ゲスト
(ka0000)
お狐様
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/10 19:00
- 完成日
- 2014/12/12 21:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●深い深い森の奥
リアルブルーで馴染みの鳥居がなぜクリムゾンウェストの森の奥深くに建てられたのかは誰も知らない。
そもそもその鳥居の存在自体を地元住民もあまり知らなかったのだから無理はないかもしれない。
事の発端は迷子探しだった。そろそろやってくる冬が山を閉ざす前に遊びに出かけよう、と兄弟が山の奥深くに入り込み遊びに夢中になって帰り道を見失ってしまったのだ。
村の者たちが探索隊を組んで探し回り、子供たちを保護したのが件の鳥居の近くである。
それだけだったのならば鳥居を遺跡の調査として調べるなり今まで通り放っておくこともできただろう。
問題はただ一つ。その鳥居に寄り添うように人に似て人とは決定的に違う存在がいたことだった。
九尾の狐の姿を取った雑魔は高らかに啼く。
まるで贄をもとめるように。
「偶然発見されてから人に危害を加えだした雑魔の討伐依頼が来ているよ。」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)はわずかに眉をひそめた後言葉を続けた。
「狐火、っていうんだったかな。今のところはぼやで済んでるけど火を使った攻撃と攻撃手段は炎系の術と幻術、精神攪乱系の術を使って村人を襲ってる。
山火事にならないように注意した方がいいかもしれない。それと山道だから足場にも注意しないと駄目だろうね。
広葉樹は葉が落ちた時期だから太陽が出てればある程度明かりは差すだろうけれど鳥居の近くで戦うと落ち葉から延焼する可能性もなくはない。
近くに渓流があるようだから上手く誘い込めれば山火事は防げるかもしれないね。
九尾の狐が一体と、外見は野生の狐を少し大型にしたような配下的な存在が三体。計四体。配下の方は術より爪や牙による物理的な攻撃を多く使ってくるみたいだね。
九尾の狐の方は配下に守られる形で術を中心に使ってくるらしい。
雑魔だから説得してお引き取り願うわけにもいかないからね。できるだけ被害が出ないように気を付けて討伐をお願いするよ。
襲撃のタイミングは不規則みたいだから早期解決を目指すなら初めに発見された森の奥にある、リアルブルーで見かける鳥居を根城にしてるみたいだからそこから誘き出すのが一番早いんじゃないかな。
村の近くで戦って今の時期に民家が焼けても困るだろうしね。狭い土地に畑や田んぼがあるけどあまり荒らすと来年の農作が大変になるし」
村から鳥居までの略図と鳥居から渓流までの略図を広げながら「まぁ、何処で戦うかの判断は任せるけど長期滞在すると村人の負担にもなるからそこの配慮もよろしくね」とルカは言葉を結んだのだった。
リアルブルーで馴染みの鳥居がなぜクリムゾンウェストの森の奥深くに建てられたのかは誰も知らない。
そもそもその鳥居の存在自体を地元住民もあまり知らなかったのだから無理はないかもしれない。
事の発端は迷子探しだった。そろそろやってくる冬が山を閉ざす前に遊びに出かけよう、と兄弟が山の奥深くに入り込み遊びに夢中になって帰り道を見失ってしまったのだ。
村の者たちが探索隊を組んで探し回り、子供たちを保護したのが件の鳥居の近くである。
それだけだったのならば鳥居を遺跡の調査として調べるなり今まで通り放っておくこともできただろう。
問題はただ一つ。その鳥居に寄り添うように人に似て人とは決定的に違う存在がいたことだった。
九尾の狐の姿を取った雑魔は高らかに啼く。
まるで贄をもとめるように。
「偶然発見されてから人に危害を加えだした雑魔の討伐依頼が来ているよ。」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)はわずかに眉をひそめた後言葉を続けた。
「狐火、っていうんだったかな。今のところはぼやで済んでるけど火を使った攻撃と攻撃手段は炎系の術と幻術、精神攪乱系の術を使って村人を襲ってる。
山火事にならないように注意した方がいいかもしれない。それと山道だから足場にも注意しないと駄目だろうね。
広葉樹は葉が落ちた時期だから太陽が出てればある程度明かりは差すだろうけれど鳥居の近くで戦うと落ち葉から延焼する可能性もなくはない。
近くに渓流があるようだから上手く誘い込めれば山火事は防げるかもしれないね。
九尾の狐が一体と、外見は野生の狐を少し大型にしたような配下的な存在が三体。計四体。配下の方は術より爪や牙による物理的な攻撃を多く使ってくるみたいだね。
九尾の狐の方は配下に守られる形で術を中心に使ってくるらしい。
雑魔だから説得してお引き取り願うわけにもいかないからね。できるだけ被害が出ないように気を付けて討伐をお願いするよ。
襲撃のタイミングは不規則みたいだから早期解決を目指すなら初めに発見された森の奥にある、リアルブルーで見かける鳥居を根城にしてるみたいだからそこから誘き出すのが一番早いんじゃないかな。
村の近くで戦って今の時期に民家が焼けても困るだろうしね。狭い土地に畑や田んぼがあるけどあまり荒らすと来年の農作が大変になるし」
村から鳥居までの略図と鳥居から渓流までの略図を広げながら「まぁ、何処で戦うかの判断は任せるけど長期滞在すると村人の負担にもなるからそこの配慮もよろしくね」とルカは言葉を結んだのだった。
リプレイ本文
●九尾の狐の騒動は
リアルブルーの建築方法で建てられた鳥居は人知れずそこに在った。
九尾の狐の雑魔が配下の雑魔を連れて村を襲撃するようになるまでは。
そこにいつからかひっそりと在り、誰にも知られぬまま時を過ごすはずだった鳥居。
日高・明(ka0476)が鳥居を見上げながらつぶやく。
「まさかこっちで鳥居があるなんて思わなかったなあ。油揚げでも奉納していこうかな。
無事に終わったらだけど。それにしても狐の雑魔ねえ。なんか出来すぎだなあ」
同じように鳥居を眺めた後周辺を巡る九尾の狐と配下の狐の雑魔たちに視線を移しながらネージュ(ka0049)は不思議そうに首を傾げた。
「あら、リアルブルーでは鳥居と狐に、関連性があるんですか。…文化って、不思議ですね」
「あぁ、いや。全部の鳥居に狐が関係あるわけではないよ。稲荷神っていう神様を祀る神社には狐がつきものなんだ」
お稲荷様、お稲荷さんともいい、他にも様々な呼ばれ方がある。
「それにしても九尾の狐か。リアルブルーの稲荷系の神社では九尾の狐を祀ってたりするけど……神様とでも言いたいのかな」
まさかね、と苦笑気味に笑う明。
「森の奥にある鳥居かぁ……もしかしたら昔、森の雑魔に影響を受けたことがあって浄化目的で建てたのかもしれないけど……調査するにしてもとりあえずは件の雑魔だね」
星垂(ka1344)も不思議そうにしながら九尾の狐たちをどう上手く渓流付近で待ち伏せしている仲間の元まで誘導するかで頭を悩ませていた。
狐の雑魔と聞いて色々気になっているもののなぜ自分でもこんなに気になっているのかは分からないまま仕事を終わらせてから考えよう、と心の中で言い聞かせているのは金刀比良 十六那(ka1841)だ。なにか胸が騒ぐものがあるらしい。
(とりあえず、お仕事に集中しましょう……そのあとでも、考えられるわ)
「鳥居か。ボクの好きな着物とかとリアルブルーでは同じ国発祥のものだっけ?
雑魔を退治できたらゆっくり見に行ってみたいな」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が鳥居に興味があるらしくそんな言葉を小さく漏らす。
クリムゾンウェスト出身の彼女にとってはリアルブルーの文化は興味深いもののようだ。
「……さて、そろそろ誘き出そうか。待ち伏せ班の皆が待ちくたびれてしまう」
アルトが口元に薄く笑みを刷いて物陰から姿を現す。
ザレム・アズール(ka0878)は綱を靴底、足の甲、足首と渡らせて巻くことで湿った落葉の山肌や戦場となる渓流で足を滑らせないようにと対処を行った後渓流に向かっていた。
「見た目はちょっと悪いけど効果はあるんだよ。渓流だけなら地下足袋に草鞋がいいんだけど今回は山もあるからね」
そう言ったあと決戦想定場所より少し山に入ったところで木の陰に身を隠して雑魔が通過するのを待つ。
誘導班が通り過ぎ、それを追う雑魔と誘導班が交戦状態になった時、雑魔がザレムに背を向ける形になる事を狙っての位置取りだ。
「鳥居……転移前、暮らしてた場所にもあったから……なんだか、こういうのも懐かしい気が、する。
こういうとこ……周りが杜に囲まれてる、から……子供のとき、夜中こっそり……サバイバル練習にきたり、したっけ。
今思えば……バチあたり、っていうやつだったりしたのかもしれない、けど」
隠密を使ってザレム同様身を隠しながらズィルバーン・アンネ・早咲(ka3361)はまだ見ぬ鳥居に思いを馳せた。
「鳥居、一度でいいから色々見たかったんだよね。さっさと狐さん倒してじっくり見学しようか」
仁川 リア(ka3483)も物陰に身を隠して雑魔がやってくるのを待っていた。
魔導短伝話を携帯していたネージュからリアへそろそろ其方へ着くから準備をしておいてほしい、と連絡があり、リアは近くへ潜む待ち伏せ班のメンバーにそれを手振りで伝えた。
程なくして誘導班のメンバーが狐四匹を引き連れて渓流へとやってくる。
渓流を背にして向き合い息を整えながら本格的な戦闘に入ろうとしたところでリアが瞬脚を使用して急接近すると間合いを取らせる間も与えずに配下の狐の雑魔にリアルブルーの日本で用いられていた、革紐が巻きつけられた握りと黒漆塗りの鞘を持つ刀を抜刀して斬りかかる。
ズィルバーンは物陰からマテリアルのエネルギーにより弾丸を射出する、クリムゾンウェストの銃を九尾の狐に向かって構えると機械を媒介にしてマテリアルを変換したエネルギーを一条の光と化して目標を貫いた。
ザレムもまた九尾の狐をよく狙いを付けたうえで矢で射ぬいた。
幻術を使おうとしていた九尾の狐は集中を邪魔されて怒りを込めて威嚇の鳴き声をあげる。
それには頓着せず矢を射たことで居場所を悟られたと判断したザレムは隠れた場所から姿を現し狐たちが道を逆走して逃げられないようにと退路を断ちつつ継続して矢を射る。
仲間と視覚を補い合うように位置取りした星垂が小柄な体躯と機動力を生かしてつかず離れず、まるで舞うように敵の攻撃を避けながら、或いは鉄扇で受け止めながら間合いに入り込むと突剣で刺突を繰り出して敵の動きをけん制。同時にかく乱と連携を断つことで速やかな排除をはかる。
九尾の狐が反撃とばかりに人の顔程の大きさの火球を複数造りだし多方面に投げつけると明が思わずといった調子で叫ぶように突っ込んだ。
「っていうかね!? なんで狐が炎とか使ってんだよっアニメか!?」
それはおそらく九尾の狐が雑魔だからなのだろうがアニメを知らないメンバーが一瞬首を傾げつつも火球を避ける。
火災になりかねない火球の数だったのでザレムが渓流の水をシールドで飛ばして火を消した。
明は攻撃を捨てた守りに適した構えを取って十六那を中心に仲間をかばうことに重点を置いた。
十六那はその間に空間に青白い雲状のガスを展開させ、そのガスに包まれた狐たちを眠りへといざなう。
ネージュが反撃開始とばかりに構えからノーモーションで攻撃に移って相手に回避の隙を与えない攻撃を叩き込むと狐たちの中で唯一眠りに陥っていなかった九尾の狐がまたも幻術を中断されて怒り狂ったようにネージュに飛びかかる。
そこに割り込んで攻撃から攻撃をかばうのは明。
「身体張んのが剣士の仕事ってね!」
槍だけど、とぼそっと呟かれた言葉は庇われたネージュにしか聞こえない声量だったがネージュはどう反応したものか、と数瞬検討した後無難に有難う、と礼を言って攻撃に戻っていく。
「どういたしまして。……ってかお礼より突っ込みかなんかのリアクションが欲しかったような……?」
ポリポリと頬をかきながら戦闘中にんなこと望んじゃ不謹慎か、と改めて攻撃が飛んできそうな仲間内で一番庇う必要がありそうな人物を探す明。
眠りに落ちた配下の雑魔たちは仲間が労せず倒せたらしく残りは九尾の狐一体。
「なら……遠慮はいらねぇか」
守りの構えから攻めの構えに切り替えると明は死角に回り込むように動いて大きく武器を振り回し勢いと力で相手の体勢を崩しながら攻撃を仕掛ける。
ザレムは攻撃の瞬間放たれた雷撃で九尾の狐を焼き、魔力を帯びたその雷撃は相手の動きを麻痺させたのを見届けると機導砲を撃つ準備を整える姿勢に入った。
星垂は精霊に祈りを捧げマテリアルを高めることで戦闘意欲を向上させて身体能力を上昇させると鉄扇を使って打撃攻撃を雑魔へと打ち込む。
十六那が少し離れた場所から魔力によって集められた水を球状にして最後の雑魔へと向かわせぶつかった衝撃によりダメージを与えた。
ズィルバーンが夢路 まよい(ka1328)の助けを得て放った機導砲の増強された威力が最終的に止めとなり九尾の狐は得意の幻術を使う隙を与えられないまま息絶えたのだった。
●謎の鳥居の探索を
鳥居に興味を持ったメンバーが多かったこととクリムゾンウェストに鳥居がある、ということが謎であるということもあって一行は小休止をした後狐が周囲を囲んでいた件の鳥居へ向かってみることにした。
「やっぱりいいね、こういう遺跡の調査っていうのは。ワクワクが止まらないよ」
リアがよく見ると目を輝かせながら山道を登り切って鳥居の周囲を巡る。
「狐がいる神社って言ったら……お稲荷様、だけど。お稲荷様の鳥居……赤い。この鳥居も……もとは赤く塗ってあったりしたの、かな。
お稲荷様以外でも、赤い鳥居……あるとは思う、けど」
それ以上鳥居に詳しいわけでもないし、鳥居は普通奥に神社があるから鳥居をくぐった向こう、つまり奥に何かないかと調べてみることにしたのはズィルバーン。
他のメンバーも鳥居自体を調べるよりは神社に祀られているものをヒントにした方が手掛かりが得られるかもしれない、と彼女のあとを追ったのだった。
参道のようなものが枯れた草と落ち葉に汚れながらもけもの道のような状態で残っており、さびれているなぁ、と一部のメンバーを嘆かせながら一同はその道が示す方向へと進んでいく。
「誰も知らなかったから手入れする人もいなかったんだろうな。おまけに雑魔まで沸いて……神社ってのは神域なんだろ。いいのかね、こんな扱いで」
明がまぁ存在を知ってる人がいないのに小奇麗に保たれてたらそれはそれで怖いんだけど此処まで荒れてるとなぁ、とほんのわずか呆れをにじませたぼやきを漏らす。
荒廃ぶりは参拝や調査に来たというより季節外れの肝試しに来た気分に近い心境を八人に与えた。
「ん? 神社ってあれ? なにかあるよ」
アルトが遠くに見えた小さな建造物らしきものを見つけて目を眇める。
急いで転ぶのもなんだか縁起が悪そうだしそもそも村とオフィスへの報告をするにしてもまだ時間はあるし、ということで特に急ぐこともなくその建造物へと近づいていく。
それは神社や社務所というよりも祠や社に近いものだった。
近づくにつれはっきりしていくその小さな祠は参道の荒れっぷりに比べると小奇麗と言っていい状態を保っていた。
落ち葉に埋もれることも祠が雪や雨によって傷んだり破壊されたりしている様子もない。
「なんだろう、妙に綺麗だね? 鳥居からここまでの道は荒れてたのに」
「油揚げでも奉納しようかって思ってたけど……奉納しちゃっていいのかなぁ、これ。実は本当に神様が住んでるとかいうオチがついてもおかしくない程荒れてないよね、此処だけ」
明が懐から出した油揚げをさてどうしよう、と片手に持ったまま考え込む。
格子戸の向こうに薄ぼんやりと何かが見える。
格子戸を開けて中に入るのは流石に躊躇われてそっと目を格子戸に近づけて中を探ると掛け軸のようなものが欠けられているのが見えた。
どうやら女性の姿を描いたもののようだがあれがご神体ということだろうか。
更によく目を凝らしてみればその女性は狐の面をかぶりリアルブルーでの白拍子の衣装を身にまとい、その代わりに烏帽子はかぶっておらず狐の耳が頭頂部に。後光のように背後を飾るのは先ほど倒した雑魔と同じ九本の狐の尻尾のようだ。
「さっきの雑魔となにか関係があるのか……? 同じ九尾のようだが」
「お稲荷さんの神社では九尾の狐を祀ったりするけど九尾の狐って美女に化けて権力者の加護を得るんだけど、最終的に無残な殺され方をしたり、っていうのがあるんだよね」
明の説明にではあの狐面の女性はここで祀られている九尾の狐の人間の姿を取った状態を描いたものなのだろうか、と八人が顔を合わせる。
碑文の類もなく、あったとしても解読できる状態にあるのかは謎だったので一度帰ってオフィスに調査を依頼する、ということで話がまとまった。
「あ、祠の後ろをちょっと見てきますね」
ネージュがまだ見に行っていなかった、と祠の裏手に回る。
そこから持ってきたのはホウキ。
「神様というのは祟るんですよね? 見つけてしまった以上お掃除くらいして帰りませんか」
参道の石を磨いたりは流石に無理ですけど落ち葉を掃く位ならそれほど時間もかかりませんし、という提案に従って草むしりと掃き掃除を行い、明は結局油揚げを備えることにする。
草むしりと道を覆っていた落ち葉の掃き掃除を済ませてしまうと参道自体も放置されていた割に小奇麗な状態を保っていることがわかる。
「もしかすると神様、まではいかないにしろ精霊か何かは住んでいて最低限の清潔さは保っているのかもしれませんね」
リアルブルー出身者たちに参拝方法を聞いて八人はリアルブルー式の参拝をクリムゾンウェストで行うという少し奇妙な経験をしつつその場を後にしたのだった。
リアルブルーの建築方法で建てられた鳥居は人知れずそこに在った。
九尾の狐の雑魔が配下の雑魔を連れて村を襲撃するようになるまでは。
そこにいつからかひっそりと在り、誰にも知られぬまま時を過ごすはずだった鳥居。
日高・明(ka0476)が鳥居を見上げながらつぶやく。
「まさかこっちで鳥居があるなんて思わなかったなあ。油揚げでも奉納していこうかな。
無事に終わったらだけど。それにしても狐の雑魔ねえ。なんか出来すぎだなあ」
同じように鳥居を眺めた後周辺を巡る九尾の狐と配下の狐の雑魔たちに視線を移しながらネージュ(ka0049)は不思議そうに首を傾げた。
「あら、リアルブルーでは鳥居と狐に、関連性があるんですか。…文化って、不思議ですね」
「あぁ、いや。全部の鳥居に狐が関係あるわけではないよ。稲荷神っていう神様を祀る神社には狐がつきものなんだ」
お稲荷様、お稲荷さんともいい、他にも様々な呼ばれ方がある。
「それにしても九尾の狐か。リアルブルーの稲荷系の神社では九尾の狐を祀ってたりするけど……神様とでも言いたいのかな」
まさかね、と苦笑気味に笑う明。
「森の奥にある鳥居かぁ……もしかしたら昔、森の雑魔に影響を受けたことがあって浄化目的で建てたのかもしれないけど……調査するにしてもとりあえずは件の雑魔だね」
星垂(ka1344)も不思議そうにしながら九尾の狐たちをどう上手く渓流付近で待ち伏せしている仲間の元まで誘導するかで頭を悩ませていた。
狐の雑魔と聞いて色々気になっているもののなぜ自分でもこんなに気になっているのかは分からないまま仕事を終わらせてから考えよう、と心の中で言い聞かせているのは金刀比良 十六那(ka1841)だ。なにか胸が騒ぐものがあるらしい。
(とりあえず、お仕事に集中しましょう……そのあとでも、考えられるわ)
「鳥居か。ボクの好きな着物とかとリアルブルーでは同じ国発祥のものだっけ?
雑魔を退治できたらゆっくり見に行ってみたいな」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が鳥居に興味があるらしくそんな言葉を小さく漏らす。
クリムゾンウェスト出身の彼女にとってはリアルブルーの文化は興味深いもののようだ。
「……さて、そろそろ誘き出そうか。待ち伏せ班の皆が待ちくたびれてしまう」
アルトが口元に薄く笑みを刷いて物陰から姿を現す。
ザレム・アズール(ka0878)は綱を靴底、足の甲、足首と渡らせて巻くことで湿った落葉の山肌や戦場となる渓流で足を滑らせないようにと対処を行った後渓流に向かっていた。
「見た目はちょっと悪いけど効果はあるんだよ。渓流だけなら地下足袋に草鞋がいいんだけど今回は山もあるからね」
そう言ったあと決戦想定場所より少し山に入ったところで木の陰に身を隠して雑魔が通過するのを待つ。
誘導班が通り過ぎ、それを追う雑魔と誘導班が交戦状態になった時、雑魔がザレムに背を向ける形になる事を狙っての位置取りだ。
「鳥居……転移前、暮らしてた場所にもあったから……なんだか、こういうのも懐かしい気が、する。
こういうとこ……周りが杜に囲まれてる、から……子供のとき、夜中こっそり……サバイバル練習にきたり、したっけ。
今思えば……バチあたり、っていうやつだったりしたのかもしれない、けど」
隠密を使ってザレム同様身を隠しながらズィルバーン・アンネ・早咲(ka3361)はまだ見ぬ鳥居に思いを馳せた。
「鳥居、一度でいいから色々見たかったんだよね。さっさと狐さん倒してじっくり見学しようか」
仁川 リア(ka3483)も物陰に身を隠して雑魔がやってくるのを待っていた。
魔導短伝話を携帯していたネージュからリアへそろそろ其方へ着くから準備をしておいてほしい、と連絡があり、リアは近くへ潜む待ち伏せ班のメンバーにそれを手振りで伝えた。
程なくして誘導班のメンバーが狐四匹を引き連れて渓流へとやってくる。
渓流を背にして向き合い息を整えながら本格的な戦闘に入ろうとしたところでリアが瞬脚を使用して急接近すると間合いを取らせる間も与えずに配下の狐の雑魔にリアルブルーの日本で用いられていた、革紐が巻きつけられた握りと黒漆塗りの鞘を持つ刀を抜刀して斬りかかる。
ズィルバーンは物陰からマテリアルのエネルギーにより弾丸を射出する、クリムゾンウェストの銃を九尾の狐に向かって構えると機械を媒介にしてマテリアルを変換したエネルギーを一条の光と化して目標を貫いた。
ザレムもまた九尾の狐をよく狙いを付けたうえで矢で射ぬいた。
幻術を使おうとしていた九尾の狐は集中を邪魔されて怒りを込めて威嚇の鳴き声をあげる。
それには頓着せず矢を射たことで居場所を悟られたと判断したザレムは隠れた場所から姿を現し狐たちが道を逆走して逃げられないようにと退路を断ちつつ継続して矢を射る。
仲間と視覚を補い合うように位置取りした星垂が小柄な体躯と機動力を生かしてつかず離れず、まるで舞うように敵の攻撃を避けながら、或いは鉄扇で受け止めながら間合いに入り込むと突剣で刺突を繰り出して敵の動きをけん制。同時にかく乱と連携を断つことで速やかな排除をはかる。
九尾の狐が反撃とばかりに人の顔程の大きさの火球を複数造りだし多方面に投げつけると明が思わずといった調子で叫ぶように突っ込んだ。
「っていうかね!? なんで狐が炎とか使ってんだよっアニメか!?」
それはおそらく九尾の狐が雑魔だからなのだろうがアニメを知らないメンバーが一瞬首を傾げつつも火球を避ける。
火災になりかねない火球の数だったのでザレムが渓流の水をシールドで飛ばして火を消した。
明は攻撃を捨てた守りに適した構えを取って十六那を中心に仲間をかばうことに重点を置いた。
十六那はその間に空間に青白い雲状のガスを展開させ、そのガスに包まれた狐たちを眠りへといざなう。
ネージュが反撃開始とばかりに構えからノーモーションで攻撃に移って相手に回避の隙を与えない攻撃を叩き込むと狐たちの中で唯一眠りに陥っていなかった九尾の狐がまたも幻術を中断されて怒り狂ったようにネージュに飛びかかる。
そこに割り込んで攻撃から攻撃をかばうのは明。
「身体張んのが剣士の仕事ってね!」
槍だけど、とぼそっと呟かれた言葉は庇われたネージュにしか聞こえない声量だったがネージュはどう反応したものか、と数瞬検討した後無難に有難う、と礼を言って攻撃に戻っていく。
「どういたしまして。……ってかお礼より突っ込みかなんかのリアクションが欲しかったような……?」
ポリポリと頬をかきながら戦闘中にんなこと望んじゃ不謹慎か、と改めて攻撃が飛んできそうな仲間内で一番庇う必要がありそうな人物を探す明。
眠りに落ちた配下の雑魔たちは仲間が労せず倒せたらしく残りは九尾の狐一体。
「なら……遠慮はいらねぇか」
守りの構えから攻めの構えに切り替えると明は死角に回り込むように動いて大きく武器を振り回し勢いと力で相手の体勢を崩しながら攻撃を仕掛ける。
ザレムは攻撃の瞬間放たれた雷撃で九尾の狐を焼き、魔力を帯びたその雷撃は相手の動きを麻痺させたのを見届けると機導砲を撃つ準備を整える姿勢に入った。
星垂は精霊に祈りを捧げマテリアルを高めることで戦闘意欲を向上させて身体能力を上昇させると鉄扇を使って打撃攻撃を雑魔へと打ち込む。
十六那が少し離れた場所から魔力によって集められた水を球状にして最後の雑魔へと向かわせぶつかった衝撃によりダメージを与えた。
ズィルバーンが夢路 まよい(ka1328)の助けを得て放った機導砲の増強された威力が最終的に止めとなり九尾の狐は得意の幻術を使う隙を与えられないまま息絶えたのだった。
●謎の鳥居の探索を
鳥居に興味を持ったメンバーが多かったこととクリムゾンウェストに鳥居がある、ということが謎であるということもあって一行は小休止をした後狐が周囲を囲んでいた件の鳥居へ向かってみることにした。
「やっぱりいいね、こういう遺跡の調査っていうのは。ワクワクが止まらないよ」
リアがよく見ると目を輝かせながら山道を登り切って鳥居の周囲を巡る。
「狐がいる神社って言ったら……お稲荷様、だけど。お稲荷様の鳥居……赤い。この鳥居も……もとは赤く塗ってあったりしたの、かな。
お稲荷様以外でも、赤い鳥居……あるとは思う、けど」
それ以上鳥居に詳しいわけでもないし、鳥居は普通奥に神社があるから鳥居をくぐった向こう、つまり奥に何かないかと調べてみることにしたのはズィルバーン。
他のメンバーも鳥居自体を調べるよりは神社に祀られているものをヒントにした方が手掛かりが得られるかもしれない、と彼女のあとを追ったのだった。
参道のようなものが枯れた草と落ち葉に汚れながらもけもの道のような状態で残っており、さびれているなぁ、と一部のメンバーを嘆かせながら一同はその道が示す方向へと進んでいく。
「誰も知らなかったから手入れする人もいなかったんだろうな。おまけに雑魔まで沸いて……神社ってのは神域なんだろ。いいのかね、こんな扱いで」
明がまぁ存在を知ってる人がいないのに小奇麗に保たれてたらそれはそれで怖いんだけど此処まで荒れてるとなぁ、とほんのわずか呆れをにじませたぼやきを漏らす。
荒廃ぶりは参拝や調査に来たというより季節外れの肝試しに来た気分に近い心境を八人に与えた。
「ん? 神社ってあれ? なにかあるよ」
アルトが遠くに見えた小さな建造物らしきものを見つけて目を眇める。
急いで転ぶのもなんだか縁起が悪そうだしそもそも村とオフィスへの報告をするにしてもまだ時間はあるし、ということで特に急ぐこともなくその建造物へと近づいていく。
それは神社や社務所というよりも祠や社に近いものだった。
近づくにつれはっきりしていくその小さな祠は参道の荒れっぷりに比べると小奇麗と言っていい状態を保っていた。
落ち葉に埋もれることも祠が雪や雨によって傷んだり破壊されたりしている様子もない。
「なんだろう、妙に綺麗だね? 鳥居からここまでの道は荒れてたのに」
「油揚げでも奉納しようかって思ってたけど……奉納しちゃっていいのかなぁ、これ。実は本当に神様が住んでるとかいうオチがついてもおかしくない程荒れてないよね、此処だけ」
明が懐から出した油揚げをさてどうしよう、と片手に持ったまま考え込む。
格子戸の向こうに薄ぼんやりと何かが見える。
格子戸を開けて中に入るのは流石に躊躇われてそっと目を格子戸に近づけて中を探ると掛け軸のようなものが欠けられているのが見えた。
どうやら女性の姿を描いたもののようだがあれがご神体ということだろうか。
更によく目を凝らしてみればその女性は狐の面をかぶりリアルブルーでの白拍子の衣装を身にまとい、その代わりに烏帽子はかぶっておらず狐の耳が頭頂部に。後光のように背後を飾るのは先ほど倒した雑魔と同じ九本の狐の尻尾のようだ。
「さっきの雑魔となにか関係があるのか……? 同じ九尾のようだが」
「お稲荷さんの神社では九尾の狐を祀ったりするけど九尾の狐って美女に化けて権力者の加護を得るんだけど、最終的に無残な殺され方をしたり、っていうのがあるんだよね」
明の説明にではあの狐面の女性はここで祀られている九尾の狐の人間の姿を取った状態を描いたものなのだろうか、と八人が顔を合わせる。
碑文の類もなく、あったとしても解読できる状態にあるのかは謎だったので一度帰ってオフィスに調査を依頼する、ということで話がまとまった。
「あ、祠の後ろをちょっと見てきますね」
ネージュがまだ見に行っていなかった、と祠の裏手に回る。
そこから持ってきたのはホウキ。
「神様というのは祟るんですよね? 見つけてしまった以上お掃除くらいして帰りませんか」
参道の石を磨いたりは流石に無理ですけど落ち葉を掃く位ならそれほど時間もかかりませんし、という提案に従って草むしりと掃き掃除を行い、明は結局油揚げを備えることにする。
草むしりと道を覆っていた落ち葉の掃き掃除を済ませてしまうと参道自体も放置されていた割に小奇麗な状態を保っていることがわかる。
「もしかすると神様、まではいかないにしろ精霊か何かは住んでいて最低限の清潔さは保っているのかもしれませんね」
リアルブルー出身者たちに参拝方法を聞いて八人はリアルブルー式の参拝をクリムゾンウェストで行うという少し奇妙な経験をしつつその場を後にしたのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/05 21:00:20 |
|
![]() |
相談用卓 仁川 リア(ka3483) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/12/10 18:53:11 |