ゲスト
(ka0000)
明日、晴れたら
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/02/21 12:00
- 完成日
- 2018/03/01 06:23
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その森は、とても暗かった。
昼間でも鬱蒼としていて、太陽の光はほとんど入って来ない。
近くの集落に住む人間たちからは「迷いの森」として恐れられている。
近隣集落の人間にとって、
その森は特に問題視されていなかった。
不気味な場所になど近づかなければいいだけの話だから――。
しかし、住人たちにとってそうも言っていられなくなったのだ。
なぜなら、集落の子供が迷子になった可能性が高いから。
「可能性が高いって……はっきりそうだとは言えないのか?」
男性が呆れた口調で問いかけると、住人たちは申し訳なさそうに肩を竦めた。
「まぁまぁ、そう言わないで。何か知ってるなら教えてくれる?」
「森の奥に、一輪だけ咲いている花があるらしいんです」
「……花?」
住人の話を聞くと、迷いの森の最奥は太陽の光が当たる場所があるらしい。
そこにだけ咲く花があって、それを手に入れると願いが叶うのだそうだ。
「願いが叶う、ねぇ……?」
「もちろん、私たちのなかで信じているものはいません。ですが……」
「子供にとっては、それが心の支えになっていたってことか……」
「どうかお願いです、あの子を、探してください……!」
こうして、ハンターオフィスに依頼が出され、数名のハンターたちが派遣されることになった――。
リプレイ本文
■少年を探すために集まったハンターたち
「やれやれ……ひとりで準備もなしに向かうとは、森の恐ろしさを知らないようだ」
ため息交じりに呟くのは、フワ ハヤテ(ka0004)だった。
「地元の子だから、森のことはよく知ってるだろうに。それでも入っていくっていうのは、よっぽど叶えたいことがあったんだね……」
天竜寺 舞(ka0377)が悲しそうに呟きながら「けど、死んじゃったら願いを叶えるも何もないんだよ。早く見つけてあげないと」と言葉を付け足した。
(願いの叶う花、か。興味深いけど、まずは行方不明の少年の捜索が最優先だな)
リンランディア(ka0488)は依頼書を見つめながら、心の中で呟いている。
「願いを叶えたいために、無理をする……彼の紡ぐ物語は、どんな花を咲かせるのかしら」
エルティア・ホープナー(ka0727)は事前に収集した情報を見つめて、ため息をつく。
「雑魔が出る森に行くなんて、放っておけないよ。それに、その子に花を求める理由があるなら、力になれるといいんだけど……」
時音 ざくろ(ka1250)は、少年のことを考えているらしく、憂いた表情だった。
「……失踪とその花をすぐに結びつけられたのは、彼のお願いを知っているからよね?」
エーミ・エーテルクラフト(ka2225)の言葉に、他のハンターたちもハッとする。
時雨 凪枯(ka3786)は「確かにそうだねぇ、理由を知らなければ花のことには結びつかない」と小さく頷きながら呟く。
「……何か、子供のものはないか?」
白山 菊理(ka4305)が村人に言葉を投げかける。
「あの、なぜでしょうか?」
「私のペット、狛犬にニオイを覚えさせて追跡出来ればと思ったんだが……」
「それなら、あの子の持っていたブレスレットがあります」
「それで十分。ほら、ニオイを覚えて」
白山は同行させていた狛犬にニオイを覚えさせる。
「とりあえず、少年の名前や外見的特徴、例の花を求める理由を聞いてもいいかな?」
フワが話しかけると、初老の男性が視線を落としながら話し始めた。
「あの子、ケイトには病気の妹がいるんです。以前から、言い伝えの花があれば、妹の病気が治るんじゃないかと言っていまして……」
「以前から言っていたのに、どうして今行動をしていると分かるの?」
天竜寺が首を傾げながら問いかけると、男性は少年の妹の病状が思わしくないと答えてきた。
(なるほど。妹の病状が悪くなってきたから、言い伝えの花にすがろうとしたってことか)
リンランディアは少年の気持ちが分かってしまい、他のハンターに気づかれないようため息をつく。
「雑魔がいる場所に、その子はいるんだよね? 早く迎えに行かないと……」
時音のやや焦った声に、ハンターたちは頷いて、必要な情報を集めて問題の樹海へと向かい始めた。
■不気味な樹海にて潜む雑魔と、少年
一刻も早くケイトを見つけるため、ハンターたちはふたつの班で行動することに決めた。
A班:フワ、リンランディア、時音、白山の4名。
B班:天竜寺、エルティア、エーミー、時雨の4名。
「何かあったら、トランシーバーで連絡を取り合いましょう」
エルティアの言葉に、A班のメンバーも頷き、それぞれ行動を開始した。
●A班
「ホシノ、今ざくろたちの絆は結ばれた!」
樹海に入る前、時音は「ファミリアズアイ」を使って、モフロウを空に飛ばしていた。
「どう?」
白山が時音に問いかける。
モフロウと視覚を共有している時音の言葉を、白山だけではなくフワとリンランディアも待つ。
「ちょうど、樹海の中心部に光が当たるところがあるね」
「なるほど、つまりそこが少年の目指す場所ということでいいのかな。恐らく少年は場所を知っているだろうし、闇雲に探すよりは目的地に向かった方が見つけられる可能性も高いかもね」
「……確かに、フワさんの言う通りかもね。樹海の中は静かだし、まだケイトくんと雑魔は出会っていないと考えてもいいのかもしれない。もちろん、楽観視は出来ないけどね」
そう言いながら、リンランディアは「魔導スマートフォン」のライトを点ける。
「この灯りに、雑魔でもケイトくんでも気づいて近寄ってきてくれるといいんだけど」
「私も点けておこう、灯りは多いに越したことはない」
そう言いながら、白山も持っていた「LEDライト」で周囲を照らして「マッピングセット」で地図を作成いていく。
「ケイトのことは心配だけど、願いの叶う花というのも好奇心をくすぐるね、菊理」
「うずうずしているのはいいけど、注意力が散漫にならないようにね、ざくろ」
白山は夫である時音に、苦笑しながら言葉を返す。
「ちょっと見てくれるかい?」
途中で足を止めたフワが、他の3人に声をかける。
「どうしたんです?」
「これ、何に見えるかな?」
フワが「魔導スマートフォン」の灯りで照らしたのは、地面。そこにあったのは……。
「これって、足跡、ですよね? しかも、子供のもの――……」
その時、B班から通信が入った。
――B班が捜索していた周辺で、樹海の中央部に向かう雑魔の足跡を見つけた、と――。
●B班
「ゴエモン、大変なものを見つけちゃったね」
天竜寺は同行させていた柴犬に、ケイトの私物を嗅がせて捜索をしていたが、雑魔の足跡を見つけてしまったのだ。
「一応、目印はつけて歩いているから迷うことはないわ。それにしても、私のモフロウが見つける前に雑魔の足跡を見つけたのね。モフロウの鳴き声は聞こえないから、まだどっちも見つかっていないのかしら」
エルティアは、樹海という迷いやすい場所での捜索に備えて、青いリボンを持参して目印として木に結びながら歩いていた。
「ここに入ったケイトという少年は、突発的に樹海に入ったようね」
「突発的って、ケイトくんの残したものって、A班の足跡くらいじゃない?」
そう、先ほどA班からケイトの足跡を見つけたという連絡が入った。しかし、ほぼ同時のタイミングでB班も雑魔の足跡を見つけてしまったのだけど。
「A班から足跡の状況を聞いたけど、走りながらついたような足跡らしいわ。それ以前にも折れた枝とかあったらしいし、周りが見えずに行動してるって考えた方がいいわね」
「なるほど、樹海の中でも戦馬が使えりゃ問題なかったんだがねぇ」
時雨はやや大げさにため息をついてみせる。
樹海の入口までは馬で移動が出来たけれど、鬱蒼とした樹海の中ではそうもいかない。
「雑魔が通ったらしき痕跡は残っているんだがねぇ、しかし妙さね……」
「妙って、何が?」
天竜寺が首を傾げながら問いかけると「タイミング、さ」と時雨が言葉を返す。
「確かに変ね、こっちが雑魔の足跡を見つけた頃に向こうも少年の足跡を見つけたんでしょ? まるで、少年に気づいて雑魔が移動しているみたいじゃない?」
エーミの言葉に、ぞくり、とした何かが背中を這う。
「これは……悠長に構えている余裕なんて、ないのかもしれないわね」
エルティアの言葉に、B班のハンターたちは歩く速度を速めるのだった。
■戦闘開始、花を求める少年を守れ!
「うわああああっ!」
A班とB班が樹海の中央付近にやってきた時、まさに雑魔がケイトを襲おうとしている所だった。
「くっ……!」
フワは「エクステンドレンジ」で射程距離を延長させた後に「アイスボルト」を使用する。
「大丈夫!? 怪我は!?」
フワの攻撃で雑魔の動きを止めた時「瞬脚」を使用した天竜寺がケイトを抱きかかえて、雑魔から距離を取った。
「良かった、大丈夫みたいだね。まさに間一髪といったところか……」
リンランディアが安心したように呟き「星弓 フェイルノート・スラッシュ」を雑魔に向けて構えた。
「貴方たちの紡ぐ悲話には飽きたわ……私は、想いの輝く物語がみたいの」
エルティアは「ソウルトーチ」を使い、狼型雑魔の気を引きつける。
「気を引きつけてくれてありがとう、ケイトはざくろが守る!」
時音は自分が雑魔の盾になるような位置に陣取り、ケイトが怪我をしないように守っている。
「さて、あたしも頑張るかね。坊にゃ手出しをさせないよ」
時雨はそう呟き「ディヴァインウィル」を発動させ、ケイトが雑魔に狙われないよう、周囲に不可視の境界を作り上げた。
「これだけの実力者がそろっていて、あなたなんかにやられると思ってるのかしら」
エーミは「ダブルキャスト」を使用した後に「推理術」と「アイスボルト」を使用する。
「ふぅ……」
白山は「剣心一如」を使用した後、雑魔との距離を詰めて「超重錬成」を使い、一瞬だけ武器を巨大化させた。
「つぶれてしまえ」
短く白山が呟き、その攻撃に他のハンターたちも各々技を繰り出して、樹海に潜む雑魔を無事に退治することが出来るのだった。
■戦闘終了後、少年の願い
「……ごめんなさい」
戦闘が終わった後、それぞれ怪我の治療などをしていると、ケイトがハンターたちに頭を下げた。
「僕のせいで、みんなが来たんだよね……」
「ふむ、キミは自分の行動が良くないものだと自覚しているようだね」
口元に手を当てながら、フワが小さく呟く。
「ならば、なぜこんな行動を強行したのかな? ある程度は聞いているけど、キミの口からききたいね」
フワに促されて「妹に、花をあげたかったんだ」とポツリとケイトが言葉を返した。
「願いを叶える花のことが本当だとしても、そのために君に何かあったら誰も幸せになれないんじゃないかな? それを忘れちゃ駄目だよ?」
「ごめんなさい、ごめんなさいっ……」
「あ、あ~、ごめんね? キツく聞こえたかな……でも、これは君のためなんだよ?」
泣き始めたケイトに、天竜寺が慌てて言葉をかける。
「願いが叶う花で、妹さんの病気を治したかった?」
リンランディアの言葉に、ケイトは首を振る。
「え? そのために花が欲しかったんじゃないのかな?」
「……いくら、そういう言い伝えがあっても、そんな都合のいいものがないことくらい知ってる」
「ならば、なぜキミは危険をおかしてまでこんなことを?」
エルティアの言葉に「妹のため、なんだ」とケイトが言葉を零し、ハンターたちはその意味が分からず視線を合わせた。
「妹が、その花があれば病気でも頑張れるかもしれないって言ってたんだ。僕、妹の病気については何も出来ないから……せめて、妹が欲しがっている花を手に入れてあげたかったんだ」
ケイトの言葉を聞き「貴方の描く物語を、私たちに見せてくれるのなら……手を貸すことは出来るわ」とエルティアが言葉を投げかける。
「そうだね! ざくろたちも手を貸すよ!」
時音はにっこりと微笑みながら、ケイトに手を差し出す。
「え?」
「過ぎたことを言っても仕方ないけど、勝手に行動せずに、依頼なりなんなりすればもっと早く花も手に入ったかもしれないわね。そういう事情なら、例え報酬金がなくても受けてた可能性はあるもの」
エーミはため息交じりに呟いた後、ケイトの頭を撫でた。
「ある意味、坊の願いは叶ったようなもんだね」
「どういうことかな?」
時雨の言葉に、フワが聞き返す。
「坊は花が欲しいんだろう? あたしらがいれば花までの道のりも険しくはないはずさ。つまり、花を手に入れるという願いは叶うのは確定してるってことさね」
花があれば、という言葉はあえて時雨は言わなかった。変にここで希望を断つ必要はないから。
「とりあえず、きみが歩けるなら件の花のところに行こうか」
白山が呟き、ケイトをリンランディアが背負い、樹海の中央部を目指して歩き出すのだった。
■花が咲くその場所で
リンランディアに背負われて、少年は目的の地へとやってきていた。
「これは、また不思議な場所だね。一か所にだけ太陽の光が差し込んでて、すごくきれい……」
天竜寺がその幻想的な景色に驚きながらも、目を輝かせている。
「きみの言う花とはあれのことか?」
白山が指さした先には、ぽつんと一輪の花が咲いていた。
「あ、あれだよ! 本当にあった……」
「これを妹さんに持って帰ってあげれば喜ぶね」
時音の言葉に、ケイトは花に伸ばしかけた手を引っ込めた。
「ケイト……?」
「……僕、これ持って帰らない」
「なぜ? あなたはこの花のために頑張ったんでしょう?」
エーミの言葉に「……妹が、元気になったら一緒に見に来る」と、ケイトは言葉を返す。
「なるほど、手軽に花を与えるのではなく、花を見るために病気と闘えるように心を震わせるか」
時雨もケイトの意図が分かったらしく、目を細めた。
「確かにその方がいいかもしれないね。この花は手折るのではなく、ここにあるからこそ希望の象徴となっているのだろう」
フワが光を浴びながらたたずむ花を見つめながら呟く。
「そう、それが貴方の紡ぐ物語ということね」
エルティアが呟き、ケイトは花に背中を向ける。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、本当にありがとう。僕、ここに連れてきてもらえて良かった。あと、心配かけてごめんなさい」
ケイトは頭を深く下げながらお礼とお詫びを言う。
ハンターたちは、その後ケイトを集落に送ってから帰還した。
ある意味、ハンターたちはケイトの心の中を晴天に導いたのだろう。
花に頼るのではなく、自分で実際に希望を与えるという方法を思いつかせたのだから。
きっと、ケイトはこれから無理なこと、間違った行動を取ることはないはずだ。
大切なことに気づかせてくれるキッカケを作ったハンターたちを、彼が忘れない限りは――。
END
「やれやれ……ひとりで準備もなしに向かうとは、森の恐ろしさを知らないようだ」
ため息交じりに呟くのは、フワ ハヤテ(ka0004)だった。
「地元の子だから、森のことはよく知ってるだろうに。それでも入っていくっていうのは、よっぽど叶えたいことがあったんだね……」
天竜寺 舞(ka0377)が悲しそうに呟きながら「けど、死んじゃったら願いを叶えるも何もないんだよ。早く見つけてあげないと」と言葉を付け足した。
(願いの叶う花、か。興味深いけど、まずは行方不明の少年の捜索が最優先だな)
リンランディア(ka0488)は依頼書を見つめながら、心の中で呟いている。
「願いを叶えたいために、無理をする……彼の紡ぐ物語は、どんな花を咲かせるのかしら」
エルティア・ホープナー(ka0727)は事前に収集した情報を見つめて、ため息をつく。
「雑魔が出る森に行くなんて、放っておけないよ。それに、その子に花を求める理由があるなら、力になれるといいんだけど……」
時音 ざくろ(ka1250)は、少年のことを考えているらしく、憂いた表情だった。
「……失踪とその花をすぐに結びつけられたのは、彼のお願いを知っているからよね?」
エーミ・エーテルクラフト(ka2225)の言葉に、他のハンターたちもハッとする。
時雨 凪枯(ka3786)は「確かにそうだねぇ、理由を知らなければ花のことには結びつかない」と小さく頷きながら呟く。
「……何か、子供のものはないか?」
白山 菊理(ka4305)が村人に言葉を投げかける。
「あの、なぜでしょうか?」
「私のペット、狛犬にニオイを覚えさせて追跡出来ればと思ったんだが……」
「それなら、あの子の持っていたブレスレットがあります」
「それで十分。ほら、ニオイを覚えて」
白山は同行させていた狛犬にニオイを覚えさせる。
「とりあえず、少年の名前や外見的特徴、例の花を求める理由を聞いてもいいかな?」
フワが話しかけると、初老の男性が視線を落としながら話し始めた。
「あの子、ケイトには病気の妹がいるんです。以前から、言い伝えの花があれば、妹の病気が治るんじゃないかと言っていまして……」
「以前から言っていたのに、どうして今行動をしていると分かるの?」
天竜寺が首を傾げながら問いかけると、男性は少年の妹の病状が思わしくないと答えてきた。
(なるほど。妹の病状が悪くなってきたから、言い伝えの花にすがろうとしたってことか)
リンランディアは少年の気持ちが分かってしまい、他のハンターに気づかれないようため息をつく。
「雑魔がいる場所に、その子はいるんだよね? 早く迎えに行かないと……」
時音のやや焦った声に、ハンターたちは頷いて、必要な情報を集めて問題の樹海へと向かい始めた。
■不気味な樹海にて潜む雑魔と、少年
一刻も早くケイトを見つけるため、ハンターたちはふたつの班で行動することに決めた。
A班:フワ、リンランディア、時音、白山の4名。
B班:天竜寺、エルティア、エーミー、時雨の4名。
「何かあったら、トランシーバーで連絡を取り合いましょう」
エルティアの言葉に、A班のメンバーも頷き、それぞれ行動を開始した。
●A班
「ホシノ、今ざくろたちの絆は結ばれた!」
樹海に入る前、時音は「ファミリアズアイ」を使って、モフロウを空に飛ばしていた。
「どう?」
白山が時音に問いかける。
モフロウと視覚を共有している時音の言葉を、白山だけではなくフワとリンランディアも待つ。
「ちょうど、樹海の中心部に光が当たるところがあるね」
「なるほど、つまりそこが少年の目指す場所ということでいいのかな。恐らく少年は場所を知っているだろうし、闇雲に探すよりは目的地に向かった方が見つけられる可能性も高いかもね」
「……確かに、フワさんの言う通りかもね。樹海の中は静かだし、まだケイトくんと雑魔は出会っていないと考えてもいいのかもしれない。もちろん、楽観視は出来ないけどね」
そう言いながら、リンランディアは「魔導スマートフォン」のライトを点ける。
「この灯りに、雑魔でもケイトくんでも気づいて近寄ってきてくれるといいんだけど」
「私も点けておこう、灯りは多いに越したことはない」
そう言いながら、白山も持っていた「LEDライト」で周囲を照らして「マッピングセット」で地図を作成いていく。
「ケイトのことは心配だけど、願いの叶う花というのも好奇心をくすぐるね、菊理」
「うずうずしているのはいいけど、注意力が散漫にならないようにね、ざくろ」
白山は夫である時音に、苦笑しながら言葉を返す。
「ちょっと見てくれるかい?」
途中で足を止めたフワが、他の3人に声をかける。
「どうしたんです?」
「これ、何に見えるかな?」
フワが「魔導スマートフォン」の灯りで照らしたのは、地面。そこにあったのは……。
「これって、足跡、ですよね? しかも、子供のもの――……」
その時、B班から通信が入った。
――B班が捜索していた周辺で、樹海の中央部に向かう雑魔の足跡を見つけた、と――。
●B班
「ゴエモン、大変なものを見つけちゃったね」
天竜寺は同行させていた柴犬に、ケイトの私物を嗅がせて捜索をしていたが、雑魔の足跡を見つけてしまったのだ。
「一応、目印はつけて歩いているから迷うことはないわ。それにしても、私のモフロウが見つける前に雑魔の足跡を見つけたのね。モフロウの鳴き声は聞こえないから、まだどっちも見つかっていないのかしら」
エルティアは、樹海という迷いやすい場所での捜索に備えて、青いリボンを持参して目印として木に結びながら歩いていた。
「ここに入ったケイトという少年は、突発的に樹海に入ったようね」
「突発的って、ケイトくんの残したものって、A班の足跡くらいじゃない?」
そう、先ほどA班からケイトの足跡を見つけたという連絡が入った。しかし、ほぼ同時のタイミングでB班も雑魔の足跡を見つけてしまったのだけど。
「A班から足跡の状況を聞いたけど、走りながらついたような足跡らしいわ。それ以前にも折れた枝とかあったらしいし、周りが見えずに行動してるって考えた方がいいわね」
「なるほど、樹海の中でも戦馬が使えりゃ問題なかったんだがねぇ」
時雨はやや大げさにため息をついてみせる。
樹海の入口までは馬で移動が出来たけれど、鬱蒼とした樹海の中ではそうもいかない。
「雑魔が通ったらしき痕跡は残っているんだがねぇ、しかし妙さね……」
「妙って、何が?」
天竜寺が首を傾げながら問いかけると「タイミング、さ」と時雨が言葉を返す。
「確かに変ね、こっちが雑魔の足跡を見つけた頃に向こうも少年の足跡を見つけたんでしょ? まるで、少年に気づいて雑魔が移動しているみたいじゃない?」
エーミの言葉に、ぞくり、とした何かが背中を這う。
「これは……悠長に構えている余裕なんて、ないのかもしれないわね」
エルティアの言葉に、B班のハンターたちは歩く速度を速めるのだった。
■戦闘開始、花を求める少年を守れ!
「うわああああっ!」
A班とB班が樹海の中央付近にやってきた時、まさに雑魔がケイトを襲おうとしている所だった。
「くっ……!」
フワは「エクステンドレンジ」で射程距離を延長させた後に「アイスボルト」を使用する。
「大丈夫!? 怪我は!?」
フワの攻撃で雑魔の動きを止めた時「瞬脚」を使用した天竜寺がケイトを抱きかかえて、雑魔から距離を取った。
「良かった、大丈夫みたいだね。まさに間一髪といったところか……」
リンランディアが安心したように呟き「星弓 フェイルノート・スラッシュ」を雑魔に向けて構えた。
「貴方たちの紡ぐ悲話には飽きたわ……私は、想いの輝く物語がみたいの」
エルティアは「ソウルトーチ」を使い、狼型雑魔の気を引きつける。
「気を引きつけてくれてありがとう、ケイトはざくろが守る!」
時音は自分が雑魔の盾になるような位置に陣取り、ケイトが怪我をしないように守っている。
「さて、あたしも頑張るかね。坊にゃ手出しをさせないよ」
時雨はそう呟き「ディヴァインウィル」を発動させ、ケイトが雑魔に狙われないよう、周囲に不可視の境界を作り上げた。
「これだけの実力者がそろっていて、あなたなんかにやられると思ってるのかしら」
エーミは「ダブルキャスト」を使用した後に「推理術」と「アイスボルト」を使用する。
「ふぅ……」
白山は「剣心一如」を使用した後、雑魔との距離を詰めて「超重錬成」を使い、一瞬だけ武器を巨大化させた。
「つぶれてしまえ」
短く白山が呟き、その攻撃に他のハンターたちも各々技を繰り出して、樹海に潜む雑魔を無事に退治することが出来るのだった。
■戦闘終了後、少年の願い
「……ごめんなさい」
戦闘が終わった後、それぞれ怪我の治療などをしていると、ケイトがハンターたちに頭を下げた。
「僕のせいで、みんなが来たんだよね……」
「ふむ、キミは自分の行動が良くないものだと自覚しているようだね」
口元に手を当てながら、フワが小さく呟く。
「ならば、なぜこんな行動を強行したのかな? ある程度は聞いているけど、キミの口からききたいね」
フワに促されて「妹に、花をあげたかったんだ」とポツリとケイトが言葉を返した。
「願いを叶える花のことが本当だとしても、そのために君に何かあったら誰も幸せになれないんじゃないかな? それを忘れちゃ駄目だよ?」
「ごめんなさい、ごめんなさいっ……」
「あ、あ~、ごめんね? キツく聞こえたかな……でも、これは君のためなんだよ?」
泣き始めたケイトに、天竜寺が慌てて言葉をかける。
「願いが叶う花で、妹さんの病気を治したかった?」
リンランディアの言葉に、ケイトは首を振る。
「え? そのために花が欲しかったんじゃないのかな?」
「……いくら、そういう言い伝えがあっても、そんな都合のいいものがないことくらい知ってる」
「ならば、なぜキミは危険をおかしてまでこんなことを?」
エルティアの言葉に「妹のため、なんだ」とケイトが言葉を零し、ハンターたちはその意味が分からず視線を合わせた。
「妹が、その花があれば病気でも頑張れるかもしれないって言ってたんだ。僕、妹の病気については何も出来ないから……せめて、妹が欲しがっている花を手に入れてあげたかったんだ」
ケイトの言葉を聞き「貴方の描く物語を、私たちに見せてくれるのなら……手を貸すことは出来るわ」とエルティアが言葉を投げかける。
「そうだね! ざくろたちも手を貸すよ!」
時音はにっこりと微笑みながら、ケイトに手を差し出す。
「え?」
「過ぎたことを言っても仕方ないけど、勝手に行動せずに、依頼なりなんなりすればもっと早く花も手に入ったかもしれないわね。そういう事情なら、例え報酬金がなくても受けてた可能性はあるもの」
エーミはため息交じりに呟いた後、ケイトの頭を撫でた。
「ある意味、坊の願いは叶ったようなもんだね」
「どういうことかな?」
時雨の言葉に、フワが聞き返す。
「坊は花が欲しいんだろう? あたしらがいれば花までの道のりも険しくはないはずさ。つまり、花を手に入れるという願いは叶うのは確定してるってことさね」
花があれば、という言葉はあえて時雨は言わなかった。変にここで希望を断つ必要はないから。
「とりあえず、きみが歩けるなら件の花のところに行こうか」
白山が呟き、ケイトをリンランディアが背負い、樹海の中央部を目指して歩き出すのだった。
■花が咲くその場所で
リンランディアに背負われて、少年は目的の地へとやってきていた。
「これは、また不思議な場所だね。一か所にだけ太陽の光が差し込んでて、すごくきれい……」
天竜寺がその幻想的な景色に驚きながらも、目を輝かせている。
「きみの言う花とはあれのことか?」
白山が指さした先には、ぽつんと一輪の花が咲いていた。
「あ、あれだよ! 本当にあった……」
「これを妹さんに持って帰ってあげれば喜ぶね」
時音の言葉に、ケイトは花に伸ばしかけた手を引っ込めた。
「ケイト……?」
「……僕、これ持って帰らない」
「なぜ? あなたはこの花のために頑張ったんでしょう?」
エーミの言葉に「……妹が、元気になったら一緒に見に来る」と、ケイトは言葉を返す。
「なるほど、手軽に花を与えるのではなく、花を見るために病気と闘えるように心を震わせるか」
時雨もケイトの意図が分かったらしく、目を細めた。
「確かにその方がいいかもしれないね。この花は手折るのではなく、ここにあるからこそ希望の象徴となっているのだろう」
フワが光を浴びながらたたずむ花を見つめながら呟く。
「そう、それが貴方の紡ぐ物語ということね」
エルティアが呟き、ケイトは花に背中を向ける。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、本当にありがとう。僕、ここに連れてきてもらえて良かった。あと、心配かけてごめんなさい」
ケイトは頭を深く下げながらお礼とお詫びを言う。
ハンターたちは、その後ケイトを集落に送ってから帰還した。
ある意味、ハンターたちはケイトの心の中を晴天に導いたのだろう。
花に頼るのではなく、自分で実際に希望を与えるという方法を思いつかせたのだから。
きっと、ケイトはこれから無理なこと、間違った行動を取ることはないはずだ。
大切なことに気づかせてくれるキッカケを作ったハンターたちを、彼が忘れない限りは――。
END
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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願いの叶う、花 エーミ・エーテルクラフト(ka2225) 人間(リアルブルー)|17才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/02/21 05:45:30 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/17 18:53:34 |