美しい鳥の行く先は

マスター:春秋冬夏

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/01/29 19:00
完成日
2018/02/01 23:09

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ひっそりとたたずむように、小さな村があった。ここには人々に親しまれている鳥がいて、その人懐っこい性格や、高い知能もあり村人にとっては隣人のような存在だった。しかし、この日だけは違っていて……。
「待てー!!」
 二人の子どもが空を見上げながら走っていく。その視線の先には銀色の羽根を持つ鳥と……その脚に囚われた友人。
 必死に追いかける子ども達だが、空を行く鳥に追いつけるわけもない。やがて転んでしまった子ども達を嘲笑うように、鳥は彼方へ飛び去っていく……。

「友達が、攫われちゃったんだ……」
 依頼の説明をする子どもが泣きだしてしまい、代わりに親が後を続ける。
「普段は人を襲うような鳥じゃないんです。むしろ人に寄り添うような、大人しい種類なんですが……実は、今がちょうど産卵から孵化の時期でして、もしかしたら、今年は冷え込みが酷くて餌が少ない事が関連して……いやでも、人を食うような鳥じゃないんですよね……」
 不思議そうな顔をして、黙り込んでしまった。もう一人の子どもの親が地図を差し出して。
「子ども達が見た方角からして、恐らくはこの先の森に巣があるんだと思います。あの鳥は木の高い位置に、キラキラした巣を作るのが特徴だから、すぐ見つかると思いますが……もしもの時は……」
 そこから先は、濁されてしまった。

リプレイ本文

●パッと見が買い物帰りにしか見えないんですが
「さ、がんばりますよー!」
 雲雀(ka6084)が拳を突き上げて、気合を入れ直すのは雪が降り積もって真っ白になったとある森の入り口。魚の入った籠を提げたグラディート(ka6433)へ、彼女は急に振り返る。
「子どもの無事がかかってますからね! 決してディと一緒だからーとかそんなわけではないのです。ほんとですよ? ほんとなのですよー!」
「はいはい」
 分かってるよ、と言わんばかりに微笑みを返したグラディートが前を行く。
「雲雀ちゃん、音は任せたよ~」
「まっかせとくですよ!」
 自分の胸を叩いて聴覚と嗅覚を強化、グラディートは望遠機能の付いたゴーグルをかけ遠くを見やる。
「それにしても、なんで鳥さんは子どもを攫ったりしたんですかねー?」
 雲雀は足元を見ながら耳を澄ましつつ、ふと疑問符を浮かべた。彼女はここに来る前に、攫われた子どもの友人たちに話を聞いていたのだが。
「いつもはそんなことしないのに、急に飛んでくるなり攫って行ったって事は……最初から攫うつもりで来たってことですよね?」
「食べる為……ではなさそうだよね」
 一旦ゴーグルを上げて、グラディートは持ってきた魚を確認する。スノウフェザーの主食は魚であり、もしただ単に餌が取れないだけならば、ねだりに来てもおかしくない、という話も聞き及んでいた。
「寒くなってきたですし、皆ですり寄ってた方が暖かいって親切心からかもしれませんなのです。最近はお布団からでるのも辛いですから」
 冗談めかしてドヤッと推理する雲雀だが、名探偵よろしくピッと立てた人差し指の先には誰もおらず、背後から声がする。
「僕はこっちだよ」
 苦笑したグラディートはふと虚空を見上げて、思考を回す。
「個人的には寒さがひどくて卵が温めきれず、暖かくするものを探すのを手伝ってとか、そういう事だと思うんだ。お友達なら、頼まれたら頑張っちゃうからねぇ」
 遊び慣れているはずの森に連れ去られて、帰ってこない……他の可能性も出てくるが、グラディートはあえてそちらではなく、子どもが帰り『たくない』理由があるのだと推理する。
「あとは、鳥さんでは届かないところに餌があるとかかな? 他にも寒すぎて卵の殻が割れず中から出てこれないとか?」
 予想される原因はいくつかあるが、まずは彼らを見つけない事には何も始まらない。
「色々考えられるけど、とりあえず急にさらうのはやめてだね」
「本当ですよね、ビックリするし、周りも心配するのです」
 ぷんすこしながら再び歩き始めようとする雲雀の手を、グラディートがそっと握った。
「ど、どうしたんですか……?」
 突然手を包む温もりに、一瞬ビクッと震えた雲雀だが、グラディートは少し悩ましい表情をして。
「迷子防止でできれば手を繋いでいたいなって。雲雀ちゃん、さっきもそうだったけど耳に集中してて周りが見えてない時があるみたいだし、僕も遠見の眼鏡を使ってる間は近くが見えないからね。何かの拍子にはぐれたりしたら大変でしょ?」
「し、仕方ありませんね! これはそう! ディの為に仕方なく、仕方なく繋いでるんですからね!!」
 大事な事なのか、二回言ってから雲雀はグラディートの手を握り返すのだった。

●それができたら苦労しない
「……また違った」
 アイラ(ka3941)はため息と共に上空に飛ばした鳥を腕に留まらせる。聴覚を強化したアイラは異音がする度に鳥を飛ばして視界を共有し、偵察してもらうのだが、動物たちがどこかへ向かう姿しか見ていない。それはそれで何かあるような気もするが、特に目立った変化はないため、気にしていなかった。
「霞はどう思う? 鳥さん、本当に子どもを攫ったんだと思う?」
「違う……と思いたいけれど、大人しいと言っても野生の鳥、その上この寒さじゃ子どもが心配だな」
 蓬仙 霞(ka6140)は目を細め、そっと刀の柄に手を乗せる。
「でも、よほどの事がない限りはスノウフェザー達には手を出したくはない。子ども達も望んでないだろうし、ね」
 どうか、コレを抜くことがないように……そう願いながら、思考は前向きに。
「見つけて何か問題があったなら、彼らも穏やかに暮らせるように協力するつもりだ。寒いなら卵や雛に上着とかマントとかをかけてあげたりとかそのくらいしかできないけれど」
「巣に連れて行ったっていうなら、これから生まれるだろう雛、自分の子どもに会わせてあげようとしたんじゃないかしら……希望的観測かもしれないけれど、そう思う!」
 苦笑する霞に釣られて、アイラもそうだったらいいのに、と希望を抱いて留まらせた鳥に目をやった。
「こういうとき、話すことができたら便利なのにねー」
 その呟きに、霞がきょとん。
「そもそも、話す事ができたのならこんなことにならなかったんじゃないかな?」
「え、なんで? 鳥さんは子どもを連れていかなくちゃいけなかったんでしょ?」
「だから、その理由をきちんと説明できるんだから、こうやって大事にはならなかっただろう?」
「……あっ」
 霞がじーっと見つめ、アイラは今気づいたらしく口元に手をそえてぽかん……しばしの沈黙にすら見つめられている気がして、アイラはほんのり赤くなりながら、二人はどちらからともなく笑い出す。
「急ごう、スノウフェザーと攫われた子が待っている」
「そうだね、無事に帰してあげられるように頑張らないと」

●冷静に考えると、ちょっとシュール
「生態からすると餌と言う訳では無さそうだけれど……一番の原因はこの寒さかしら?」
 エルティア・ホープナー(ka0727)の推理に、龍崎・カズマ(ka0178)は首を傾げる。
「だとしたら、なんで攫ったのかが分からん。話を聞いた感じ、そんな攫うような連中には思えんが……」
 雲を雪代わりに空を駆けるはソリ……そう、ソリ。雪の上を滑るアレ。マテリアルを後部から噴き出して推進力を得るそれを、カズマはスノーボードか何かのように両脚だけでバランスを取って足元の木々を見下ろしていた。一方のエルティアは大人しく収まり、二羽のモフロウ、フォグとティトが見てきた物をまぶたの裏に映し出し、広域探索をかけている。
「私の居た森とは違うけれど……命の音と匂いがする……」
 それは時に狩る者と狩られる者の攻防、時に隠した食料を掘り起こす探索者、時に越冬のために隠し部屋で寝返りを打つ者……それだけではない。厚い雪に覆い隠され、春を待つ新芽、雪化粧で真っ白に染められながら、枝に十分な緑を蓄えた木々。この森は小さな氷の結晶に閉ざされてなお、生きているのだ。
「だからこそ、分からない。なんで子どもを攫ったんだろう? 確かに餌には苦労しそうだけど、友人を連れていくほどかしら? 私は雛たちの暖を取るためだったんじゃないかと思うのだけど」
 眼下に続く似通った景色から顔を上げて、隣を見やればカズマは小さく唸る。
「あながち間違ってねぇかもな。ほら、依頼に来た子どもの親が言ってたろ、新しい冬服を出したばかりだったって」
「それがどうしたの?」
 何故服の話なのか、と首を傾げるエルティアだが、カズマはそこが重要なのだと思っているらしく。
「ある程度頭が良くても鳥は鳥だ。いつもと格好が違うのを、動物らしく冬毛に変わった、と思っていたとしたら、どうよ?」
「なるほど、雛を温める為、という可能性が高まるのね」
 元は子どもを探す目印になるのでは、と服装を聞いたのだがそこはそれ。違う形で役に立った情報なのだから細かい事は気にしない。
「……ぁん?」
 視界の端、違和感を覚えた方角にカズマがソリの頭を向ける。異変に気づいたエルティアがそちらにフォグを向かわせると……。
「いた。真っ白な鳥が二羽と、話にあった格好の男の子……あの巣ね」
 モフロウと共有した視界の中に、捜索対象を捉えたエルティアは手榴弾を構える。
「マジか、そんじゃ早いとこ迎えに行ってやらねぇとな」

●まさかの的中者がいました
 エルティアが手榴弾で起こした五色五本の煙を目印にハンターが集合。一本の木の前で、保護された子どもにホットミルクを飲ませるエルティアと、木の上を見上げてしかめ面をするカズマから事情を聞いたのだが。
「卵が孵らない……?」
 霞の確認に、カズマが頷く。
「卵に触らせてもらったんだが、親の二羽がしっかりくっついてんのにとんでもなく冷てぇんだ。子どもを攫ったのも、一緒に温めて欲しかったからなんだろうな……」
「すごい! ディ、正解だったのです!!」
「そんな言う程のことでも……」、
 パチパチと両手を盛大に鳴らす雲雀に、逆にやや羞恥心を覚えるグラディートだが、問題はここからだ。
「取りあえず、君は一度帰ろうか。皆心配してたよ?」
「でも、あいつほっとけない……」
 唇を青くして、震えながらも少年は木の上を見上げる。そこには脚に赤いリボンを巻いた、友人がいるのだ。助けを求められた以上、幼心故の正義感故か、このまま帰るわけにはいかないのだろう。
「そっか。その気持ちはすごく大切だよ。でもね、君はもう凍えてしまっているし、皆も君の事を待ってるんだ。だから、ね?」
 ぐずる子どもに、雲雀がふんす、胸を張ってふんぞり返る。
「雲雀もまだ幼いですが、ハンターとしては経験豊富なプロなのです。後の事はドーンと任せて、まずは帰ってご飯食べて、しっかり温まって欲しいのですよ!」
「でも……」
「あったかいシチューは食べたくありませんか?」
 雲雀の一言に、少年が固まった。
「出来立てハフハフのシチューに、柔らかいパンを添えて贅沢に頬張りたくはありませんか?」
 きゅう、少年の腹の虫が鳴く。攫われてからというもの、少年が口にしたのはエルティアのホットミルクとカズマのクッキーくらいなもの。そりゃあお腹すくさ。にやり、勝利を確信した雲雀はどんと自分の胸を叩く。
「雲雀はメイドの雲雀なのですよ。今から帰るなら凄く美味しいシチューを作ってあげるのです!!」
「う……」
 空腹と友情で揺れる少年だが、背に腹は変えられず、グラディートと雲雀に連れられ村に帰っていく……。
「さぁて、残った問題はこれか」
 樹上を見上げるカズマ。まさかこのまま帰れるわけなど、あるわけがない。
「取りあえず、毛布くらいはあるけど……」
「ボクも上着とかそれくらいかな……」
 エルティアと霞がそれぞれ差し出した物をハンター達が見つめる。まぁ、そうね、暖を取るアイテムで鳥の巣に置いておけるものなんて、そんなものよね。
「鳥の羽根でも落ちていればよかったのだけど……」
 エルティアは残念そうに周りを見回すが、そんな都合よく、暖を取れるほど大量に羽が散っていたら、それは捕食された鳥の残骸か何かだろう。
「取りあえず、まずはご飯を届けようか?」
 アイラが幻影の腕を延ばして、グラディートが残してくれた魚の入った籠を持ち上げ、エルティアが毛布と霞の上着を持って木に登っていく。
 巣のすぐ側まで登り切ると、スノウフェザーは威嚇こそしてこなかったが、少し警戒した面持ちで彼女をジッと見つめる。
「森の友であるあなた達を傷つけるつもりはないわ……仲良くなりたい、護りたいの」
 言葉が通じるのかは分からないが、エルティアはアイラに近くまで持ち上げてもらった籠から魚を取り出し、そっと差し出しながら語りかける。少なくとも、敵意がない事は伝わったのか、魚を飲み込む鳥は彼女の侵入を許してくれた。
 後は簡単だ。二つの布で卵を包むようにし、風が当たらないようにしておく。ついでに巣の上に伸びた枝をロープでまとめ、ちょうど屋根を作るように茂らせておけば今まで以上に雨風をしのげる巣のできあがり。
「後は孵化を待つばかり、かしら……」
 仕事を終えたエルティアが降りてくると……。
「寒い……」
 霞が震えていた。そりゃね、めっちゃ寒いって言ってるのに上着置いてきちゃうんだもん。
「こうすれば少しは暖かいかな?」
 アイラが霞に寄り添って、少しでも温めようとするのだが。
「そう言う事なら任せろ」
 すごく頼もしい事を言ってくれるのに、目はどこか遠くを見つめているカズマ。理由? それは……。
「その動物、どうしたの?」
 エルティアも顔色一つ変わってないのに雰囲気から驚きが隠し切れない程の、アニマル。鹿とか狼とか、やたら集まってカズマにすり寄っている。
「知らん。むしろ俺が聞きたい……だが、今は助かる。群れの中にいれば、結構寒くないからな」
 野良の動物に好かれてしまう体質にもはや諦観の念を抱きつつあるカズマは若干死んだ目をしていたが、ハンター達はヌクヌクしながら帰り道を行くのだった。

 ハンター達が去って数日後、子ども達の下へと赤いリボンをつけたスノウフェザーが降りてくる。
「どうした? 今日は魚釣りしてないぜ?」
 オヤツをねだりに来たのかと、首を傾げる少年……あの時攫われた男の子の頭にふわり、白い小鳥が降りて丸くなる。
「な、なんだ!?」
 びっくりしつつも、そっと両手で包むようにして降ろしたそれは、目の前のスノウフェザーそっくりの、雪細工のような小鳥だった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 物語の終章も、隣に
    エルティア・ホープナー(ka0727
    エルフ|21才|女性|闘狩人
  • 太陽猫の矛
    アイラ(ka3941
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 笑顔を守る小鳥
    雲雀(ka6084
    エルフ|10才|女性|霊闘士

  • 蓬仙 霞(ka6140
    人間(紅)|18才|女性|舞刀士
  • 思わせぶりな小悪魔
    グラディート(ka6433
    人間(紅)|15才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/01/28 01:59:59
アイコン さらわれた【相談】
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/01/29 18:14:50