでぐしぐしと泣いていた眼をこすると両手を振り上げて雄たけびを上げたのだった。
「熊でもキツツキでも持って来いですぅ、カムヒャーーー!」
その様、まさに煩悩全開放。哺乳類・鳥類・爬虫類までならディープキスも構わないといわんばかりの迫力である。
「あら、ふふふぅ……良い男見つけましたぁ」
そうして彼女が初めに歩み寄ったのは、壁に書かれた肖像画だった。その顔めがけて濃厚に口付ける。……完全なる酔っ払いの所業である。
状況が変化した様子はない。彼女はまたふらふらした動作で、部屋の内部に向かって振り向いた。
「ぐへへへ……逃がしませんよぅ……」
そうして、揺れる視界の中で捉えた何かの気配に向けて、彼女は符を掲げた。
「地縛符地縛符地縛符ですぅ……あれぇ?」
視界が定まっていなければ手元も不確か。結果として地縛符は無駄に連打され、部屋のあちこちが泥濘と化す。更に彼女は式神に捕まえさせようと呼び出して……そして、暫く後に何を間違えたのかその式神にもしっかりと口付けていた。
実体を持った式神とのディープな口付けにも、部屋の扉は反応した気配は無い。
なぜならこの部屋のルールはこうだ。『誰かと二人で』閉じ込められる。『その相手と』キスしなければ絶対に出られない。たとえ手違いでここに呼び出されたのだとしても、だ。
これまで、完全に彼女の一人芝居に見えて。この部屋には確かに、居た。もう一人。
「……あぎゃ」
ハナがバランスを崩してよろけた。そして──誰かの腕が、その身体を咄嗟に支えた。
「──しっかりして。ハナちゃん?」
……。
「ええと……あなた誰ですぅ?」
覚えはない。自分をそんな風に呼ぶ、恋人に囁くような低く甘い声には。
見上げて、その顔を確認しようとする。酔った視界は霞んでよく見えなかった。彼はその口元に、しぃ、と言う風に優雅な動作で人差し指を当てる。
「ごめん。今はまだ──内緒。でも、いつかきっと君と出会えるから」
それは……どういう意味だろうか。いつか出会う、まだ知らない誰か、とでも?
思考が纏まる前に、抱きすくめられてその姿は完全にハナの視界からは確認できなくなる。酔いを醒まそうかとするように、大きな手が、頭を、肩を、ポンポンと撫でた。
気付く。よくよく考えてみたらこんなのは夢に間違いないと。それなら。
「うふふ~。あったかいですぅ幸せですぅ」
相手の首に腕を絡め、着物なのに足も絡めるようにして笑う。
「ハナちゃん。目、閉じて」
耳元を擽るように囁く声に、彼女は従う。
くい、と、顎に手を添えて上向かされると、柔らかな感触はしっかりと、唇へと押し当てられた。
──カチリ、小さな音がして。安堵によって浮遊していく感覚に彼女は完全に身を委ねた。
「……まあなんだ。広義の2.5次元だとでも思ってくれ。概念的には非実在のキャラクター相手な訳だから、絵にキスしたのと意味は同じだ。君にとってはそんなのノーカンでいい、だろ?」
そうして。伊佐美 透(kz0243)は腕の中で寝落ちたハナに静かにそう言った。
……彼にとっては、義務でキスしろと言うのはそれほど重い話ではないのだ。そういう台本だと思えば、経験上、惜しむ唇でもない。
だからこそ。彼にとっては勿論罪悪感はあるわけだが。
「でもすまない。ここから出ないという選択は出来ない……叶えたい想いがあるから」
だから彼女が式神と熱烈なキスをしたのを見て、決意した。彼女がそこまで何でもありなら、これ以上気の毒な姿を見ているよりも俺も肚を括ろうと。
「まあ、いずれちゃんと相手が見つかるんじゃないかな、と思ってるのは本当だよ。君なら」
だから自棄になるのもほどほどにな、と最後に呟いて。着乱れた彼女にコートを纏わせて抱き上げると、部屋を出た。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 |