ゲスト
(ka0000)
【陶曲】百年旅~クイーンズシフト
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/02/21 07:30
- 完成日
- 2018/02/28 00:47
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●その後の「同盟ヒズミーランド」
「完全に枯れたな」
同盟領の極彩色の街「ヴァリオス」から遠く離れた荒野で魔術師協会の調査員が立ちすくむ。
目の前には枯れた木々や草、そしてやや湿った大地が広がっていた。
「やはり精霊『ユノーチカ』がこのオアシスにいたっていう言い伝えは本当だったんだろうな」
そうでなければまだ大地に水分は残っているのに植物が全滅しているというのは説明がつかない、ともう一人の調査員が呟く。
ここには昨年末、リアルブルーの大型テーマパークを模した大型娯楽施設「同盟ヒズミーランド」があった。
ジェットコースターやメリーゴーランド、マスコットキャラクターの「ヒズミー&ヒズミン」などで来園者を大いに楽しませていた。宿泊施設もあり、荒野の有効利用として同盟評議会からの期待も高かったが、大型歪虚の集積基地だと発覚。ハンターたちを多数動員して調査し、地下掘削も加えたヴァリオス侵攻計画であると判断し急きょユニット演習場を造って牽制した。
後に殲滅作戦を展開。支配人で黒幕である、「フマーレの大火」作戦で猛威を振るった堕落者「火付けのY」も追い詰めるが、「爆発芸術の完成形」(本人談)である遊園地大爆発で自爆する。加えて、真の目的であるオアシスの水源に住んでいた妖精「ユノーチカ」も爆破する。
当時、ヴァリオス内では別の大物歪虚による騒動が発生していた。
大型歪虚を迎撃したハンターの活躍でヴァリオス内外からの同時攻撃という絶対的な危機は回避したが、オアシスは精霊爆破により完全に消滅した形となっていた。
解説、以上。
「まあ、ついでに歪虚の気配も完全になくなったがな」
「それだけは幸い」
調査員二人は作業する手を止めずに頷き合う。
「しかし」
ふと顔を上げた。
「大地の傷跡だけは、完全にはなくならないものだな」
見渡す荒野は元の荒野ではなく、爆発でえぐられた大地や吹き飛んだ瓦礫などが散乱。建物も壊れて焼けたまま打ち捨てられ、ヴァリオス側の空堀と土塁はそのまま。
むしろ、廃墟として空しさが残る。
どさっといま、エントランスアーチの焼け残った支柱が、倒れた。
●その後の「旧フマーレ最終処分場」
「やれやれ。常駐を免れたのは助かったが、定期調査も面倒でしかないな」
同盟領は蒸気工業都市「フマーレ」から離れた森の中、馬に乗った役人が役目を終えた最終処分場までの道を急いでいた。
リアルブルーでもそうだが、経済活動に伴い排出されるごみは社会問題である。
燃やせばいい、との意見もあろう。
だが、燃やせば黒い灰が残る。ゴミが大量であればその量も莫大である。この辺りの事情はリアルブルーも同じで、二酸化炭素排出以外の面でもごみ減量が叫ばれている。
ましてやこちらはCAMなどの急激な増産で大きく生産に軸が傾いている。
加えて、昨年の「フマーレの大火」。
燃え残りや、それまで事業所に溜め込んでいた鉄くず(注・くず鉄ではない)もそのまま大量に最終処分場に持ち込まれた。計画以上の受け入れで、あっという間に処分場はパンク。次の最終処分場の策定を急ぐなどてんやわんやの内に旧処分場として埋め立てられた。
そこを、歪虚に狙われた。
監視のない旧処分場を掘り起こされ、鉄くず(注・くず鉄ではない)などの資材を根こそぎ持ち去られたのだ。
それが、後に開園する「同盟ヒズミーランド」の大型遊具資材となる。正確には、大型遊具に化けた大型歪虚の元となったのであるが。資材そのものが大型歪虚になるので持ち去りも容易で、ヒズミーランド建設も自力移動するので驚くほど完成が早かった背景となる。
解説、以上。
そんな事情もあり、ぶつくさ言うこの役人が定期的に見回りに来るようになっているのだが……。
「おわっ!」
遠くの気配に馬を止めた。
――がさがさっ……ぱかっ、ぱかっ……。
聞こえる音の方を見ると、木々の間から真っ黒な一角の――通常の馬の何倍も大きな一角獣が飛び跳ねていたのだ。森に何か障害があり跳び越えたのだろう。
「ば、バケモンじゃ……はっ! ま、まさか?!」
それが旧最終処分場方面から移動していることに気付いた。
急いで確認に行くとッ!
「うわ……勘弁してくれ」
掘り起こされた最終処分場にはチェスの駒のような大型な石の像が立っていた。
居座っているのは、クイーン、ルーク、ビショップ。それぞれ一体の計三体。
いま、くぼんで足場の緩い窪地に一頭のシカが足を滑らせ入っていった。
刹那、クイーンの首輪の宝玉が光り、頭上にあった黒い雲が移動。シカの近くまで行くと雷を落とした。
シカ、ぴくりと痙攣して息絶えた。
「こりゃいかん。報告じゃ!」
というわけで、旧最終処分場に居座るチェスピース歪虚四体を討伐してもらえるハンター、求ム。
なお、似た案件を追っているフラ・キャンディ(kz0121)がいち早く参加を決めている。
「完全に枯れたな」
同盟領の極彩色の街「ヴァリオス」から遠く離れた荒野で魔術師協会の調査員が立ちすくむ。
目の前には枯れた木々や草、そしてやや湿った大地が広がっていた。
「やはり精霊『ユノーチカ』がこのオアシスにいたっていう言い伝えは本当だったんだろうな」
そうでなければまだ大地に水分は残っているのに植物が全滅しているというのは説明がつかない、ともう一人の調査員が呟く。
ここには昨年末、リアルブルーの大型テーマパークを模した大型娯楽施設「同盟ヒズミーランド」があった。
ジェットコースターやメリーゴーランド、マスコットキャラクターの「ヒズミー&ヒズミン」などで来園者を大いに楽しませていた。宿泊施設もあり、荒野の有効利用として同盟評議会からの期待も高かったが、大型歪虚の集積基地だと発覚。ハンターたちを多数動員して調査し、地下掘削も加えたヴァリオス侵攻計画であると判断し急きょユニット演習場を造って牽制した。
後に殲滅作戦を展開。支配人で黒幕である、「フマーレの大火」作戦で猛威を振るった堕落者「火付けのY」も追い詰めるが、「爆発芸術の完成形」(本人談)である遊園地大爆発で自爆する。加えて、真の目的であるオアシスの水源に住んでいた妖精「ユノーチカ」も爆破する。
当時、ヴァリオス内では別の大物歪虚による騒動が発生していた。
大型歪虚を迎撃したハンターの活躍でヴァリオス内外からの同時攻撃という絶対的な危機は回避したが、オアシスは精霊爆破により完全に消滅した形となっていた。
解説、以上。
「まあ、ついでに歪虚の気配も完全になくなったがな」
「それだけは幸い」
調査員二人は作業する手を止めずに頷き合う。
「しかし」
ふと顔を上げた。
「大地の傷跡だけは、完全にはなくならないものだな」
見渡す荒野は元の荒野ではなく、爆発でえぐられた大地や吹き飛んだ瓦礫などが散乱。建物も壊れて焼けたまま打ち捨てられ、ヴァリオス側の空堀と土塁はそのまま。
むしろ、廃墟として空しさが残る。
どさっといま、エントランスアーチの焼け残った支柱が、倒れた。
●その後の「旧フマーレ最終処分場」
「やれやれ。常駐を免れたのは助かったが、定期調査も面倒でしかないな」
同盟領は蒸気工業都市「フマーレ」から離れた森の中、馬に乗った役人が役目を終えた最終処分場までの道を急いでいた。
リアルブルーでもそうだが、経済活動に伴い排出されるごみは社会問題である。
燃やせばいい、との意見もあろう。
だが、燃やせば黒い灰が残る。ゴミが大量であればその量も莫大である。この辺りの事情はリアルブルーも同じで、二酸化炭素排出以外の面でもごみ減量が叫ばれている。
ましてやこちらはCAMなどの急激な増産で大きく生産に軸が傾いている。
加えて、昨年の「フマーレの大火」。
燃え残りや、それまで事業所に溜め込んでいた鉄くず(注・くず鉄ではない)もそのまま大量に最終処分場に持ち込まれた。計画以上の受け入れで、あっという間に処分場はパンク。次の最終処分場の策定を急ぐなどてんやわんやの内に旧処分場として埋め立てられた。
そこを、歪虚に狙われた。
監視のない旧処分場を掘り起こされ、鉄くず(注・くず鉄ではない)などの資材を根こそぎ持ち去られたのだ。
それが、後に開園する「同盟ヒズミーランド」の大型遊具資材となる。正確には、大型遊具に化けた大型歪虚の元となったのであるが。資材そのものが大型歪虚になるので持ち去りも容易で、ヒズミーランド建設も自力移動するので驚くほど完成が早かった背景となる。
解説、以上。
そんな事情もあり、ぶつくさ言うこの役人が定期的に見回りに来るようになっているのだが……。
「おわっ!」
遠くの気配に馬を止めた。
――がさがさっ……ぱかっ、ぱかっ……。
聞こえる音の方を見ると、木々の間から真っ黒な一角の――通常の馬の何倍も大きな一角獣が飛び跳ねていたのだ。森に何か障害があり跳び越えたのだろう。
「ば、バケモンじゃ……はっ! ま、まさか?!」
それが旧最終処分場方面から移動していることに気付いた。
急いで確認に行くとッ!
「うわ……勘弁してくれ」
掘り起こされた最終処分場にはチェスの駒のような大型な石の像が立っていた。
居座っているのは、クイーン、ルーク、ビショップ。それぞれ一体の計三体。
いま、くぼんで足場の緩い窪地に一頭のシカが足を滑らせ入っていった。
刹那、クイーンの首輪の宝玉が光り、頭上にあった黒い雲が移動。シカの近くまで行くと雷を落とした。
シカ、ぴくりと痙攣して息絶えた。
「こりゃいかん。報告じゃ!」
というわけで、旧最終処分場に居座るチェスピース歪虚四体を討伐してもらえるハンター、求ム。
なお、似た案件を追っているフラ・キャンディ(kz0121)がいち早く参加を決めている。
リプレイ本文
●
森の中の道をキーリ(ka4642)が刻令ゴーレム(Vol)「ラムルタフル」(ka4642unit002)を従えずんずん進んでいる。
「さてと、クイーンを討ち取ったら一気にチェックメイトへ近づく気がするわ」
先に見える窪地には、巨大なチェスの石駒がある。ナイトにポーンにルーク。そしてクイーンもいる。ティアラにRのマークがある。
「やっぱり資材集めですかねぇ」
弓月・小太(ka4679)からは何するつもりでしょうかぁとの通信。
「いい加減に終わりにしたいけど、まだキングいるよねー……」
さらにメルクーア(ka4005)からも。
「知らないわよ。俺様キングのすることなんか」
「ルモーレのやつ、何処かでまた砦か工房でも建ててるのかな?」
きっとルモーレ自身がキング気取りでもしてるんじゃない、な感じでキーリが吐き捨てたところ、戦況を見渡した霧雨 悠月(ka4130)からの声。
「……毎回後手になってるのが悔しい所ですぅ」
「やりやすい部分もありますけどね」
小太のため息に、クオン・サガラ(ka0018)の割り込みが。
「でもヒズミーランドとフマーレの話……こんなトコで合流するなんてねー」
「それですよねぇ」
話を変えたウーナ(ka1439)の呟きには、星野 ハナ(ka5852)が食いつく。
「話せなさそうだから火付けのYとの関係があったかどうかも聞けませんしぃ、どう見ても食材にならなそうですしぃ…はふぅ」
「火付けのY?」
ハナのため息にはフラ・キャンディ(kz0121)の通信が。
「食えない奴だったんですよぅ。フラちゃんは逃げそうな敵優先で撃って下さいぃ」
話せば長くなるのでよしよしと話を逸らす。
「あれが彼のごーれむとやら、ですか? なかなかの強敵と聞きます」
ここで多由羅(ka6167)からの通信が。
「うんっ。中に光体の核があって再生してくるんだよ、多由羅さん」
「ほう、光体の核……ですか」
「というわけでみんなー、核が出たら速攻で潰してね~」
フラの返事に不敵に呟く多由羅。割り込むようにメルクーアの呼び掛け。
今回、チェスに習い一手目を移動力に劣るキーリのラムルタフルを盤上に置く作戦を敷いている。
「どうしても機動力に差があるから、ラムルタフルとナイトはちょーっと相性良くないけどね」
というキーリの見立て。
そのミスマッチを利用した、ナイトの釣り出しが真の目的である。
ただし、問題もある。クイーンの雷雲からの空対地攻撃である。
いま、ラムルタフルが戦場へと入ろうとしている。
敵もこれを察知しており、すでにチェスピースたちは駒スタイルから戦闘スタイルに変形。自由の女神像型に変形したクイーンの上空には四つの雷雲。このすべてがキーリに集中するとひどい目に遭うぞッ!
その時だった!
「戦闘前、ここですよ!」
サガラの魔導型デュミナス「Phobos(フォボス)」(ka0018unit001)がどんっ、と吠える。アクティブスラスターで空を飛翔しあっという間にラムルタフルを上空から追い越した!
「ヒズミーランドで暴れ足りなかった分、憂さ晴らしさせてもらう!」
ほぼ同時に爆音を響かせたのはウーナのオファニム「Re:AZ-L(ラジエル)」(ka1439unit003)。ハイマニューバカスタム機のアクティブスラスター全開。こちらも一瞬で空から戦場に入った!
「さあて、スティンガー、前回の蟻など比べ物にならない敵よ~」
メルクーアの駆るワイバーン「スティンガー」(ka4005unit003)は比較的静かにスムーズな飛翔。二機のさらに上空から戦場に入った。
地上部隊先頭を追い越す形で戦闘の火ぶたが切って落とされた。
●
「ラムルタフル、静止体勢でそれを継続。照準定まったらキャニスター弾よ。キャニスター弾!」
足場の悪い窪地に入ったキーリはラムルタフルに指示を飛ばして少し離れる。
一角獣型のナイト、すでに迫ってきている!
どうっ、と発射後に弾をばらまく砲撃がラムルタフルの24ポンドゴーレム砲から発射される。
が、ナイトは速い。
着弾は走り過ぎた後。ダメージは軽微だ。
「またまた一緒だね」
戦況にくすりと緩む口元。
「ふふ、もう胸を張ってパートナーと言える間柄だね」
しゃべっているのは悠月だ。
「今回も宜しく、シグレ」
騎乗するイェジド「シグレ」(ka4130unit001)の首に抱きつく。もふっとした感触がある。
――うぉぉぉん……。
これを意気に感じたか、一つ吠えてシグレがだっと駆け出した。
目標はビショップ。
ナイトの方には行かせない。
「戦闘開始だ。さあ風を切って走り出そうっ」
悠月の言葉でさらに突っ込むシグレ。
ビショップ、二本の十字架槌を手にこちらを……いや、前腕に内蔵された銃で撃って来た!
「R7に乗ってると符術の効きが悪いですけどぉ……」
こちら、R7エクスシア(ka5852unit003)コクピット内のハナ。
「それでも五色光符陣連打は出来ますからぁ。足止めはお任せ下さいぃ」
がっしがっしと大地を蹴り少しジャンプして窪地に入るとシグレとは反対、ラムルタフルの左手方向へ開く。
(はふ……)
あれ?
なんかハナのテンション低いぞ?
(フマーレのY残党絡みだと思ったんですぅ。……倍返しブッコロのチャンスだと思ったんですぅ)
どうやらそんな目論見があったらしい。
でも残党というわけではなさそう。戦場はいろいろ関係はあるようだが。
だものでいつもと違って敵に向かって一直線ではない。スラスタージャンプした他の機体より遅れを取っていた。
この集中力に欠ける状況が、後にあのようなことになるとは誰が思おうか!
実は悠月やハナより先に、ラムルタフルの次に戦場入りした陸戦機体があった。
「絶対早く終わらせるよ!」
プラヴァー「ロリポップ」のフラである。何かこだわりがあるのかやや勇み足気味である。
「3体は前回と一緒ですが、クイーンは初ですねぇ。……わわ、フラさん? 相手の数も増えて連携してくるようですし、き、気をつけていきましょぅっ」
小太の魔導型デュミナス(ka4679unit002)から通信が入る。
「分かってる、小太さん……わっ!」
――ぴしゃーん!
クイーンの雷雲がやって来て雷を食らった。足場が悪くプラヴァーの速度が生かせないのも良くなかった。
「フラさん、ゆっくり行きましょう!」
「う、うんっ。小太さん、待っててね!」
あれ?
「ええと……今日のフラさん、ちょっと様子がいつもと違うような気がしますよぉ?」
デュミナスのコクピットで首を傾げる小太。とにかくロングレンジライフル「ルギートゥスD5」を上に向け雷雲を狙いつつ戦場の縁へと急ぐ。なお、雷雲は攻撃を受けてもダメージを受けている様子はない。
(まあそうでしょうねぇ)
物理的な砲台とは思っていなかったのでこれには驚かない。
ただ、驚いた者もいた。
――ぴしゃーん、ぴしゃーん……。
「え? どっから撃ったーーー!」
スラスタージャンプ中、予期せぬ衝撃にコクピット内のウーナが叫ぶ。
「クイーンの対空砲ですね」
クオンの方はある程度覚悟していた様子。
「ちょっと、ここまで狙うの?!」
さらに上空、スティンガーに乗るメルクーアも!
何と、クイーンの雷雲が上空に向かって雷撃を放っていたのだ!
「空対地ばかりでなく、やはり空対空もいけますか」
「雷というよりライトニングボルトみたいなものというわけね……ま、いいわ。空中で撃ち合いをする気はないし」
クオンが機体のバランスを取りつつ面白そうに分析。メルクーアはくいっとスティンガーの向きを変えてナイトに狙いを定める!
「まさかだったけど……そーゆーこと。ガンガン行くよーっ!」
ウーナは体勢を整えて振り向きもせずにスラスター一直線。クオン機も続く。
ちなみにこの時、フラも雷撃を食らっていた。
これでクイーン付近に浮かんでいた雷雲四つがすべて攻撃したことになる。
この間隙を突いて!
「あれですか……依頼書にあった雷攻撃は」
フラの横を一頭のリーリーが駆け抜ける。足場は悪いが太い二脚でざっくざっくと飛ぶように走る。
「元より剣士の私がまともに対処出来る攻撃ではありませんが……」
リーリー「瑞那月(ミナヅキ)」(ka6167unit001)だ。鞍上は、多由羅!
多由羅、鍔に鬼の顔の透かし彫りの施された大太刀を目の高さで鞘ごと水平に構える。一瞬、閉じた瞳。
「こやつの足止めをするのが私の役目」
開眼。
そして抜刀。
大太刀「鬼霧雨」が湿り気を帯びたようにきらめき戦闘の構えに!
「ミナヅキ……実戦は初めてですが、二人で訓練はしてきました。あなたと私の実力、今こそ示す時です!」
瑞那月、合図と取ってそのまま加速しクイーンに突っ込んだ!
仲間のためにも、もう雷撃を撃たせない構えだ。
●
ラムルタフルの射撃とクイーンの雷撃で始まった戦いは、すぐに勝負所を迎えることになった。
というか、ナイトが額の一角を低くして猛然と突っ込んできている!
「砲台も小回り効くのに新調したのよ!」
言いつつキーリ、ラムルタフルの近くからメテオスウォーム。仰角ゼロ射撃をするラムルタフルとともに固定砲台になるが、ナイトの加速が速い!
「横から超々重斧グランド・クラッシャー・マキシマムで滅多打ちですぅ……あれぇ?」
なお、この加速で横に回って狙っていたハナの攻撃をぶっちぎって置き去りにもしていた。
ナイト、そのままの勢いで……。
――どどど……どがっ!
「……あっぶないわねー。『煌々たるミモザ』はいい感じみたいだけど」
横っ飛びで離脱し振り返るキーリの視線に、突撃を受けてふらつくラムルタフル。特殊装甲もあり耐えている。
「まずは一番耐久が低そうなナイトを潰すのですよぉ。多少距離があっても初撃、外すわけにはいかないのですぅっ」
「う、うんっ。連携だよねっ」
小太、呼び掛けつつロングレンジライフル「ルギートゥスD5」で狙う。フラも呼応した。一旦速度を落としたナイトに十字砲火を浴びせる。ぱしぱしっ、と外皮が散る。
「はぁい。みんな、下がって~」
ここでさらに上空からワイバーン「スティンガー」が急降下!
「軽くステアしてあげるわよん♪」
メルクーアだ。
スティンガーの口から火炎弾。ファイヤーブレスがナイトを襲う。戦場を大きくかき混ぜるのではなく、適度に刺激を与えた。
これを察知したナイトはすぐに動く。ブレス着弾の砂煙の中、方向転換して逃げ……。
いや、狙ってる!
再びラムルタフルに突撃し転倒させた。
さらに今回は先の加速で攻撃がスカったハナのエクスシアも狙っていた。
「ちょ……戻って来たんですかぁ?」
ガツン、と食らいコクピット内で衝撃に耐えるハナ。まさかの表情である。
やや集中力に欠けていたのが……あれ?
「よっぽどこの超々重斧略称GCMを食らいたいんですねぇ?」
ゆらぁ、と不気味に上体を起こす。腑抜けていた状態から脱したぞ。武器の名前もギャラクティカマグナムの技名が長すぎて頭文字表記にした某巨匠漫画家のように端折ってる!
さらにキーリ。
「やってくれるじゃない、止まったらファイアーボールの刑よ。出し惜しみなんかしないわ」
めらぁと動機不純な……いや、今回は正当性のある闘志を燃やす。
なお、ラムルタフルには災難だったが固定砲台化することによって戦況が固定された。まだ転がったままだがすでにいい仕事をしている。
で、またすぐに方向転換。
「わ。かわされた?」
「あ、もしかしてぇ……」
フラの声。そして小太、すぐに察知した!
ハナ機、ラムルタフル、そして自分のデュミナスがあたかも冬の星座のように一直線の三連星になっていることに。フラの射撃がかわされたのは、その場での旋回ではなかったから。
ここで、上空。
「上から見るとまるわかりだけどね~」
くんっ、と再上昇していたメルクーア、ちゃんと見ている。激しくなびいていた銀髪がふわっと舞った。
急降下だ!
そしてまたもファイヤーブレス。
これはすんでのところでかわされたが……。
「前に行かせない射撃だわよ。本命はこっち!」
着弾はナイトの手前足元。今度はそのまま超低空飛行。魔竜牙「エルプシオン」で戦域に入った勢いのままド迫力の噛みつきでナイトを吹っ飛ばした!
「寄ってこないんですかぁ? そんなにこの略称GCMが怖いんですかぁ? だったら倍返しでブッコロですぅ!」
先に食らった攻撃でついに完全に目を覚ましたハナ、鍛えまくったスキルリンカーで鍛えまくった五色光符陣を連撃、連撃。キラキラと光が舞う! ……攻撃食ったのはハナ自身のテンションの低さも一因なのにナイトはとんだとばっちり。
だもので立ち上がったナイト、最大戦速で逃げる。最後の力を振り絞っている!
「え?」
逃げた先にはフラ機がいる。三連星ラインから大きく外れていたためここで運悪く突撃の標的に。
「フラさんには手を出させないのですよぉっ。今のうちの距離を取ってくださぃ……」
最初に標的になっていた小太、狙撃を捨て体を張るべくアクティブスラスター全開。
と同時にガトリングガン「エヴェクサブトスT7」に換装。
ぶっ放しつつナイトとフラを結ぶ直線上に体を入れた!
火力、足りるか? 止められるか?
「右に左に忙しいわね~」
ここでキーリがメテオどーん。
すでにハナのブッコロ攻撃とメルクーアの突撃で削れていたナイトの身体が砕けた。
「ちょっと忙しくなりましたが」
最後に残った光体コアは小太が魔導機銃「エストレジャ」できっちりと狙撃した。
●
こちら、戦線最奥。
「着地地点はずれましたが……」
「問題ないない!」
ざしっ、どしっ、とクオンのフォボス、ウーナのラジエルが着地していた。
完全に敵の裏を取っている。
ただ、二機を挟んで真ん中にいるルークのキュービックな体の上辺には弓を持った泥人形歪虚がいる。ぱらぱらと攻撃を受けるが……。
「問題があるとすればキャスリングですかね?」
「ないない。あるとすれば劣勢になったとき」
慎重なクオンに対し、ウーナは体を開き右手のプラズマライフル「イナードP5」を撃つ。左手のハンドガン「トリニティ」と合わせ二丁装備オファニムだが、敵の射線が来ているのでまずは正対せず横向きで攻撃する。
「まあ確かに」
クオンのフォボスもツインカノン「リンクレヒトW2」で強力な射撃。
ともにルークの巨体の表面を削る。相変わらず玉ねぎのように表皮から崩れていくようだ。
この時点で彼我の火力差が明確になった。挟まれて弓で応戦できるレベルではない。
(キャスリングはなさそうですね)
クオン、そう確信した。
敵はチェスの駒を模しているが、クイーンとルークの駒の一手入れ替えルールみたいなものまでは能力として織り込んでいないようだ。
しかし、敵も対応して来た。
がこんと足を出して移動可能体勢を取ったのだ。
「突撃、あるんだっけ? さあ、こっちに来い! 青竜紅刃流見せてやろうじゃないの!」
あーっ。
ウーナ、コクピット内で腰を浮かせるぐらいの勢いで前のめりになってヤル気になってる!
クオンも構えるが……。
「え?」
何と、ウーナの方にもクオンの方にもいかず、クイーンの方に前進した。
「何かある?」
「飛ばないチェスの駒はただの駒です」
警戒し観察に集中するウーナに、横にスラスタージャンプしてついて行くクオン。
「まあ、良くも悪くも量産志向の兵器ですね。機能を単純にすればそれだけ作りやすくなりますけど…今回は投入する地形に問題が有った模様ですね」
クオン、すでに何か狙いがあるようだ。
狙いを澄まして撃ったツインカノンは、移動中の敵の足元と上の泥人形をマルチロックオン。どうんどうんと撃つうちに、ついにルークの巨体が止まった。
「先に膝に来ましたか。そのまま転倒でもすれば面白いのですが……あ」
「な、なにこれ?」
反対からクオンに応じて撃ちつつ追っていたウーナも驚き足を止めた。
――かっ。かかかかっ……。
何と、四角柱型だったルークが大幅な変形をしたのだッ!
くるっと回転すると左右に城壁が展開。
あっという間に九十度の扇型に石の城壁が伸びたのだ。
扇の要となる一角には、ルークの中心辺りが西洋の城壁の角のように塔が残っている。
この影響で、クオン機とウーナ機だけが扇の外に取り残された形となった。
戦力分断である。
もっとも、城壁は約三十五メートル、十五スクエア程度までしか伸びてなかったが。
もちろん、クオンの狙い通り敵の動きを止めた、という見方もできる。
「……城壁は薄くなっている、と見るべきでしょうね」
冷静に分析したクオン、城壁に攻撃を加えた。
砕けたが回復特化型だ。
「これは厄介そうですね」
「そーゆーことなら核をやればいいんじゃない!?」
理解し一息ついたクオン。今度は逆にウーナが活発に。ピンと来たようだ。
「真ん中にコアがあるってんなら守る城壁は薄くなったよね。でもって、私ならできるだけ内側にする!」
スラスタージャンプで城壁を越えると敵の要の内側、つまりV字の一番引っ込んでいる位置に機体をひねり込んで二挺攻撃。
「……なるほど」
クオンも続いた。ジャンプした姿勢でツインカノンが唸る。
敵の弓がくる中、ついに光体コアが出るまで削り切り重厚な射撃を叩き込む中で潰した。
●
時は若干遡る。
上空で雷雲が動き雷を放つ下、シグレに乗った悠月が敵との距離を詰めていた。
今、ビショップの弾がぴしっと悠月の身体をかすめた。
(相手のチェスは体の中にあるコアを潰さないと再生だったよね)
転じて、今攻撃を食らった自分はそうではない。
「…ルモーレも便利な手下を使ってるね。修理要らずのロボットみたい」
思わずこぼした。
同時にシグレがおお~ん、と吠えて右に左にステップ。
「あぁ」
我に返る悠月。
切迫する中、優しい面差しでシグレの首筋を撫でた。
「そうだね。シグレもいてくれる」
それを感じたかシグレ、だっと最後の跳躍。
敵の弾を極力、いや、二度と主人の方に向けまいとステップし時に自ら食らっていたが、ついに敵を至近距離に捉えたのだ。
――ぶん……。
敵の振るう十字架槌、来た。
身を沈めてかわすシグレ。
が、前回と違ってフラと小太はいない。
直後に二刀流のもう一つの十字架槌が振るわれた!
――ガツ。ずざざざ……。
『オオォォォォン……』
食らって下がったシグレ、吠えた。きれいに入った敵の攻撃だが、むしろ闘志がみなぎったか。
いや。
主人の前で醜態を晒せない、ということか?
「ふ…ふふっ」
この様子に衝撃で身を伏せていた悠月がゆらりと上体を起こした。
「良いよ、今回も思う存分に吠えよう。僕もこうなると……」
改めて構える長大で怪しい雰囲気の斬魔刀「祢々切丸」。一説では、その長大さ、重量は普通の人間では扱うことはできないという。
しかしッ!
「すっかり狼になった気分だからさ!」
赤い瞳の奥に野生の炎。噛みしめる口の端に犬歯がぎらり。
主人の気配を感じ、シグレが再び接近する。
「おおおおおおっ!」
悠月、吠えた。
仲間のため、一人でビショップの足止めに走る。
こちら、多由羅。
「もう撃たせません!」
雷撃二つを食らった引き換えにクイーンに取りついていた。
振りかぶった大太刀「鬼霧雨」が唸りを上げる!
「……はっ!?」
あ。
気付いた。
クイーンが手にした本の角で打ちかかって来ていたことを。
これを身を沈めかわす。瑞那月、クイーンの横をすり抜けた。
振り向く多由羅。
が、すぐに形相を変えた。
「振り向く価値もないということですか!?」
クイーンは多由羅を振り返らず、ナイトの方へ行こうとしているのだ。
多由羅、激高!
「…どこに行こうというのです? お前の相手はこの私です…」
すぐに追い付き背中から斬り付けるがこれは誘い。
クイーン、振り向きざまに燭台の底で身をひねりざま撃ちかかる。
――ガツッ!
これを食らった多由羅、落馬……いや、まだ瞳は死んでいない。態勢不十分ながら鬼霧雨が地面を擦り上げ紅蓮の軌道を描こうとしているッ!
繰り出す多由羅は半身というか、身を投げ出している。捨て身の一撃はただ敵へ一矢をの思い。
紅蓮斬だ!
――ずぱっ……きら~ん、どさっ。
クイーンものけぞりかわそうとしたが、ペンダントに引っかかった。宝玉付きのトップが外れて宙を舞い、離れた場所に落ちた。
瞬間、一つ雷雲が消えた。
なお、最後の音は落馬した音でもある。
「…まだ、私に付き合って戴きますよ…!」
転倒していた多由羅、瑞那月には戻らず二手に分かれての同時攻撃。
奥の手で敵を幻惑する!
●
「…いい手ごたえです…」
ざしっ、と多由羅が着地した時、燭台がクイーンの手を離れて大地に墜ち雷雲が一つ消えていた。
『クゥゥ……』
一方でリーリーの瑞那月が本の角でしこたま殴られ、いま起き上がったところだが。
そこをクイーンに狙われる。
「させませんよ…」
だっ、と殺到する多由羅だが、これは誘い。振り向きざまに雷撃を食らった。
いや、本を斬り飛ばしている。雷雲、消える。多由羅もボロボロだが。
周りでは味方の戦う気配。
(仲間の為身を賭すのも武士の誉れ…)
まだ倒れるわけにはいかない。
クイーン、武器はなくなったが額のティアラの宝玉が光る。雷雲、来るか?
「…学んだ覚えも学ばせた覚えもありませんが…これでも一応剣術師範ですので…」
多由羅も最後の力を振り絞り再度殺到する。
その時だった!
「お待たせ!」
「もう大丈夫です」
ウーナとサガラの射撃。
横からクイーンを激しく襲った!
ついでに機導砲もどーん!
「大丈夫? 結構やられたみたいよ?」
メルクーアが多由羅の傍に付く。スティンガーをいったん着地させて「多重性強化」。
「助かります…コアはこの手でつぶしたいところ…」
再び燃え上がる多由羅。
こちら、悠月。
「ドラムのビートなら慣れてるよ!」
がしっ、がしっと敵の二槌流に対し剣戟の速さで対抗。受けきれない分は食らっているがリジェネレーション。主人の気迫にシグレもよくこたえ、流れた打撃を受けても引かない。勇敢に戦っている。
「うおおおっ……え?」
すかっ、と身をかわされた。
熱くなりすぎていたか。背後を取られた。
まずい、と思った瞬間。
「はい、離れたわねー」
――どぉん……。
ビショップの攻撃を止めたのは、キーリ。態勢を立て直したラムルタフルに砲撃命令を出したのだ。
――ダダダダ……。
「フラさん、クイーンの加勢に行きますよぉ」
「小太さん、すっかりガトリング使いだね」
小太がフラを従え、ガトリングで戦線をかき混ぜながら多由羅の方へ行く。
が、フラ機に敵の十字架が掛かった!
「わっ!」
「フラさん? はわわっ!」
つんのめったロリポップ。小太のデュミナスは反転してガトリング……は危険なので守りに加勢し抱き上げるように。
ここを敵に狙われた!
「…1匹たりとも逃がしませんよぅ! GCMで滅多打ちですぅ」
ハナ、エクスシアをフライトブースター「ズヴォルタ」で飛ばして接近戦。
「……一人じゃないよ♪ だったね」
これに微笑した悠月。いつもの歌を口ずさんでだっと切れ込む!
狙いはハナの倍返しブッコロで露出したコアだ。
●
こうして戦場は静かになった。
皆疲れ、近い距離に固まって座り込んでいる。
「その……疲れたよね? これ食べて」
そんな中、フラがチョコを配っている。
顔が赤いのは……。
「なるほどね~、フラっち」
「まあまあ、キーリさん」
「えっ? そ、その……」
「あ、ありがとなのですよぉ」
フラ、小太に渡したのだけは本命チョコだったようで目ざとく気付いたキーリがからかい悠月がなだめていたり。
「んもう。小太さん、あっち行こう」
「あ、あの、フラさん?」
あ。
フラ、いたたまれなくなって小太を連れて森の中に逃げた。
「フラちゃん、それむしろみんな喜ぶって」
ウーナが汗たら~するが、すでにキーリはにやにや。
「さて。あとはキングかしらね~」
「……ヴォイド・ヒズミーですか?」
メルクーアは改めてぼやき節。多由羅がぴぴんときてぽそり。って、ちょっと多由羅さん。それ危ないネタですよぅ。まあ濁点あるしイがラ行の何かでないからセーフか。
「もしそうなら……うふふ」
今度こそ関係性を問い詰めますよぅ、な感じのハナ。
「今回はいいデータが取れました」
クオンも満足そうだ。
「それにしても、今回出て来たのクイーンよクイーン。私とキャラ被ってるわよね?」
立ち上がるキーリ。なんだかんだで疲れが取れてきたようだ。
敵は全滅。
敵を苦しめ奥の手を引き出して勝ったのが大きい。
森の中の道をキーリ(ka4642)が刻令ゴーレム(Vol)「ラムルタフル」(ka4642unit002)を従えずんずん進んでいる。
「さてと、クイーンを討ち取ったら一気にチェックメイトへ近づく気がするわ」
先に見える窪地には、巨大なチェスの石駒がある。ナイトにポーンにルーク。そしてクイーンもいる。ティアラにRのマークがある。
「やっぱり資材集めですかねぇ」
弓月・小太(ka4679)からは何するつもりでしょうかぁとの通信。
「いい加減に終わりにしたいけど、まだキングいるよねー……」
さらにメルクーア(ka4005)からも。
「知らないわよ。俺様キングのすることなんか」
「ルモーレのやつ、何処かでまた砦か工房でも建ててるのかな?」
きっとルモーレ自身がキング気取りでもしてるんじゃない、な感じでキーリが吐き捨てたところ、戦況を見渡した霧雨 悠月(ka4130)からの声。
「……毎回後手になってるのが悔しい所ですぅ」
「やりやすい部分もありますけどね」
小太のため息に、クオン・サガラ(ka0018)の割り込みが。
「でもヒズミーランドとフマーレの話……こんなトコで合流するなんてねー」
「それですよねぇ」
話を変えたウーナ(ka1439)の呟きには、星野 ハナ(ka5852)が食いつく。
「話せなさそうだから火付けのYとの関係があったかどうかも聞けませんしぃ、どう見ても食材にならなそうですしぃ…はふぅ」
「火付けのY?」
ハナのため息にはフラ・キャンディ(kz0121)の通信が。
「食えない奴だったんですよぅ。フラちゃんは逃げそうな敵優先で撃って下さいぃ」
話せば長くなるのでよしよしと話を逸らす。
「あれが彼のごーれむとやら、ですか? なかなかの強敵と聞きます」
ここで多由羅(ka6167)からの通信が。
「うんっ。中に光体の核があって再生してくるんだよ、多由羅さん」
「ほう、光体の核……ですか」
「というわけでみんなー、核が出たら速攻で潰してね~」
フラの返事に不敵に呟く多由羅。割り込むようにメルクーアの呼び掛け。
今回、チェスに習い一手目を移動力に劣るキーリのラムルタフルを盤上に置く作戦を敷いている。
「どうしても機動力に差があるから、ラムルタフルとナイトはちょーっと相性良くないけどね」
というキーリの見立て。
そのミスマッチを利用した、ナイトの釣り出しが真の目的である。
ただし、問題もある。クイーンの雷雲からの空対地攻撃である。
いま、ラムルタフルが戦場へと入ろうとしている。
敵もこれを察知しており、すでにチェスピースたちは駒スタイルから戦闘スタイルに変形。自由の女神像型に変形したクイーンの上空には四つの雷雲。このすべてがキーリに集中するとひどい目に遭うぞッ!
その時だった!
「戦闘前、ここですよ!」
サガラの魔導型デュミナス「Phobos(フォボス)」(ka0018unit001)がどんっ、と吠える。アクティブスラスターで空を飛翔しあっという間にラムルタフルを上空から追い越した!
「ヒズミーランドで暴れ足りなかった分、憂さ晴らしさせてもらう!」
ほぼ同時に爆音を響かせたのはウーナのオファニム「Re:AZ-L(ラジエル)」(ka1439unit003)。ハイマニューバカスタム機のアクティブスラスター全開。こちらも一瞬で空から戦場に入った!
「さあて、スティンガー、前回の蟻など比べ物にならない敵よ~」
メルクーアの駆るワイバーン「スティンガー」(ka4005unit003)は比較的静かにスムーズな飛翔。二機のさらに上空から戦場に入った。
地上部隊先頭を追い越す形で戦闘の火ぶたが切って落とされた。
●
「ラムルタフル、静止体勢でそれを継続。照準定まったらキャニスター弾よ。キャニスター弾!」
足場の悪い窪地に入ったキーリはラムルタフルに指示を飛ばして少し離れる。
一角獣型のナイト、すでに迫ってきている!
どうっ、と発射後に弾をばらまく砲撃がラムルタフルの24ポンドゴーレム砲から発射される。
が、ナイトは速い。
着弾は走り過ぎた後。ダメージは軽微だ。
「またまた一緒だね」
戦況にくすりと緩む口元。
「ふふ、もう胸を張ってパートナーと言える間柄だね」
しゃべっているのは悠月だ。
「今回も宜しく、シグレ」
騎乗するイェジド「シグレ」(ka4130unit001)の首に抱きつく。もふっとした感触がある。
――うぉぉぉん……。
これを意気に感じたか、一つ吠えてシグレがだっと駆け出した。
目標はビショップ。
ナイトの方には行かせない。
「戦闘開始だ。さあ風を切って走り出そうっ」
悠月の言葉でさらに突っ込むシグレ。
ビショップ、二本の十字架槌を手にこちらを……いや、前腕に内蔵された銃で撃って来た!
「R7に乗ってると符術の効きが悪いですけどぉ……」
こちら、R7エクスシア(ka5852unit003)コクピット内のハナ。
「それでも五色光符陣連打は出来ますからぁ。足止めはお任せ下さいぃ」
がっしがっしと大地を蹴り少しジャンプして窪地に入るとシグレとは反対、ラムルタフルの左手方向へ開く。
(はふ……)
あれ?
なんかハナのテンション低いぞ?
(フマーレのY残党絡みだと思ったんですぅ。……倍返しブッコロのチャンスだと思ったんですぅ)
どうやらそんな目論見があったらしい。
でも残党というわけではなさそう。戦場はいろいろ関係はあるようだが。
だものでいつもと違って敵に向かって一直線ではない。スラスタージャンプした他の機体より遅れを取っていた。
この集中力に欠ける状況が、後にあのようなことになるとは誰が思おうか!
実は悠月やハナより先に、ラムルタフルの次に戦場入りした陸戦機体があった。
「絶対早く終わらせるよ!」
プラヴァー「ロリポップ」のフラである。何かこだわりがあるのかやや勇み足気味である。
「3体は前回と一緒ですが、クイーンは初ですねぇ。……わわ、フラさん? 相手の数も増えて連携してくるようですし、き、気をつけていきましょぅっ」
小太の魔導型デュミナス(ka4679unit002)から通信が入る。
「分かってる、小太さん……わっ!」
――ぴしゃーん!
クイーンの雷雲がやって来て雷を食らった。足場が悪くプラヴァーの速度が生かせないのも良くなかった。
「フラさん、ゆっくり行きましょう!」
「う、うんっ。小太さん、待っててね!」
あれ?
「ええと……今日のフラさん、ちょっと様子がいつもと違うような気がしますよぉ?」
デュミナスのコクピットで首を傾げる小太。とにかくロングレンジライフル「ルギートゥスD5」を上に向け雷雲を狙いつつ戦場の縁へと急ぐ。なお、雷雲は攻撃を受けてもダメージを受けている様子はない。
(まあそうでしょうねぇ)
物理的な砲台とは思っていなかったのでこれには驚かない。
ただ、驚いた者もいた。
――ぴしゃーん、ぴしゃーん……。
「え? どっから撃ったーーー!」
スラスタージャンプ中、予期せぬ衝撃にコクピット内のウーナが叫ぶ。
「クイーンの対空砲ですね」
クオンの方はある程度覚悟していた様子。
「ちょっと、ここまで狙うの?!」
さらに上空、スティンガーに乗るメルクーアも!
何と、クイーンの雷雲が上空に向かって雷撃を放っていたのだ!
「空対地ばかりでなく、やはり空対空もいけますか」
「雷というよりライトニングボルトみたいなものというわけね……ま、いいわ。空中で撃ち合いをする気はないし」
クオンが機体のバランスを取りつつ面白そうに分析。メルクーアはくいっとスティンガーの向きを変えてナイトに狙いを定める!
「まさかだったけど……そーゆーこと。ガンガン行くよーっ!」
ウーナは体勢を整えて振り向きもせずにスラスター一直線。クオン機も続く。
ちなみにこの時、フラも雷撃を食らっていた。
これでクイーン付近に浮かんでいた雷雲四つがすべて攻撃したことになる。
この間隙を突いて!
「あれですか……依頼書にあった雷攻撃は」
フラの横を一頭のリーリーが駆け抜ける。足場は悪いが太い二脚でざっくざっくと飛ぶように走る。
「元より剣士の私がまともに対処出来る攻撃ではありませんが……」
リーリー「瑞那月(ミナヅキ)」(ka6167unit001)だ。鞍上は、多由羅!
多由羅、鍔に鬼の顔の透かし彫りの施された大太刀を目の高さで鞘ごと水平に構える。一瞬、閉じた瞳。
「こやつの足止めをするのが私の役目」
開眼。
そして抜刀。
大太刀「鬼霧雨」が湿り気を帯びたようにきらめき戦闘の構えに!
「ミナヅキ……実戦は初めてですが、二人で訓練はしてきました。あなたと私の実力、今こそ示す時です!」
瑞那月、合図と取ってそのまま加速しクイーンに突っ込んだ!
仲間のためにも、もう雷撃を撃たせない構えだ。
●
ラムルタフルの射撃とクイーンの雷撃で始まった戦いは、すぐに勝負所を迎えることになった。
というか、ナイトが額の一角を低くして猛然と突っ込んできている!
「砲台も小回り効くのに新調したのよ!」
言いつつキーリ、ラムルタフルの近くからメテオスウォーム。仰角ゼロ射撃をするラムルタフルとともに固定砲台になるが、ナイトの加速が速い!
「横から超々重斧グランド・クラッシャー・マキシマムで滅多打ちですぅ……あれぇ?」
なお、この加速で横に回って狙っていたハナの攻撃をぶっちぎって置き去りにもしていた。
ナイト、そのままの勢いで……。
――どどど……どがっ!
「……あっぶないわねー。『煌々たるミモザ』はいい感じみたいだけど」
横っ飛びで離脱し振り返るキーリの視線に、突撃を受けてふらつくラムルタフル。特殊装甲もあり耐えている。
「まずは一番耐久が低そうなナイトを潰すのですよぉ。多少距離があっても初撃、外すわけにはいかないのですぅっ」
「う、うんっ。連携だよねっ」
小太、呼び掛けつつロングレンジライフル「ルギートゥスD5」で狙う。フラも呼応した。一旦速度を落としたナイトに十字砲火を浴びせる。ぱしぱしっ、と外皮が散る。
「はぁい。みんな、下がって~」
ここでさらに上空からワイバーン「スティンガー」が急降下!
「軽くステアしてあげるわよん♪」
メルクーアだ。
スティンガーの口から火炎弾。ファイヤーブレスがナイトを襲う。戦場を大きくかき混ぜるのではなく、適度に刺激を与えた。
これを察知したナイトはすぐに動く。ブレス着弾の砂煙の中、方向転換して逃げ……。
いや、狙ってる!
再びラムルタフルに突撃し転倒させた。
さらに今回は先の加速で攻撃がスカったハナのエクスシアも狙っていた。
「ちょ……戻って来たんですかぁ?」
ガツン、と食らいコクピット内で衝撃に耐えるハナ。まさかの表情である。
やや集中力に欠けていたのが……あれ?
「よっぽどこの超々重斧略称GCMを食らいたいんですねぇ?」
ゆらぁ、と不気味に上体を起こす。腑抜けていた状態から脱したぞ。武器の名前もギャラクティカマグナムの技名が長すぎて頭文字表記にした某巨匠漫画家のように端折ってる!
さらにキーリ。
「やってくれるじゃない、止まったらファイアーボールの刑よ。出し惜しみなんかしないわ」
めらぁと動機不純な……いや、今回は正当性のある闘志を燃やす。
なお、ラムルタフルには災難だったが固定砲台化することによって戦況が固定された。まだ転がったままだがすでにいい仕事をしている。
で、またすぐに方向転換。
「わ。かわされた?」
「あ、もしかしてぇ……」
フラの声。そして小太、すぐに察知した!
ハナ機、ラムルタフル、そして自分のデュミナスがあたかも冬の星座のように一直線の三連星になっていることに。フラの射撃がかわされたのは、その場での旋回ではなかったから。
ここで、上空。
「上から見るとまるわかりだけどね~」
くんっ、と再上昇していたメルクーア、ちゃんと見ている。激しくなびいていた銀髪がふわっと舞った。
急降下だ!
そしてまたもファイヤーブレス。
これはすんでのところでかわされたが……。
「前に行かせない射撃だわよ。本命はこっち!」
着弾はナイトの手前足元。今度はそのまま超低空飛行。魔竜牙「エルプシオン」で戦域に入った勢いのままド迫力の噛みつきでナイトを吹っ飛ばした!
「寄ってこないんですかぁ? そんなにこの略称GCMが怖いんですかぁ? だったら倍返しでブッコロですぅ!」
先に食らった攻撃でついに完全に目を覚ましたハナ、鍛えまくったスキルリンカーで鍛えまくった五色光符陣を連撃、連撃。キラキラと光が舞う! ……攻撃食ったのはハナ自身のテンションの低さも一因なのにナイトはとんだとばっちり。
だもので立ち上がったナイト、最大戦速で逃げる。最後の力を振り絞っている!
「え?」
逃げた先にはフラ機がいる。三連星ラインから大きく外れていたためここで運悪く突撃の標的に。
「フラさんには手を出させないのですよぉっ。今のうちの距離を取ってくださぃ……」
最初に標的になっていた小太、狙撃を捨て体を張るべくアクティブスラスター全開。
と同時にガトリングガン「エヴェクサブトスT7」に換装。
ぶっ放しつつナイトとフラを結ぶ直線上に体を入れた!
火力、足りるか? 止められるか?
「右に左に忙しいわね~」
ここでキーリがメテオどーん。
すでにハナのブッコロ攻撃とメルクーアの突撃で削れていたナイトの身体が砕けた。
「ちょっと忙しくなりましたが」
最後に残った光体コアは小太が魔導機銃「エストレジャ」できっちりと狙撃した。
●
こちら、戦線最奥。
「着地地点はずれましたが……」
「問題ないない!」
ざしっ、どしっ、とクオンのフォボス、ウーナのラジエルが着地していた。
完全に敵の裏を取っている。
ただ、二機を挟んで真ん中にいるルークのキュービックな体の上辺には弓を持った泥人形歪虚がいる。ぱらぱらと攻撃を受けるが……。
「問題があるとすればキャスリングですかね?」
「ないない。あるとすれば劣勢になったとき」
慎重なクオンに対し、ウーナは体を開き右手のプラズマライフル「イナードP5」を撃つ。左手のハンドガン「トリニティ」と合わせ二丁装備オファニムだが、敵の射線が来ているのでまずは正対せず横向きで攻撃する。
「まあ確かに」
クオンのフォボスもツインカノン「リンクレヒトW2」で強力な射撃。
ともにルークの巨体の表面を削る。相変わらず玉ねぎのように表皮から崩れていくようだ。
この時点で彼我の火力差が明確になった。挟まれて弓で応戦できるレベルではない。
(キャスリングはなさそうですね)
クオン、そう確信した。
敵はチェスの駒を模しているが、クイーンとルークの駒の一手入れ替えルールみたいなものまでは能力として織り込んでいないようだ。
しかし、敵も対応して来た。
がこんと足を出して移動可能体勢を取ったのだ。
「突撃、あるんだっけ? さあ、こっちに来い! 青竜紅刃流見せてやろうじゃないの!」
あーっ。
ウーナ、コクピット内で腰を浮かせるぐらいの勢いで前のめりになってヤル気になってる!
クオンも構えるが……。
「え?」
何と、ウーナの方にもクオンの方にもいかず、クイーンの方に前進した。
「何かある?」
「飛ばないチェスの駒はただの駒です」
警戒し観察に集中するウーナに、横にスラスタージャンプしてついて行くクオン。
「まあ、良くも悪くも量産志向の兵器ですね。機能を単純にすればそれだけ作りやすくなりますけど…今回は投入する地形に問題が有った模様ですね」
クオン、すでに何か狙いがあるようだ。
狙いを澄まして撃ったツインカノンは、移動中の敵の足元と上の泥人形をマルチロックオン。どうんどうんと撃つうちに、ついにルークの巨体が止まった。
「先に膝に来ましたか。そのまま転倒でもすれば面白いのですが……あ」
「な、なにこれ?」
反対からクオンに応じて撃ちつつ追っていたウーナも驚き足を止めた。
――かっ。かかかかっ……。
何と、四角柱型だったルークが大幅な変形をしたのだッ!
くるっと回転すると左右に城壁が展開。
あっという間に九十度の扇型に石の城壁が伸びたのだ。
扇の要となる一角には、ルークの中心辺りが西洋の城壁の角のように塔が残っている。
この影響で、クオン機とウーナ機だけが扇の外に取り残された形となった。
戦力分断である。
もっとも、城壁は約三十五メートル、十五スクエア程度までしか伸びてなかったが。
もちろん、クオンの狙い通り敵の動きを止めた、という見方もできる。
「……城壁は薄くなっている、と見るべきでしょうね」
冷静に分析したクオン、城壁に攻撃を加えた。
砕けたが回復特化型だ。
「これは厄介そうですね」
「そーゆーことなら核をやればいいんじゃない!?」
理解し一息ついたクオン。今度は逆にウーナが活発に。ピンと来たようだ。
「真ん中にコアがあるってんなら守る城壁は薄くなったよね。でもって、私ならできるだけ内側にする!」
スラスタージャンプで城壁を越えると敵の要の内側、つまりV字の一番引っ込んでいる位置に機体をひねり込んで二挺攻撃。
「……なるほど」
クオンも続いた。ジャンプした姿勢でツインカノンが唸る。
敵の弓がくる中、ついに光体コアが出るまで削り切り重厚な射撃を叩き込む中で潰した。
●
時は若干遡る。
上空で雷雲が動き雷を放つ下、シグレに乗った悠月が敵との距離を詰めていた。
今、ビショップの弾がぴしっと悠月の身体をかすめた。
(相手のチェスは体の中にあるコアを潰さないと再生だったよね)
転じて、今攻撃を食らった自分はそうではない。
「…ルモーレも便利な手下を使ってるね。修理要らずのロボットみたい」
思わずこぼした。
同時にシグレがおお~ん、と吠えて右に左にステップ。
「あぁ」
我に返る悠月。
切迫する中、優しい面差しでシグレの首筋を撫でた。
「そうだね。シグレもいてくれる」
それを感じたかシグレ、だっと最後の跳躍。
敵の弾を極力、いや、二度と主人の方に向けまいとステップし時に自ら食らっていたが、ついに敵を至近距離に捉えたのだ。
――ぶん……。
敵の振るう十字架槌、来た。
身を沈めてかわすシグレ。
が、前回と違ってフラと小太はいない。
直後に二刀流のもう一つの十字架槌が振るわれた!
――ガツ。ずざざざ……。
『オオォォォォン……』
食らって下がったシグレ、吠えた。きれいに入った敵の攻撃だが、むしろ闘志がみなぎったか。
いや。
主人の前で醜態を晒せない、ということか?
「ふ…ふふっ」
この様子に衝撃で身を伏せていた悠月がゆらりと上体を起こした。
「良いよ、今回も思う存分に吠えよう。僕もこうなると……」
改めて構える長大で怪しい雰囲気の斬魔刀「祢々切丸」。一説では、その長大さ、重量は普通の人間では扱うことはできないという。
しかしッ!
「すっかり狼になった気分だからさ!」
赤い瞳の奥に野生の炎。噛みしめる口の端に犬歯がぎらり。
主人の気配を感じ、シグレが再び接近する。
「おおおおおおっ!」
悠月、吠えた。
仲間のため、一人でビショップの足止めに走る。
こちら、多由羅。
「もう撃たせません!」
雷撃二つを食らった引き換えにクイーンに取りついていた。
振りかぶった大太刀「鬼霧雨」が唸りを上げる!
「……はっ!?」
あ。
気付いた。
クイーンが手にした本の角で打ちかかって来ていたことを。
これを身を沈めかわす。瑞那月、クイーンの横をすり抜けた。
振り向く多由羅。
が、すぐに形相を変えた。
「振り向く価値もないということですか!?」
クイーンは多由羅を振り返らず、ナイトの方へ行こうとしているのだ。
多由羅、激高!
「…どこに行こうというのです? お前の相手はこの私です…」
すぐに追い付き背中から斬り付けるがこれは誘い。
クイーン、振り向きざまに燭台の底で身をひねりざま撃ちかかる。
――ガツッ!
これを食らった多由羅、落馬……いや、まだ瞳は死んでいない。態勢不十分ながら鬼霧雨が地面を擦り上げ紅蓮の軌道を描こうとしているッ!
繰り出す多由羅は半身というか、身を投げ出している。捨て身の一撃はただ敵へ一矢をの思い。
紅蓮斬だ!
――ずぱっ……きら~ん、どさっ。
クイーンものけぞりかわそうとしたが、ペンダントに引っかかった。宝玉付きのトップが外れて宙を舞い、離れた場所に落ちた。
瞬間、一つ雷雲が消えた。
なお、最後の音は落馬した音でもある。
「…まだ、私に付き合って戴きますよ…!」
転倒していた多由羅、瑞那月には戻らず二手に分かれての同時攻撃。
奥の手で敵を幻惑する!
●
「…いい手ごたえです…」
ざしっ、と多由羅が着地した時、燭台がクイーンの手を離れて大地に墜ち雷雲が一つ消えていた。
『クゥゥ……』
一方でリーリーの瑞那月が本の角でしこたま殴られ、いま起き上がったところだが。
そこをクイーンに狙われる。
「させませんよ…」
だっ、と殺到する多由羅だが、これは誘い。振り向きざまに雷撃を食らった。
いや、本を斬り飛ばしている。雷雲、消える。多由羅もボロボロだが。
周りでは味方の戦う気配。
(仲間の為身を賭すのも武士の誉れ…)
まだ倒れるわけにはいかない。
クイーン、武器はなくなったが額のティアラの宝玉が光る。雷雲、来るか?
「…学んだ覚えも学ばせた覚えもありませんが…これでも一応剣術師範ですので…」
多由羅も最後の力を振り絞り再度殺到する。
その時だった!
「お待たせ!」
「もう大丈夫です」
ウーナとサガラの射撃。
横からクイーンを激しく襲った!
ついでに機導砲もどーん!
「大丈夫? 結構やられたみたいよ?」
メルクーアが多由羅の傍に付く。スティンガーをいったん着地させて「多重性強化」。
「助かります…コアはこの手でつぶしたいところ…」
再び燃え上がる多由羅。
こちら、悠月。
「ドラムのビートなら慣れてるよ!」
がしっ、がしっと敵の二槌流に対し剣戟の速さで対抗。受けきれない分は食らっているがリジェネレーション。主人の気迫にシグレもよくこたえ、流れた打撃を受けても引かない。勇敢に戦っている。
「うおおおっ……え?」
すかっ、と身をかわされた。
熱くなりすぎていたか。背後を取られた。
まずい、と思った瞬間。
「はい、離れたわねー」
――どぉん……。
ビショップの攻撃を止めたのは、キーリ。態勢を立て直したラムルタフルに砲撃命令を出したのだ。
――ダダダダ……。
「フラさん、クイーンの加勢に行きますよぉ」
「小太さん、すっかりガトリング使いだね」
小太がフラを従え、ガトリングで戦線をかき混ぜながら多由羅の方へ行く。
が、フラ機に敵の十字架が掛かった!
「わっ!」
「フラさん? はわわっ!」
つんのめったロリポップ。小太のデュミナスは反転してガトリング……は危険なので守りに加勢し抱き上げるように。
ここを敵に狙われた!
「…1匹たりとも逃がしませんよぅ! GCMで滅多打ちですぅ」
ハナ、エクスシアをフライトブースター「ズヴォルタ」で飛ばして接近戦。
「……一人じゃないよ♪ だったね」
これに微笑した悠月。いつもの歌を口ずさんでだっと切れ込む!
狙いはハナの倍返しブッコロで露出したコアだ。
●
こうして戦場は静かになった。
皆疲れ、近い距離に固まって座り込んでいる。
「その……疲れたよね? これ食べて」
そんな中、フラがチョコを配っている。
顔が赤いのは……。
「なるほどね~、フラっち」
「まあまあ、キーリさん」
「えっ? そ、その……」
「あ、ありがとなのですよぉ」
フラ、小太に渡したのだけは本命チョコだったようで目ざとく気付いたキーリがからかい悠月がなだめていたり。
「んもう。小太さん、あっち行こう」
「あ、あの、フラさん?」
あ。
フラ、いたたまれなくなって小太を連れて森の中に逃げた。
「フラちゃん、それむしろみんな喜ぶって」
ウーナが汗たら~するが、すでにキーリはにやにや。
「さて。あとはキングかしらね~」
「……ヴォイド・ヒズミーですか?」
メルクーアは改めてぼやき節。多由羅がぴぴんときてぽそり。って、ちょっと多由羅さん。それ危ないネタですよぅ。まあ濁点あるしイがラ行の何かでないからセーフか。
「もしそうなら……うふふ」
今度こそ関係性を問い詰めますよぅ、な感じのハナ。
「今回はいいデータが取れました」
クオンも満足そうだ。
「それにしても、今回出て来たのクイーンよクイーン。私とキャラ被ってるわよね?」
立ち上がるキーリ。なんだかんだで疲れが取れてきたようだ。
敵は全滅。
敵を苦しめ奥の手を引き出して勝ったのが大きい。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談ですぅ 弓月・小太(ka4679) 人間(クリムゾンウェスト)|10才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/02/21 07:00:54 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/19 09:44:42 |
|
![]() |
質問卓 多由羅(ka6167) 鬼|21才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2018/02/20 09:27:15 |