ゲスト
(ka0000)
森の洋館奪還作戦
マスター:鷹春

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~5人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/02/21 15:00
- 完成日
- 2018/02/28 00:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「誰かーー! 誰か来てくれーー!! けが人だー!」
小さな村の入り口で、助けを呼ぶ男性の声が聞こえてきた。
村人が駆けつけると、そこには腕に大怪我を負った女性が座り込んでいた。
「これは酷い……! 担架を持ってきてくれ! 医者の元へ連れて行こう!」
村長の掛け声で女性はすぐさま村で唯一の診療所へと運ばれていった。
●
「一体何があったんだ?」
治療を終え、ベッドに寝かされた女性に、村の長は労るように話しかける。
「……ご、ゴブリンが……急に襲い掛かってきて……」
村の一員である女性は、震える声で答える。
「ゴブリンだと……!? この村の近くにはゴブリンは居なかった筈なのに……!」
狼狽える村長の横で、世話役の男が冷静に女性に質問を投げかけた。
「一体、どの辺りで襲われたんだ?」
女性の話では、木苺を取りに行く最中に、その森にある誰も住んでいない洋館の傍を通った際にいきなりゴブリン達が飛び出してきて襲われたのだという。
慌てて逃げたが、1匹に追いつかれ武器で攻撃されたそうだ。
痛みに耐えながらも必死に走り、ゴブリンを振り払うことが出来たという。
状況を説明している女性の声は段々と震えが強くなり、喋り終わる頃にはその震えが身体にまで現れ始めていた。
「すまない、恐ろしいことを思い出させてしまったな……今はゆっくりと休んでほしい」
壮年の男性は医者に後をまかせ、村長と共に診療所を離れた。
「村長……不味いですよ、この村にはゴブリンと戦える者など……」
「解っておる……こういう時は、彼らに頼るしか無い」
そういうと村長は、世話役と共にリゼリオに向けて馬を走らせた。
●
「ハンター諸君、仕事が入りましたよ~」
だらしない格好をしたハンターオフィスの職員が、資料を片手にハンター達の元を訪れた。
「ここから1日半ほどかけた村の村長からの討伐依頼だよ~」
40代前半くらいの職員は、ペラペラと資料をめくり始め、詳細を話し始めた。
2日前、村の女性が村近くの森にある廃洋館前で魔物に襲われたという。どうやらその洋館にゴブリンの群れが住み着いてしまったようだ。
敵の詳しい数は判っていないが、その後森に入った村人たちの証言によれば、洋館の窓から、普通よりも二回り程度大きなゴブリンが、普通サイズのゴブリンを数匹連れて家の中を動き回っていたという。
また、見張りと思しきコボルドが2匹ほど洋館の周りを巡回しているらしい。
「恐らく、この大ゴブリンが群れを統率するボスだろうね~。こいつを倒せば群れは解散してゴブリン達は散り散りに逃げていくと思うよ~」
すると、締まりのない顔をしていたハンターオフィス職員の表情が、急にキッと引き締まった。
「だが、一つの群れが解散しても、また何処かで群れを作られては意味がない。ボスの討伐は優先だが、出来る限り群れの殲滅にも努めてほしい。その為にも、まずは敵の数の把握に努めたほうが良いかもしれないな」
職員の丸メガネのレンズがギラリと逆光する。
「もし、ゴブリン達が洋館を占拠し続ければ、いずれ村を襲い甚大な被害を起こす事は間違い無いだろう。そうならないためにも君達の活躍に期待しているよ」
「誰かーー! 誰か来てくれーー!! けが人だー!」
小さな村の入り口で、助けを呼ぶ男性の声が聞こえてきた。
村人が駆けつけると、そこには腕に大怪我を負った女性が座り込んでいた。
「これは酷い……! 担架を持ってきてくれ! 医者の元へ連れて行こう!」
村長の掛け声で女性はすぐさま村で唯一の診療所へと運ばれていった。
●
「一体何があったんだ?」
治療を終え、ベッドに寝かされた女性に、村の長は労るように話しかける。
「……ご、ゴブリンが……急に襲い掛かってきて……」
村の一員である女性は、震える声で答える。
「ゴブリンだと……!? この村の近くにはゴブリンは居なかった筈なのに……!」
狼狽える村長の横で、世話役の男が冷静に女性に質問を投げかけた。
「一体、どの辺りで襲われたんだ?」
女性の話では、木苺を取りに行く最中に、その森にある誰も住んでいない洋館の傍を通った際にいきなりゴブリン達が飛び出してきて襲われたのだという。
慌てて逃げたが、1匹に追いつかれ武器で攻撃されたそうだ。
痛みに耐えながらも必死に走り、ゴブリンを振り払うことが出来たという。
状況を説明している女性の声は段々と震えが強くなり、喋り終わる頃にはその震えが身体にまで現れ始めていた。
「すまない、恐ろしいことを思い出させてしまったな……今はゆっくりと休んでほしい」
壮年の男性は医者に後をまかせ、村長と共に診療所を離れた。
「村長……不味いですよ、この村にはゴブリンと戦える者など……」
「解っておる……こういう時は、彼らに頼るしか無い」
そういうと村長は、世話役と共にリゼリオに向けて馬を走らせた。
●
「ハンター諸君、仕事が入りましたよ~」
だらしない格好をしたハンターオフィスの職員が、資料を片手にハンター達の元を訪れた。
「ここから1日半ほどかけた村の村長からの討伐依頼だよ~」
40代前半くらいの職員は、ペラペラと資料をめくり始め、詳細を話し始めた。
2日前、村の女性が村近くの森にある廃洋館前で魔物に襲われたという。どうやらその洋館にゴブリンの群れが住み着いてしまったようだ。
敵の詳しい数は判っていないが、その後森に入った村人たちの証言によれば、洋館の窓から、普通よりも二回り程度大きなゴブリンが、普通サイズのゴブリンを数匹連れて家の中を動き回っていたという。
また、見張りと思しきコボルドが2匹ほど洋館の周りを巡回しているらしい。
「恐らく、この大ゴブリンが群れを統率するボスだろうね~。こいつを倒せば群れは解散してゴブリン達は散り散りに逃げていくと思うよ~」
すると、締まりのない顔をしていたハンターオフィス職員の表情が、急にキッと引き締まった。
「だが、一つの群れが解散しても、また何処かで群れを作られては意味がない。ボスの討伐は優先だが、出来る限り群れの殲滅にも努めてほしい。その為にも、まずは敵の数の把握に努めたほうが良いかもしれないな」
職員の丸メガネのレンズがギラリと逆光する。
「もし、ゴブリン達が洋館を占拠し続ければ、いずれ村を襲い甚大な被害を起こす事は間違い無いだろう。そうならないためにも君達の活躍に期待しているよ」
リプレイ本文
●
鞍馬 真(ka5819)は木々に隠れながら双眼鏡越しに館の中を偵察していた。
「ここから解るのはこの程度か……」
ポツリと独り言をつぶやいていたところ、手に持っていたトランシーバーからエメラルド・シルフィユ(ka4678)の声が聞こえてきた。
「鞍馬、そちらの様子はどうなっている?」
「裏手からは2階の寝室に小さいのが2匹見える。1階のリビングには大きなゴブリンが座り込んでいるな……恐らくあれがボスだろう」
彼の話では、1階のロビーにも小さいのが1匹確認出来たが、厨房の窓はすりガラスになっており、中をよく確認出来なかったそうだ。
そんな話を仲間に共有していると、久延毘 羽々姫(ka6474)からも無線が入る。
「館の周りみてきたぞ! 窓には鎧戸もないし、1階の応接室と2階の書斎の窓は半開きだったな」
「ほぉほぉ、ならそこから侵入することが出来そうやねぇ。ふふ、侵入するんは忍の専売特許やで」
琴吹 琉那(ka6082)が久延毘の言葉に相槌を打ちながら会話に参加する。
「せや、イヴはん。そちらに見張りはんがいきましたえ」
連絡をうけたイヴ(ka6763)は琴吹の言葉に応える。
「わかった、じゃあそろそろ準備をしておくよ! 同時に狙撃……だったよな?」
「そぉいう事。ほな、よろしゅう」
ハンター達は、おおよその館の情報を手に入れ、各々見張りを狙撃するための準備を始めたのだった。
●
コボルドは、見回りの為に館の裏手側へとやってきていた。
ちょうど玄関とは真逆の位置に差し掛かった時、森の茂みからガサガサッという音が聞こえてきた。
「……?」
物音が気になったのか、音のする方向を訝しげに眺める見張りのコボルド。一歩一歩、慎重に音のする方へと歩みを進めていく。
不自然な物音は、亜人が近づくと慌ててその場から離れるように音を立てながら移動していく。
コボルドは不審に思い、その音を追って茂みを掻き分けながら森の奥へと入っていった。
館の姿が木々に隠れた頃、不審な物音はピタリと止み、辺りには枝葉が揺れる音が聞こえてくるばかりだ。
不思議そうにキョロキョロとあたりを見回すコボルド。その様子を、イヴと鞍馬は木の陰から見つめていた。
「きみの作戦、成功したみたいだな」
「よし、これなら館のゴブリン達に気づかれることも無いな! あとは入り口の3人から連絡を待つだけか」
2人がそんな話をしていると、エメラルドから連絡が入る。
「こちらも準備が出来た。いつでも行けるぞ」
「オーケー、それじゃあ久延毘さん、カウントダウンよろしく!」
イヴの言葉に、久延毘はよっしゃ! と息巻きながら10からカウントダウンを始める。
「10……9……8……」
カウントが進むに連れ、ハンター達の周りの空気がピンと張り詰めていく。
「7……6……5……4……」
琴吹は玄関の見張りの死角へと入り、いつでも仕留められるように手裏剣を構える。エメラルドは万が一の時の為に茂みから剣を抜いた。
「3……2……1……」
イヴはシャープシューティングを使い、コボルドに意識を集中させ矢じりを敵の脳天に定める。鞍馬もいざという時のために亜人に向かって弓をしならせる。
「0!!」
瞬間、琴吹が投げた手裏剣はコボルドの急所に突き刺さり、イヴが放った矢は見事に敵の頭を撃ち抜いた!
見張りのコボルド達は声を上げることもなく、ほぼ同時にその場に倒れた。
「よし……!」
思わず小さくガッツポーズをとるイヴ。
「お見事」
鞍馬は弓を下げ、イヴの射撃スキルを賞賛する。すると、入り口にいるエメラルドから通信が入る。
「そちらも上手くいったようだな。では、作戦通り私は安全ルートの確保へと向かおう」
「……よし、じゃあさっさとあいつらには退去して貰うとしようかね。家賃払ってないでしょ、多分」
そう言いながら、久延毘は館を仰ぎ見た。
●
「隣の部屋にゴブリンが居るはずだ。音を立てずに慎重に行こう」
鞍馬は書斎の窓を音が出ないようにゆっくりと開く。その後を追って久延毘が辺りを見回しながら入ってきた。
「いよっし潜入完了! 琴吹、そっちはどうだ?」
声を掛けた無線から、琴吹の声が聞こえてくる。
「こちらも応接室から侵入できましたえ。これから敵さん仕留めに行くところですわぁ」
「了解、健闘を祈る」
通信が終了すると、エメラルドは琴吹に提案を持ちかける。
「琴吹、ここからは二手に別れよう。固まって行動するより効率的だろう」
「そうやなぁ。ほな、そうしましょか。私は厨房の方に行きますさかい、エメラルドはんはロビーの方よろしくお頼み申します~」
「分かった」
こうして洋館での掃討作戦が開始された。
●
応接室からロビーへと向かったエメラルドは、辺りをキョロキョロと見回す1匹のゴブリンを発見した。
(居たな……)
咄嗟に物陰に隠れるエメラルド。そっと柱の影から様子を伺うが、敵はまだこちらには気がついていないようだ。
ゴブリンを一撃で仕留められるように、エメラルドはホーリーセイバーを剣に纏わせ、敵の隙を狙う。
緊張感が漂う中、ゴブリンが一瞬、彼女に背を向けた。
(……今だ!)
エメラルドは柱の影から一気にゴブリンの元へと走り出し、敵との距離を素早く詰める。
ゴブリンが急速に近づいてくる足音に気が付き、振り向こうとした瞬間、エメラルドの剣が敵の背中を引き裂いた!
「ギャッ……!」
亜人は短く断末魔を上げて倒れ込んだ。
(なんとかいけたな……しかし……)
床に転がる亜人の死体を見つめるエメラルド。
(ゴブリン相手とはいえ、暗殺者の真似事をしてしまったな……)
エメラルドは短いため息をついた後、小さく懺悔の言葉を口にしたのち、無線を手に取った。
「ロビーに居たゴブリンは討伐した。そちらはどうだ?」
その言葉に応答したのは琴吹だった。
「はいはい、今敵さんを厨房で1匹みつけたさかい、退治させてもらいます~」
そう言うと琴吹は調理台に隠れ、気配を消しながらそろりそろりとゴブリンに近づいていく。
(ほな、お命頂戴させてもらいましょか)
琴吹は足に力を入れ、思い切り地面を蹴り、一瞬にし亜人との間合いを詰める。ゴブリンはようやく琴吹の気配に気がついたが、そのときには既に亜人の視界は天井を向いていた。
足払いをされ床に倒れたゴブリンに、琴吹は拳に構築されたマテリアルの刃を使い、相手の喉を思い切り殴りつけた。
「………!!」
ゴキリ、と喉から嫌な音を立て、声を上げる事もできず、ゴブリンは力尽きた。
「フフ、忍者を敵に回したんが運の尽きやったねえ」
琴吹は、ゆっくりと立ち上がりながら無線を取る。
「こちらも退治完了しましたえ。お2階さんはどないです?」
「いまやってるとこ!」
琴吹の無線に答えたのは久延毘だった。寝室にいる2匹を暗殺しようとしたところ、見つかってしまったようだった。
「一気に片付けよう」
鞍馬は精神を統一させ、呼吸を整える。
「もちろん! 一撃必殺でいくよ!」
久延毘も拳を構え、足に力を入れる。
ゴブリンはグギャギャ! と声を上げ、持っている棍棒で鞍馬に向けて攻撃を仕掛けるが、棍棒は鞍馬を捉えることができずに宙を舞った。
「遅いな」
鞍馬は両手に持ったダガーを構え、棍棒を持っていたゴブリンの身体を切り裂いた。
「ギャ!」
敵は短く悲鳴を上げて倒れ込んだ。それを見た槍を持った仲間のゴブリンがボスを呼ぼうと雄叫びをあげようとしたが、久延毘がそれを許さなかった。
「呼ばせないよ!」
久延毘は床を強く踏みしめて瞬間的に相手の間合いに飛び込んだ。
「白虎神拳!」
まさに必殺技と呼べる一撃をゴブリンの鳩尾に与え、思い切り敵を吹き飛ばした! ゴブリンは壁に打ち付けられ、その場に沈んだ。
誤算だったのは、かなりの力で吹き飛ばしたせいで、かなり大きな物音が出てしまったことだ。
「あっ、やっば……やっちゃったか?」
バツの悪そうな顔をする久延毘を尻目に、鞍馬は無線を取り出して外に居るイヴに連絡を入れる。
「2階のゴブリンは倒したが、かなりの物音を出してしまった。ボスの動きはどうだろうか?」
森であらかじめ探していた岩や太い枝を使って玄関以外の出入り口を入念に塞いでいたイヴは、無線を受けてリビングへと目を向けた。
「あー……ボスは物音に気付いてるみたいだね。ロビーの方へ移動を始めたからエメラルドは気をつけて。私も狙撃で援護するから!」
「それは頼もしい、よろしく頼むよ」
エメラルドはリビングの扉に向き直り剣を構えた。
●
イヴの無線が切れた瞬間、ロビーからリビングに通じる扉がリビング側から勢い良くぶち壊された。
中からは息を荒くした大きなゴブリンが、ズシンズシンと大きな足音を立てて現れた。あらかじめ無線でボスに動きがあると知っていたハンター達は、既にロビーへと集まっていた。
「まったく豪快な登場だなあ!」
そう言いながら拳を構える久延毘。ボスゴブリンは咆哮を上げて手に持っている大きな斧を振り回した。
「うわっ! 危ないだろ!」
久延毘は縮地瞬動を使い、大ゴブリンの懐に飛び込み、思い切り拳を叩き込んだ。
グウウ、と低い唸り声を上げるが、流石にボスだけあって倒れる様子はない。亜人はギロリと久延毘を睨みつけ、反撃するように斧を久延毘に向かって振りかぶった。
「やべ……!」
久延毘は咄嗟に柔能制剛の構えを取るが、腕が届く前に斧が彼女の身体にぶつかるほうが早かった。
「いっ……た!!」
斧が命中してしまった久延毘は石畳の床に転がったが、大した怪我は負っていなかった。幸運なことに刃の付いていない場所に当たったようだ。
すぐさま立ち上がろうとする久延毘とボスゴブリンの間に、エメラルドが剣を構えながら入り込んだ。
「ここは私に任せろ! おまえは引いて体勢を立て直せ!」
「サンキュー、エメラルド……! 恩に着る!」
エメラルドはホーリーセイバーを纏わせた剣を構えてボスゴブリンの足に斬りかかった!
『グオオオオ!』
エメラルドの放った斬撃は大ゴブリンの足を切り裂き、敵は低い声を上げてよろめいた。
「ほな、私も行かせてもらいましょか!」
琴吹はボスゴブリンの腕をへし折ろうと斧をかいくぐり、得物を持っている右手に飛びつこうとしたが、それに気付いたボスは大きな動きで暴れ出した。
「あかん……!」
ボスゴブリンの腕が琴吹にぶつかりそうになった瞬間、ヒュンと風を切るような音が琴吹の身体を横切り、一本の矢がボスの腕に突き刺さった!
「イヴはん、恩にきります!」
「間に合って良かった! このまま援護するから一気に仕留めよう!」
イヴはえびらから矢を取り出し弓につがえ、ボスに向かって更に矢を放つ。
『ガアアアアアア!!!』
大ゴブリンは矢を払うように手を大きく振りかぶる。完全に注意がイヴの攻撃に向いているようだ。
この好機を、鞍馬が見逃す筈が無かった。
ソウルエッジを纏わせたダガーを構え、剣心一如を使い更に武器の威力を高めていく。
素早くボスゴブリンに向かっていく、斧の間合いの内側に潜り込んだ。
「これで決める……!」
鞍馬は目にも留まらぬ連撃で敵の胴体を素早く切り裂いた!
『グゴオオオオオオッッ!!!!』
大ゴブリンは膝をつくが、まだその瞳には闘志の炎が燃えている。
……しかし、その炎も、次の瞬間には燃え尽きていた。
鞍馬の放った3撃目の斬撃が、直線状にボスの急所を貫いていたのだ。
『が、アアアアアアアアアアアアア……』
ボスゴブリンは、ゆっくりと後ろに倒れ込んだ。
●
「館内と周囲を見回ってきたが、残党と思われるゴブリンの姿は無かった」
周囲の確認をしてきた鞍馬が他のメンバーが待っている村へと戻ってきた。
鞍馬の言葉を聞いた村人たちは、わあっと歓声を上げた。
「おお……! ハンターの皆さん、本当に有難うございます!」
「いえ、これが私達の仕事ですから。」
琴吹はねぎらいの言葉を鞍馬にかける。
「おつかれさんです鞍馬はん。最後の一撃格好がよろしかったです」
「ありがとう。なんとか倒せてよかったよ。」
鞍馬と琴吹が談笑する中、エメラルドは少し憂いた表情を浮かべていた。その様子に気がついたイヴと久延毘はエメラルドに声をかける。
「どうしたんだ~? エメラルド。そんな顔して!」
「何か気になることでもあるのか?」
「いや……私は神に仕える身でありながら暗殺者のような事をしてしまった事を少し悔やんでいてな……」
目線を落とすエメラルドに、久延毘は気合を入れるように彼女の背中をバンと叩く。
「そう気にするなって! 悪いゴブリン達を倒して、村が救われたんだ。アンタの行いは間違いないってアタシが言ってやるよ!」
息巻く久延毘に、エメラルドはあっけにとられた表情をしていたが、次第に柔らかい笑みへと表情を変えていく。
「ああ、ありがとう久延毘」
こうして、小さな街に再び平穏な日常が戻ってきたのだった。
鞍馬 真(ka5819)は木々に隠れながら双眼鏡越しに館の中を偵察していた。
「ここから解るのはこの程度か……」
ポツリと独り言をつぶやいていたところ、手に持っていたトランシーバーからエメラルド・シルフィユ(ka4678)の声が聞こえてきた。
「鞍馬、そちらの様子はどうなっている?」
「裏手からは2階の寝室に小さいのが2匹見える。1階のリビングには大きなゴブリンが座り込んでいるな……恐らくあれがボスだろう」
彼の話では、1階のロビーにも小さいのが1匹確認出来たが、厨房の窓はすりガラスになっており、中をよく確認出来なかったそうだ。
そんな話を仲間に共有していると、久延毘 羽々姫(ka6474)からも無線が入る。
「館の周りみてきたぞ! 窓には鎧戸もないし、1階の応接室と2階の書斎の窓は半開きだったな」
「ほぉほぉ、ならそこから侵入することが出来そうやねぇ。ふふ、侵入するんは忍の専売特許やで」
琴吹 琉那(ka6082)が久延毘の言葉に相槌を打ちながら会話に参加する。
「せや、イヴはん。そちらに見張りはんがいきましたえ」
連絡をうけたイヴ(ka6763)は琴吹の言葉に応える。
「わかった、じゃあそろそろ準備をしておくよ! 同時に狙撃……だったよな?」
「そぉいう事。ほな、よろしゅう」
ハンター達は、おおよその館の情報を手に入れ、各々見張りを狙撃するための準備を始めたのだった。
●
コボルドは、見回りの為に館の裏手側へとやってきていた。
ちょうど玄関とは真逆の位置に差し掛かった時、森の茂みからガサガサッという音が聞こえてきた。
「……?」
物音が気になったのか、音のする方向を訝しげに眺める見張りのコボルド。一歩一歩、慎重に音のする方へと歩みを進めていく。
不自然な物音は、亜人が近づくと慌ててその場から離れるように音を立てながら移動していく。
コボルドは不審に思い、その音を追って茂みを掻き分けながら森の奥へと入っていった。
館の姿が木々に隠れた頃、不審な物音はピタリと止み、辺りには枝葉が揺れる音が聞こえてくるばかりだ。
不思議そうにキョロキョロとあたりを見回すコボルド。その様子を、イヴと鞍馬は木の陰から見つめていた。
「きみの作戦、成功したみたいだな」
「よし、これなら館のゴブリン達に気づかれることも無いな! あとは入り口の3人から連絡を待つだけか」
2人がそんな話をしていると、エメラルドから連絡が入る。
「こちらも準備が出来た。いつでも行けるぞ」
「オーケー、それじゃあ久延毘さん、カウントダウンよろしく!」
イヴの言葉に、久延毘はよっしゃ! と息巻きながら10からカウントダウンを始める。
「10……9……8……」
カウントが進むに連れ、ハンター達の周りの空気がピンと張り詰めていく。
「7……6……5……4……」
琴吹は玄関の見張りの死角へと入り、いつでも仕留められるように手裏剣を構える。エメラルドは万が一の時の為に茂みから剣を抜いた。
「3……2……1……」
イヴはシャープシューティングを使い、コボルドに意識を集中させ矢じりを敵の脳天に定める。鞍馬もいざという時のために亜人に向かって弓をしならせる。
「0!!」
瞬間、琴吹が投げた手裏剣はコボルドの急所に突き刺さり、イヴが放った矢は見事に敵の頭を撃ち抜いた!
見張りのコボルド達は声を上げることもなく、ほぼ同時にその場に倒れた。
「よし……!」
思わず小さくガッツポーズをとるイヴ。
「お見事」
鞍馬は弓を下げ、イヴの射撃スキルを賞賛する。すると、入り口にいるエメラルドから通信が入る。
「そちらも上手くいったようだな。では、作戦通り私は安全ルートの確保へと向かおう」
「……よし、じゃあさっさとあいつらには退去して貰うとしようかね。家賃払ってないでしょ、多分」
そう言いながら、久延毘は館を仰ぎ見た。
●
「隣の部屋にゴブリンが居るはずだ。音を立てずに慎重に行こう」
鞍馬は書斎の窓を音が出ないようにゆっくりと開く。その後を追って久延毘が辺りを見回しながら入ってきた。
「いよっし潜入完了! 琴吹、そっちはどうだ?」
声を掛けた無線から、琴吹の声が聞こえてくる。
「こちらも応接室から侵入できましたえ。これから敵さん仕留めに行くところですわぁ」
「了解、健闘を祈る」
通信が終了すると、エメラルドは琴吹に提案を持ちかける。
「琴吹、ここからは二手に別れよう。固まって行動するより効率的だろう」
「そうやなぁ。ほな、そうしましょか。私は厨房の方に行きますさかい、エメラルドはんはロビーの方よろしくお頼み申します~」
「分かった」
こうして洋館での掃討作戦が開始された。
●
応接室からロビーへと向かったエメラルドは、辺りをキョロキョロと見回す1匹のゴブリンを発見した。
(居たな……)
咄嗟に物陰に隠れるエメラルド。そっと柱の影から様子を伺うが、敵はまだこちらには気がついていないようだ。
ゴブリンを一撃で仕留められるように、エメラルドはホーリーセイバーを剣に纏わせ、敵の隙を狙う。
緊張感が漂う中、ゴブリンが一瞬、彼女に背を向けた。
(……今だ!)
エメラルドは柱の影から一気にゴブリンの元へと走り出し、敵との距離を素早く詰める。
ゴブリンが急速に近づいてくる足音に気が付き、振り向こうとした瞬間、エメラルドの剣が敵の背中を引き裂いた!
「ギャッ……!」
亜人は短く断末魔を上げて倒れ込んだ。
(なんとかいけたな……しかし……)
床に転がる亜人の死体を見つめるエメラルド。
(ゴブリン相手とはいえ、暗殺者の真似事をしてしまったな……)
エメラルドは短いため息をついた後、小さく懺悔の言葉を口にしたのち、無線を手に取った。
「ロビーに居たゴブリンは討伐した。そちらはどうだ?」
その言葉に応答したのは琴吹だった。
「はいはい、今敵さんを厨房で1匹みつけたさかい、退治させてもらいます~」
そう言うと琴吹は調理台に隠れ、気配を消しながらそろりそろりとゴブリンに近づいていく。
(ほな、お命頂戴させてもらいましょか)
琴吹は足に力を入れ、思い切り地面を蹴り、一瞬にし亜人との間合いを詰める。ゴブリンはようやく琴吹の気配に気がついたが、そのときには既に亜人の視界は天井を向いていた。
足払いをされ床に倒れたゴブリンに、琴吹は拳に構築されたマテリアルの刃を使い、相手の喉を思い切り殴りつけた。
「………!!」
ゴキリ、と喉から嫌な音を立て、声を上げる事もできず、ゴブリンは力尽きた。
「フフ、忍者を敵に回したんが運の尽きやったねえ」
琴吹は、ゆっくりと立ち上がりながら無線を取る。
「こちらも退治完了しましたえ。お2階さんはどないです?」
「いまやってるとこ!」
琴吹の無線に答えたのは久延毘だった。寝室にいる2匹を暗殺しようとしたところ、見つかってしまったようだった。
「一気に片付けよう」
鞍馬は精神を統一させ、呼吸を整える。
「もちろん! 一撃必殺でいくよ!」
久延毘も拳を構え、足に力を入れる。
ゴブリンはグギャギャ! と声を上げ、持っている棍棒で鞍馬に向けて攻撃を仕掛けるが、棍棒は鞍馬を捉えることができずに宙を舞った。
「遅いな」
鞍馬は両手に持ったダガーを構え、棍棒を持っていたゴブリンの身体を切り裂いた。
「ギャ!」
敵は短く悲鳴を上げて倒れ込んだ。それを見た槍を持った仲間のゴブリンがボスを呼ぼうと雄叫びをあげようとしたが、久延毘がそれを許さなかった。
「呼ばせないよ!」
久延毘は床を強く踏みしめて瞬間的に相手の間合いに飛び込んだ。
「白虎神拳!」
まさに必殺技と呼べる一撃をゴブリンの鳩尾に与え、思い切り敵を吹き飛ばした! ゴブリンは壁に打ち付けられ、その場に沈んだ。
誤算だったのは、かなりの力で吹き飛ばしたせいで、かなり大きな物音が出てしまったことだ。
「あっ、やっば……やっちゃったか?」
バツの悪そうな顔をする久延毘を尻目に、鞍馬は無線を取り出して外に居るイヴに連絡を入れる。
「2階のゴブリンは倒したが、かなりの物音を出してしまった。ボスの動きはどうだろうか?」
森であらかじめ探していた岩や太い枝を使って玄関以外の出入り口を入念に塞いでいたイヴは、無線を受けてリビングへと目を向けた。
「あー……ボスは物音に気付いてるみたいだね。ロビーの方へ移動を始めたからエメラルドは気をつけて。私も狙撃で援護するから!」
「それは頼もしい、よろしく頼むよ」
エメラルドはリビングの扉に向き直り剣を構えた。
●
イヴの無線が切れた瞬間、ロビーからリビングに通じる扉がリビング側から勢い良くぶち壊された。
中からは息を荒くした大きなゴブリンが、ズシンズシンと大きな足音を立てて現れた。あらかじめ無線でボスに動きがあると知っていたハンター達は、既にロビーへと集まっていた。
「まったく豪快な登場だなあ!」
そう言いながら拳を構える久延毘。ボスゴブリンは咆哮を上げて手に持っている大きな斧を振り回した。
「うわっ! 危ないだろ!」
久延毘は縮地瞬動を使い、大ゴブリンの懐に飛び込み、思い切り拳を叩き込んだ。
グウウ、と低い唸り声を上げるが、流石にボスだけあって倒れる様子はない。亜人はギロリと久延毘を睨みつけ、反撃するように斧を久延毘に向かって振りかぶった。
「やべ……!」
久延毘は咄嗟に柔能制剛の構えを取るが、腕が届く前に斧が彼女の身体にぶつかるほうが早かった。
「いっ……た!!」
斧が命中してしまった久延毘は石畳の床に転がったが、大した怪我は負っていなかった。幸運なことに刃の付いていない場所に当たったようだ。
すぐさま立ち上がろうとする久延毘とボスゴブリンの間に、エメラルドが剣を構えながら入り込んだ。
「ここは私に任せろ! おまえは引いて体勢を立て直せ!」
「サンキュー、エメラルド……! 恩に着る!」
エメラルドはホーリーセイバーを纏わせた剣を構えてボスゴブリンの足に斬りかかった!
『グオオオオ!』
エメラルドの放った斬撃は大ゴブリンの足を切り裂き、敵は低い声を上げてよろめいた。
「ほな、私も行かせてもらいましょか!」
琴吹はボスゴブリンの腕をへし折ろうと斧をかいくぐり、得物を持っている右手に飛びつこうとしたが、それに気付いたボスは大きな動きで暴れ出した。
「あかん……!」
ボスゴブリンの腕が琴吹にぶつかりそうになった瞬間、ヒュンと風を切るような音が琴吹の身体を横切り、一本の矢がボスの腕に突き刺さった!
「イヴはん、恩にきります!」
「間に合って良かった! このまま援護するから一気に仕留めよう!」
イヴはえびらから矢を取り出し弓につがえ、ボスに向かって更に矢を放つ。
『ガアアアアアア!!!』
大ゴブリンは矢を払うように手を大きく振りかぶる。完全に注意がイヴの攻撃に向いているようだ。
この好機を、鞍馬が見逃す筈が無かった。
ソウルエッジを纏わせたダガーを構え、剣心一如を使い更に武器の威力を高めていく。
素早くボスゴブリンに向かっていく、斧の間合いの内側に潜り込んだ。
「これで決める……!」
鞍馬は目にも留まらぬ連撃で敵の胴体を素早く切り裂いた!
『グゴオオオオオオッッ!!!!』
大ゴブリンは膝をつくが、まだその瞳には闘志の炎が燃えている。
……しかし、その炎も、次の瞬間には燃え尽きていた。
鞍馬の放った3撃目の斬撃が、直線状にボスの急所を貫いていたのだ。
『が、アアアアアアアアアアアアア……』
ボスゴブリンは、ゆっくりと後ろに倒れ込んだ。
●
「館内と周囲を見回ってきたが、残党と思われるゴブリンの姿は無かった」
周囲の確認をしてきた鞍馬が他のメンバーが待っている村へと戻ってきた。
鞍馬の言葉を聞いた村人たちは、わあっと歓声を上げた。
「おお……! ハンターの皆さん、本当に有難うございます!」
「いえ、これが私達の仕事ですから。」
琴吹はねぎらいの言葉を鞍馬にかける。
「おつかれさんです鞍馬はん。最後の一撃格好がよろしかったです」
「ありがとう。なんとか倒せてよかったよ。」
鞍馬と琴吹が談笑する中、エメラルドは少し憂いた表情を浮かべていた。その様子に気がついたイヴと久延毘はエメラルドに声をかける。
「どうしたんだ~? エメラルド。そんな顔して!」
「何か気になることでもあるのか?」
「いや……私は神に仕える身でありながら暗殺者のような事をしてしまった事を少し悔やんでいてな……」
目線を落とすエメラルドに、久延毘は気合を入れるように彼女の背中をバンと叩く。
「そう気にするなって! 悪いゴブリン達を倒して、村が救われたんだ。アンタの行いは間違いないってアタシが言ってやるよ!」
息巻く久延毘に、エメラルドはあっけにとられた表情をしていたが、次第に柔らかい笑みへと表情を変えていく。
「ああ、ありがとう久延毘」
こうして、小さな街に再び平穏な日常が戻ってきたのだった。
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相談 イヴ(ka6763) エルフ|21才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/02/21 08:43:55 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/19 11:55:51 |