トカゲの巣食う山に挑む

マスター:なちゅい

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/01/30 19:00
完成日
2018/02/01 17:31

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 グラズヘイム王国。
 クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
 王国は北西にある北萩の島「イスルダ島」を歪虚から奪還すべく、王国は騎士団を中心に戦力を送り込んでいた。
 多くの犠牲を伴い、この度ようやくその奪還に成功した状況である。
 国内の騎士達は長らくの悲願を達成し、改めて王国内で発生している歪虚、雑魔への対処を行う者も出始めていた。

 王国北東の山岳地帯には、トカゲ雑魔出現の報告が上がっており、そこで数人のハンターが交戦しているとの情報がある。
 それを受けて聖堂戦士団の一隊がこの地へと派遣されたのだが、前線基地となった集落に詰めるエルフのハンター達は山の逆側、北東にある湖畔の集落を気にかけていた。
「我々の助力よりも、先に湖畔の集落に向かって欲しい」
 そんなエルフのリーダー、アルウェスの依頼もあり、聖堂戦士団小隊は湖畔の集落へと向かっていた。
「今のところ、無事なようですね……」
 小隊を率いるファリーナ・リッジウェイ(kz0182)は、集落民が無事であることに胸を撫で下ろす。
 だが、人々の顔は暗い影が差している。
 なかなか逆側の集落でトカゲ雑魔を攻めるきっかけを掴めぬ中、湖畔の集落民も雑魔に攻め込まれる恐怖と隣り合わせて暮らす日々が続いている状況。当然といえば、当然なのだが……。
 彼女達は、集落民に食料、日用品などの補給物資を渡していく。満足に山の幸を手に入れられない彼らの状況の為の配慮だ。
 ただ、それは元々前線基地で戦うメンバー用に用意した物。100名程度の集落民に行き渡らせるには、余りに少ない。
「なんとか、攻勢のきっかけをつかみたいどころだね」
「そうですね……」
 副官であり、親友でもあるセリアの言葉に、ファリーナは頷く。
 ハンターの中にも、この状況に焦れている者もいるらしい。できれば一気に山を駆け上がり、トカゲ雑魔とそれを率いる歪虚を攻め落としたいところだが……。
「ただ、歪虚に関する情報がないのが懸念材料ですね」
 一応、彼女達は立ち寄った前線基地で、エルフ達からトカゲ雑魔の情報を仕入れてはいた。
 しかし、歪虚についてはその姿もほとんど確認できておらず、空を飛んでいた巨体がそれらしい……という程度の証言しかない。
「一度、こちらから仕掛けるべきだと考えます」
 湖畔の集落が無事なら、攻め込むべきだとファリーナは考える。敵の注意は山の向こう側、前線基地に向いているはずなのだ。
「ハンターズソサエティには救援を頼んであります。到着次第ハンターの皆様と合流し、雑魔のいる山に向かいましょう」
 隊員達は、ファリーナの指示に頷く。
 初めての交戦相手とあっていささか不安はあるが、彼女達も聖堂戦士団の一員。王国民を護る為にと祈りを捧げ、雑魔との戦いに出向くのである。

リプレイ本文


 グラズヘイム王国北東の山岳部。
 そこにある山のさらに北東。湖のほとりにある集落をハンター達は訪れていた。
(イスルダの一件は、だいぶ落ち着いた……のかな)
 機導師の青年、キヅカ・リク(ka0038)は、比較的落ち着いた感のある王国の情勢を確認していた。
「それにしても、此処もまぁ小競り合いっていうか。ちょっと硬直した戦域なんだね」
「湖畔の方は、ご無事のようで安心しました」
 こちらの関連依頼に幾度か参戦している銀髪のエルフ、レオナ(ka6158)が集落民の無事を見て安堵の息を漏らす。
「留まると決めたのは集落の総意としても抵抗手段もなく、こちらの為にも、早く元を絶ちたいところです」
「そろそろ、親玉の情報も欲しいところだな」
 なかなか進展しないこの状況に、中性的な容姿をした鞍馬 真(ka5819)もやや焦れていた様子。
「そうですね……」
 聖堂戦士団小隊を率いるファリーナ・リッジウェイ (kz0182)も小隊員と共にこの地域へと初めてやってきたが、沈む集落民の表情に感化されてしまっている。
 ただ、気合を入れ直すファリーナを含め、ハンター達はここから状況を好転させるべく攻めの一手に出る。
「……敵の全容は掴めていないが、ここである程度の間引きをして集落の安全を図ろうというのは妥当だな」
 赤髪に同じ色の髭で口元を覆うアバルト・ジンツァー(ka0895)も、一度この地域の雑魔殲滅に参加した経験がある。
「自分も出来る範囲で尽力させて貰おう」
 そうして、アバルトは仲間と共に、手早く作戦の打ち合わせを始めるのだった。


 短い作戦会議を済ませ、ハンター達はすぐにCAMに登場し、あるいは幻獣へと騎乗、同行して山の方へと向かう。
(歪虚の意識が、ハンターよりも街の破壊へ向くのも何か意図があるのでしょうか)
 ワイバーン「Fannan」を駆るレオナは先行メンバーとして、空から地上を見回していた。
 今から向かうは相手の陣地。彼女は敵の奇襲へと十二分に警戒を強める。
 なお、同じ先行班として、囮役を買って出ていた真がイェジドのレグルスに跨り、玉兎 小夜(ka6009)がバイクに跨るユグディラ、キャス・パリューグと共に地上を進んでいる。
 鋭敏視覚を研ぎ澄ませ、レオナは双眼鏡を手に丁寧に索敵を行う。
(空の歪虚の情報も得て、次に繋げられれば)
 今回は攻めの一手。成果が上げられれば上々ではある。
 そこから少し遅れて、アバルトが進む。
「……装甲に覆われている分、万が一の奇襲の際でも対処可能だからな。我々CAM乗りが先行するのが正しかろう」
 魔導型デュミナス「Falke」を操るアバルトは聖堂戦士団達を気にかけ、そう語る。彼は仲間との連絡を密にできるよう、トランシーバーと魔導スマートフォンのチャンネルをオープンにしたままとしていた。
 さらに後方には、聖堂戦士団を囲むように3機のCAMが歩いている。
 小麦色の肌をした少年、ディヤー・A・バトロス(ka5743)が山道を見回す。
 木々の高さは、彼の乗るR7エクスシア「ジャウハラ」よりもやや小さい。
 それもあって、コクピットにあるカメラの視界はお世辞にもいいとは言えない。ディヤーは張り出す枝や葉を錬機剣の柄で避けながら進むこととなる。隠密性ゼロなのは、CAMを駆る以上致し方ないというべきか。
 木々の合間に、彼は山菜が生えているのを目にする。姉弟子が知ったら喜ぶかもしれないと考えていた。
「CAMでなければ、まるでピクニックじゃな」
 その中で、エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)だけはユグディラを引き連れて徒歩で向かう。
 エラは先行する仲間達とこちらの仲間達、聖堂戦士団小隊員達との連絡役を請け負う。
 平地は良いが、山道の林道に入っていけば、メンバー達の緊張感も増してくる。エラも周囲に何か不自然な気配がないか、あるいはトカゲ雑魔と思しき足跡はないかと神経を尖らせていた。
 CAMを駆る1人、魔導型デュミナス「インスレーター・SF」を操縦するキヅカは、聖堂戦士団の護衛をと考えている。
 現状、この王国の大勢として、歪虚に大きな動きは現状見られない。
 だからこそ、こういうときに、動ける人を増やしておきたいとキヅカは考える。……いつか来る大戦で生き残れるように。
「鎧を着込んでの登山行は、かなりきついからの」
 ディヤーも歩きの聖堂戦士団団員達を気遣っている。その上、自分達は索敵に全くむかないとあり、彼はすまなさそうにしていた。
 そのディヤー機と足並みを揃えて歩を進めていたキヅカは、前方で何やら異変が起こったことに気付いた。
「敵襲です!」
 エラの言葉もあり、皆が雑魔対応へと動く。
「索敵には邪魔なCAMの図体じゃが、その分壁は果たせよう」
 ディヤーがイヤリング「エピキノニア」を通し、皆に呼びかける。
「トカゲどもめ、次から次へと湧いて出てきやがって……。一匹残らず倒しつくす!!」
 R7エクスシア「FLAME OF MIND」に搭乗した南護 炎(ka6651) は覚醒して両目を蒼と紅に変色させ、前方の雑魔の元へと急ぐ。
 一方で、先行班は右手側の林から雑魔による強襲を受けていた。
 木々の間から飛び出し、素早くにじり寄ってくる小トカゲ3体と倍近い体躯の大トカゲ1体だ。
 囮役となっていたメンバーは即座に、トカゲ雑魔へと攻撃を仕掛けていく。
「前回ぼろぼろにされたけど、今回こそ首をとってやるー!」
 白い垂れ耳を揺らし、囮となっていた自称「兎」の小夜が前方に跳ぶ。その最中、彼女は後ろから仲間が雑魔を狙い撃つことも考え、できるだけ敵の後方に回り込もうとしつつ、相手に叫びかける。
「トカゲども! おとなしく兎にその首を差し出すがいい! ぶったぎったあと捨てるケドネ!」
 ただ相手をぶった切りたいだけの小夜は周囲の警戒をキャス・パリューグに任せ、兎に角敵陣をかき回そうと動くことにする。
 兎に生物学上、角はないことはさておき、レグルスに跨る真も相棒の嗅覚で敵の出現を察知し、相手の出現とほぼ同時に刹那両目を金色に輝かせてから仕掛ける。
 魔導剣「カオスウィース」にマテリアルを充填させる真。狙うは動きが早い上、長く舌を伸ばすのが危険な小型だ。
 レグルスに咆哮させることで敵の動きを一瞬だけ止め、呼吸を整えた真は疾走する勢いを刃に込めて敵複数へと切りかかる。
 スキルを駆使して存分に戦いたいところだが、ここは敵の陣地内。
(たった4体で、終わるわけがない)
 程々に温存を考えつつ、真は再び魔導剣を相手に差し向けた。
 さらに、敵陣へ飛び込んできたのは、Fannanだ。
 前脚に装着した大爪「アキエース」を薙ぎ払ったFannanは、再び空に舞い上がる。
 騎乗するレオナも無数の小さな光球を自身の周囲に浮かび上がらせて覚醒していたが、他の敵を警戒して攻撃は控えていた。
 彼女もまたこの場の敵では終わらないと察しており、できれば温存をと考えていたようである。


 姿を現したトカゲ雑魔4体。
 帯電するような電流線のオーラを纏ったキヅカは初めて、それらをモニター越しに見つめて。
「こいつら偵察部隊かな、さっさと倒したいところだけれど……」
 戦えないこともないが、CAMのコクピットからでは視界はお世辞にもいいとは言えず、機体の動きも幾分制限されてしまう状況だ。
「CAMに搭乗の方々は、友軍の皆様の移動も考慮の上で移動願います」
 緑に変色していた瞳を、覚醒によって蒼眼に戻していたエラ。彼女は通信機でメンバーに呼びかける。
 ただでさえ、林道での戦いはCAMにとっては厳しい。
 また、構わず武器を振るえば、後方のファリーナ達、聖堂戦士団団員を巻き込む可能性もある。
 それらもあって、この場の戦いは基本、囮メンバーに任せたいところだとキヅカは考えていた。
 一方で、囮メンバー達がこちらの射撃を想定した立ち回りを見せていることもあり、顔の左半分を青銅のような見た目に変化させたアバルトは攻撃に踏み切っていた。
「援護しよう」
 アバルトは一言通信機器に告げてから、30mmアサルトライフルで雑魔を狙い撃つ。
 現状はまだ敵と距離があるが、いつこちらへと攻めてくるかも分からぬ為、彼はすぐ武器を換装できるよう身構える。
「拘束系の攻撃は『レジスト』できる! 備えるとよい!」
 身につけた装飾品を光り輝かせたディヤーも囮メンバーに呼びかけながら、自分を中心としてイニシャライズフィールドを展開していく。
「『FLAME OF MIND』出撃する!!」
 炎も侍をイメージしたフォルムの愛機で前に出るが、生憎と敵は前方の囮メンバー付近に出現していた。
 それもあってこの場は援護射撃と考えた炎は機体の武装を試作波動銃「アマテラス」に換装し、照準に捉えた敵を的確に撃ち抜いていく。
「戦う皆さんの支援を……!」
 ファリーナは小隊員達に呼びかけ、ホーリーセイバー、プロテクションといった支援スキルを使う。今回はハンター達の要望もあり、回復支援を中心としたスキル構成としていたのだ。
「接敵して、囮班と挟撃に持ち込みましょう」
 エラは仲間達へと告げ、できる限り仲間と協調して事態に当たっていた。
 少しずつ前進するCAM、聖堂戦士団混成チーム。
 仲間達が接敵してくる中、キャス・パリューグが奏でるリュートの音色を聞きながら、小夜は小トカゲを狙って跳びはねる。
 ある程度仲間が近づけば、纏まったトカゲ雑魔を見て小夜は一度刃を鞘へと納めて。
「この花、受けられるか!」
 彼女は鞘の中でマテリアルを高めた刃を抜き、一直線に薙ぎ払う。
 すると、手前の小1体の体が完全に分断され、奥の1体も体に切り傷を浴びてどす黒い血を撒き散らしていた。
 そいつへとさらにレグルスが跳び込むが、敵ものしかかってこようと逆に跳びかかって来る。
 真はそれをレグルスにステップで回避させ、着地と同時に再びそいつ目掛けて跳びこみ、再度素早く敵陣を斬りつけていく。
 幾度も斬撃を浴びた小型が耐えられずに黒い血を噴き出し、そのまま消滅していた。
 残る大小各1体はレオナがFannanに牽制させ、敵が抜けないようにと立ちはだかっていたが、仲間達が近づいてくるとトカゲの狙いがそちらにそれてしまう。
「うむ、後詰はまかせよ。……後ろでさぼっとるわけではないぞ?」
 後ろに抜かれてしまえば、湖畔の集落が気になるだろうと呟くディヤーはマテリアルによるカーテンで仲間を護ろうと動いていたようだ。
 他メンバーが近づく中、アバルトは敵との距離をできるだけ維持してライフル弾を叩き込んでいたが、相手はその反撃にと下を伸ばしてくる。合間を縫って仕掛けてくる攻撃は実に面倒だ。
 しかしながら、CAMに搭乗するメンバーが麓への道をガッチリと封鎖し、トカゲ雑魔を通しはしない。
 エラはユグディラの四葉を近場の木々の陰に隠れさせ、自らは跳びかかって来る小トカゲの排除に当たっていた。
「やっ!」
 刀を煌かせて切りかかるファリーナ。
 その前に飛び出すエラがサポートロボットの力を借り、虚空に展開した光の三角形の頂点から伸びる光で敵の体を撃ち貫く。
 3本の光線によって、その小トカゲは爆ぜ飛ぶように消えてしまう。
 残りの大トカゲも、囮班と数機のCAMが挟み打つ形で攻め入る。
「逃すものかよ!」
 敵が射程に入ればこちらのものと、炎はコクピット内で呼吸を整え、自らの動きをトレースして斬機刀「轟劾」の刃を連続して大トカゲへの体へと刻み込む。
 大トカゲ雑魔も、決して弱い敵ではない。
 身体を水平方向に回転させることで、尻尾を大きくしならせてハンター達へと叩きつけてくる。その一撃はハンター達の体力を大きく削ってしまう。
 さらに、そいつは一度林のほうを迂回するように移動し、木々を薙ぎ倒して回り込もうとしてきた。
「攻めてくるなら、容赦しないよ」
 最低限の迎撃をと考えていたキヅカも、思った以上に攻め込んでくると判断する。
 大きく口を開けて食らいついてきたタイミングで彼は斬艦刀を一振りし、その巨体を断ち切ってみせたのだった。


 戦いを切り抜けた一行は簡単に互いの状況を確認し、先に進むことにしていた。
 程なく一行は林道を抜け、傾斜がありながらも野原のような場所に出る。上の方にはまた木々が生えていたが、しばらくは広い場所が続く。
 先ほどの戦闘と同じように、演奏してもらいながら周囲の警戒をさせていたキャス・パリューグが反応を示したのに、小夜は気付いた。
「上から来ます。注意を!」
 そこで、レオナが皆に通信でその襲来を伝える。
 小夜は通信機の類を所持していなかった為、仲間の反応も合わせて敵の対処に当たっていたようだ。
「先ほどよりも多いな」
 キヅカは近場にいる聖導士達を気がけながら、エラと話して調整を図る。
 さて、こちらに向かい来るトカゲ雑魔は大3体、小3体だ。
「これだけ広ければ十分だな」
 広い場所となれば、CAMが活躍を見せる場だ。アバルトは向かい来る敵目掛けて「Falke」の4連カノン砲を浴びせかけていく。
 弾丸が飛び交う中、レグルスに騎乗した真は再び前に立つ。
 彼もまたこの広さを存分に活かし、相手をかく乱しながら立ち回る。狙うは、動かれると面倒な小型のトカゲだ。
「好きにはさせないよ」
 レグルスの咆哮で相手をできるだけ怯ませ、真は魔導剣で渾身の一撃を叩き込む。そうして相手の意識をこちらへと向けるのだ。
「今回もついんうぇーぶがきたか! ……これは喰らいつく顎。龍からは命を、勇士へは首を!」
 小夜は先ほど完全に相手をぶった切ってしまったので、今度こそ首を狙おうと相手に躍りかかる。
 とはいえ、トカゲ雑魔の数は多い。
 前線に向かう仲間と共に、小夜は大上段に構えた聖罰刃「ターミナー・レイ」で広範囲にいる雑魔を切り刻む。
「行くぞ。みんな!」
 愛機の「FLAME OF MIND」で飛び出す炎に続き、先ほどは控えめな応戦をしていたキヅカも、この広い場所では率先して前に出る。
 距離もあったことから、キヅカはインスレーター・SFのウイングで飛翔し、滑空させていく。
 空中でマテリアルエンジンを直接Fガンポッド「ストラフPD7」に連結させ、彼は空中で大型2体をロックして狙い撃つ。
 先手を取ったのは大きいが、すぐさま小型が舌を伸ばしてくる。キヅカはそれを切り払いながら、近距離戦に臨む。
「まあ、皆強いからの」
 ディヤーもやることは変わらぬと、生身で戦うことになるエラや聖堂戦士団メンバーへと盾を張り巡らせる。
 隙あらば魔銃「ダウロキヤ」の銃弾を相手に叩き込もうと、彼は構えを見せていたようだ。
 そして、炎はアマテラスの弾丸を撃ちこみながら、前に進む。近寄りさえすれば、後は得意の近接攻撃を見舞うだけだ。
 先ほどの戦いでは宙を旋回しつつ、ワイバーンで強襲していたレオナだったが、今度は降りてから自ら戦いに出向く。
「なるべく近くで、仲間の追撃を頼みますね」
 応じたFannanは急加速しながら、チャージしたマテリアルを幾条もの光線として放出して敵陣へと降り注がせた。
 レオナ自身はできるだけ仲間がいる前線へと飛び出し、一旦札を配置して自らの力を高めた後、運命符「銀天球」のリロードを経て防御結界を展開する。
 強化したこともあって結界はかなりの強度を誇り、ちょっとやそっとで砕けはしない。のしかかろうとする大トカゲどもも、何か壁のような違和感を覚えていたようだ。
 そして、仲間達の伝達役となるエラ。
 彼女はユグディラの四葉の聖堂戦士団と同行させ、まどろみすら覚えるリュートの旋律で聖導士達の癒しに当たらせていた。
「大小一度に襲い掛かる状況でしたら、小型対応を願います」
 まだ距離がある為、自分達も余裕はある。エラも光の三角形を出現させてから光線を発射していく。
 スキルの回数は十分。そう簡単にはガス欠にならないと彼女は考えている。
 縄張りを侵す者を排除すべくやってくるトカゲ雑魔どもだったが、熟練ハンターの実力にタジタジとなっていたようだった。

 とはいえ、トカゲ雑魔達が近寄ってくれば、ハンター達も本格的な戦闘を強いられる事となる。
 特に小型の動き、接敵速度は脅威だ。素早くにじり寄られてからののしかかりには、アバルトも顔をしかめざるを得ない。
「なんとも厄介な連中だな」
 アバルトはアサルトライフルに換装した上で、できる限り距離を取りつつ応戦を試みる。
 彼が距離を取れば、その間に仲間達が割り込んでいく。
 その1人、ディヤーも操縦するジャウハラに M・ガントレットシールドを手にさせて大型ののしかかりを防ぐ。
 敵が近くなっていたこともあり、彼は試作錬機剣「NOWBLADE」で直接切りかかっていく。
 ディヤーはうまく相手との距離と手持ち武装を駆使し、余裕を持って立ち回りを見せていた。
 そんな中、戦場を駆け回って相手をかく乱していた真は小型1体を追い込む。
 相手もかなり素早く、全て攻撃を避けるとは行かない。
 真もレグルスと共にダメージは重なってきていたが、真は敵が舌を伸ばした直後を狙い、渾身の一撃で相手の頭を完全に断ち切った。
 傍では、小夜が数体のトカゲ雑魔を巻き込んで切り裂いていく。
 戦場を動き回り、聖堂戦士団メンバーにも襲い掛かっていたその1体を分断して霧散させていたのだが、小夜は納得しない。
「首……、首をよこせー!」
 小夜はしつこく、小型を狙う。
 かなり傷が深くなってきていた敵は退路を探していたが、彼女はそいつの正面へと回り込んで。
「その首、もらったぁあ!!」
 相手頭上に飛び上がった小夜は刃を振り下ろし、トカゲの首を切り落とす。
 ボトリと音を立てて落ちたその敵に、彼女は満足気に頷いていたのだった。
 残りは、大トカゲ雑魔3体。
 のしかかりに、広範囲を薙ぎ払う尻尾。面倒な相手の攻撃を封じようと、レオナは1体の大トカゲの力を封じ、押さえ込む。
 通常攻撃として爪で薙ぎ払ってくる相手に、大壁盾「庇護者の光翼」で相手の攻撃を抑えた炎が叫ぶ。
「俺は歪虚を断つ剣だ!」
 炎は呼吸を整え、全身にマテリアルを充満させていく。
 そして、己の技をトレースした彼は「FLAME OF MIND」の斬機刀「轟劾」を2度振るい、相手の頭に一太刀浴びせた直後に返す刃でさらに斬りかかる。
 交差するように斬撃を受けたそいつはじたばた暴れていたが、やがてぐったりと倒れて力尽きてしまった。
 依然、他の大トカゲ雑魔はなおも暴れ続けている。
 その一撃は重く、後方支援に当たる聖堂戦士団小隊長、ファリーナが前線でなんとか抑えようと動く。
「敵が来ます!」
 叫ぶレオナは傘を縦にして身構えながら、彼女達を護るべく再び防御結界を展開する。
 ただ、新手が出る様子はなく、この場の雑魔に集中できる状況なのがハンター達にとって救いか。
「回り込む敵に、攻撃を集中させましょう!」
 戦況はこちらに優勢。そう判断したエラが仲間達へと呼びかけた。
 小型を相手にしていた真や小夜がこちらに回ってきており、CAMメンバーも徐々に大トカゲの包囲網を狭めて攻撃を畳み掛ける。
 大きく尻尾を振るって叩きつけようとしてくる敵が大振りなモーションで態勢を崩すところへ、キヅカが斬艦刀を叩き込む。
 その大トカゲの目から光が消え、地面に倒れた直後に霧散してしまう。
 残り1体となれば、数で圧倒するハンターが相手を瞬く間に追い込んでいく。
 直接攻撃を叩き込むメンバー達の背後から、アバルトは大きく口を開いた大トカゲのその口の中に冷気を込めた弾を撃ち込む。
「これで終わりだ」
 内臓を凍りつかせた敵は、完全に活動を止めてしまう。
 ハンター達が一息つくと、そいつの体は溶けてなくなっていったのだった。


 現われたトカゲ雑魔の群れを殲滅し、さらに山を登ることにしたハンター達。
 その一行の前に、空から何かが舞い降りてくる。
「……我が領域に立ち入らんとする人間どもめ」
 登場したのは、歪虚……強欲の手練。
 トカゲが大きくなったような体に翼を生やす黒い偉容は、ドラゴンを思わせる姿だ。
 その全長は4mほどと、以前現われたという極大サイズのトカゲ雑魔よりは小さい。
 しかしながら、威圧感は桁違いで、ぴりつくような圧倒するオーラのようなものを感じさせる。
 真、キヅカは魔導スマートフォンを相手に向け、録画ボタンを押す。
 さらに、真はレグルスに歪虚の臭いを記憶させつつ、爪を使って攻撃を仕掛けさせた。
 なお、ハンター達は仕掛ける。
 炎は斬機刀「轟劾」で斬りかかり、相手の体を駆け上がった小夜もその首を狙って聖罰刃を振り払う。
 だが、相手の鱗は異様なまでに硬く、ちょっとやそっとの攻撃ではビクともしない。
「……なるほど、ただの人間ではないようだ」
 ハンターを睨みつける敵は、炎の吐息を浴びせかけてくる。
 本気ではなかったろうが、連戦続きのメンバー達には手痛い攻撃。
 エラが導強を展開して支援はしていたものの、雑魔戦で傷ついていた聖堂戦士団団員達には耐えることすら厳しい。
 キヅカも仕掛けるつもりはなかったが、時間稼ぎを考えて自らの感覚を機体とマッチさせ、飛び上がってから斬艦刀の刃で相手の体を切り捨てようとする。
 だが、それは表面を斬ったに過ぎず、敵は後方に飛んで深手を避けていた。
「開けた場所では不利じゃ。林道に逃げ込むぞ」
 ディヤーは火球を飛ばしながらも、仲間に後退を提案する。
 逃げるという消極的な立ち回りも戦術の1つ。積極的に、能動的に動かねばと彼女は呼びかけた。
 再びFannanに騎乗したレオナは傘を盾として相手の攻撃を防ごうとし、アバルトも後退しながら相手に牽制の射撃を行う。
 人間達が山を登ってこないと察した歪虚は威嚇の咆哮を発してから、こう告げる。
「去れ。これ以上立ち入ろうとするなら、容赦はせん」
 そいつはそのまま、高所へと飛び去っていく。レオナは最後までその姿をスマートフォンに収め続ける。
 ――何れやりあう時には、本気の『無ノ境地』を。
 キヅカはそう誓って斬艦刀を収め、聖堂戦士団の傷を気遣って仲間と共に下山を決めたのだった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸ka0038
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベルka3142
  • 遊演の銀指
    レオナka6158

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ファイナルフォーム
    インスレーター・FF(ka0038unit001
    ユニット|CAM
  • 孤高の射撃手
    アバルト・ジンツァー(ka0895
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    フォルケ
    Falke(ka0895unit003
    ユニット|CAM
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ヨツバムグラ
    四葉(ka3142unit003
    ユニット|幻獣
  • 鉄壁の機兵操者
    ディヤー・A・バトロス(ka5743
    人間(紅)|11才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    ジャウハラ
    ジャウハラ(ka5743unit001
    ユニット|CAM

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    レグルス
    レグルス(ka5819unit001
    ユニット|幻獣
  • 兎は今日も首を狩る
    玉兎 小夜(ka6009
    人間(蒼)|17才|女性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    ー・-
    キャス・パリューグ(ka6009unit002
    ユニット|幻獣
  • 遊演の銀指
    レオナ(ka6158
    エルフ|20才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    ファンヌァン
    Fannan(ka6158unit002
    ユニット|幻獣
  • 覚悟の漢
    南護 炎(ka6651
    人間(蒼)|18才|男性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    フレイム オブ マインド
    FLAME OF MIND(ka6651unit001
    ユニット|CAM

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/01/29 23:42:52
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/01/27 06:23:00