ゲスト
(ka0000)
【反影】リメンバー・グリーン
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/01/28 07:30
- 完成日
- 2018/02/05 00:44
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
暗黒の狭間。
ふわりと浮かぶ少年は、ペロペロキャンディーを舐めていた。
黙示騎士シュレディンガーだ。
「クリムゾンウェスト連合軍が、グラウンド・ゼロに向かっているみたいだよ~。ノーフェース、ちょっと偵察に行ってきてくれない? ギブ・アンド・テイクってやつだよ。異界には、過去のエバーグリーンがあるみたいだし、なんとなく気になるんだよね」
呼び出されたのは、カッツォ・ヴォイ。
ステッキを持ち、シルクハットを被る男の素顔は、白い仮面で隠されていた。
「過去のエバーグリーンか。よかろう」
カッツォはそう言った後、姿を消した。
●
エバーグリーン、とある研究室。
「ディエス、おはよう」
室長が、欠伸をしながら椅子に座っていた。
朝日が昇り、ビル群が日で照らされていく。
午前8時2分。
エネルギーが制御不能となり、自動兵器やオートマトンが暴走し、通勤途中の人々が、次々と押し流されていく。
『みんな、逃げて!』
ディエスは大声で叫ぶが、皆に届かない。
研究室は、オート・パラディンたちによって破壊され、周辺は壊滅した。
エバーグリーン世界が滅ぶのも、時間の問題だろう。
そして……。
●
「ディエス、おはよう」
室長が、欠伸をしながら椅子に座っていた。
朝日が昇り、ビル群が日で照らされていく。
午前8時2分。
自動兵器やオートマトンが暴走。
『同じ日』が、何度も繰り返されていた。
ここは、グラウンド・ゼロに残った「過去のエバーグリーン」の断片ともいうべき異界。
●
クリムゾンウェスト連合軍が、グラウンド・ゼロへと進軍していく最中。
オートマトンの少年…ディエス(kz0248)は、導かれるように暗黒の空間へと引き摺りこまれていた。
傍にいたラキ(kz0002)が、ディエスを助けようと手を伸ばすが、一緒に異界へと呑み込まれていく。
ユラリ、ユラリと。
記憶の断片が、全身全霊に絡みついてくる感覚……否、そう錯覚する触感にも似た空間が漂っていた。
……暗転。
世界が、少しずつ広がっていく。
見渡すと、朝日が昇り、ビル群が日で照らされていく。
午前8時2分。
エネルギーが制御不能となり、自動兵器やオートマトンが暴走し、通勤途中の人々が、次々と押し流されていく。
「室長!」
ディエスが叫ぶと、奇妙な姿をした歪虚が出現した。
黒い肉に骨にも似た装甲を持った四本足の歪虚たちが、ディエスの行く手を阻む。
「こんな歪虚、あの時にはいなかった……」
震えるディエス。
あの時……エバーグリーンが滅びる前日。
ディエスは、自動兵器によって破壊されていく仲間のオートマトンたちを見て、全てを思い出した。
「やめてーーーっ!!」
滅びの日は近い。
仲間たちの残骸が飛び散り、ディエスは懸命に近づこうとするが、四本足の歪虚たちに取り囲まれてしまう。
「ラキさん、逃げて!」
ディエスは泣き叫びながらも、ラキを助けようと自らが囮になった。
「なに言ってるの、ディエス。あたしが逃げる訳ないでしょ。すぐにハンターさんたちが助けに来てくれるからね」
ラキはショートソードを構えて、なんとか時間稼ぎをしていた。
「お願い、ディエスを助けて!!」
ラキがそう叫んだ時、ハンターたちが現れた。
暗黒の狭間。
ふわりと浮かぶ少年は、ペロペロキャンディーを舐めていた。
黙示騎士シュレディンガーだ。
「クリムゾンウェスト連合軍が、グラウンド・ゼロに向かっているみたいだよ~。ノーフェース、ちょっと偵察に行ってきてくれない? ギブ・アンド・テイクってやつだよ。異界には、過去のエバーグリーンがあるみたいだし、なんとなく気になるんだよね」
呼び出されたのは、カッツォ・ヴォイ。
ステッキを持ち、シルクハットを被る男の素顔は、白い仮面で隠されていた。
「過去のエバーグリーンか。よかろう」
カッツォはそう言った後、姿を消した。
●
エバーグリーン、とある研究室。
「ディエス、おはよう」
室長が、欠伸をしながら椅子に座っていた。
朝日が昇り、ビル群が日で照らされていく。
午前8時2分。
エネルギーが制御不能となり、自動兵器やオートマトンが暴走し、通勤途中の人々が、次々と押し流されていく。
『みんな、逃げて!』
ディエスは大声で叫ぶが、皆に届かない。
研究室は、オート・パラディンたちによって破壊され、周辺は壊滅した。
エバーグリーン世界が滅ぶのも、時間の問題だろう。
そして……。
●
「ディエス、おはよう」
室長が、欠伸をしながら椅子に座っていた。
朝日が昇り、ビル群が日で照らされていく。
午前8時2分。
自動兵器やオートマトンが暴走。
『同じ日』が、何度も繰り返されていた。
ここは、グラウンド・ゼロに残った「過去のエバーグリーン」の断片ともいうべき異界。
●
クリムゾンウェスト連合軍が、グラウンド・ゼロへと進軍していく最中。
オートマトンの少年…ディエス(kz0248)は、導かれるように暗黒の空間へと引き摺りこまれていた。
傍にいたラキ(kz0002)が、ディエスを助けようと手を伸ばすが、一緒に異界へと呑み込まれていく。
ユラリ、ユラリと。
記憶の断片が、全身全霊に絡みついてくる感覚……否、そう錯覚する触感にも似た空間が漂っていた。
……暗転。
世界が、少しずつ広がっていく。
見渡すと、朝日が昇り、ビル群が日で照らされていく。
午前8時2分。
エネルギーが制御不能となり、自動兵器やオートマトンが暴走し、通勤途中の人々が、次々と押し流されていく。
「室長!」
ディエスが叫ぶと、奇妙な姿をした歪虚が出現した。
黒い肉に骨にも似た装甲を持った四本足の歪虚たちが、ディエスの行く手を阻む。
「こんな歪虚、あの時にはいなかった……」
震えるディエス。
あの時……エバーグリーンが滅びる前日。
ディエスは、自動兵器によって破壊されていく仲間のオートマトンたちを見て、全てを思い出した。
「やめてーーーっ!!」
滅びの日は近い。
仲間たちの残骸が飛び散り、ディエスは懸命に近づこうとするが、四本足の歪虚たちに取り囲まれてしまう。
「ラキさん、逃げて!」
ディエスは泣き叫びながらも、ラキを助けようと自らが囮になった。
「なに言ってるの、ディエス。あたしが逃げる訳ないでしょ。すぐにハンターさんたちが助けに来てくれるからね」
ラキはショートソードを構えて、なんとか時間稼ぎをしていた。
「お願い、ディエスを助けて!!」
ラキがそう叫んだ時、ハンターたちが現れた。
リプレイ本文
「暗黒の空間を潜り抜けたら、見たこともない高い建物ばかりだね」
ラミア・マクトゥーム(ka1720)に同行していた柴犬とモフロウは、異界に呑み込まれた時、離れ離れになってしまい、ラミアが騎乗していたのは、真紅の毛に包まれたイェジドのフレイだった。
「ここが、エバーグリーンか?」
ジャック・エルギン(ka1522)が周囲を見渡すと、自動兵器によって都市が破壊されている光景が広がっていた。
そこには、見覚えのある少年がいた。
「四本足の歪虚に囲まれてるのは、ディエスか?!」
ジャックはイェジドのフォーコに騎乗して、全速力で前方へと駆け抜けていった。
「あたしも助太刀するよ」
イェジドのフレイに騎乗したラミアが、ジャックを援護するように走り抜けていく。
「仲間には当たらないように、慎重に」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は、魔導拡声機「ナーハリヒト」を使って、皆に知らせる。
「ディエスさん、皆さん、今から大きな花火を撃ち込んじゃうので注意して……さぁ、ニンタンクちゃん、たまーやー」
刻令ゴーレム「Volcanius」のニンタンク『大輪牡丹』は、射撃適正した24ポンドゴーレム砲を、さらに弾着修正指示……『砲撃:炸裂弾』を放った。
弾着後、マテリアルにより周囲へ霰玉をまき散らす炸裂弾。
巻き込まれたのは、シェオル・ノド一体のみ。ディエスに当たらないように、ルンルンは細心の注意をしていたのだ。
「今回は、威降にとっては初陣ですね。君の快足、頼りにさせてもらいます」
鳳城 錬介(ka6053)はリーリーの威降に騎乗し、リーリージャンプで跳躍……大きく跳び上がり、シェオル・ノドたちがいる近くまで着地することができた。
「威降、その調子です」
錬介の励ましに、威降は緊張が解けたのか、うれしそうに一声、鳴いた。
ディエスがいる地点まで飛び越えることはできなかったが、仲間を援護するには十分な位置だった。
敵の攻撃に備えて、直ぐに『ガウスジェイル』を発動させる錬介。
「終わってしまった世界の、喪失のリフレイン……けれど、もう喪わせはしない」
アリア・セリウス(ka6424)は『氷輪詩』を詠唱し、イェジドのコーディを走らせ、シェオル・ノドたちの元まで一気に駆け抜けていく。『転鈴』でマテリアルを練り上げ、アリアの歌はさらに続く。
「東條さん、任せたよ」
ラキ(kz0002)は、東條 奏多(ka6425)が騎乗するイェジドの鋼夜に同乗していた。
鋼夜はカタフラクトで二人乗りの適性を得ていた。
「頼んだぞ、鋼夜。目の前で人が死ぬのなんざ、見たくないからな」
フェンリルライズを発動した鋼夜は、ディエスの隣にいるシェオル・ノドを目掛けて、走り抜けていく。
カーミン・S・フィールズ(ka1559)はイェジドたちが走り出した後、『千日紅』による残像で加速していき、一瞬にして前衛にいたシェオル・ノドの付近へと辿り着いていた。
「気を逸らさないで。後ろから来るわ!」
その声に、ディエスは防御する体勢を取ることができた。
カーミンのグリフォン、フィデルは翼を広げて上空から戦況を見守っていた。
シェオル・ノド、4体は、ルンルンに狙いを定めて炎のようなオーラを飛ばそうとしていたが、錬介の『ガウスジェイル』の結界に引き寄せられていた。
「ディエス君と仲間を傷つけることだけは、絶対にさせません!」
リーリーに騎乗状態でガウスジェイルを使うと、騎乗者の錬介だけではなく、幻獣を優先して敵の攻撃が命中することがある。
敵のオーラを引き寄せることができたが、敵が放った炎の攻撃は、リーリーの威降と騎乗者の錬介を巻き込もうとしてきた。
リーリーの威降は、紙一重で翼鎌「フロガ・フテラ」で受け流していた。
聖盾剣「アレクサンダー」で敵の攻撃を受け払う錬介。
初手の敵からの攻撃を見逃さずに行動した錬介を見て、ジャックは感心していた。
「おっし、錬介、さすがだぜ。さあ、てめぇら、こっちに来やがれっ!」
ジャックはイェジドから降り、『ソウルトーチ』の炎を纏った。
シェオル・ノド3体が、ジャックのオーラに引き付けられた。
「フレイ! きっちりこなすよ!」
ラミアはイェジドのフレイから降りると、フレイが『マウントロック』でシェオル・ノド一体に飛びつき、転倒させた。
「あたしは、他のヤツを狙うよ」
ラミアが『ファントムハンド』を発動させ、幻影の腕で別のシェオル・ノド一体を引き寄せ、敵の動きを封じていた。
奏多もイェジドの鋼夜から降りると、『ソウルトーチ』を放ち、シェオル・ノド1体を引き寄せることができた。その隙に、ラキが鋼夜から降りて、奏多が引き付けたシェオル・ノド目掛けて、チャクラムを投げつけた。
アリアの『氷輪詩』は継続して、敵のマテリアルを威圧していた。
「ディエス、今のうちに後ろへ抜けなさい」
アリアは武者兜「随身」による『ガウスジェイル』を発動させ、ディエスの救出に向かう。
ソウルトーチに引き付けられたシェオル・ノドたちは、ディエスには全く注目していなかった。
そのため、ディエスは逃げ出すことができ、アリアと合流することができた。
「アリアさん、ボクも戦うよ」
「共に戦う方法は、ジャックが教えてくれた筈……そうよね?」
アリアの言葉に、ディエスが頷き、イェジドのコーディに『プロテクション』を施した。
「コーディさんも仲間だから、守らないとね」
「まだ戦いは終わってないわ。気を引き締めて」
そう言いながらも、アリアは、ディエスがコーディのことを仲間だと思ってくれたことが内心、うれしかった。
「ディエス君、仲間の支援や回復は手分けしてやりましょうか。まずは、シェオル・ノドたちを倒すことだけを考えましょう」
錬介がリーリーに騎乗して、フォローに入った。聖盾剣「アレクサンダー」を振り降ろし、シェオル・ノド一体の胴部を斬り付けると、巫女のラリエットを使い『ホーリーヴェール』をディエスに施す。
「……光が、ボクを守ってくれているんだ。すごいな」
光の防御壁に守られたディエスは、どことなく神々しく見えた。錬介の勇気が具現化したような輝きであった。
「まんまとソウルトーチに引っかかってるわね。これならどう?」
カーミンは『オレアンダー』の毒を蒼機剣「N=Fフリージア」に纏わせ、『二刀流』を駆使して短刀「陽炎」でシェオル・ノドの胴部を斬り付け、さらに蒼機剣「N=Fフリージア」で攻撃を繰り出した。
毒がシェオル・ノドの身体に染み込み、蝕んでいく。
「ふふ、効果があったようね」
カーミンが追い撃ちをかけるように蒼機剣「N=Fフリージア」が鞭形態となり、『クレマチス』を発動させ、シェオル・ノドを牽制していく。
上空から、グリフォンのフィデルが急降下してきたかと思うと、着地した瞬間に『ダウンバースト』が発生した。
爆風による衝撃で斬撃を巻き起こし、シェオル・ノド4体はハンターがいる方へと弾き飛ばされた。
刻令ゴーレム「Volcanius」のニンタンク『大輪牡丹』は、前もって指示された通り、『砲撃:火炎弾』を放ち、シェオル・ノド4体が炎に巻き込まれていく。
そして、ルンルンが呪画「山河社稷図」を広げると【通行止め】の文字が大きく描かれていた。
「ジュゲームリリカル、ルンルン忍法、土蜘蛛の術! 符を場に伏せてターンエンド」
符の結界を張り巡らせ、『地縛符』を唱えていたのだ。
シェオル・ノド2体が結界によって足元が泥状に固まり、身動きが取れなくなっていた。
動きが取れるシェオル・ノドは2体……体勢を崩しながらも、毒に蝕まれているシェオル・ノドは、カーミンに食らい付くように炎のようなオーラを飛ばした。
巧みに回避するカーミン。
「あら、毒が気に入らなかったみたいね」
もう一体のシェオル・ノドが、ジャック目掛けて爪を振り下ろすが、『鎧受け』で受け流した。
「ディエス、俺らの後ろで援護、頼むぜ」
ジャックの言葉に、ディエスが受け答える。
「ジャックさんから学んだこと、覚えてるよ。危険な時は、一旦、後方へ引くんだよね」
「仲間を支援するためにも、この場から少し離れますね。ディエス君、しっかりつかまってください」
リーリーの威降はダブルライドで二人乗りの適性を得ていたこともあり、騎乗した錬介の後ろにはディエスが同乗していた。
リーリーの威降が走り出すと、錬介の背中にしがみ付くディエス。
乱戦の中、ディエスを置き去りにするのは、術を施す時に自分自身が怪我をする恐れもある。
最悪、重体になってしまったら、回復魔法で仲間を助けることもできなくなる。
だからこそ、ディエスは錬介と協力して、後方へと引いてから支援しようと考えていたのだ。
ディエスがそう思うようになったのは、ジャックが指南してくれたことがあったからだ。
「さあ、ここからが本番よ」
アリアが『月蝶』で仲間を鼓舞する歌舞を詠唱し、『想思花・月魄』による技で、魔導剣「カオスウィース」と双龍剣「ナラク・アグニ」を構えて、カーミンを狙っていたシェオル・ノドに対して煌めく刃を斬り付ける。
奏多は『アクセルオーバー』で加速して移動すると、Star of Bethlehemを掲げて『コール・ジャスティス』の光を放った。正義執行により周囲の味方を鼓舞し、奏多がいる範囲内にはシェオル・ノド4体がいた。
「誰も死なせない、絶対生きて帰る。ただ、それだけを望んで……そして、勝つのは俺たちだ」
正義の光に照らされ、仲間たちも果敢に戦う気持ちが高まっていく。
「再生される前に、確実に狙うよ」
ラミアは『ファントムハンド』でアリアが攻撃したシェオル・ノドの動きを封じ、『ワイルドラッシュ』の連撃を叩き付ける。
かなりのダメージを受けているはずだが、シェオル・ノドはまだ倒れない。
フレイは『フェンリルライズ』を発動させ、戦闘体勢を取ると、ラミアの援護に加わった。
「しぶといヤツだぜ」
ジャックは『攻めの構え』を取り、バスタードソード「アニマ・リベラ」を振り翳して、ラミアが攻撃したシェオル・ノドの胴部を斬り裂いた。敵はまだ倒れず、ジャックが『ケイオスチューン』のオーラを纏った。
続け様、フォーコは『ウォークライ』で周囲にいる敵を威嚇し、ジャックが斬り付けたシェオル・ノド目掛けて『クラッシュバイト』で噛み砕いた。
その刹那、シェオル・ノド一体が粉々になって、消滅していく。
その様子に、ジャックが叫ぶ。
「フォーコ、でかした! まだ3体残ってるが、一体ずつ、片付けてくぜ!」
「任せて。残りを倒すだけね」
カーミンは『千日紅』でシェオル・ノドに隣接すると『オレアンダー』を発動させ、『二刀流』を駆使して攻撃を繰り出した。
蒼機剣「N=Fフリージア」に纏っていた毒が、シェオル・ノドの身体を蝕んでいき、さらに短刀「陽炎」で敵の胴部を斬り裂く。
「アリアの歌のおかげで、効果がバッチリね。これで終わりじゃないわよ」
カーミンの蒼機剣「N=Fフリージア」が鞭仕様になり、『クレマチス』によってシェオル・ノドは体勢を崩し、回避し辛くなった。
そこへ、グリフォンのフィデルが上空から急降下……着地すると『ダウンバースト』が巻き起こり、シェオル・ノドたちが後方へと弾き飛ばされていく。
「敵がいる所には、味方はいません。ニンタンクちゃん、やっておしまいなさい! 撃て、火炎弾!」
ルンルンの指示で、刻令ゴーレム「Volcanius」のニンタンク『大輪牡丹』は、24ポンドゴーレム砲をシェオル・ノドに向けて、『砲撃:火炎弾』を放った。
爆炎の中、ダメージは受けていたが、シェオル・ノドたちは、なかなか倒れることがなかった。
●
戦いは、佳境を迎えていた。
ジャックが二体目のシェオル・ノドを倒した時、なにやら周囲に異変があった。
「ん? 周囲の景色が薄くなっているように見えるのは、気のせいか?」
残りは2体……ジャックは『ケイオスチューン』の構えを維持し、『鎧受け』を発動させ、シェオル・ノドの牙を受け流していく。
一体ずつ、仲間たちと連携を取り集中攻撃……三体目のシェオル・ノドがダメージに耐え切れず、消滅していくと、それは確信に変わった。
「気のせいじゃないわね。シェオル・ノドを倒す度に、景色が少しずつ薄くなっているわ」
カーミンはグリフォンに騎乗し『飛翔の翼』を駆使して、ビル群の隙間を飛び抜けていった。
見下ろした景色が、水で薄めた絵具のような色彩になっていた。
「この機を逃したら、二度と『この世界』には来ることができないかも」
ルンルンは、まさに忍者のごとく『壁歩き』で、ビルの壁に張り付き、昇っていく。
「最後の一体を倒すのは、何か発見してからでも遅くないな」
奏多はイェジドの鋼夜に騎乗し、『ブロッキング』でシェオル・ノドの動きを妨害する。
「カナタの言うことも一理あるわね」
イェジドのコーディに騎乗したアリアは、奏多が騎乗する鋼夜に隣接すると、シェオル・ノドに対して『ブロッキング』で行く手を阻んでいた。
ラミアは三体目のシェオル・ノドとの対戦の際、重傷になってしまったが『リジェネレーション』で少しずつ怪我が回復していた。
錬介が『ファーストエイド』の祈りで『フルリカバリー』をラミアに施したこともあり、致命傷にはならなかったようだ。
ディエスは『ヒール』を使って、イェジドのフレイを癒していた。
「フレイさん、怪我は少しずつ治るはずだからね。大丈夫だよ」
そんな状況の中、ルンルンはビルの中に忍び込み、魔導カメラで研究室の内部を撮影していた。
「写真の枚数は限度があるけど、これだけあれば何かの参考にはなるかも」
ガッツポーズを取ると、素早くビルから飛び降りるルンルン。
「情報収集、してきました。最後の一体も、倒しちゃいましょう」
「ルンルン、抜け目がないな。そんじゃ、ラストも、気合いれていくぜ」
ジャックがバスタードソード「アニマ・リベラ」でシェオル・ノドを斬り裂くと、イェジドのフォーコは『ウォークライ』で敵を威嚇し、『クラッシュバイト』で噛み付く。
ラミアが戦鎚「ウンシル」を構えて『ワイルドラッシュ』を叩き込むと、シェオル・ノドの胴部が砕け散り、消滅していった。
全ての、シェオル・ノドが消え去った時……。
「見て、景色が……落ちていく?」
何と表現すれば良いのかと、ラミアも迷った。
空が、剥がれ落ちてくるではないか。
グリフォンに騎乗していたカーミンは、空から降ってくる破片を見上げた。
「空に、亀裂が走ってるわ」
これが、世界の終焉なのか?
「ディエス君、この景色と場所に見覚えはありますか?」
錬介の問いに、ディエスは躊躇いながら応えた。
「……ここは、ボクが暮らしていた場所……近くのビルに研究室があった……だけど、空に亀裂が走る光景は、初めて……だよ」
それは、どういう意味だろうか。
世界が、散っていく……。
奏多は、注意深くディエスの様子を窺っていた。
何かディエスに反応するものがあれば、持ち帰るつもりでいたのだ。
「ボクが住んでいた世界と似てるけど、何かが違うよ」
「何が違うんだ?」
奏多が問う。
その時、『世界』が反転した。
空と地上が、ひっくり返った。
「え? なにこれ?」
カーミンが騎乗しているグリフォンは、空を飛んでいた。
景色が、逆さまになっていたのだ。
それでも、地上は落下せず、空にあった亀裂が、さらに大きくなり、破片が天の穴へと吸い込まれていく。
「これって、落ちてるの? 吸い込まれてるの?」
カーミンは、グリフォンに騎乗したまま、天の穴へと引き摺り込まれていった。
「ディエス、離れ離れにならないように、あたしの後ろに乗って」
ラミアが騎乗しているイェジドのフレイも、カタフラクトの特殊訓練で二人乗りに適した特性を持っていた。
「はい、ラミアさん」
ディエスはラミアの後ろの席に座り、フレイに騎乗した。
都市部のビル群が、徐々に崩れ落ちていき、窓から落下していく人々が見えた。
色彩が、灰色に変わってきた。
ラミアは『深淵の声』で、人々の声を読み取ろうとした。
「……何も、聴こえない?」
深淵の声から、広がっていたのは、音のない世界。
静寂ではなく、無音。
覚醒者であるラミアには、この異常な感覚に背筋が凍る想いがした。
●
アリアは、万華鏡のような世界にいた。
周囲には蝶や月の形があり、クルリクルリと回転していく。
時折、猫の鳴き声も遠くから聴こえてきた。
黒い羽根の蝶が、アリアの眼前をヒラヒラと飛んでいく。
幻想的な光景……これは、夢?
●
ドーム型の基地に、奏多は迷い込んでいた。
自分以外の気配はなかった。
無機質な通路を辿り、大きなガラス張りの窓からは、巨大な宇宙戦艦が浮かんでいるのが見えた。
だが、月基地ではない。
奏多は何故か、直感的に、そう感じた。
夢……なのか?
●
風が吹き、草の鳴る音が微かに聴こえる。
錬介は、いつのまにか、一人、草原に立ち尽くしていた。
しばらくすると、子供たちが鬼ごっこをして遊んでいる姿が見えた。
子供たちに声をかけようと、錬介が近寄ると……消えていた。
そこには、誰もいなかった。
遠くから、子供たちのはしゃぐ声が響く。
ここは、どこなのか……。
●
「カーミン様、申し訳ありません」
「まーた失敗したわね。この役立たずぅー」
カーミンは愛用の鞭で、手下たちをビシバシ叩いていた。
「今度、失敗したら、これだけじゃすまないから」
椅子に座るカーミン。
どうやら、どこかの地下室のようだ。
一息つくが、どうも、夢を見ているような気がした。
●
海に飛び込んだジャックは、丘のように連なるサンゴ礁を見つけた。
コーラル色に輝くサンゴ礁の上には、古びた宝箱があった。
海賊が、落としていったものだろうか?
ジャックは宝箱がある場所まで泳いでいく。
気が付けば、人魚たちが集まっていた。
美女だ。
これも、夢なのか?
●
「そなたに、秘伝の巻物を授けよう」
「有難きお言葉、うれしいです」
ルンルンは、初老の男性から巻物を受け取り、正座して御辞儀をした。
顔を上げると、男性の姿が消えていた。
「これで、巻物をさらに集めれば……」
そう言った途端、手に持っていた巻物が消滅していた。
「えー、どういうことですか?!」
慌てるルンルン。
どうやら、どこかの忍者屋敷にいるようだった。
●
無音が、これほど恐ろしいとは……ラミアは恐怖を感じていた。
「フレイ、ディエス、どこ?」
一緒にいたはずのフレイとディエスの姿が見当たらない。
まさか、はぐれてしまったのか?
暗黒の中、ラミアは宙に浮かんでいた。
やがて……。
●
「ラミアさん」
自分を呼ぶ声に気付き、振り返るとディエスがいた。
二人とも、フレイに騎乗していた。
周囲を確認すると、荒れ果てた広大な荒野が見えた。
フレイは『狼嗅覚』で周辺の臭いを嗅いでいたが、負のマテリアルが充満していることが分かった。
仲間たちは全員、揃っていた。
アリアは無事に戻ってくることができて、コーディを優しく抱き締めた。
「……皆、無事ね」
「この場所、グラウンド・ゼロか?」
フォーコの頭を撫でながら、ジャックが言った。
紀元前に邪神によって破壊され、闇に呑まれてしまった大地だ。
「ここが、クリムゾンウェストという惑星の反対側……かなり荒れ果ててますね」
錬介が、震えているリーリーの威降を宥めようと、首元を撫でていた。
「良かったです。異界で撮った写真、持ち帰ることができました」
ルンルンが撮った写真を見ると、しっかりと写っていた。
ニンタンク『大輪牡丹』は、ルンルンの隣に立ち、指示待ちの状態だった。
「この子も、大怪我がなくて、良かったわ」
グリフォンのフィデルは、カーミンの横に着地していた。
「それにしても、ここに来る前に、妙な夢を見たな」
奏多が、イェジドの鋼夜から降りて、相棒の背中を撫でた。
「あー、あたしも見たよ。いっぱい料理が出てきて全部食べられなかったな」
ラキがそう言うと、ハンターたちは自分が見た夢を話し合った。
どうやら、異なる夢を見ていたようだ。
「本部に報告した方が良さそうだな」
奏多が皆に告げた。自分たちが見た夢は『異界の幻影』かもしれない。
その後、ハンターたちは本部に戻り、自分たちが異界で経験したことを報告することにした。
ルンルンが異界で撮った写真は、参考資料として本部で保管することになった。
元々、異界に存在していた物は、持ち帰ることができなかった。
ルンルンが写真を持ち帰ることができたのは、自分で持ってきたカメラで撮影したからだろう。
柴犬とモフロウと言えば、本部で保護されていたこともあり、ラミアの元へと戻ってきた。
錬介がディエスに改めて自己紹介すると、互いに握手を交わした。
ディエスは、とてもうれしそうに微笑んでいた。
ラミア・マクトゥーム(ka1720)に同行していた柴犬とモフロウは、異界に呑み込まれた時、離れ離れになってしまい、ラミアが騎乗していたのは、真紅の毛に包まれたイェジドのフレイだった。
「ここが、エバーグリーンか?」
ジャック・エルギン(ka1522)が周囲を見渡すと、自動兵器によって都市が破壊されている光景が広がっていた。
そこには、見覚えのある少年がいた。
「四本足の歪虚に囲まれてるのは、ディエスか?!」
ジャックはイェジドのフォーコに騎乗して、全速力で前方へと駆け抜けていった。
「あたしも助太刀するよ」
イェジドのフレイに騎乗したラミアが、ジャックを援護するように走り抜けていく。
「仲間には当たらないように、慎重に」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は、魔導拡声機「ナーハリヒト」を使って、皆に知らせる。
「ディエスさん、皆さん、今から大きな花火を撃ち込んじゃうので注意して……さぁ、ニンタンクちゃん、たまーやー」
刻令ゴーレム「Volcanius」のニンタンク『大輪牡丹』は、射撃適正した24ポンドゴーレム砲を、さらに弾着修正指示……『砲撃:炸裂弾』を放った。
弾着後、マテリアルにより周囲へ霰玉をまき散らす炸裂弾。
巻き込まれたのは、シェオル・ノド一体のみ。ディエスに当たらないように、ルンルンは細心の注意をしていたのだ。
「今回は、威降にとっては初陣ですね。君の快足、頼りにさせてもらいます」
鳳城 錬介(ka6053)はリーリーの威降に騎乗し、リーリージャンプで跳躍……大きく跳び上がり、シェオル・ノドたちがいる近くまで着地することができた。
「威降、その調子です」
錬介の励ましに、威降は緊張が解けたのか、うれしそうに一声、鳴いた。
ディエスがいる地点まで飛び越えることはできなかったが、仲間を援護するには十分な位置だった。
敵の攻撃に備えて、直ぐに『ガウスジェイル』を発動させる錬介。
「終わってしまった世界の、喪失のリフレイン……けれど、もう喪わせはしない」
アリア・セリウス(ka6424)は『氷輪詩』を詠唱し、イェジドのコーディを走らせ、シェオル・ノドたちの元まで一気に駆け抜けていく。『転鈴』でマテリアルを練り上げ、アリアの歌はさらに続く。
「東條さん、任せたよ」
ラキ(kz0002)は、東條 奏多(ka6425)が騎乗するイェジドの鋼夜に同乗していた。
鋼夜はカタフラクトで二人乗りの適性を得ていた。
「頼んだぞ、鋼夜。目の前で人が死ぬのなんざ、見たくないからな」
フェンリルライズを発動した鋼夜は、ディエスの隣にいるシェオル・ノドを目掛けて、走り抜けていく。
カーミン・S・フィールズ(ka1559)はイェジドたちが走り出した後、『千日紅』による残像で加速していき、一瞬にして前衛にいたシェオル・ノドの付近へと辿り着いていた。
「気を逸らさないで。後ろから来るわ!」
その声に、ディエスは防御する体勢を取ることができた。
カーミンのグリフォン、フィデルは翼を広げて上空から戦況を見守っていた。
シェオル・ノド、4体は、ルンルンに狙いを定めて炎のようなオーラを飛ばそうとしていたが、錬介の『ガウスジェイル』の結界に引き寄せられていた。
「ディエス君と仲間を傷つけることだけは、絶対にさせません!」
リーリーに騎乗状態でガウスジェイルを使うと、騎乗者の錬介だけではなく、幻獣を優先して敵の攻撃が命中することがある。
敵のオーラを引き寄せることができたが、敵が放った炎の攻撃は、リーリーの威降と騎乗者の錬介を巻き込もうとしてきた。
リーリーの威降は、紙一重で翼鎌「フロガ・フテラ」で受け流していた。
聖盾剣「アレクサンダー」で敵の攻撃を受け払う錬介。
初手の敵からの攻撃を見逃さずに行動した錬介を見て、ジャックは感心していた。
「おっし、錬介、さすがだぜ。さあ、てめぇら、こっちに来やがれっ!」
ジャックはイェジドから降り、『ソウルトーチ』の炎を纏った。
シェオル・ノド3体が、ジャックのオーラに引き付けられた。
「フレイ! きっちりこなすよ!」
ラミアはイェジドのフレイから降りると、フレイが『マウントロック』でシェオル・ノド一体に飛びつき、転倒させた。
「あたしは、他のヤツを狙うよ」
ラミアが『ファントムハンド』を発動させ、幻影の腕で別のシェオル・ノド一体を引き寄せ、敵の動きを封じていた。
奏多もイェジドの鋼夜から降りると、『ソウルトーチ』を放ち、シェオル・ノド1体を引き寄せることができた。その隙に、ラキが鋼夜から降りて、奏多が引き付けたシェオル・ノド目掛けて、チャクラムを投げつけた。
アリアの『氷輪詩』は継続して、敵のマテリアルを威圧していた。
「ディエス、今のうちに後ろへ抜けなさい」
アリアは武者兜「随身」による『ガウスジェイル』を発動させ、ディエスの救出に向かう。
ソウルトーチに引き付けられたシェオル・ノドたちは、ディエスには全く注目していなかった。
そのため、ディエスは逃げ出すことができ、アリアと合流することができた。
「アリアさん、ボクも戦うよ」
「共に戦う方法は、ジャックが教えてくれた筈……そうよね?」
アリアの言葉に、ディエスが頷き、イェジドのコーディに『プロテクション』を施した。
「コーディさんも仲間だから、守らないとね」
「まだ戦いは終わってないわ。気を引き締めて」
そう言いながらも、アリアは、ディエスがコーディのことを仲間だと思ってくれたことが内心、うれしかった。
「ディエス君、仲間の支援や回復は手分けしてやりましょうか。まずは、シェオル・ノドたちを倒すことだけを考えましょう」
錬介がリーリーに騎乗して、フォローに入った。聖盾剣「アレクサンダー」を振り降ろし、シェオル・ノド一体の胴部を斬り付けると、巫女のラリエットを使い『ホーリーヴェール』をディエスに施す。
「……光が、ボクを守ってくれているんだ。すごいな」
光の防御壁に守られたディエスは、どことなく神々しく見えた。錬介の勇気が具現化したような輝きであった。
「まんまとソウルトーチに引っかかってるわね。これならどう?」
カーミンは『オレアンダー』の毒を蒼機剣「N=Fフリージア」に纏わせ、『二刀流』を駆使して短刀「陽炎」でシェオル・ノドの胴部を斬り付け、さらに蒼機剣「N=Fフリージア」で攻撃を繰り出した。
毒がシェオル・ノドの身体に染み込み、蝕んでいく。
「ふふ、効果があったようね」
カーミンが追い撃ちをかけるように蒼機剣「N=Fフリージア」が鞭形態となり、『クレマチス』を発動させ、シェオル・ノドを牽制していく。
上空から、グリフォンのフィデルが急降下してきたかと思うと、着地した瞬間に『ダウンバースト』が発生した。
爆風による衝撃で斬撃を巻き起こし、シェオル・ノド4体はハンターがいる方へと弾き飛ばされた。
刻令ゴーレム「Volcanius」のニンタンク『大輪牡丹』は、前もって指示された通り、『砲撃:火炎弾』を放ち、シェオル・ノド4体が炎に巻き込まれていく。
そして、ルンルンが呪画「山河社稷図」を広げると【通行止め】の文字が大きく描かれていた。
「ジュゲームリリカル、ルンルン忍法、土蜘蛛の術! 符を場に伏せてターンエンド」
符の結界を張り巡らせ、『地縛符』を唱えていたのだ。
シェオル・ノド2体が結界によって足元が泥状に固まり、身動きが取れなくなっていた。
動きが取れるシェオル・ノドは2体……体勢を崩しながらも、毒に蝕まれているシェオル・ノドは、カーミンに食らい付くように炎のようなオーラを飛ばした。
巧みに回避するカーミン。
「あら、毒が気に入らなかったみたいね」
もう一体のシェオル・ノドが、ジャック目掛けて爪を振り下ろすが、『鎧受け』で受け流した。
「ディエス、俺らの後ろで援護、頼むぜ」
ジャックの言葉に、ディエスが受け答える。
「ジャックさんから学んだこと、覚えてるよ。危険な時は、一旦、後方へ引くんだよね」
「仲間を支援するためにも、この場から少し離れますね。ディエス君、しっかりつかまってください」
リーリーの威降はダブルライドで二人乗りの適性を得ていたこともあり、騎乗した錬介の後ろにはディエスが同乗していた。
リーリーの威降が走り出すと、錬介の背中にしがみ付くディエス。
乱戦の中、ディエスを置き去りにするのは、術を施す時に自分自身が怪我をする恐れもある。
最悪、重体になってしまったら、回復魔法で仲間を助けることもできなくなる。
だからこそ、ディエスは錬介と協力して、後方へと引いてから支援しようと考えていたのだ。
ディエスがそう思うようになったのは、ジャックが指南してくれたことがあったからだ。
「さあ、ここからが本番よ」
アリアが『月蝶』で仲間を鼓舞する歌舞を詠唱し、『想思花・月魄』による技で、魔導剣「カオスウィース」と双龍剣「ナラク・アグニ」を構えて、カーミンを狙っていたシェオル・ノドに対して煌めく刃を斬り付ける。
奏多は『アクセルオーバー』で加速して移動すると、Star of Bethlehemを掲げて『コール・ジャスティス』の光を放った。正義執行により周囲の味方を鼓舞し、奏多がいる範囲内にはシェオル・ノド4体がいた。
「誰も死なせない、絶対生きて帰る。ただ、それだけを望んで……そして、勝つのは俺たちだ」
正義の光に照らされ、仲間たちも果敢に戦う気持ちが高まっていく。
「再生される前に、確実に狙うよ」
ラミアは『ファントムハンド』でアリアが攻撃したシェオル・ノドの動きを封じ、『ワイルドラッシュ』の連撃を叩き付ける。
かなりのダメージを受けているはずだが、シェオル・ノドはまだ倒れない。
フレイは『フェンリルライズ』を発動させ、戦闘体勢を取ると、ラミアの援護に加わった。
「しぶといヤツだぜ」
ジャックは『攻めの構え』を取り、バスタードソード「アニマ・リベラ」を振り翳して、ラミアが攻撃したシェオル・ノドの胴部を斬り裂いた。敵はまだ倒れず、ジャックが『ケイオスチューン』のオーラを纏った。
続け様、フォーコは『ウォークライ』で周囲にいる敵を威嚇し、ジャックが斬り付けたシェオル・ノド目掛けて『クラッシュバイト』で噛み砕いた。
その刹那、シェオル・ノド一体が粉々になって、消滅していく。
その様子に、ジャックが叫ぶ。
「フォーコ、でかした! まだ3体残ってるが、一体ずつ、片付けてくぜ!」
「任せて。残りを倒すだけね」
カーミンは『千日紅』でシェオル・ノドに隣接すると『オレアンダー』を発動させ、『二刀流』を駆使して攻撃を繰り出した。
蒼機剣「N=Fフリージア」に纏っていた毒が、シェオル・ノドの身体を蝕んでいき、さらに短刀「陽炎」で敵の胴部を斬り裂く。
「アリアの歌のおかげで、効果がバッチリね。これで終わりじゃないわよ」
カーミンの蒼機剣「N=Fフリージア」が鞭仕様になり、『クレマチス』によってシェオル・ノドは体勢を崩し、回避し辛くなった。
そこへ、グリフォンのフィデルが上空から急降下……着地すると『ダウンバースト』が巻き起こり、シェオル・ノドたちが後方へと弾き飛ばされていく。
「敵がいる所には、味方はいません。ニンタンクちゃん、やっておしまいなさい! 撃て、火炎弾!」
ルンルンの指示で、刻令ゴーレム「Volcanius」のニンタンク『大輪牡丹』は、24ポンドゴーレム砲をシェオル・ノドに向けて、『砲撃:火炎弾』を放った。
爆炎の中、ダメージは受けていたが、シェオル・ノドたちは、なかなか倒れることがなかった。
●
戦いは、佳境を迎えていた。
ジャックが二体目のシェオル・ノドを倒した時、なにやら周囲に異変があった。
「ん? 周囲の景色が薄くなっているように見えるのは、気のせいか?」
残りは2体……ジャックは『ケイオスチューン』の構えを維持し、『鎧受け』を発動させ、シェオル・ノドの牙を受け流していく。
一体ずつ、仲間たちと連携を取り集中攻撃……三体目のシェオル・ノドがダメージに耐え切れず、消滅していくと、それは確信に変わった。
「気のせいじゃないわね。シェオル・ノドを倒す度に、景色が少しずつ薄くなっているわ」
カーミンはグリフォンに騎乗し『飛翔の翼』を駆使して、ビル群の隙間を飛び抜けていった。
見下ろした景色が、水で薄めた絵具のような色彩になっていた。
「この機を逃したら、二度と『この世界』には来ることができないかも」
ルンルンは、まさに忍者のごとく『壁歩き』で、ビルの壁に張り付き、昇っていく。
「最後の一体を倒すのは、何か発見してからでも遅くないな」
奏多はイェジドの鋼夜に騎乗し、『ブロッキング』でシェオル・ノドの動きを妨害する。
「カナタの言うことも一理あるわね」
イェジドのコーディに騎乗したアリアは、奏多が騎乗する鋼夜に隣接すると、シェオル・ノドに対して『ブロッキング』で行く手を阻んでいた。
ラミアは三体目のシェオル・ノドとの対戦の際、重傷になってしまったが『リジェネレーション』で少しずつ怪我が回復していた。
錬介が『ファーストエイド』の祈りで『フルリカバリー』をラミアに施したこともあり、致命傷にはならなかったようだ。
ディエスは『ヒール』を使って、イェジドのフレイを癒していた。
「フレイさん、怪我は少しずつ治るはずだからね。大丈夫だよ」
そんな状況の中、ルンルンはビルの中に忍び込み、魔導カメラで研究室の内部を撮影していた。
「写真の枚数は限度があるけど、これだけあれば何かの参考にはなるかも」
ガッツポーズを取ると、素早くビルから飛び降りるルンルン。
「情報収集、してきました。最後の一体も、倒しちゃいましょう」
「ルンルン、抜け目がないな。そんじゃ、ラストも、気合いれていくぜ」
ジャックがバスタードソード「アニマ・リベラ」でシェオル・ノドを斬り裂くと、イェジドのフォーコは『ウォークライ』で敵を威嚇し、『クラッシュバイト』で噛み付く。
ラミアが戦鎚「ウンシル」を構えて『ワイルドラッシュ』を叩き込むと、シェオル・ノドの胴部が砕け散り、消滅していった。
全ての、シェオル・ノドが消え去った時……。
「見て、景色が……落ちていく?」
何と表現すれば良いのかと、ラミアも迷った。
空が、剥がれ落ちてくるではないか。
グリフォンに騎乗していたカーミンは、空から降ってくる破片を見上げた。
「空に、亀裂が走ってるわ」
これが、世界の終焉なのか?
「ディエス君、この景色と場所に見覚えはありますか?」
錬介の問いに、ディエスは躊躇いながら応えた。
「……ここは、ボクが暮らしていた場所……近くのビルに研究室があった……だけど、空に亀裂が走る光景は、初めて……だよ」
それは、どういう意味だろうか。
世界が、散っていく……。
奏多は、注意深くディエスの様子を窺っていた。
何かディエスに反応するものがあれば、持ち帰るつもりでいたのだ。
「ボクが住んでいた世界と似てるけど、何かが違うよ」
「何が違うんだ?」
奏多が問う。
その時、『世界』が反転した。
空と地上が、ひっくり返った。
「え? なにこれ?」
カーミンが騎乗しているグリフォンは、空を飛んでいた。
景色が、逆さまになっていたのだ。
それでも、地上は落下せず、空にあった亀裂が、さらに大きくなり、破片が天の穴へと吸い込まれていく。
「これって、落ちてるの? 吸い込まれてるの?」
カーミンは、グリフォンに騎乗したまま、天の穴へと引き摺り込まれていった。
「ディエス、離れ離れにならないように、あたしの後ろに乗って」
ラミアが騎乗しているイェジドのフレイも、カタフラクトの特殊訓練で二人乗りに適した特性を持っていた。
「はい、ラミアさん」
ディエスはラミアの後ろの席に座り、フレイに騎乗した。
都市部のビル群が、徐々に崩れ落ちていき、窓から落下していく人々が見えた。
色彩が、灰色に変わってきた。
ラミアは『深淵の声』で、人々の声を読み取ろうとした。
「……何も、聴こえない?」
深淵の声から、広がっていたのは、音のない世界。
静寂ではなく、無音。
覚醒者であるラミアには、この異常な感覚に背筋が凍る想いがした。
●
アリアは、万華鏡のような世界にいた。
周囲には蝶や月の形があり、クルリクルリと回転していく。
時折、猫の鳴き声も遠くから聴こえてきた。
黒い羽根の蝶が、アリアの眼前をヒラヒラと飛んでいく。
幻想的な光景……これは、夢?
●
ドーム型の基地に、奏多は迷い込んでいた。
自分以外の気配はなかった。
無機質な通路を辿り、大きなガラス張りの窓からは、巨大な宇宙戦艦が浮かんでいるのが見えた。
だが、月基地ではない。
奏多は何故か、直感的に、そう感じた。
夢……なのか?
●
風が吹き、草の鳴る音が微かに聴こえる。
錬介は、いつのまにか、一人、草原に立ち尽くしていた。
しばらくすると、子供たちが鬼ごっこをして遊んでいる姿が見えた。
子供たちに声をかけようと、錬介が近寄ると……消えていた。
そこには、誰もいなかった。
遠くから、子供たちのはしゃぐ声が響く。
ここは、どこなのか……。
●
「カーミン様、申し訳ありません」
「まーた失敗したわね。この役立たずぅー」
カーミンは愛用の鞭で、手下たちをビシバシ叩いていた。
「今度、失敗したら、これだけじゃすまないから」
椅子に座るカーミン。
どうやら、どこかの地下室のようだ。
一息つくが、どうも、夢を見ているような気がした。
●
海に飛び込んだジャックは、丘のように連なるサンゴ礁を見つけた。
コーラル色に輝くサンゴ礁の上には、古びた宝箱があった。
海賊が、落としていったものだろうか?
ジャックは宝箱がある場所まで泳いでいく。
気が付けば、人魚たちが集まっていた。
美女だ。
これも、夢なのか?
●
「そなたに、秘伝の巻物を授けよう」
「有難きお言葉、うれしいです」
ルンルンは、初老の男性から巻物を受け取り、正座して御辞儀をした。
顔を上げると、男性の姿が消えていた。
「これで、巻物をさらに集めれば……」
そう言った途端、手に持っていた巻物が消滅していた。
「えー、どういうことですか?!」
慌てるルンルン。
どうやら、どこかの忍者屋敷にいるようだった。
●
無音が、これほど恐ろしいとは……ラミアは恐怖を感じていた。
「フレイ、ディエス、どこ?」
一緒にいたはずのフレイとディエスの姿が見当たらない。
まさか、はぐれてしまったのか?
暗黒の中、ラミアは宙に浮かんでいた。
やがて……。
●
「ラミアさん」
自分を呼ぶ声に気付き、振り返るとディエスがいた。
二人とも、フレイに騎乗していた。
周囲を確認すると、荒れ果てた広大な荒野が見えた。
フレイは『狼嗅覚』で周辺の臭いを嗅いでいたが、負のマテリアルが充満していることが分かった。
仲間たちは全員、揃っていた。
アリアは無事に戻ってくることができて、コーディを優しく抱き締めた。
「……皆、無事ね」
「この場所、グラウンド・ゼロか?」
フォーコの頭を撫でながら、ジャックが言った。
紀元前に邪神によって破壊され、闇に呑まれてしまった大地だ。
「ここが、クリムゾンウェストという惑星の反対側……かなり荒れ果ててますね」
錬介が、震えているリーリーの威降を宥めようと、首元を撫でていた。
「良かったです。異界で撮った写真、持ち帰ることができました」
ルンルンが撮った写真を見ると、しっかりと写っていた。
ニンタンク『大輪牡丹』は、ルンルンの隣に立ち、指示待ちの状態だった。
「この子も、大怪我がなくて、良かったわ」
グリフォンのフィデルは、カーミンの横に着地していた。
「それにしても、ここに来る前に、妙な夢を見たな」
奏多が、イェジドの鋼夜から降りて、相棒の背中を撫でた。
「あー、あたしも見たよ。いっぱい料理が出てきて全部食べられなかったな」
ラキがそう言うと、ハンターたちは自分が見た夢を話し合った。
どうやら、異なる夢を見ていたようだ。
「本部に報告した方が良さそうだな」
奏多が皆に告げた。自分たちが見た夢は『異界の幻影』かもしれない。
その後、ハンターたちは本部に戻り、自分たちが異界で経験したことを報告することにした。
ルンルンが異界で撮った写真は、参考資料として本部で保管することになった。
元々、異界に存在していた物は、持ち帰ることができなかった。
ルンルンが写真を持ち帰ることができたのは、自分で持ってきたカメラで撮影したからだろう。
柴犬とモフロウと言えば、本部で保護されていたこともあり、ラミアの元へと戻ってきた。
錬介がディエスに改めて自己紹介すると、互いに握手を交わした。
ディエスは、とてもうれしそうに微笑んでいた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/01/24 07:57:52 |
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相談板 カーミン・S・フィールズ(ka1559) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2018/01/28 06:59:45 |