ゲスト
(ka0000)
花の旅・ストック
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/03/19 22:00
- 完成日
- 2018/03/26 17:33
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ストック……花言葉・見つめる未来
※※※
ハンターズソサエティに、とある女性が訪れた。
花の香りを纏う彼女は、アイリス・フラワーと言い、各地に花を植えて回っている女性だ。
「すみませんが、とある病院まで私を連れて行ってほしいのです」
アイリスが言うには、雑魔によって集落が全滅をしてしまい、ハンターに救出された唯一の生き残りである少年がいるそうだ。
別の集落で暮らしていた女性から、その子供に花を贈って欲しいと言われたのだと、アイリスは語る。
「花を贈ると言っても、心を癒せるわけではありません。気休めにもならないことは分かっています」
「……それでも、この花が少年の心に何かを残してくれれば、と思わずにはいられないのです」
「戦うすべを持たない私がこんなことを言っても、説得力なんてないんですけどね」
アイリスは、悲しそうに笑う。
「今回、少年のいる病院に行く道の中に雑魔がいると聞きました」
「場所は草原、私は邪魔にならないようにしていますから、どうかよろしくお願いいたします」
そう言って、アイリスは案内人に深く頭を下げるのだった。
リプレイ本文
■依頼のために集まったハンターたち
「初めましての方もいらっしゃいますよね。アイリスと申します。よろしくお願い致しますね」
にっこりと微笑みながら、アイリスは集まってくれた8人のハンターに頭を下げて挨拶をする。
「……女の独り身では道中は何かと危険だろうから、な。安心して俺達に任せてもらえればいい。きちんと怪我ひとつなく、現地までたどり着かせてやるからな」
榊 兵庫(ka0010)が言うと、再びアイリスは頭を下げた。
「生き残りのその子が、花に何かを感じて前に踏み出してくれればいいね……ざくろも、その手伝いが出来るように頑張るよ」
時音 ざくろ(ka1250)は悲しそうな表情を見せながら、アイリスが持つ花を見つめた。
「それにしても、花を贈るなんて素敵なお仕事ですね」
ソナ(ka1352)がアイリスに話しかけると「そんなことないです」と苦笑気味に首を振る。
「私は皆さんのように戦うことが出来ません。こんなことしか出来ないんです。これも……偽善的なことだと言われてしまえば、それでおしまいなんですけど……」
(もしかして、過去にそう言われたことがあるのかな)
複雑そうな表情のアイリスを見つめながら、ソナは心の中で呟く。
「それにしても、アイリスも生きてたみたいね、良かったわ」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)が苦笑気味に呟く。それだけ、カーミンはアイリスのことを心配してくれていたということなのだろう。
「ふふ、そうですね。二年と半年ほどお会い出来ていなかったので……ご心配をおかけしました」
「便りがないのは元気な証とは言いますけど、それでも心配していたので、お元気そうで良かった」
古川 舞踊(ka1777)もカーミンと同じく、アイリスと面識があるハンターだ。古川にも二年半のことを謝り、そして「今回の依頼もよろしくお願いいます」と丁寧に頭を下げた。
「問題は病院に行くまでの過程か、飛んでいる敵というのはなかなか厄介なものだな」
これも修行か、と言葉を付け足しながらレイア・アローネ(ka4082)がポツリと呟く。
「厄介であっても、アイリス様を送り届けられるように尽力を尽くします。又、少年への思いやりが届くように……」
和住 珀音 (ka6874)が呟く。
「そういや、昔言われたわ、花は心やて。勿論花に限ったことやないけど……それは、想いを目に見える形にしたもんなんやて。目に見えん不明瞭なもんが目に見えるようになるんは、安心出来るんやて。せやから、この花、絶対届けよな」
埜月 宗人(ka6994)が言うと、アイリスは嬉しそうに「ありがとうございます」と微笑んだ。
こうして、お互いに挨拶を終えたハンターたちは、アイリスを病院に送り届けるために行動を開始し始めるのだった。
■病院を目指して
基本的に先行するハンター、アイリスを護衛するハンターに分かれて行動を開始していた。
「とりあえず、今は近辺に怪しい影はない、か」
榊は「エクウス」に騎乗して「軍用双眼鏡」で周囲を警戒しながら歩みを進めている。
「見晴らしが良いのはいいが、これはこれで苦労するな」
レイアは苦笑しながら「乗用馬」に乗って、榊と共に警戒を続けている。
時音は「フライングスレッド」に乗って移動をしていて、埜月は「ゴースロン」に乗っていた。
アイリスは、ソナ、カーミンと共に予め用意しておいてもらった馬車にて移動をしており、カーミンが連れていた「驢馬」とソナの連れていた「ゴースロン」に引かせている。
古川は「重魔導バイク バビエーカ」に乗り、和住は「魔導バイク アレイオーン」に乗って、アイリスが乗っている馬車を守るような陣を取っていた。
「このまま無事に病院まで着いたらええんやけど――……って、無理そうやな」
埜月が呟いた時、耳を塞ぎたくなるような奇声が草原に広がった。
「距離はもう少しあるが、こちらに向かってくる速度が予想より早い。アイリスを守れ!」
榊が叫び、馬車との距離を取るために「エクウス」を駆りながら雑魔に向かっていく。
そして、榊は距離を取った後に「ソウルトーチ」を使って、雑魔の気を引いた。
「I.F.O起動……!」
時音はそう呟いて「フライングスレッド」のI.F.Oを使って飛行する。
「先行する方に聖なる防御壁を……!」
ソナは榊と時音に「ホーリーヴェール」を使用して、防御壁を生み出す。
「釣ってくるわ、その間にお願いね」
カーミンはアイリスの守りを他のハンターに任せ「千日紅」を使用して「ゼノンの矢」を引き絞って「菖蒲」を使う。
しかし、行動の途中で雑魔がカーミンに狙いを絞ろうとしていた。
「ちっ……! こっちだ、バケモノ!」
レイアはそう叫びながら「ソウルトーチ」を使う。その途端、雑魔はカーミンではなく、レイアに狙いを定める。ダメージを受ける覚悟でいたレイアだったが、和住の「瑞鳥符」が間一髪で発動して、ぎりぎりでダメージを受けずに済んだ。
「アイリス様の護衛として、ここから動くことは出来ませんが……私だって、やれることはあるんです!」
和住の言葉に、ハンターたちは頷き、それぞれ自分たちの役割を果たすために行動をする。
「さぁ、こっちよ!」
カーミンは榊たちが戦いやすいよう、護衛組がやりやすいように雑魔を上手く誘導させる。
「いくら大きくても、人数の差は埋められへんみたいやな」
埜月は「スローイング」を使いながら攻撃を仕掛ける。途中、リロードなどで僅かな隙が出来てしまうのだが、カーミンが上手くフォローに入っているため、雑魔が付け入ることは出来ない。
「アイリスさん!」
戦いに巻き込まれた石がアイリスの方に向かったけれど、古川が「ガンシールド」で防御態勢に入り、アイリスの身を守った。
「ふ、古川さん……」
「無事ですか? アイリスさんには怪我ひとつさせませんから、ご安心ください」
アイリスを安心させるために、古川はにっこりと微笑みながら言う。
「はあぁっ! いっけぇぇぇぇっ!」
時音は「フライングスレッド」のI.F.Oを起動させ、雑魔の頭上を取る。
「空はお前だけのものじゃない、凍りつけフリージングレイ!」
スキルを使用しながら時音が強烈な一撃を繰り出し、その攻撃に合わせて榊やレイア、他のハンターたちもそれぞれ自分に出来る攻撃を仕掛け、無事に雑魔退治を終えることが出来たのだった。
※※※
戦闘が終了した後、周りに他の雑魔がいないことを確認して、傷の治療を行うことになった。
「私が出した依頼のせいで、すみません……」
アイリスは予め用意していた治療セットで、怪我をしたハンターたちの治療を行う。
雑魔が倒される寸前、広範囲の羽根攻撃を行い、近接で戦っていたハンターはもちろん、護衛に当たっていたハンターたちもアイリスをかばって負傷してしまったのだ。
「重症者が出るような相手ではなかったが、全員それなりに怪我をしてしまったな」
榊が苦笑気味に呟くと「皆さんのおかげで、私は傷ひとつありませんでした」とアイリスは複雑そうな表情を見せた。
「そんな顔しないで。アイリスを守るのはざくろ達の仕事なんだから。アイリスと花が無事なら、ざくろ達も守った甲斐があるんだから!」
にこにこと笑顔を見せながら言う時音に、アイリスはホッと息をついた。
「治療していない人はいませんか? わたし、ヒールで回復しますよ?」
ソナがハンターを見渡しながら言う。
「あ、私の足をお願いしてもいい? さっき、ちょっと雑魔の攻撃がかすっちゃって」
カーミンが軽く手を挙げる。ちょっと、と本人は言っているが一般人のアイリスから見れば、結構ひどい怪我にしか見えない。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫だって、アイリスってば心配性だね」
カーミンはひらひらと手を振りながら、大丈夫だとアピールしているけれど、アイリスが心配そうな表情を崩すことはなかった。
■病院に到着、そして……
ハンター達に護衛してもらいながら、到着したのは小さな病院だった。
明らかに医師と看護師が足りていない状況で、件の少年は一番奥の部屋にいると看護師に言われた。
「こんにちは、レイくん」
「……」
病室に入った後、アイリスが笑顔で話しかけるが少年は無表情のまま何も答えない。
(……集落が全滅した、と言っていたな。つまり、この少年はすべてをその目で見ていたということか)
何も答えない少年に、榊もかける言葉が見つからず、ぐっと拳を強く握りしめた。
「アイリス……」
時音も気まずい空気に居たたまれなくなったのか、アイリスの名前を呼ぶ。
「時音さん、大丈夫です。家族を亡くした子供に、花を贈ってすぐ元気になるとは思っていません」
今までにも経験したのであろう、アイリスは悲しそうに視線を落とした。
「えっと、レイくん? でいいんですよね? アイリスさん、あなたに花を贈るために頑張ったんですよ。今はそんな気持ちじゃなくても受け取ってあげて欲しいんですけど……」
ソナが少年と目を合わせながら言うと「お姉さんだったら、出来ますか」と抑揚のない声で呟いた。
「え?」
「お姉さんだったら、家族を亡くして花で喜べますか?」
「それは……」
「でも、あなたのために頑張ったのよ」
少年の言葉にカーミンがはっきりと言う。
「私も母を失ったことがあるから、あなたの気持ちは分かるつもりよ。でも、自分のために頑張ってくれた人に悲しみをぶつけるのは違うと思う」
「カーミンさん……」
「……」
古川は少し離れた場所から、アイリスや他のハンター達のやり取りを見つめている。
(わたくしも何か言った方がいいのでしょうけど、口が悪い部分がありますから見守っておきましょう)
古川は心の中で呟きながら、成り行きを見守り続ける。
「人間は、決して一人ではない。今回、ここに来るまでに雑魔退治をしてきた。今回は本当に私一人ではどうにもならなかったな。今はつらいかもしれないが、そのつらさを強さに変えられる日が来るといいな」
レイアは少年に言うと、和住も頷く。
「そういえば、その花は誰かからの依頼だったんですよね?」
和住が思い出したように言う。護衛を頼む以上、アイリスは自分のことはすべて話していた。しかし、アイリスが持っている花は誰からの依頼だったのかまではハンター達も聞いていなかったのだ。
「そういや、誰から頼まれたのかは聞いてなかったな」
「……これは、あなたのお姉さんからの贈り物よ」
「え……」
アイリスの言葉に、少年だけではなく同行したハンター達も驚きを隠せなかった。
「お姉さんって、どういうことなん?」
「レイくんには、小さい時に別れたお姉さんがいるんです。他の集落の手伝いをするために、故郷を離れたお姉さんが……レイくんが1歳か2歳の頃に集落を離れたらしくて、覚えてないのも無理はないでしょう。そのお姉さん、レイくんの怪我が治ったら迎えに来ると言ってました。その約束の証に、この花を贈って欲しいって言われたんです」
「なるほど、ストックの花言葉は見つめる未来、その未来を見つめて待って置けということか」
榊が呟く。
「家族を亡くしたのはつらかったと思うけど、でも、キミはまだ一人じゃないんだよ」
ざくろが少年と視線を合わせると、少年はアイリスから渡された花を抱きしめて泣き始めた。
(これで、あの少年もきっと時間はかかっても立ち直ることが出来るはず……)
古川は遠くから少年やハンター達を見つめながら、満足そうに微笑んだ。
「……お姉さん、ハンターの皆さん、ありがとう」
少年は先ほどまでのうつろな目ではなく、少し輝きの戻った目でお礼を言う。
「まだ、お父さんたちや集落のみんなを亡くしたことを乗り越えられないけど……僕は、まだ一人じゃないんだって教えてくれて、本当にありがとう。いつか、僕もハンターの皆みたいに誰かを守れる、苦しみから救える人になりたい」
「……ふふ、きっと出来ます。あなたがその気持ちを忘れない限り」
古川は優しく微笑み、少年の頭を撫でながら言う。
(一人じゃない、か。今回は、私もそう思わされたな。いい経験をさせてもらった)
レイアも少年を見つめながら、心の中で呟く。
その後、アイリスとハンター達は病院を後にしたのだが、数日後にアイリスからお礼として花の種が届くのだった――。
END
「初めましての方もいらっしゃいますよね。アイリスと申します。よろしくお願い致しますね」
にっこりと微笑みながら、アイリスは集まってくれた8人のハンターに頭を下げて挨拶をする。
「……女の独り身では道中は何かと危険だろうから、な。安心して俺達に任せてもらえればいい。きちんと怪我ひとつなく、現地までたどり着かせてやるからな」
榊 兵庫(ka0010)が言うと、再びアイリスは頭を下げた。
「生き残りのその子が、花に何かを感じて前に踏み出してくれればいいね……ざくろも、その手伝いが出来るように頑張るよ」
時音 ざくろ(ka1250)は悲しそうな表情を見せながら、アイリスが持つ花を見つめた。
「それにしても、花を贈るなんて素敵なお仕事ですね」
ソナ(ka1352)がアイリスに話しかけると「そんなことないです」と苦笑気味に首を振る。
「私は皆さんのように戦うことが出来ません。こんなことしか出来ないんです。これも……偽善的なことだと言われてしまえば、それでおしまいなんですけど……」
(もしかして、過去にそう言われたことがあるのかな)
複雑そうな表情のアイリスを見つめながら、ソナは心の中で呟く。
「それにしても、アイリスも生きてたみたいね、良かったわ」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)が苦笑気味に呟く。それだけ、カーミンはアイリスのことを心配してくれていたということなのだろう。
「ふふ、そうですね。二年と半年ほどお会い出来ていなかったので……ご心配をおかけしました」
「便りがないのは元気な証とは言いますけど、それでも心配していたので、お元気そうで良かった」
古川 舞踊(ka1777)もカーミンと同じく、アイリスと面識があるハンターだ。古川にも二年半のことを謝り、そして「今回の依頼もよろしくお願いいます」と丁寧に頭を下げた。
「問題は病院に行くまでの過程か、飛んでいる敵というのはなかなか厄介なものだな」
これも修行か、と言葉を付け足しながらレイア・アローネ(ka4082)がポツリと呟く。
「厄介であっても、アイリス様を送り届けられるように尽力を尽くします。又、少年への思いやりが届くように……」
和住 珀音 (ka6874)が呟く。
「そういや、昔言われたわ、花は心やて。勿論花に限ったことやないけど……それは、想いを目に見える形にしたもんなんやて。目に見えん不明瞭なもんが目に見えるようになるんは、安心出来るんやて。せやから、この花、絶対届けよな」
埜月 宗人(ka6994)が言うと、アイリスは嬉しそうに「ありがとうございます」と微笑んだ。
こうして、お互いに挨拶を終えたハンターたちは、アイリスを病院に送り届けるために行動を開始し始めるのだった。
■病院を目指して
基本的に先行するハンター、アイリスを護衛するハンターに分かれて行動を開始していた。
「とりあえず、今は近辺に怪しい影はない、か」
榊は「エクウス」に騎乗して「軍用双眼鏡」で周囲を警戒しながら歩みを進めている。
「見晴らしが良いのはいいが、これはこれで苦労するな」
レイアは苦笑しながら「乗用馬」に乗って、榊と共に警戒を続けている。
時音は「フライングスレッド」に乗って移動をしていて、埜月は「ゴースロン」に乗っていた。
アイリスは、ソナ、カーミンと共に予め用意しておいてもらった馬車にて移動をしており、カーミンが連れていた「驢馬」とソナの連れていた「ゴースロン」に引かせている。
古川は「重魔導バイク バビエーカ」に乗り、和住は「魔導バイク アレイオーン」に乗って、アイリスが乗っている馬車を守るような陣を取っていた。
「このまま無事に病院まで着いたらええんやけど――……って、無理そうやな」
埜月が呟いた時、耳を塞ぎたくなるような奇声が草原に広がった。
「距離はもう少しあるが、こちらに向かってくる速度が予想より早い。アイリスを守れ!」
榊が叫び、馬車との距離を取るために「エクウス」を駆りながら雑魔に向かっていく。
そして、榊は距離を取った後に「ソウルトーチ」を使って、雑魔の気を引いた。
「I.F.O起動……!」
時音はそう呟いて「フライングスレッド」のI.F.Oを使って飛行する。
「先行する方に聖なる防御壁を……!」
ソナは榊と時音に「ホーリーヴェール」を使用して、防御壁を生み出す。
「釣ってくるわ、その間にお願いね」
カーミンはアイリスの守りを他のハンターに任せ「千日紅」を使用して「ゼノンの矢」を引き絞って「菖蒲」を使う。
しかし、行動の途中で雑魔がカーミンに狙いを絞ろうとしていた。
「ちっ……! こっちだ、バケモノ!」
レイアはそう叫びながら「ソウルトーチ」を使う。その途端、雑魔はカーミンではなく、レイアに狙いを定める。ダメージを受ける覚悟でいたレイアだったが、和住の「瑞鳥符」が間一髪で発動して、ぎりぎりでダメージを受けずに済んだ。
「アイリス様の護衛として、ここから動くことは出来ませんが……私だって、やれることはあるんです!」
和住の言葉に、ハンターたちは頷き、それぞれ自分たちの役割を果たすために行動をする。
「さぁ、こっちよ!」
カーミンは榊たちが戦いやすいよう、護衛組がやりやすいように雑魔を上手く誘導させる。
「いくら大きくても、人数の差は埋められへんみたいやな」
埜月は「スローイング」を使いながら攻撃を仕掛ける。途中、リロードなどで僅かな隙が出来てしまうのだが、カーミンが上手くフォローに入っているため、雑魔が付け入ることは出来ない。
「アイリスさん!」
戦いに巻き込まれた石がアイリスの方に向かったけれど、古川が「ガンシールド」で防御態勢に入り、アイリスの身を守った。
「ふ、古川さん……」
「無事ですか? アイリスさんには怪我ひとつさせませんから、ご安心ください」
アイリスを安心させるために、古川はにっこりと微笑みながら言う。
「はあぁっ! いっけぇぇぇぇっ!」
時音は「フライングスレッド」のI.F.Oを起動させ、雑魔の頭上を取る。
「空はお前だけのものじゃない、凍りつけフリージングレイ!」
スキルを使用しながら時音が強烈な一撃を繰り出し、その攻撃に合わせて榊やレイア、他のハンターたちもそれぞれ自分に出来る攻撃を仕掛け、無事に雑魔退治を終えることが出来たのだった。
※※※
戦闘が終了した後、周りに他の雑魔がいないことを確認して、傷の治療を行うことになった。
「私が出した依頼のせいで、すみません……」
アイリスは予め用意していた治療セットで、怪我をしたハンターたちの治療を行う。
雑魔が倒される寸前、広範囲の羽根攻撃を行い、近接で戦っていたハンターはもちろん、護衛に当たっていたハンターたちもアイリスをかばって負傷してしまったのだ。
「重症者が出るような相手ではなかったが、全員それなりに怪我をしてしまったな」
榊が苦笑気味に呟くと「皆さんのおかげで、私は傷ひとつありませんでした」とアイリスは複雑そうな表情を見せた。
「そんな顔しないで。アイリスを守るのはざくろ達の仕事なんだから。アイリスと花が無事なら、ざくろ達も守った甲斐があるんだから!」
にこにこと笑顔を見せながら言う時音に、アイリスはホッと息をついた。
「治療していない人はいませんか? わたし、ヒールで回復しますよ?」
ソナがハンターを見渡しながら言う。
「あ、私の足をお願いしてもいい? さっき、ちょっと雑魔の攻撃がかすっちゃって」
カーミンが軽く手を挙げる。ちょっと、と本人は言っているが一般人のアイリスから見れば、結構ひどい怪我にしか見えない。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫だって、アイリスってば心配性だね」
カーミンはひらひらと手を振りながら、大丈夫だとアピールしているけれど、アイリスが心配そうな表情を崩すことはなかった。
■病院に到着、そして……
ハンター達に護衛してもらいながら、到着したのは小さな病院だった。
明らかに医師と看護師が足りていない状況で、件の少年は一番奥の部屋にいると看護師に言われた。
「こんにちは、レイくん」
「……」
病室に入った後、アイリスが笑顔で話しかけるが少年は無表情のまま何も答えない。
(……集落が全滅した、と言っていたな。つまり、この少年はすべてをその目で見ていたということか)
何も答えない少年に、榊もかける言葉が見つからず、ぐっと拳を強く握りしめた。
「アイリス……」
時音も気まずい空気に居たたまれなくなったのか、アイリスの名前を呼ぶ。
「時音さん、大丈夫です。家族を亡くした子供に、花を贈ってすぐ元気になるとは思っていません」
今までにも経験したのであろう、アイリスは悲しそうに視線を落とした。
「えっと、レイくん? でいいんですよね? アイリスさん、あなたに花を贈るために頑張ったんですよ。今はそんな気持ちじゃなくても受け取ってあげて欲しいんですけど……」
ソナが少年と目を合わせながら言うと「お姉さんだったら、出来ますか」と抑揚のない声で呟いた。
「え?」
「お姉さんだったら、家族を亡くして花で喜べますか?」
「それは……」
「でも、あなたのために頑張ったのよ」
少年の言葉にカーミンがはっきりと言う。
「私も母を失ったことがあるから、あなたの気持ちは分かるつもりよ。でも、自分のために頑張ってくれた人に悲しみをぶつけるのは違うと思う」
「カーミンさん……」
「……」
古川は少し離れた場所から、アイリスや他のハンター達のやり取りを見つめている。
(わたくしも何か言った方がいいのでしょうけど、口が悪い部分がありますから見守っておきましょう)
古川は心の中で呟きながら、成り行きを見守り続ける。
「人間は、決して一人ではない。今回、ここに来るまでに雑魔退治をしてきた。今回は本当に私一人ではどうにもならなかったな。今はつらいかもしれないが、そのつらさを強さに変えられる日が来るといいな」
レイアは少年に言うと、和住も頷く。
「そういえば、その花は誰かからの依頼だったんですよね?」
和住が思い出したように言う。護衛を頼む以上、アイリスは自分のことはすべて話していた。しかし、アイリスが持っている花は誰からの依頼だったのかまではハンター達も聞いていなかったのだ。
「そういや、誰から頼まれたのかは聞いてなかったな」
「……これは、あなたのお姉さんからの贈り物よ」
「え……」
アイリスの言葉に、少年だけではなく同行したハンター達も驚きを隠せなかった。
「お姉さんって、どういうことなん?」
「レイくんには、小さい時に別れたお姉さんがいるんです。他の集落の手伝いをするために、故郷を離れたお姉さんが……レイくんが1歳か2歳の頃に集落を離れたらしくて、覚えてないのも無理はないでしょう。そのお姉さん、レイくんの怪我が治ったら迎えに来ると言ってました。その約束の証に、この花を贈って欲しいって言われたんです」
「なるほど、ストックの花言葉は見つめる未来、その未来を見つめて待って置けということか」
榊が呟く。
「家族を亡くしたのはつらかったと思うけど、でも、キミはまだ一人じゃないんだよ」
ざくろが少年と視線を合わせると、少年はアイリスから渡された花を抱きしめて泣き始めた。
(これで、あの少年もきっと時間はかかっても立ち直ることが出来るはず……)
古川は遠くから少年やハンター達を見つめながら、満足そうに微笑んだ。
「……お姉さん、ハンターの皆さん、ありがとう」
少年は先ほどまでのうつろな目ではなく、少し輝きの戻った目でお礼を言う。
「まだ、お父さんたちや集落のみんなを亡くしたことを乗り越えられないけど……僕は、まだ一人じゃないんだって教えてくれて、本当にありがとう。いつか、僕もハンターの皆みたいに誰かを守れる、苦しみから救える人になりたい」
「……ふふ、きっと出来ます。あなたがその気持ちを忘れない限り」
古川は優しく微笑み、少年の頭を撫でながら言う。
(一人じゃない、か。今回は、私もそう思わされたな。いい経験をさせてもらった)
レイアも少年を見つめながら、心の中で呟く。
その後、アイリスとハンター達は病院を後にしたのだが、数日後にアイリスからお礼として花の種が届くのだった――。
END
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 6人 |
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重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/03/16 12:25:00 |
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![]() |
相談卓 埜月 宗人(ka6994) 人間(リアルブルー)|28才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2018/03/20 08:02:17 |