ゲスト
(ka0000)
【RH】VOID chocolate
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~5人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/02/21 07:30
- 完成日
- 2018/02/21 17:21
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●発端
欧州での戦いで星加 籃奈(kz0247)は亡き夫が乗っていた機体を見つけた。
機体は大破していたが、幾つか部品を回収してきた。特に大事なのは、通信記録を残したボックスだろう。
「これを解析して欲しいのだが、当てがなくて」
籃奈は知り合いの技師に相談した。
軍の中でやればすぐに終わるだろう。だが、籃奈には疑念があった。
夫が所属していた部隊がなぜ、壊滅したのか。当時、上司だったあの男は作戦の失敗を責められず、死んだ夫一人が背負わされたのか。
「星加の旦那には、色々と世話になったが……これはな……」
「ダメ……なのか?」
「いや、そうじゃねぇ。俺も旦那の最後を知りたい。大事な恩人だったしな」
技師は悔しそうな表情を浮かべた。
そして、ボックスを丁寧に包み直す。
「これを解析するには、それなりに設備が整った所じゃないとダメだろう」
日本国内に無い訳ではない。だが、足が付きやすい事もある。
「どうすればいい?」
「……アスガルドだ。あそこであれば、設備も揃っているだろう。軍とは違う組織でもある」
イギリスのエディンバラにある強化人間研究施設である。
「俺からも紹介文を書いておくよ。それに、籃奈さんは強化人間なんだろ。何か適当に理由をつければ、行きやすいんじゃないか?」
「なるほど。確かにそうだ」
ポンと手を叩いた籃奈。
これで、次の行き先は決まった。ちょうど仕事にも一区切りがついた所でもあるので、研究所を離れても問題ないだろう。
「ところでよ、籃奈さん……そこのお姉さんは……」
技師が向けた視線に気が付いて、鳴月 牡丹(kz0180)がチョコレートを口にしたまま、キリっとして表情で、視線を受け止めた。
何かモゴモゴと言っている――きっと、名乗っているつもりなのだろう。
冷静に籃奈がツッコミを牡丹の首元に叩き込む。
「ブハッ! 飲み込む所だったのに! 酷いよ、籃奈!」
「牡丹……差し出されたからといって、そんなに口の中に溜め込む方が悪いよ」
「だって、これ、すっごく甘くて美味しいんだよ!」
驚いた表情で叫ぶ牡丹。
「気に入って貰って良かったよ。よければ、全部持って帰っていいよ。俺は甘いの苦手なんだけど、沢山貰ってきちゃうからさ」
「ふーん。リアルブルーの男性は、この時期、食べきれない程、チョコレートを貰うのか」
こうして、牡丹にまた一つ間違った知識が入ったのだった。
●VOID chocolate
イギリスまでは流石に長旅だ。
問題があるとすれば、籃奈の一人息子の方だ。事情が事情なだけに息子を連れていけない。
かといって、ずっと一人で留守番させる訳にもいかない。
「頼れる親戚も居ないからね」
「大丈夫だよ。僕は一人で留守番できるから」
孝純は健気にもそう言った。
料理の仕方は知らないが、電子レンジくらいは使えるし、洗い物も出来る。
買い物だって外食だって問題ない。洗濯だってボタン一つなのだから。
「まぁまぁ、孝純君。親はね、子供を心配するもんだよ」
「鳴月さんはお子さんいらっしゃいませんよね……」
「細かい事は気にしない。そういう事で、ボクがたまに顔出すから、よろしくね」
不安そうな顔をする孝純。
この人、家事とかちゃんとできるのかなって思ったのだ。同時に、常に家の中は絶対に整理しておこうとも思った。
「そうだ。たまにはハンターも連れてきたらどう?」
「あぁ、それもいいかも。いつも、ボク一人じゃ、孝純君も飽きちゃうだろうしね」
妙にドヤ顔する牡丹だった。
籃奈がイギリスへと向かったその日、自宅近くの商店街に買い出しに出かけた一行。
帰る途中の道路に規制線が張られていたのだ。
「なんだい?」
牡丹が警備にあたっている軍人に訊ねた。
「この先の菓子工場でVOIDが確認された。一帯は避難だ」
なんでも、どこかから飛来したのか、潜んでいたのか、VOIDが菓子材料のタンクに入り込んでしまい、大量のチョコレートと融合したそうだ。
兎も角、このままだと家に帰れないし、冷凍食品もダメになってしまう。
早々に軍が来てくれればいいが、市街地の中の工場だ。安易に戦闘機やCAMを運用できないだろう。
かといって、『異世界から来たハンターです!』と言って信用されるものなのか……。
だが、そんな心配は無用だった。
「こ、こっちに、VOIDが! 避難だ! 急げ!」
軍人が通信機を耳に当てながら叫んだ。
どうやら、VOIDの方からハンター達に向かっているらしい。
「孝純君、この辺りに戦えるだけの広さがある所は?」
「商店街の先にちょっとした広場があるから、そこなら、戦えるかも」
「決定だね。案内してくれるかい?」
ニヤリと牡丹は不敵な笑みを浮かべた。
VOIDと戦うという事なのだろう。孝純は怖がりもせずに頷いた。
「はい。ですが、鳴月さんやハンターの皆さんの武器は家に置いてきたままですけが」
「武器ぐらいなくたって、戦えるからね。それに、ちょうど買い物で包丁とかも買ったじゃん」
と言っても、牡丹は拳でやるようだ。
「武器が無いと戦えないっていう軟なハンターな訳ないよね?」
そんな挑発めいた台詞をハンター達に向かって言ったのだった。
欧州での戦いで星加 籃奈(kz0247)は亡き夫が乗っていた機体を見つけた。
機体は大破していたが、幾つか部品を回収してきた。特に大事なのは、通信記録を残したボックスだろう。
「これを解析して欲しいのだが、当てがなくて」
籃奈は知り合いの技師に相談した。
軍の中でやればすぐに終わるだろう。だが、籃奈には疑念があった。
夫が所属していた部隊がなぜ、壊滅したのか。当時、上司だったあの男は作戦の失敗を責められず、死んだ夫一人が背負わされたのか。
「星加の旦那には、色々と世話になったが……これはな……」
「ダメ……なのか?」
「いや、そうじゃねぇ。俺も旦那の最後を知りたい。大事な恩人だったしな」
技師は悔しそうな表情を浮かべた。
そして、ボックスを丁寧に包み直す。
「これを解析するには、それなりに設備が整った所じゃないとダメだろう」
日本国内に無い訳ではない。だが、足が付きやすい事もある。
「どうすればいい?」
「……アスガルドだ。あそこであれば、設備も揃っているだろう。軍とは違う組織でもある」
イギリスのエディンバラにある強化人間研究施設である。
「俺からも紹介文を書いておくよ。それに、籃奈さんは強化人間なんだろ。何か適当に理由をつければ、行きやすいんじゃないか?」
「なるほど。確かにそうだ」
ポンと手を叩いた籃奈。
これで、次の行き先は決まった。ちょうど仕事にも一区切りがついた所でもあるので、研究所を離れても問題ないだろう。
「ところでよ、籃奈さん……そこのお姉さんは……」
技師が向けた視線に気が付いて、鳴月 牡丹(kz0180)がチョコレートを口にしたまま、キリっとして表情で、視線を受け止めた。
何かモゴモゴと言っている――きっと、名乗っているつもりなのだろう。
冷静に籃奈がツッコミを牡丹の首元に叩き込む。
「ブハッ! 飲み込む所だったのに! 酷いよ、籃奈!」
「牡丹……差し出されたからといって、そんなに口の中に溜め込む方が悪いよ」
「だって、これ、すっごく甘くて美味しいんだよ!」
驚いた表情で叫ぶ牡丹。
「気に入って貰って良かったよ。よければ、全部持って帰っていいよ。俺は甘いの苦手なんだけど、沢山貰ってきちゃうからさ」
「ふーん。リアルブルーの男性は、この時期、食べきれない程、チョコレートを貰うのか」
こうして、牡丹にまた一つ間違った知識が入ったのだった。
●VOID chocolate
イギリスまでは流石に長旅だ。
問題があるとすれば、籃奈の一人息子の方だ。事情が事情なだけに息子を連れていけない。
かといって、ずっと一人で留守番させる訳にもいかない。
「頼れる親戚も居ないからね」
「大丈夫だよ。僕は一人で留守番できるから」
孝純は健気にもそう言った。
料理の仕方は知らないが、電子レンジくらいは使えるし、洗い物も出来る。
買い物だって外食だって問題ない。洗濯だってボタン一つなのだから。
「まぁまぁ、孝純君。親はね、子供を心配するもんだよ」
「鳴月さんはお子さんいらっしゃいませんよね……」
「細かい事は気にしない。そういう事で、ボクがたまに顔出すから、よろしくね」
不安そうな顔をする孝純。
この人、家事とかちゃんとできるのかなって思ったのだ。同時に、常に家の中は絶対に整理しておこうとも思った。
「そうだ。たまにはハンターも連れてきたらどう?」
「あぁ、それもいいかも。いつも、ボク一人じゃ、孝純君も飽きちゃうだろうしね」
妙にドヤ顔する牡丹だった。
籃奈がイギリスへと向かったその日、自宅近くの商店街に買い出しに出かけた一行。
帰る途中の道路に規制線が張られていたのだ。
「なんだい?」
牡丹が警備にあたっている軍人に訊ねた。
「この先の菓子工場でVOIDが確認された。一帯は避難だ」
なんでも、どこかから飛来したのか、潜んでいたのか、VOIDが菓子材料のタンクに入り込んでしまい、大量のチョコレートと融合したそうだ。
兎も角、このままだと家に帰れないし、冷凍食品もダメになってしまう。
早々に軍が来てくれればいいが、市街地の中の工場だ。安易に戦闘機やCAMを運用できないだろう。
かといって、『異世界から来たハンターです!』と言って信用されるものなのか……。
だが、そんな心配は無用だった。
「こ、こっちに、VOIDが! 避難だ! 急げ!」
軍人が通信機を耳に当てながら叫んだ。
どうやら、VOIDの方からハンター達に向かっているらしい。
「孝純君、この辺りに戦えるだけの広さがある所は?」
「商店街の先にちょっとした広場があるから、そこなら、戦えるかも」
「決定だね。案内してくれるかい?」
ニヤリと牡丹は不敵な笑みを浮かべた。
VOIDと戦うという事なのだろう。孝純は怖がりもせずに頷いた。
「はい。ですが、鳴月さんやハンターの皆さんの武器は家に置いてきたままですけが」
「武器ぐらいなくたって、戦えるからね。それに、ちょうど買い物で包丁とかも買ったじゃん」
と言っても、牡丹は拳でやるようだ。
「武器が無いと戦えないっていう軟なハンターな訳ないよね?」
そんな挑発めいた台詞をハンター達に向かって言ったのだった。
リプレイ本文
●戦闘前に
広場を我が物顔で占拠しているVOIDの見た目は、チョコレートの塊だった。
甘ったるいチョコレートの香りがハンター達にまで届くが、美味しそうには見えなかった。
「あー……。そういえば、そんな時節だったねー。……チョコレートかー……」
少し遠い目でシェルミア・クリスティア(ka5955)が呟いた。
この季節的な行事に、あまり縁が無かった彼女であったが、周囲から色々な話が耳に入ってくるものだ。
大好きな人に、大切な人に、世話になった人に、友達に……そんな想い出に浸っていた意識を切り替えるように、彼女は頭を振る。
「っと、そんな事はさて置き、VOIDの討伐しなくっちゃね」
「……チョコレートと融合って、もう何でも有りなんだね」
シェルミアの宣言にマーゴット(ka5022)が同意する。
何をどうすれば、チョコレートと融合したりするのだろうか。
兎も角、食べ物を粗末にするのは許せないし、それが大好きな甘いお菓子なら尚更の事。
「確実に仕留めるよ」
「そうだね、食べ物を粗末にする感じが拭えないのがなぁ。そこもVOIDのせいにしちゃおう、うん」
そんな訳でシェルミアは符を、マーゴットは買い物袋から包丁を取り出した。
折角だから料理していこうという話になって、スーパーで何気なしに買った包丁が、まさか、ここで役に立つとは。
早速、戦闘モードに入った仲間を見て、十色 エニア(ka0370)もマテリアルを高める。
「チョコレートと融合したからか、見た目はマイ…ルド……?」
確かに、“彼”の言う通り、VOIDの外見は一見、半溶けしたチョコレートの塊そのもので、狂気VOIDにありがちな怖さはない。
勿論、油断はできない。買物中だった事もあって、全員、愛用の武器を持って来ていないからだ。
「まぁ、元々魔法は魔導書媒体派だし、特に問題はないね。火力物足りないけど……」
「火力については、ボクに任せてよ」
鳴月 牡丹(kz0180)が無駄なドヤ顔で拳を作る。
そんな彼女の真横に並んだアイビス・グラス(ka2477)も拳を握っていた。
「格闘は武器がなくてもやれるのが強みだけど……相手によるよね」
「打撃が効きにくい敵には、ね。でも、やりようはあるからさ!」
「気功かな?」
首を傾げたアイビスに牡丹は力強く頷いた。
やけに自信満々な所が逆に不安になるが、まぁ、きっと、大丈夫だろう。牡丹だし。
一方、イレーヌ(ka1372)は星加 籃奈(kz0247)の一人息子である孝純に冷凍食品が大量に入った袋を渡した。
「早いところ片付けないと、今日中に冷凍食品を平らげなければいけない事態に陥ってしまうな」
「それは、勿体ないです」
金銭感覚も確りしている子だなとイレーヌは思いながら、唐突に覚醒状態に入る。
身長がグッと伸びるイレーヌに驚く孝純。
「……そういえば孝純に覚醒姿を見せるのは初めてか。どうだ、感想は?」
わざとらしく前かがみになりながら、孝純をからかう。
どこに視線を向けていいのか分からず、泳いでいる目が可愛い。
「か、覚醒者って、凄いんですね。そ、その、物理法則とか無視で」
「凄いのは、ここからだよ」
思わせぶりな口調でイレーヌは言ったのであった。
●チョコVOID討伐戦
買物袋を抱えて孝純が走る。
その直前に、彼に頼み事をしたアイビスは果敢にもVOIDの前面へと進んだ。
後衛組に近づけさせない為だ。その為には出来る限り、ヘイトを稼がなければならない。
「軟体系に効くかどうか分からないけど、やってみるしかないわねっと!」
直後、放たれるチョコレート風味の何か。
光線かと思ったが、それは、負のマテリアルが練り込まれたチョコレートの塊だった。
「スライムよりも厄介かも、これは」
アイビスの視界の中で、VOIDの身体から歪な球体が幾つも出現してきた。
狂気VOIDの中には、こうして、子VOIDを出現させる個体もいる。このチョコVOIDも同様なのだろう。
だが、完全に出現するよりも前に、本体ごと、マテリアルの刃で切り刻まれる。
「人を殺すだけなら包丁でも容易く出来る。流石にVOID相手にその理屈が通じるかは不明だけど……」
包丁を構えたマーゴットが放ったものであった。
絵的には迫力は欠けるが、舞刀士としての力を振るう分には問題ないようだ。
「生きてるなら出来ない道理はないよね……なんて、流石に物騒かな」
そう言いながら、包丁をケースに戻す。
几帳面な性格が成せる――ではなく、納刀の構えだろう、きっと。
「やるね! VOID料理人みたいだよ!」
嬉しそうに牡丹が叫びながら殴りに掛かっていた。
武器を持っていなくとも、あるもので何とかできるのは覚醒者の力があるからだろう。
「牡丹さんはそう言ったけど、わたしはまぁ……符――カード――があれば、術の行使は出来るし」
シェルミアが符を幾枚か投げつけた。
無意味に投げた訳ではない。マテリアルを込めて投げたそれらは結界を発生させるものだ。
「いつもよりも、多少は威力や精度が落ちはするけど……大きな支障はないんだよね」
光り輝く結界を発生した術は、新たに生み出されたVOIDごと、本体を焼いた。
市民の避難は済んでいるとはいえ、周囲の建物や設備への被害は最小限に抑えたい所。ならば、敵の数はコントロールする必要があると判断した。
チョコVOIDに氷の嵐が叩き付けられた。エニアの放った魔法だ。
「凍てつきやすかったりしないかな~って思ったけど、やっぱり難しいか~」
魔法自体で凍る訳ではない。それは炎の魔法を使っても燃やせない事と同じだ。
もっとも、マテリアルを介した魔法だからこそ、水の中でも、宇宙空間でも、氷や炎の魔法が使える訳なのだが。
「だけど、こっちは通じてるみたいだね」
鋭い動きのある踊りと共に唄い出す。
奏唱士としての力を周囲に広げていく。“彼”のマテリアルで、VOIDを威圧させるのだ。
それが嫌だと本能的に理解したのか、VOIDの反撃。軽いステップで避けるエニア。
その間にも、他のハンター達は攻撃を加えていく。
「上手く見つけてくれればいいけど」
そんな事を呟きながら、アイビスがベンチを足場に跳躍した。
立体的な機動を描き、鋭い蹴りの一撃を……見舞う。だが、同時に、彼女の足先はチョコだらけだ。
それは接近戦を挑んだ牡丹も同様だった。
「うわ! ベトベトだよ!」
「……うん、そうだと思ったよ」
牡丹の拳がチョコか何かでドロリとしている。
その様子を冷静に見て呟いたイレーヌ。きっと、そうなるんじゃないかなと思ったのだ。
「移動されると厄介かな」
イレーヌが魔法を唱える。無数の闇の刃が出現し、VOIDに打ち込まれた。
エニアのマテリアルに威圧された状態もあり、成すすべもなく闇の刃に串刺しにされるVOID。
だが、動けなくなった事で、より、反撃が激しくなったような気もする。
「気を付けないと……」
包丁を手にマーゴットが呟く。下手に打ち込んだら、包丁ごと、腕まで汚されそうだ。
周囲から袋叩きにあっている状態のVOIDが触手のようなものを全方向に対して放つ。
エニアを守るように、イレーヌが光の壁を出現させ、アイビスは高い瞬発力を活かし避けきった。
「牡丹はまぁ、大丈夫だろう」
「酷いよ! イレーヌ君!」
チョコの触手に絡まれている牡丹を敢えて、見守る――違う、眺めながら回復魔法の準備の為に、意識を高めるイレーヌ。
一方、エニアは全身を襲う激しい悪寒という名のトラウマに耐えていた。光の壁を突き抜けて、身体を叩かれたものの、絡まれずに済んだのだ。
「おさわりは禁止だから~!」
あんなものに捕まっては大惨事だ。
魔法を使う距離ならば、触手が飛んで来ないと思ったら、予想外に射程が長かったようだ。
そして、シェルミアは触手に捕まってしまった。無駄な執念さを感じる触手の勢いだった。
「ちょっとぉ!」
凄く甘い香りが漂う。甘いスイーツは好きだったとしても、これはキツイかもしれない。
「袴が! このエロVOID!」
シェルミアの袴が捲れるが、VOIDとしては特に意識していた行動ではなく、防具を剥がそうとしている行動なのだが。
だが、放送禁止状態になる前に、シェルミアを戒めていた触手が切り落とされた。
「ありがとう、マーゴット……さ……ん……?」
何か怪しい雰囲気の目のマーゴットに触手以上の恐怖を感じる。
そう、あれ、見た事ある。変なパルムが出た温泉の時と一緒だ。見れば、マーゴットの全身は既にチョコレートまみれになっていた。
「良かった、シェリィ」
ニヤリと笑ったのが逆に怖いと思いつつ、戒めから逃れたので、次の符を用意する。
このVOIDは極めて危険だ。さっさと討伐しなければならない。
だが、触手を振り回し、近付く事が困難だ。どう攻略すべきか、悩んだ次の瞬間だった。
「ありました! アイビスさん!」
孝純の声だった。見れば、公園の一角に立っている。
その脇にはポールのような何か。
「伏せて、孝純君!」
一気に駆け寄るアイビスは叫んだ。
本当は改めて避難させておきたい所だが、時間が無いと気が付いた。
少年を庇うように立った所で、エニアが援護に入る。
「引き付けるっていうなら、まぁ、協力するよ……効果あるかなぁ?」
「どうだろうか」
背中合わせになったアイビスとエニア。軍人の話によると、カップルに強い敵意を持つらしいが……。
突如として、怒り狂うような咆哮で大気を震わすVOID。思った以上に、気を引いた事に成功したようだ。
アイビスがやろうとした事の絶好のタイミングといえよう。
「不利な状況でも、使えるものは使っておかないと、勝てないからね!」
渾身の力でポールのようなもの――消火栓――に蹴りを叩き込んだ。
直後、膨大な量の水が突進してきたチョコVOIDへと放出される。
当然のように消火栓から噴き出した水でハンター達もびしょ濡れだ。
「え? 何?」
目を丸くして慌てる牡丹。
彼女は消火栓なる存在を知らなかったようだし、なぜ、VOIDに水を掛けるかというのも分からなかったようだ。
仲間を援護する為に符術を行使していたシェルミアがハッとする。
「そういえば、聞いた事ある。チョコに水を掛けたら大変な事になったって」
シェルミアは思い出した。バレンタインに渡すチョコを手作りしたという級友の話しを。
それは、この季節によくありがちなちょっとした失敗談ともいえよう。溶かしたチョコに誤って水が入ってしまい、チョコがボロボロと纏まらなくなってしまうのだ。
チョコVOIDだから、本物のチョコとは違うだろうから、狙い通りになる保証はなかった。
それでも、パティシエとして、スイーツを愛する者として、チョコを粗末にしたVOIDを許せなかったアイビスの機転は見事に的中した。危険を承知で見つけた孝純も大したものだ。
「チョコVOIDがボロボロに崩れていく……」
「これは、チャンスだね!」
マーゴットが包丁を構え、エニアが魔法を唱える。
二人の攻撃により、チョコVOIDの崩壊がより早まった。
「一体化していたのが分離したか。今なら、VOIDだけを狙えるはずだ!」
光球を作り出しながら、イレーヌが言った。
彼女の言う通りだ。丸裸になったVOIDに、ハンター達の一斉攻撃が放たれた。
「ガギギギギィ!!」
それに耐えきれず、VOIDが奇怪な音を立てた。
直後、爆発――崩れかけていたチョコを巻き散らしながら、VOIDは消え去ったのであった。
●チョコまみれのハンター達
「「「…………」」」
歓声は誰からも上がらなかった。VOIDは倒したが、最後の爆発で全員がチョコまみれになったのだ。
エニアが外套を手にする。酷い有様だ。
時間があれば、ちょっと踊ってみてもいいかなと思ったが、これでは、見世物もいい所だ。
「純白の外套にチョコ……はダメだよ……」
気を落とすエニアにイレーヌがニヤニヤと笑いながら言う。
「星加宅に戻ったら風呂を借りるか」
確か、2~3人位は同時に入れるだろう。
一人一人、入っていたら、時間が掛かるし。
「エニアは孝純君と入るべきだな」
何気なく言った言葉に、孝純が両手を振りながら驚く。
「ぼ、僕は大丈夫です! エニアさん達、女性の皆さんから先に入って下さい!」
「う、うん……そうだね、“女性”から入るべき……だね……」
孝純の物凄い勘違いに応えながら、“彼”は遠い目をした。今更指摘するのもどうかとも思うので、このままにしておこう。
そして、チョコまみれの純白だった外套を眺めた。クリーニングで落ちるだろうかと。
「一緒に入れる子がいれば、チョコを優しく綺麗に洗い流してあげよう。うん」
「不埒な行為は女性でも許さないわよ?」
イレーヌのやらしい目付きと手付きに対して、アイビスが冷たい表情で言う。
大袈裟な身振り手振りでイレーヌは返した。
「ジュンスイナオモイカラダヨ!」
「ほんとに?」
怪訝な顔をした所で、二人を巻き込むように、チョコまみれの牡丹の突撃。
成すすべもなく、巻き込まれる二人。まるで勝ち誇ったように、牡丹は右手を突き出した。
「でやぁぁぁ! 風呂場でデスマッチだよ!」
他人の家の風呂で、この女将軍は何をしでかすつもりなのか。せめて、風呂場を壊さなければいいが。
その様子をやれやれと眺めながら、シェルミアは符を手にする。符はチョコまみれだが、念の為、広場の浄化をしておこうと思ったからだ。
「……服はクリムゾンウェストに戻った後で洗うとして、せめて、身体の付いた汚れは……」
とりあえず、風呂に入るしかないだろう。
チョコにコーティングされたままだと、どこぞの作り話にあり得そうな『私・を・あ・げ・る♪』みたいな状態ではないか。
「シェリィ……」
ユラリユラリとマーゴットが近づいてきた。
やばい。あれは、VOIDの触手によって、きっと、何か外れてしまった状態のようだ。
思わず、一歩足を引いたが、そこまでだった。ギュっとチョコレートに包まれたマーゴットに抱き締められた。そして、首元のチョコを舐めるように淫靡な笑みの顔を近づけさせた。
「マーゴットさぁん!」
シェルミアの悲鳴にも近い叫び声が広場に響いたのであった。
おしまい
●数日後
孝純がハンターから貰ったチョコレートを口にしながら、母親からの手紙を読んでいた。
ハンター達にも同じ物を送ったらしい。内容は、イギリスに到着して、ある施設でお邪魔していると。
「返事を書かないと」
ちゃんと一人暮らしが出来ている事と、この前ハンター達と一緒にVOIDを倒した事を、書こうと思い至る。
「僕も、ハンターやお母さんみたいに、強くなれたりするのかな」
そんな事を呟きながら、同封してあった写真を眺めたのであった。
広場を我が物顔で占拠しているVOIDの見た目は、チョコレートの塊だった。
甘ったるいチョコレートの香りがハンター達にまで届くが、美味しそうには見えなかった。
「あー……。そういえば、そんな時節だったねー。……チョコレートかー……」
少し遠い目でシェルミア・クリスティア(ka5955)が呟いた。
この季節的な行事に、あまり縁が無かった彼女であったが、周囲から色々な話が耳に入ってくるものだ。
大好きな人に、大切な人に、世話になった人に、友達に……そんな想い出に浸っていた意識を切り替えるように、彼女は頭を振る。
「っと、そんな事はさて置き、VOIDの討伐しなくっちゃね」
「……チョコレートと融合って、もう何でも有りなんだね」
シェルミアの宣言にマーゴット(ka5022)が同意する。
何をどうすれば、チョコレートと融合したりするのだろうか。
兎も角、食べ物を粗末にするのは許せないし、それが大好きな甘いお菓子なら尚更の事。
「確実に仕留めるよ」
「そうだね、食べ物を粗末にする感じが拭えないのがなぁ。そこもVOIDのせいにしちゃおう、うん」
そんな訳でシェルミアは符を、マーゴットは買い物袋から包丁を取り出した。
折角だから料理していこうという話になって、スーパーで何気なしに買った包丁が、まさか、ここで役に立つとは。
早速、戦闘モードに入った仲間を見て、十色 エニア(ka0370)もマテリアルを高める。
「チョコレートと融合したからか、見た目はマイ…ルド……?」
確かに、“彼”の言う通り、VOIDの外見は一見、半溶けしたチョコレートの塊そのもので、狂気VOIDにありがちな怖さはない。
勿論、油断はできない。買物中だった事もあって、全員、愛用の武器を持って来ていないからだ。
「まぁ、元々魔法は魔導書媒体派だし、特に問題はないね。火力物足りないけど……」
「火力については、ボクに任せてよ」
鳴月 牡丹(kz0180)が無駄なドヤ顔で拳を作る。
そんな彼女の真横に並んだアイビス・グラス(ka2477)も拳を握っていた。
「格闘は武器がなくてもやれるのが強みだけど……相手によるよね」
「打撃が効きにくい敵には、ね。でも、やりようはあるからさ!」
「気功かな?」
首を傾げたアイビスに牡丹は力強く頷いた。
やけに自信満々な所が逆に不安になるが、まぁ、きっと、大丈夫だろう。牡丹だし。
一方、イレーヌ(ka1372)は星加 籃奈(kz0247)の一人息子である孝純に冷凍食品が大量に入った袋を渡した。
「早いところ片付けないと、今日中に冷凍食品を平らげなければいけない事態に陥ってしまうな」
「それは、勿体ないです」
金銭感覚も確りしている子だなとイレーヌは思いながら、唐突に覚醒状態に入る。
身長がグッと伸びるイレーヌに驚く孝純。
「……そういえば孝純に覚醒姿を見せるのは初めてか。どうだ、感想は?」
わざとらしく前かがみになりながら、孝純をからかう。
どこに視線を向けていいのか分からず、泳いでいる目が可愛い。
「か、覚醒者って、凄いんですね。そ、その、物理法則とか無視で」
「凄いのは、ここからだよ」
思わせぶりな口調でイレーヌは言ったのであった。
●チョコVOID討伐戦
買物袋を抱えて孝純が走る。
その直前に、彼に頼み事をしたアイビスは果敢にもVOIDの前面へと進んだ。
後衛組に近づけさせない為だ。その為には出来る限り、ヘイトを稼がなければならない。
「軟体系に効くかどうか分からないけど、やってみるしかないわねっと!」
直後、放たれるチョコレート風味の何か。
光線かと思ったが、それは、負のマテリアルが練り込まれたチョコレートの塊だった。
「スライムよりも厄介かも、これは」
アイビスの視界の中で、VOIDの身体から歪な球体が幾つも出現してきた。
狂気VOIDの中には、こうして、子VOIDを出現させる個体もいる。このチョコVOIDも同様なのだろう。
だが、完全に出現するよりも前に、本体ごと、マテリアルの刃で切り刻まれる。
「人を殺すだけなら包丁でも容易く出来る。流石にVOID相手にその理屈が通じるかは不明だけど……」
包丁を構えたマーゴットが放ったものであった。
絵的には迫力は欠けるが、舞刀士としての力を振るう分には問題ないようだ。
「生きてるなら出来ない道理はないよね……なんて、流石に物騒かな」
そう言いながら、包丁をケースに戻す。
几帳面な性格が成せる――ではなく、納刀の構えだろう、きっと。
「やるね! VOID料理人みたいだよ!」
嬉しそうに牡丹が叫びながら殴りに掛かっていた。
武器を持っていなくとも、あるもので何とかできるのは覚醒者の力があるからだろう。
「牡丹さんはそう言ったけど、わたしはまぁ……符――カード――があれば、術の行使は出来るし」
シェルミアが符を幾枚か投げつけた。
無意味に投げた訳ではない。マテリアルを込めて投げたそれらは結界を発生させるものだ。
「いつもよりも、多少は威力や精度が落ちはするけど……大きな支障はないんだよね」
光り輝く結界を発生した術は、新たに生み出されたVOIDごと、本体を焼いた。
市民の避難は済んでいるとはいえ、周囲の建物や設備への被害は最小限に抑えたい所。ならば、敵の数はコントロールする必要があると判断した。
チョコVOIDに氷の嵐が叩き付けられた。エニアの放った魔法だ。
「凍てつきやすかったりしないかな~って思ったけど、やっぱり難しいか~」
魔法自体で凍る訳ではない。それは炎の魔法を使っても燃やせない事と同じだ。
もっとも、マテリアルを介した魔法だからこそ、水の中でも、宇宙空間でも、氷や炎の魔法が使える訳なのだが。
「だけど、こっちは通じてるみたいだね」
鋭い動きのある踊りと共に唄い出す。
奏唱士としての力を周囲に広げていく。“彼”のマテリアルで、VOIDを威圧させるのだ。
それが嫌だと本能的に理解したのか、VOIDの反撃。軽いステップで避けるエニア。
その間にも、他のハンター達は攻撃を加えていく。
「上手く見つけてくれればいいけど」
そんな事を呟きながら、アイビスがベンチを足場に跳躍した。
立体的な機動を描き、鋭い蹴りの一撃を……見舞う。だが、同時に、彼女の足先はチョコだらけだ。
それは接近戦を挑んだ牡丹も同様だった。
「うわ! ベトベトだよ!」
「……うん、そうだと思ったよ」
牡丹の拳がチョコか何かでドロリとしている。
その様子を冷静に見て呟いたイレーヌ。きっと、そうなるんじゃないかなと思ったのだ。
「移動されると厄介かな」
イレーヌが魔法を唱える。無数の闇の刃が出現し、VOIDに打ち込まれた。
エニアのマテリアルに威圧された状態もあり、成すすべもなく闇の刃に串刺しにされるVOID。
だが、動けなくなった事で、より、反撃が激しくなったような気もする。
「気を付けないと……」
包丁を手にマーゴットが呟く。下手に打ち込んだら、包丁ごと、腕まで汚されそうだ。
周囲から袋叩きにあっている状態のVOIDが触手のようなものを全方向に対して放つ。
エニアを守るように、イレーヌが光の壁を出現させ、アイビスは高い瞬発力を活かし避けきった。
「牡丹はまぁ、大丈夫だろう」
「酷いよ! イレーヌ君!」
チョコの触手に絡まれている牡丹を敢えて、見守る――違う、眺めながら回復魔法の準備の為に、意識を高めるイレーヌ。
一方、エニアは全身を襲う激しい悪寒という名のトラウマに耐えていた。光の壁を突き抜けて、身体を叩かれたものの、絡まれずに済んだのだ。
「おさわりは禁止だから~!」
あんなものに捕まっては大惨事だ。
魔法を使う距離ならば、触手が飛んで来ないと思ったら、予想外に射程が長かったようだ。
そして、シェルミアは触手に捕まってしまった。無駄な執念さを感じる触手の勢いだった。
「ちょっとぉ!」
凄く甘い香りが漂う。甘いスイーツは好きだったとしても、これはキツイかもしれない。
「袴が! このエロVOID!」
シェルミアの袴が捲れるが、VOIDとしては特に意識していた行動ではなく、防具を剥がそうとしている行動なのだが。
だが、放送禁止状態になる前に、シェルミアを戒めていた触手が切り落とされた。
「ありがとう、マーゴット……さ……ん……?」
何か怪しい雰囲気の目のマーゴットに触手以上の恐怖を感じる。
そう、あれ、見た事ある。変なパルムが出た温泉の時と一緒だ。見れば、マーゴットの全身は既にチョコレートまみれになっていた。
「良かった、シェリィ」
ニヤリと笑ったのが逆に怖いと思いつつ、戒めから逃れたので、次の符を用意する。
このVOIDは極めて危険だ。さっさと討伐しなければならない。
だが、触手を振り回し、近付く事が困難だ。どう攻略すべきか、悩んだ次の瞬間だった。
「ありました! アイビスさん!」
孝純の声だった。見れば、公園の一角に立っている。
その脇にはポールのような何か。
「伏せて、孝純君!」
一気に駆け寄るアイビスは叫んだ。
本当は改めて避難させておきたい所だが、時間が無いと気が付いた。
少年を庇うように立った所で、エニアが援護に入る。
「引き付けるっていうなら、まぁ、協力するよ……効果あるかなぁ?」
「どうだろうか」
背中合わせになったアイビスとエニア。軍人の話によると、カップルに強い敵意を持つらしいが……。
突如として、怒り狂うような咆哮で大気を震わすVOID。思った以上に、気を引いた事に成功したようだ。
アイビスがやろうとした事の絶好のタイミングといえよう。
「不利な状況でも、使えるものは使っておかないと、勝てないからね!」
渾身の力でポールのようなもの――消火栓――に蹴りを叩き込んだ。
直後、膨大な量の水が突進してきたチョコVOIDへと放出される。
当然のように消火栓から噴き出した水でハンター達もびしょ濡れだ。
「え? 何?」
目を丸くして慌てる牡丹。
彼女は消火栓なる存在を知らなかったようだし、なぜ、VOIDに水を掛けるかというのも分からなかったようだ。
仲間を援護する為に符術を行使していたシェルミアがハッとする。
「そういえば、聞いた事ある。チョコに水を掛けたら大変な事になったって」
シェルミアは思い出した。バレンタインに渡すチョコを手作りしたという級友の話しを。
それは、この季節によくありがちなちょっとした失敗談ともいえよう。溶かしたチョコに誤って水が入ってしまい、チョコがボロボロと纏まらなくなってしまうのだ。
チョコVOIDだから、本物のチョコとは違うだろうから、狙い通りになる保証はなかった。
それでも、パティシエとして、スイーツを愛する者として、チョコを粗末にしたVOIDを許せなかったアイビスの機転は見事に的中した。危険を承知で見つけた孝純も大したものだ。
「チョコVOIDがボロボロに崩れていく……」
「これは、チャンスだね!」
マーゴットが包丁を構え、エニアが魔法を唱える。
二人の攻撃により、チョコVOIDの崩壊がより早まった。
「一体化していたのが分離したか。今なら、VOIDだけを狙えるはずだ!」
光球を作り出しながら、イレーヌが言った。
彼女の言う通りだ。丸裸になったVOIDに、ハンター達の一斉攻撃が放たれた。
「ガギギギギィ!!」
それに耐えきれず、VOIDが奇怪な音を立てた。
直後、爆発――崩れかけていたチョコを巻き散らしながら、VOIDは消え去ったのであった。
●チョコまみれのハンター達
「「「…………」」」
歓声は誰からも上がらなかった。VOIDは倒したが、最後の爆発で全員がチョコまみれになったのだ。
エニアが外套を手にする。酷い有様だ。
時間があれば、ちょっと踊ってみてもいいかなと思ったが、これでは、見世物もいい所だ。
「純白の外套にチョコ……はダメだよ……」
気を落とすエニアにイレーヌがニヤニヤと笑いながら言う。
「星加宅に戻ったら風呂を借りるか」
確か、2~3人位は同時に入れるだろう。
一人一人、入っていたら、時間が掛かるし。
「エニアは孝純君と入るべきだな」
何気なく言った言葉に、孝純が両手を振りながら驚く。
「ぼ、僕は大丈夫です! エニアさん達、女性の皆さんから先に入って下さい!」
「う、うん……そうだね、“女性”から入るべき……だね……」
孝純の物凄い勘違いに応えながら、“彼”は遠い目をした。今更指摘するのもどうかとも思うので、このままにしておこう。
そして、チョコまみれの純白だった外套を眺めた。クリーニングで落ちるだろうかと。
「一緒に入れる子がいれば、チョコを優しく綺麗に洗い流してあげよう。うん」
「不埒な行為は女性でも許さないわよ?」
イレーヌのやらしい目付きと手付きに対して、アイビスが冷たい表情で言う。
大袈裟な身振り手振りでイレーヌは返した。
「ジュンスイナオモイカラダヨ!」
「ほんとに?」
怪訝な顔をした所で、二人を巻き込むように、チョコまみれの牡丹の突撃。
成すすべもなく、巻き込まれる二人。まるで勝ち誇ったように、牡丹は右手を突き出した。
「でやぁぁぁ! 風呂場でデスマッチだよ!」
他人の家の風呂で、この女将軍は何をしでかすつもりなのか。せめて、風呂場を壊さなければいいが。
その様子をやれやれと眺めながら、シェルミアは符を手にする。符はチョコまみれだが、念の為、広場の浄化をしておこうと思ったからだ。
「……服はクリムゾンウェストに戻った後で洗うとして、せめて、身体の付いた汚れは……」
とりあえず、風呂に入るしかないだろう。
チョコにコーティングされたままだと、どこぞの作り話にあり得そうな『私・を・あ・げ・る♪』みたいな状態ではないか。
「シェリィ……」
ユラリユラリとマーゴットが近づいてきた。
やばい。あれは、VOIDの触手によって、きっと、何か外れてしまった状態のようだ。
思わず、一歩足を引いたが、そこまでだった。ギュっとチョコレートに包まれたマーゴットに抱き締められた。そして、首元のチョコを舐めるように淫靡な笑みの顔を近づけさせた。
「マーゴットさぁん!」
シェルミアの悲鳴にも近い叫び声が広場に響いたのであった。
おしまい
●数日後
孝純がハンターから貰ったチョコレートを口にしながら、母親からの手紙を読んでいた。
ハンター達にも同じ物を送ったらしい。内容は、イギリスに到着して、ある施設でお邪魔していると。
「返事を書かないと」
ちゃんと一人暮らしが出来ている事と、この前ハンター達と一緒にVOIDを倒した事を、書こうと思い至る。
「僕も、ハンターやお母さんみたいに、強くなれたりするのかな」
そんな事を呟きながら、同封してあった写真を眺めたのであった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/16 20:48:13 |
|
![]() |
質問卓 イレーヌ(ka1372) ドワーフ|10才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/02/21 01:35:27 |
|
![]() |
チョコVOID討伐へ(相談 シェルミア・クリスティア(ka5955) 人間(リアルブルー)|18才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2018/02/18 20:04:43 |