ゲスト
(ka0000)
平原に口を開く地下迷宮
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/02/19 15:00
- 完成日
- 2018/02/26 16:08
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グラズヘイム王国北西。
王都イルダーナと崖上都市「ピースホライズン」を繋ぐ街道の西、誰も通らぬ崖の下に、人知れず口を開けた地下迷宮がある。
この場所は久しく放棄されており、ハンターズソサエティも探索の手を伸ばすことはなかった。
しかしながら、近年のハンター達の活躍で、様々な事件、事柄が解決していく中、ハンターズソサエティにおいてこの迷宮の存在が再び注目されるようになったとのこと。
「なんですかねー、今になって地下迷宮の捜索ってー……」
王都イルダーナのハンターズソサエティの受付では、「ガンナ・エントラータ」より戻ってきた糸目のシェリーが資料に首を傾げつつ、ハンター達に説明を行う。
「迷宮と言われるくらいに、内部は入る者を惑わせる構造をしているそうですねー。迂闊に入ると、出られなくなって死ぬまで彷徨うことになるとかー……」
それだけ、危険な場所ということで、本部もこれまで迷宮についての情報公開を控えていたようだと彼女は語る。
だが、依頼を受けるハンター達も熟練の域に入る者も増えてきた。
王国内の様々な問題が片付いてきたこともあって、これまで手を付けていない部分に着手しようといったところだろうか。
「ただ、迷宮内の情報はほとんどないんですよねー」
情報は古く、内部は今はどうなっているのか分からぬ状況。雑魔が住み着いていてもおかしくない。
かろうじて残っている情報によると、内部は似たような構造が続き、非常に迷いやすいとのこと。
さらに、地下方向に迷宮が広がっているとの記録もあるが、この辺りは情報が不明瞭な部分があり、よくわからないそうだ。
ともあれ、確認の為には行ってみるしかない。
「今回、ハンターズソサエティも有志のみ募る状況で、報酬もそれほど多くありませんー」
最後に、参加するかどうかと考えるメンバー達へ、シェリーが付け加える。
「それでも、宝とか、探索にロマンを感じる方はどうぞー。見つけた物はそのまま持ち帰りOKですのでー」
彼女はそう告げ、お気をつけてとハンター達に手を振るのだった。
グラズヘイム王国北西。
王都イルダーナと崖上都市「ピースホライズン」を繋ぐ街道の西、誰も通らぬ崖の下に、人知れず口を開けた地下迷宮がある。
この場所は久しく放棄されており、ハンターズソサエティも探索の手を伸ばすことはなかった。
しかしながら、近年のハンター達の活躍で、様々な事件、事柄が解決していく中、ハンターズソサエティにおいてこの迷宮の存在が再び注目されるようになったとのこと。
「なんですかねー、今になって地下迷宮の捜索ってー……」
王都イルダーナのハンターズソサエティの受付では、「ガンナ・エントラータ」より戻ってきた糸目のシェリーが資料に首を傾げつつ、ハンター達に説明を行う。
「迷宮と言われるくらいに、内部は入る者を惑わせる構造をしているそうですねー。迂闊に入ると、出られなくなって死ぬまで彷徨うことになるとかー……」
それだけ、危険な場所ということで、本部もこれまで迷宮についての情報公開を控えていたようだと彼女は語る。
だが、依頼を受けるハンター達も熟練の域に入る者も増えてきた。
王国内の様々な問題が片付いてきたこともあって、これまで手を付けていない部分に着手しようといったところだろうか。
「ただ、迷宮内の情報はほとんどないんですよねー」
情報は古く、内部は今はどうなっているのか分からぬ状況。雑魔が住み着いていてもおかしくない。
かろうじて残っている情報によると、内部は似たような構造が続き、非常に迷いやすいとのこと。
さらに、地下方向に迷宮が広がっているとの記録もあるが、この辺りは情報が不明瞭な部分があり、よくわからないそうだ。
ともあれ、確認の為には行ってみるしかない。
「今回、ハンターズソサエティも有志のみ募る状況で、報酬もそれほど多くありませんー」
最後に、参加するかどうかと考えるメンバー達へ、シェリーが付け加える。
「それでも、宝とか、探索にロマンを感じる方はどうぞー。見つけた物はそのまま持ち帰りOKですのでー」
彼女はそう告げ、お気をつけてとハンター達に手を振るのだった。
リプレイ本文
●
グラズヘイム王国北西。
平原とはいえ、何もない原野というわけではなく、森もあるし、丘もある。
小高い崖となった下、そこにはハンターズソサエティが内部を把握できていない地下迷宮が口を開く。
「辺境でも古の跡は見たことはありますが、こうして踏み入れるのは初めてです」
セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)は辺境の地で育ったという。
過酷な場所に身を置いてきた彼女でも、未知の迷宮への挑戦に少し緊張を見せている。
「こんな崖下に、広くて人を迷わせる遺跡……奥に何があるんだろう」
「放置された迷宮……。いつの時代に造られたものなのでしょうか」
崖の上から穴を覗き込む八島 陽(ka1442)、ソナ(ka1352)は、暗い底を見通そうとするが、さすがにここからでは何も分からない。
イルミナ(ka5759)もできる限り、情報を集めようと過去の記録を確認していたらしいが、めぼしい資料は見つからなかったようだ。
「罠も宝箱も、ニンジャにお任せ何だからっ!」
今日も元気なニンジャ娘、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)。ルンルン忍法とカードの力でお宝ゲットと彼女は意気込む。
「お宝な……」
見た目は今回の最年少である道元 ガンジ(ka6005)は、自らの力試しと仲間の手助けをすべくこの依頼に臨んでいる。
「無駄足ふまずに、まずは迷宮の全体像を把握してェな」
「今回は長丁場になりそうだな」
この遺跡らしき迷宮の概要把握、宝回収など、迷宮に臨むメンバーの気持ちは様々。だからこそ、ロニ・カルディス(ka0551)は万全の準備を行っていた。
「迷宮攻略か。こういうのも悪くない」
準備が整い、1人1人、遺跡へと垂らしたロープを伝って降りていくメンバー達をみて、レイア・アローネ(ka4082)が呟く。
「ただ……、人骨の仲間入りだけは避けたいところだな……」
己を磨くべく山を降りてきた彼女もまた、未知の領域に踏み込み恐怖が少なからずあるらしい。
「……ミイラ取りがミイラになる事だけは、何としてでも避けなければ」
ロニもまた慎重になりながらも、仲間に続いて遺跡へと降りていくのだった。
●
さて、地下迷宮に臨むハンター一行。
陽はアニクトウォッチで時刻の把握を行い、さらに導きの水晶球で入り口地点の方向を把握しつつ探索を開始した。
どれだけ探索が必要かが分からぬ状況もあるが、襲い来る外敵がいた場合は何度も覚醒して対応することとなる。
覚醒回数の限りを考えれば、全てを対応するわけにはいかない。この為、予め戦闘班を二つに分けてから探索を行う。
灯りは各自用意していたようで、ロニは指向性のある光を発する灯火の水晶球で突発的な危険のある先を行く前線メンバーを照らした。
「ん、今何か……」
かすかな音を聞きつけたガイジの声に従い、セツナは前方をLEDライトで照らし出そうとする。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法分身の術! 先行偵察は分身ちゃんにお任せです」
同じく、水晶球で前方を照らすルンルンはタイミングを見て式符を呼び出す。
「雑魔発見です!」
式符によって、ルンルンがネズミ雑魔が3体固まっているのを発見することとなる。
戦いは避けたいというメンバーの意見は大きく、その場を迂回して進むこととしていた。
こういう場所だから、ネズミなどはどこにでもいるのだろうが……。
「雑魔であれば、ここもただの洞窟ではないということですね」
そういうソナだが、洞窟というのは人の手が加わりすぎていると感じていて。
網目を思わせる通路。似たような光景が続けば、入るものの感覚を惑わせてしまう。
「中の物を外敵から守りたいか、外に出さないように閉じ込めたいか」
「敵も勿論だけど、迷わないよう気を付けないとね……」
ソナの意見にイルミナも同意し、壁や分かれ道に数字を刻んでいた。
そして、探索に欠かせぬマッピングセットはイルミナが主として使い、マッピングを行う。
「気が付いたら、数階層潜っていたとかもありえなくはないからね」
彼女は高低差なども意識して記録していたが、そういったものはない様子だ。
メインのマッピング役となるイルミナを、ソナがアシストする。
ソナは分岐点に番号を振ることで、この網状で構造把握と現在地が分かりづらい状況の打破を目指す。
さらに、次回探索を踏まえてマップの作成をと、ソナは分かれ道の矢印、来た方向、進んだ方向、それに分岐点に記した番号を地図にも記すようアドバイスする。
前方のルンルンも10フィート棒を手に罠や雑魔の襲撃を警戒し、マッピングセットに地図を書き込むなど忙しない。
「この迷宮に潜む、真相に繋がる何かが見つかればよいのですが」
そうした仲間の状況を気にかけながら、セツナは最深部への到達を目指したいと考える。
また、陽もこの迷宮の建設年代、目的、作った存在に関する手がかりを発見したいと意欲を見せていて。
「できれば、マッピングより先に進みたいと思うんだよね」
広く、迷わせる構造であれば、奥に何かを隠す為というのがセオリーだと、彼は主張していた。
特に、進行に関する指針もなかった為、陽の言うとおり、フロアの広さ、下層の存在の把握に重点を置き、一行は進むこととなる。
「下手に深入りして、帰れなくなるのは避けたいが……」
そんな仲間達の様子を、レイアは見守りながらついていくのだった。
●
探索を進めるメンバーの頭上から、突然襲い掛かるのはコウモリ雑魔だ。
翼を羽ばたかせるそいつらは通常種と大きさこそ変わらないが、獰猛な本性をむき出してハンターに襲いかかる。
「降りかかる火の粉は払わねばなるまい」
ここで応戦するのは、B班の4人。ロニ、陽、セツナ、ガンジだ。
リボルバー「サンダラー」を手にした陽は連続射撃で弾幕を張り、相手の動きを封じようとした。
敵の超音波や飛び掛りを受ける前線のセツナは相手の目に光を浴びせて怯ませ、さらに攻撃を加える。
セツナの太刀「宗三左文字」によってその身体を切り裂かれ、コウモリ雑魔はどす黒い血を噴き出していた。
ロニも後方から光の波動を発し、コウモリ雑魔らに衝撃を与えていく。
闇の中で棲息する敵とあって、その効果は抜群。
呻き声を上げて怯んだそいつに、ガンジが火竜票に武器を持ち替えて投げ飛ばした。青白い炎に包まれた赤い金属製の札はコウモリ雑魔に命中し、その身体を焦がす。
その間、A班所属の4人、ソナ、レイア、イルミナ、ルンルンは戦いを見守ることとなるのだが、ソナはいても立ってもいられないのか、ロングボウ「ゴールデンシューター」を使った援護射撃を行っていたようだ。
ただ、歴戦のハンターにとっては、大した相手ではない。
傷を負う仲間の状態をロニが逐一チェックするも、回復には至らないと判断して、魔法で作り出したいくつもの闇の刃でコウモリの体を貫く。
体力が減ったせいか高度が下がってきた敵へ、セツナは迷宮内の戦いとあって円を意識した立ち回りで太刀を振るう。
大きくその身体を切り裂かれたコウモリ雑魔は、奇声を上げて崩れ落ちていった。
もう1体もB班メンバーは順調に攻め立て、最後はガンジの旋棍「疾風迅雷」を顔面に受け、弾き飛ばされたコウモリ雑魔は消えていく。
一息ついたガンジは防衛本能を働かせつつ、飛び掛りの際に受けた傷を塞いでいたのである。
雑魔の一隊を撃破し、さらに進むハンター一行。
「迷わせる為の規則的な構造となると……、お宝を隠す目的だよな」
ガンジはう~んと唸りながらも、できる限り壁の隙間や装飾、置石の一つ一つに目を向ける。これらが少しでも違う部分があれば、何かあると彼は判断して。
「ん?」
出っ張った壁に気付いたガンジはそれを押して見た。
すると、通路と思っていた壁が前方通路を塞ぐように回転し、中から宝箱が現れる。
これはこれで嬉しいが、気になるのは罠。ソナは注意深く周囲を観察していく。
陽やセツナも魔導スマホでしっかりとその仕掛けを撮影した上で、宝箱に注意を向けた。
そこで、進み出たルンルンがシーブスツールとピッキングを併用し、掛かっていた鍵を開錠してしまう。
「おおっと、石の中ってなったら大変だもの……中身は何かな♪♪」
そんなリアルブルーのゲームを思い出すルンルンを制し、セツナが刀を鞘から抜き、その切っ先を使って開けていく。
「罠は……ないようですね」
開いた箱の中には、ゴールド。そして、やや綺麗なカットラスが修められていた。
お金はざっと、2万Gといったところか。
思ったよりも少ない額に、ハンター達は肩を落とす。なお、回収したカットラスはセツナが預かることにしていたようだ。
●
探索を進めていくと、ハンター達は空腹を覚えてしまう。
迷宮を歩き回るメンバーは網目状の通路の分岐点に腰を下ろし、休憩をとることにする。
「お口に合えばいいのですが」
ソナは教会印のレンジャーキットに入っていた携帯食料を取り出し、セツナも干し肉を皆に分けていく。
陽はバラエティーランチを振舞い、ガイジも薬酒「夜長」とおにぎり草「まめし」をこの場に出してくれていた。
「「「いただきます」」」
早速、皆でそれぞれ口にしていくのだが、なりゆきとはいえ、ここまで目立った活躍のないレイアはしばし食料に手を伸ばすのをためらう。
「あまり、活躍できていないのに申し訳ないが……」
この後の襲撃では壁になるからと、彼女はその食料をいただくことにしていたようだった。
探索を再開した一行は、1万Gほど入った宝箱を回収。
進んでは止まりを繰り返して2、3時間ほどマッピングしながら迷宮を彷徨い、ネズミとコウモリの雑魔どもをA、B班それぞれ1回ずつ殲滅。
その後、メンバー達は下層に通じる階段を発見するに至る。
ただ、ここから先に進もうとする者はいない。
「ここらで潮時だろうな」
「同意だな。これ以上は危険だ」
ロニ、レイアは余力を残した状態での撤退を仲間達へと促す。
スキルの使用状況なども考慮したイルミナがそれに頷いて。
「次回も『情報がほとんどない迷宮』とか紹介されるようになったら、洒落にならないものね……」
そんな彼女の天然な一言に、安全策をとるメンバー達は一気に撤収の流れに移る。
セツナ、ルンルンがその階段周辺を魔導スマートフォンで記録した後、マップの記録と陽の持つ水晶球による導きと合わせ、一行は入り口へと引き返し始めた。
……案の定というべきか。
式符に先行させていたルンルンが程なく、何かに気付く。
通路の曲がり角からこちらにやってきたのは、全長2mもある巨大ミミズ雑魔だった。
「出番だな」
ここぞと、前に出るA班レイア。
戦い自体は2度目となっていたが、相手はこれまでと比べれば自分達と同じ程度の大きさを持つ大物。油断できぬ相手である。
「とはいえ、あまり戦いは長引かせたくないところだ」
これまで歩いて実際に見たこの迷宮はそれほど脆くはない構造をしているのは確認しているが、下手に暴れられたりでもすれば、通路の壁などに衝撃を与えて落盤、床抜けなどが起こりかねない。
「すまない、回復は頼む」
レイアは防御の構えをとり、暴れ狂うミミズを魔剣「シーガルスホルム」で抑えていく。
後方からは同班メンバーが覚醒し、一気に攻める。
ルンルンはスキルの使用回数は十分と判断し、空中に符を投げ飛ばす。
それは稲妻と変わり、巨大ミミズの体を貫いた。
続き、ソナも星剣「アルマス・ノヴァ」より輝く光の弾を発し、ミミズの体へと叩きつける。
一度スキルを使ったルンルン、ソナは温存を考え、銃や弓を使った射撃に切り替えてミミズの体を射抜こうとした。
後方から魔導銃「魔弾」を発砲していたイルミナは、スキルを活かしつつ攻撃を行う。
盾となるレイアを撃ってしまうわけには行かないと、彼女はしっかり狙って引き金を弾いていた。
対する巨大ミミズは獲物を見つけ、やや嬉しそうに絡みついてくるようにも見える。
その全身で巨大ミミズはレイアの体をきつく締め上げ、彼女の体力を削いでいく。
「ぐっ……」
毅然と構えるレイアは仲間に信頼を置き、相手の尻尾での殴打を受け止める。
じっと見ていたソナはスキル使用をできるだけ控えたいと考えていたようだったが、やむなく祈りを捧げてマテリアルの力でレイアの傷を癒していた。
B班メンバーが見守る中、弾丸や矢で幾度も貫かれたミミズはその動きを弱めていく。
ルンルンの撃ち出す魔導銃「アクケルテ」の弾丸が、相手の頭を射抜いた直後、視力にマテリアルを集中させたイルミナが弾丸にも別途マテリアルを込めて撃ち出した。
その弾丸が巨大ミミズの首を吹き飛ばす。
しばらく胴体を悶えさせていたが、程なくそいつはぐったりと床に身を倒し、霧の様に消え失せたのだった。
帰路は、来た通路とラインをずらして戻るメンバー達。
途中、壁に寄りかかるように倒れる2つの白骨化した遺体を発見する。
壁には、彼らが残したと思われる書き置きのようなものがあったが、ミミズやネズミが徘徊したせいだろうか。かすれて読めなくなってしまっていた。
「マッピングしながら、力尽きたのかもしれないな」
ガンジはためらうことなく、その遺体を探る。遺品が人物特定の手がかりになればと考えたのだ。
使えそうなのは、ガンジが発見したバックラー。それに、もう一つの遺体からルンルンがブレスレットを回収する。
「なむなむ」
彼女は念入りに、手を合わせていたようだ。
ロニも道具袋を発見し、弦の切れたリュートを回収していたが。
「できれば、外に持ち帰って一緒に弔いたいな」
聖導士として、ロニはせめて墓に埋葬をと考えていた。
運良く、いや、この遺体主からすれば運は悪かったのかもしれないが……、入り口はそれほど遠くない。
そのまま一行は丁重に遺体を運びながら入り口下まで戻り、ロープを伝って地上へと出て行く。
アイテムはそのまま見つけた者が引き取ることになり、見つけた3万5千G弱は頭数で分配することになった。
大体、一人頭4千3百G。探索の割には合わない額だったが、初回とあってこんなものかとメンバー達は割り切る。
「この冒険が何よりの宝物だ……などと言うつもりはないがな……」
呟くレイアは、少し頬を赤らめていた。
遺体を丁重に扱いながらもメンバーは調査報告書を纏め、ハンターズソサエティへと戻っていくのである。
グラズヘイム王国北西。
平原とはいえ、何もない原野というわけではなく、森もあるし、丘もある。
小高い崖となった下、そこにはハンターズソサエティが内部を把握できていない地下迷宮が口を開く。
「辺境でも古の跡は見たことはありますが、こうして踏み入れるのは初めてです」
セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)は辺境の地で育ったという。
過酷な場所に身を置いてきた彼女でも、未知の迷宮への挑戦に少し緊張を見せている。
「こんな崖下に、広くて人を迷わせる遺跡……奥に何があるんだろう」
「放置された迷宮……。いつの時代に造られたものなのでしょうか」
崖の上から穴を覗き込む八島 陽(ka1442)、ソナ(ka1352)は、暗い底を見通そうとするが、さすがにここからでは何も分からない。
イルミナ(ka5759)もできる限り、情報を集めようと過去の記録を確認していたらしいが、めぼしい資料は見つからなかったようだ。
「罠も宝箱も、ニンジャにお任せ何だからっ!」
今日も元気なニンジャ娘、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)。ルンルン忍法とカードの力でお宝ゲットと彼女は意気込む。
「お宝な……」
見た目は今回の最年少である道元 ガンジ(ka6005)は、自らの力試しと仲間の手助けをすべくこの依頼に臨んでいる。
「無駄足ふまずに、まずは迷宮の全体像を把握してェな」
「今回は長丁場になりそうだな」
この遺跡らしき迷宮の概要把握、宝回収など、迷宮に臨むメンバーの気持ちは様々。だからこそ、ロニ・カルディス(ka0551)は万全の準備を行っていた。
「迷宮攻略か。こういうのも悪くない」
準備が整い、1人1人、遺跡へと垂らしたロープを伝って降りていくメンバー達をみて、レイア・アローネ(ka4082)が呟く。
「ただ……、人骨の仲間入りだけは避けたいところだな……」
己を磨くべく山を降りてきた彼女もまた、未知の領域に踏み込み恐怖が少なからずあるらしい。
「……ミイラ取りがミイラになる事だけは、何としてでも避けなければ」
ロニもまた慎重になりながらも、仲間に続いて遺跡へと降りていくのだった。
●
さて、地下迷宮に臨むハンター一行。
陽はアニクトウォッチで時刻の把握を行い、さらに導きの水晶球で入り口地点の方向を把握しつつ探索を開始した。
どれだけ探索が必要かが分からぬ状況もあるが、襲い来る外敵がいた場合は何度も覚醒して対応することとなる。
覚醒回数の限りを考えれば、全てを対応するわけにはいかない。この為、予め戦闘班を二つに分けてから探索を行う。
灯りは各自用意していたようで、ロニは指向性のある光を発する灯火の水晶球で突発的な危険のある先を行く前線メンバーを照らした。
「ん、今何か……」
かすかな音を聞きつけたガイジの声に従い、セツナは前方をLEDライトで照らし出そうとする。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法分身の術! 先行偵察は分身ちゃんにお任せです」
同じく、水晶球で前方を照らすルンルンはタイミングを見て式符を呼び出す。
「雑魔発見です!」
式符によって、ルンルンがネズミ雑魔が3体固まっているのを発見することとなる。
戦いは避けたいというメンバーの意見は大きく、その場を迂回して進むこととしていた。
こういう場所だから、ネズミなどはどこにでもいるのだろうが……。
「雑魔であれば、ここもただの洞窟ではないということですね」
そういうソナだが、洞窟というのは人の手が加わりすぎていると感じていて。
網目を思わせる通路。似たような光景が続けば、入るものの感覚を惑わせてしまう。
「中の物を外敵から守りたいか、外に出さないように閉じ込めたいか」
「敵も勿論だけど、迷わないよう気を付けないとね……」
ソナの意見にイルミナも同意し、壁や分かれ道に数字を刻んでいた。
そして、探索に欠かせぬマッピングセットはイルミナが主として使い、マッピングを行う。
「気が付いたら、数階層潜っていたとかもありえなくはないからね」
彼女は高低差なども意識して記録していたが、そういったものはない様子だ。
メインのマッピング役となるイルミナを、ソナがアシストする。
ソナは分岐点に番号を振ることで、この網状で構造把握と現在地が分かりづらい状況の打破を目指す。
さらに、次回探索を踏まえてマップの作成をと、ソナは分かれ道の矢印、来た方向、進んだ方向、それに分岐点に記した番号を地図にも記すようアドバイスする。
前方のルンルンも10フィート棒を手に罠や雑魔の襲撃を警戒し、マッピングセットに地図を書き込むなど忙しない。
「この迷宮に潜む、真相に繋がる何かが見つかればよいのですが」
そうした仲間の状況を気にかけながら、セツナは最深部への到達を目指したいと考える。
また、陽もこの迷宮の建設年代、目的、作った存在に関する手がかりを発見したいと意欲を見せていて。
「できれば、マッピングより先に進みたいと思うんだよね」
広く、迷わせる構造であれば、奥に何かを隠す為というのがセオリーだと、彼は主張していた。
特に、進行に関する指針もなかった為、陽の言うとおり、フロアの広さ、下層の存在の把握に重点を置き、一行は進むこととなる。
「下手に深入りして、帰れなくなるのは避けたいが……」
そんな仲間達の様子を、レイアは見守りながらついていくのだった。
●
探索を進めるメンバーの頭上から、突然襲い掛かるのはコウモリ雑魔だ。
翼を羽ばたかせるそいつらは通常種と大きさこそ変わらないが、獰猛な本性をむき出してハンターに襲いかかる。
「降りかかる火の粉は払わねばなるまい」
ここで応戦するのは、B班の4人。ロニ、陽、セツナ、ガンジだ。
リボルバー「サンダラー」を手にした陽は連続射撃で弾幕を張り、相手の動きを封じようとした。
敵の超音波や飛び掛りを受ける前線のセツナは相手の目に光を浴びせて怯ませ、さらに攻撃を加える。
セツナの太刀「宗三左文字」によってその身体を切り裂かれ、コウモリ雑魔はどす黒い血を噴き出していた。
ロニも後方から光の波動を発し、コウモリ雑魔らに衝撃を与えていく。
闇の中で棲息する敵とあって、その効果は抜群。
呻き声を上げて怯んだそいつに、ガンジが火竜票に武器を持ち替えて投げ飛ばした。青白い炎に包まれた赤い金属製の札はコウモリ雑魔に命中し、その身体を焦がす。
その間、A班所属の4人、ソナ、レイア、イルミナ、ルンルンは戦いを見守ることとなるのだが、ソナはいても立ってもいられないのか、ロングボウ「ゴールデンシューター」を使った援護射撃を行っていたようだ。
ただ、歴戦のハンターにとっては、大した相手ではない。
傷を負う仲間の状態をロニが逐一チェックするも、回復には至らないと判断して、魔法で作り出したいくつもの闇の刃でコウモリの体を貫く。
体力が減ったせいか高度が下がってきた敵へ、セツナは迷宮内の戦いとあって円を意識した立ち回りで太刀を振るう。
大きくその身体を切り裂かれたコウモリ雑魔は、奇声を上げて崩れ落ちていった。
もう1体もB班メンバーは順調に攻め立て、最後はガンジの旋棍「疾風迅雷」を顔面に受け、弾き飛ばされたコウモリ雑魔は消えていく。
一息ついたガンジは防衛本能を働かせつつ、飛び掛りの際に受けた傷を塞いでいたのである。
雑魔の一隊を撃破し、さらに進むハンター一行。
「迷わせる為の規則的な構造となると……、お宝を隠す目的だよな」
ガンジはう~んと唸りながらも、できる限り壁の隙間や装飾、置石の一つ一つに目を向ける。これらが少しでも違う部分があれば、何かあると彼は判断して。
「ん?」
出っ張った壁に気付いたガンジはそれを押して見た。
すると、通路と思っていた壁が前方通路を塞ぐように回転し、中から宝箱が現れる。
これはこれで嬉しいが、気になるのは罠。ソナは注意深く周囲を観察していく。
陽やセツナも魔導スマホでしっかりとその仕掛けを撮影した上で、宝箱に注意を向けた。
そこで、進み出たルンルンがシーブスツールとピッキングを併用し、掛かっていた鍵を開錠してしまう。
「おおっと、石の中ってなったら大変だもの……中身は何かな♪♪」
そんなリアルブルーのゲームを思い出すルンルンを制し、セツナが刀を鞘から抜き、その切っ先を使って開けていく。
「罠は……ないようですね」
開いた箱の中には、ゴールド。そして、やや綺麗なカットラスが修められていた。
お金はざっと、2万Gといったところか。
思ったよりも少ない額に、ハンター達は肩を落とす。なお、回収したカットラスはセツナが預かることにしていたようだ。
●
探索を進めていくと、ハンター達は空腹を覚えてしまう。
迷宮を歩き回るメンバーは網目状の通路の分岐点に腰を下ろし、休憩をとることにする。
「お口に合えばいいのですが」
ソナは教会印のレンジャーキットに入っていた携帯食料を取り出し、セツナも干し肉を皆に分けていく。
陽はバラエティーランチを振舞い、ガイジも薬酒「夜長」とおにぎり草「まめし」をこの場に出してくれていた。
「「「いただきます」」」
早速、皆でそれぞれ口にしていくのだが、なりゆきとはいえ、ここまで目立った活躍のないレイアはしばし食料に手を伸ばすのをためらう。
「あまり、活躍できていないのに申し訳ないが……」
この後の襲撃では壁になるからと、彼女はその食料をいただくことにしていたようだった。
探索を再開した一行は、1万Gほど入った宝箱を回収。
進んでは止まりを繰り返して2、3時間ほどマッピングしながら迷宮を彷徨い、ネズミとコウモリの雑魔どもをA、B班それぞれ1回ずつ殲滅。
その後、メンバー達は下層に通じる階段を発見するに至る。
ただ、ここから先に進もうとする者はいない。
「ここらで潮時だろうな」
「同意だな。これ以上は危険だ」
ロニ、レイアは余力を残した状態での撤退を仲間達へと促す。
スキルの使用状況なども考慮したイルミナがそれに頷いて。
「次回も『情報がほとんどない迷宮』とか紹介されるようになったら、洒落にならないものね……」
そんな彼女の天然な一言に、安全策をとるメンバー達は一気に撤収の流れに移る。
セツナ、ルンルンがその階段周辺を魔導スマートフォンで記録した後、マップの記録と陽の持つ水晶球による導きと合わせ、一行は入り口へと引き返し始めた。
……案の定というべきか。
式符に先行させていたルンルンが程なく、何かに気付く。
通路の曲がり角からこちらにやってきたのは、全長2mもある巨大ミミズ雑魔だった。
「出番だな」
ここぞと、前に出るA班レイア。
戦い自体は2度目となっていたが、相手はこれまでと比べれば自分達と同じ程度の大きさを持つ大物。油断できぬ相手である。
「とはいえ、あまり戦いは長引かせたくないところだ」
これまで歩いて実際に見たこの迷宮はそれほど脆くはない構造をしているのは確認しているが、下手に暴れられたりでもすれば、通路の壁などに衝撃を与えて落盤、床抜けなどが起こりかねない。
「すまない、回復は頼む」
レイアは防御の構えをとり、暴れ狂うミミズを魔剣「シーガルスホルム」で抑えていく。
後方からは同班メンバーが覚醒し、一気に攻める。
ルンルンはスキルの使用回数は十分と判断し、空中に符を投げ飛ばす。
それは稲妻と変わり、巨大ミミズの体を貫いた。
続き、ソナも星剣「アルマス・ノヴァ」より輝く光の弾を発し、ミミズの体へと叩きつける。
一度スキルを使ったルンルン、ソナは温存を考え、銃や弓を使った射撃に切り替えてミミズの体を射抜こうとした。
後方から魔導銃「魔弾」を発砲していたイルミナは、スキルを活かしつつ攻撃を行う。
盾となるレイアを撃ってしまうわけには行かないと、彼女はしっかり狙って引き金を弾いていた。
対する巨大ミミズは獲物を見つけ、やや嬉しそうに絡みついてくるようにも見える。
その全身で巨大ミミズはレイアの体をきつく締め上げ、彼女の体力を削いでいく。
「ぐっ……」
毅然と構えるレイアは仲間に信頼を置き、相手の尻尾での殴打を受け止める。
じっと見ていたソナはスキル使用をできるだけ控えたいと考えていたようだったが、やむなく祈りを捧げてマテリアルの力でレイアの傷を癒していた。
B班メンバーが見守る中、弾丸や矢で幾度も貫かれたミミズはその動きを弱めていく。
ルンルンの撃ち出す魔導銃「アクケルテ」の弾丸が、相手の頭を射抜いた直後、視力にマテリアルを集中させたイルミナが弾丸にも別途マテリアルを込めて撃ち出した。
その弾丸が巨大ミミズの首を吹き飛ばす。
しばらく胴体を悶えさせていたが、程なくそいつはぐったりと床に身を倒し、霧の様に消え失せたのだった。
帰路は、来た通路とラインをずらして戻るメンバー達。
途中、壁に寄りかかるように倒れる2つの白骨化した遺体を発見する。
壁には、彼らが残したと思われる書き置きのようなものがあったが、ミミズやネズミが徘徊したせいだろうか。かすれて読めなくなってしまっていた。
「マッピングしながら、力尽きたのかもしれないな」
ガンジはためらうことなく、その遺体を探る。遺品が人物特定の手がかりになればと考えたのだ。
使えそうなのは、ガンジが発見したバックラー。それに、もう一つの遺体からルンルンがブレスレットを回収する。
「なむなむ」
彼女は念入りに、手を合わせていたようだ。
ロニも道具袋を発見し、弦の切れたリュートを回収していたが。
「できれば、外に持ち帰って一緒に弔いたいな」
聖導士として、ロニはせめて墓に埋葬をと考えていた。
運良く、いや、この遺体主からすれば運は悪かったのかもしれないが……、入り口はそれほど遠くない。
そのまま一行は丁重に遺体を運びながら入り口下まで戻り、ロープを伝って地上へと出て行く。
アイテムはそのまま見つけた者が引き取ることになり、見つけた3万5千G弱は頭数で分配することになった。
大体、一人頭4千3百G。探索の割には合わない額だったが、初回とあってこんなものかとメンバー達は割り切る。
「この冒険が何よりの宝物だ……などと言うつもりはないがな……」
呟くレイアは、少し頬を赤らめていた。
遺体を丁重に扱いながらもメンバーは調査報告書を纏め、ハンターズソサエティへと戻っていくのである。
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ダンジョンに出会いを求めるのは イルミナ(ka5759) エルフ|17才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/02/19 08:08:04 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/18 22:03:12 |