• 幻兆

【幻兆】旅の合間に

マスター:四月朔日さくら

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/03/22 19:00
完成日
2018/03/30 07:14

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 ヘレの状況を変化させるためには、龍園へ――
 その言葉を受けたハンターたちの動きは早かった。ソサエティを通じて龍園と話をつけ、使節団を結成して向かうことになったのである。

 そして、その龍園へ向かう使節団の中心人物となっているリムネラ(kz0018)は、今日もその宿営地――彼らは古い巡礼路を使って龍園への道を歩んでいた――で、焚き火を囲みながら食事をし、そして一時の休息をえる。
 リムネラは弱音を吐かなかった。もともと巫女としての修行を積んできた彼女にしてみれば、こういう徒歩の旅もまた修業の一環なのだ。それを見たハンターたちも、リムネラの真剣さが伝わってくるような気がして、自分たちの気持ちも奮い起こされるのだった。
 そしてリムネラの側には、常にヘレが居た。無論いまはずっと眠り続けているが、そんなヘレを見つめるリムネラの眼差しは、優しく温かいもので、ヘレとリムネラの絆というのを改めて感じさせられた。

「……そう言えば、リムネラさんって」
 ハンターの一人がふと口にする。
「ハイ? ドウかしましたか?」
「あ、いや……折角なら、少し話をしませんか。リムネラさんのこと、ヘレのこと……知りたいなって」
 ハンターが言うと、リムネラは微笑んだ。
「そうデスね。セッカクですし、参考になるかはワカリマセンけれど……」
 リムネラはそう言って、優しく眼を伏せた。
 

リプレイ本文


 リムネラとの旅の途中、こうやってきちんと言葉を交わすのは良く考えたらそうそう無かったかも知れない。
 今回の旅は確かにリムネラを中心としたものではあるが、ハンターたちの存在は何よりリムネラには有難かった。リムネラだけではとてもじゃないがなしえなかったであろうことも、ハンターたちのお陰で乗り越えることができる。
 だからこそ、ハンターたちももっと知りたかった。
 リムネラのことを、そしてヘレのことを。


(……生れも育ちも、経験も違うし、ずっと未熟だけれど……困っている人は助けたいし、悲しんでいるひとは笑顔にしたい)
 羊谷 めい(ka0669)はそう思いながら、リムネラに話し掛ける。
「わたし、白龍さんのことには詳しくなくて……ごめんなさい。でも、龍園にお知り合いはいますので、えと、大丈夫ですよ。ちょっと無愛想ですけど、困っている人をちゃんと助けてくれる方です」
 彼女の知り合いというのは、龍騎士のサヴィトゥール(kz0228)のことであるらしい。にっこりと微笑んでそう励ますと、リムネラも
「アリガトウございマス……ソウ言う言葉は、心が安まりマス」
 そう言って笑顔を浮かべる。その傍でにこにこと笑っているのは宵待 サクラ(ka5561)。ガーディナ所属ではあるがもっぱら友人知人は王国側で、本人もリアルブルー出身と言う事もあってか、ユニオンに縛られない生活を送っていた。
 が、『そう言えばリーダーに会った事なかった!』と気が付き今回の使節団に参加したのだという。
 ……そう考えてみると、案外、リムネラ本人にきちんと会った事のあるハンターはそう多くないのかも知れない。
「そういえば、リムネラさんはどういう風に育ってきたんです? あまり昔のことを話す人じゃないのは知っていますけれど……」
 巫女として――それ以上に友人としてリムネラを気遣うUisca Amhran(ka0754)が尋ねると、リムネラはくすりと微笑んだ。
「ワタシはゴク普通に、辺境のとアル部族の出身デスよ。……モウ、壊滅してしまいましたが……ヘレがワタシに懐くようにナッタのは、その頃カラです」
 リムネラの出身は、そう大きい部族ではなかった。歪虚に襲われ、あっという間に滅ぼされてしまったのだと、そう語る。
 生活環境も厳しく、歪虚の出現も多い辺境では、よくある話だ。小規模の部族なら、力の強くない歪虚に数にものをいわせて壊滅させられたなんて話は良く聞く。
 そしてその生き残りなど、行くあての無くなった者達の一部が、あの『部族なき部族』などで活動しているのだろう。ハンターになった者も少なくないに違いない。
「先代の白龍様モ、ワタシ達を愛してクレマシタ。ダカラこそ、聖地は護られ続けてイタ……ソレでも、ヘレは白龍様以上に、ワタシの傍にイテくれた、カラ……ヘレは、ナニよりも大切な存在、ナノです」
 リムネラは優しい瞳でそう囁くように言う。きっと、聖地で修業をしていたころを思い出しているのだろう。


「……って言うか、そもそも、巫女ってなに?」
 突然の問いのはサクラ。え? と言う顔の面々に、彼女は照れくさそうに頬を掻きながら説明する。
「あ、いやね。友達に聖女になったらイイじゃんって言ったら、なりたきゃ自分でなれ、って言われてさ。まあその子は放って置いてもなるだろうし、出来る事の範囲が増えるからいいじゃんって思ってたんだけど、いざ自分に言われたらどうしようかなって思って。だって聖導士の力だけなら転職すれば手に入るじゃん? でもそれって何か違うなって思って……なら巫女になればわかるかな、って思ったんだよね。まあ、これもただの転職じゃん、って言われるとそうかもー、とは思うけど」
 やや早口に述べていくが、サクラにとっては真面目な悩みだ。
「で、白龍を信仰すれば巫女なのかな、それとも白龍を得れば? 何かを信仰すれば? そんな風に考えて。多分どれも少しずつ必要で、でもどれも本質じゃ無いと思ったんだ」
 なるほど、巫女という存在の本質を彼女は知りたいと言う事らしい。
「巫女トハ何か、デスか?……そうデスね、言葉にスルのは難しいですケレド、……辺境巫女に関して言エバ、白龍様への信仰、そして世界を思う気持ち……デショウカ。白龍様を思い、世界の平和を祈る……ソレが、巫女の共通認識の気がシマス」
 信仰とは、祈りだ。よく宗教などで唱えられる人々への救済は、祈りをもって得られる安らぎからくる。
 つまりリムネラが言いたいのは、白龍というミーディアム――異界や有り様の異なるモノ、この世界で言えば精霊やマテリアルといったものと媒介する存在――を通して、世界への祈りを捧げる、それが『辺境巫女』のあり方なのだ。
 それは辺境部族の祖霊への祈りにも似ているかも知れない。しかし逆を言えば、部族がそれを真似たのかも知れない。
 いずれにしろ、もともとがプリミティブな信仰のありようを残しているので、その実態は判らないが――
「……私は出来うる限り、その子の剣で盾になるって決めた。だから敵はどうやってもぶちのめすし、必要なら貴族にもちょっかい出す。本当に彼女の為になると思ったら、自分の信念を貫き通す、たとえ彼女が嫌がっても。ただ、その為にも私は筋を通さなきゃいけない……世の中の流れや善悪の有り様とか、見定めていかなきゃ。……リムネラさまの考える本質は、本当に小さくて、でも大きいんだね」
 サクラはなるほど、と感慨深げに頷いた。


「でも、リムネラさんもお疲れでしょう……? ここまでの道のり、これだけでも充分に……試練のような、ものですし……」
 そう言いながら温かい飲み物をリムネラに渡したのは天央 観智(ka0896)。
(とはいえ、割とフランクなところのある、あの青龍さんなら……話してくれそうな気も、するんですけれど……ね)
 観智はそんなことを思いつつ、
「でも、そうすると……何年くらいいっしょに見聞を広めていたんでしょうか? 昔から、ヘレの大きさは……そのくらいで?」
 やはり質問を投げかける。
「そう……デスね。ワタシと親しくナッタのは十年ほど前ですケド、その頃カラ大きさは殆ど変わらない、デス。龍だから、ワタシ達とは成長も違うのでショウケド……アリガトウ、ございマス」
 飲み物――『落ち着きたいときにはこれを飲むといいですよ』とめいお勧めのホットミルクだったりする――をすすりながら、リムネラは小さく微笑む。ヘレが起きなくなったはじめの頃こそ不安感でいっぱいになっていたリムネラだが、いまはだいぶ落ち着きを取りもどしているようだった。自分の足で動くというのは、やはり色んな意味で彼女に良い効果を表わしているらしい。
「……そう言えば、リムネラ『様』ときちんとこうやって向き合うのは、聖地奪還の時以来かしらね。……もっとも、あなたには『様』をつける必要なんてなさそうだって、すぐに判ったけれど」
 そう言ってカーミン・S・フィールズ(ka1559)は、ピンクのツインテールを小さく揺らす。
「あの時に先代の白龍は死に……そして今はその小龍が力を引き継いだのね?」
「確実ではナイですが……あの時ニモ、マテリアルの変化は感じマシタ。ソレにしても、白龍様が亡くなったノモ、随分前のヨウナ気がシマス……」
 カーミンの言葉に、リムネラは懐かしげに目を細める。あの時も大変だったが、今はなによりその『次代白龍』と目されている、そして何よりリムネラのかけがえない友であるヘレの一大事。
 リムネラにとってみれば信仰の対象という大きな存在だった白龍も大事だったが、もっと大事なのでは無かろうか。カーミンも驢馬を連れているが、彼らには名前をつけていない。それは、名前をつけることは失ったときの悲しさが大きくなることに繋がるから――だ。
 どんなに大切な存在も、いつかはいなくなる。その時の覚悟が、――彼女にはまだ無い。
「そう言えば、私も龍を飼っているが、それとは違うのか?」
 ふと素朴な疑問を投げかけたのはレイア・アローネ(ka4082)だ。彼女の言う龍、とはワイバーンのことである。龍種という意味では近い存在だが――
「好きな食べ物や育て方など、参考に出来ればと思って」
「ワイバーンは、たぶん、マタ少し違いマスね……ワイバーンは、生物寄りの存在デスけれど……六大龍ナドは、特別
、ですカラ。大精霊に認められた存在……と、考えるノガ、一番近いデスね」
 リムネラは、総長からの受け売りの部分もアリマスが、と添えて説明する。
「……ちなみに、ヘレはどっちなんですか?」
 めいが問いかけると、
「ソレは……正直、今のワタシにも答え辛いデス。というのも、六大龍は、転生をスルと言われてイマスから。もし、ヘレが次の白龍様になる存在なら……今はモシカスルト、生物的な龍種カラ精霊に昇華サレル……そのタメの準備の眠り……なのかもシレマセンね」
 リムネラは少し首をひねりつつではあるが、そう呟いた。


「そう言えば、マテリアルと言えば……先日のリアルブルーの神社で、強大なマテリアルを感じた……そんなことをナーランギさんのところで話していましたけれど……詳しい話を教えて貰えたら、と」
 観智が思い出したように問いかける。
「その場に僕もいた……訳ですけど、見たままの状態しか、判っていなくて……と言いますか。もしわかるならで良いんですが」
 その言葉に、リムネラはそっと目を伏せた。
「……聖の気を宿すトコロは、強いマテリアルが存在することが多いのです、ケド……あの時感じたノハ、言葉にはしづらいデス。ただ、何かトテモ強い意志がワタシを取り巻き、一時的にソノ世界に精神が取り込まれたヨウナ……その時に感じたノガ、『嘆き』……デシタ」
 具体的に何かを訴えるというものではなかった。ただ、リアルブルーが発する漠然とした悲しみ、嘆き――そのようなものを、リムネラは受信したのである。
 いや、もしかすると具体性もあったのかも知れない。しかし、リアルブルーに関する知識に乏しいリムネラには、説明をするのが難しいのだった。感じ取った感情をそのまま伝えるので、精一杯だったのだ。
「……ああ、そうか。リムネラさんは、初めてのリアルブルー……でしたしね」
 リアルブルーにも、リアルブルーの事情がある。そしてリムネラにもリムネラの事情がある。たとえリムネラに切なる事情を細微に伝えても、それを飲み込むだけの知識、許容……リムネラにはまだ、それらが不足していたのだろう。
「タダ、確かにただ事デナイ事は、伝わりマシタ。そしてヘレは人間よりもマテリアルに敏感な存在デスから……ソノ、ワタシには判らない程度デモ、マテリアルの変化やシグナルを受け取って、成長のキッカケにナッタという総長の考えは、あながち外れてイナイと思いマス」
「なるほど……そういえば、今までに体調の変化とかって、あったのかな、ヘレちゃんって」
「ワタシもあやふやデスけど……、脱皮、はしていたト記憶してイマス。デモ、今回のヨウナ大きな変化ではナカッタ……ワタシと出逢ってカラ、ヘレの体格にホトンド変化はナイ、デスから」
 Uiscaの問いかけに、リムネラは思い出すようにしてゆっくりと言う。
「……レポートにもあったから読んだとは思いますけど、青龍さまの巫女であるナディア総長は青龍さまと生命を共有しているそうですね。青龍さまが死なない限り寿命を迎える事はない……でもそのまた逆も然りである、と」
 確かに彼女はそう言っていた。リムネラもその報告書は目にしている。
「だから、もしヘレちゃんが本当に白龍さまとして覚醒されたなら、ヘレちゃんとしたしいリムネラさんも同じようになるんじゃ無いかと思って……」
 Uiscaは、ヘレの心配もだが、リムネラの心配をより強くしているのだ。それはこれまでの積み重ねもあってなのだろうが、
「もしそうなら、リムネラさんはそれでも、ヘレちゃんと一緒に生きる覚悟は、出来ていますか……?」
 そう問うた。レイアも少し似た考えを持っていたようで、
「それと、もしヘレが、白龍になったとして寂しくは感じないのか……?」
 するとリムネラは少し考えた後、ふわりと微笑んだ。
「……たとえ、何がアッテモ、ヘレはヘレ、デス。ワタシの、かけがえのナイ友達……ヘレにモシモのことがアッテ後悔スルより、進めるカギリ、イッショに進みたい――と、思うのデス。ソレに、ヘレが元気でイテくれるなら、寂しくもナイですよ」
 その声によどみはなかった。そしてその発言に、Uiscaも頷き、笑みをそっとうかべる。
「そう……それなら、私も出来る限りの応援をさせてもらいたいです。リムネラさんが決めた道を手助けしたいですから」
「そうだな。私もつい失礼な質問をしてしまった。すまない」
 レイアも僅かに顔を朱くして非礼をわびる。
 それからUiscaはふと思いだしたように、
「そう言えばリアルブルーには、蛇が歳経ると龍になるという伝承もあるそうです。もしリアルブルーにも英霊や精霊がいるのなら、龍も実在していて、真実の一部を伝えているのかも知れないですね」
 ナーランギが以前『自分は蛇だったかも』というようなことを言っていた事を思い出しながら、Uiscaがいうと、観智も頷いた。
「確かに……そう言う伝承が残っている地域は、リアルブルーにありますね。面白い着眼点かも……知れません」


(ま、それにしても……)
 カーミンはちらりと考える。
(あのアズラエルですら、西方のハンターが青龍を裏切った事をいまだに口にする……口にするだけましで、腹の中で今回の来訪を快く思っていない連中も多いはず。気は抜けないわ)
 青龍の神官長の顔を思い出しながら、そう思うと、まだまだ課題がありそうに思えてきた。もっとも、彼女はそれを心の中だけに留めているが。
「足の調子はどう? 疲れているだろうし、応急処置する?」
 ハンターよりも旅慣れていないであろうリムネラにもそう声をかけ、にこりと笑う。使節団として旅をしている仲間たちの顔や挙動は大方覚えた。ここから先、怖いのはむしろ身内の裏切りだ。迎えが腹に一物抱えている事だってあり得ないわけで無いのだから。
 もっともリムネラは素直なたちなので、カーミンから傷薬の軟膏を受け取ると有難そうにいそいそと使う。そんな様子が妙に人間じみていて、思わずだれもが微笑ましく感じた。
 ヘレはいまだ眠り続けている。起きる兆しがなくとも痩せたりはしていない辺り、マテリアルが主食というのもあながち外れていないらしい。
「……もう少しで龍園ね」
 レイアが言うと、全員が頷いた。
 そう、まだ本当の試練はこれから――なのかも知れないのだから。

 だから今は進もう。
 間違えずに、確実に、堅実に。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • Sanctuary
    羊谷 めい(ka0669
    人間(蒼)|15才|女性|聖導士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • イコニアの騎士
    宵待 サクラ(ka5561
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/03/20 12:36:25
アイコン 【相談卓】お話ししましょう
Uisca=S=Amhran(ka0754
エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/03/22 17:28:19