ゲスト
(ka0000)
全ては凍てつく
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/13 19:00
- 完成日
- 2014/12/14 05:24
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●凍てつく巨人の破壊衝動
帝国の北方、まだ開発が進んでおらず手つかずの土地になっているそこには雪がちらつき始めていた。
本格的な開発は春を予定しているが事前調査に来た調査団は予想より早い初雪の到来に一度帰還を検討し始めたところだ。
野宿の用意はしてあるものの雪が降る中では調査もはかどらないし凍傷や下手をすれば凍死という危険もある。
「引き上げる準備をしないとな……ん?」
「おい、どうした?」
「いや、なんか……山みたいなのが」
「山?雪山ができるほどは流石にまだ積もっていないだろう」
寝ぼけているのか、とどしたのかと問いかけた男性が最初に声をあげた仲間の視線を追いかける。
そこには雪山ではなく、氷の巨人が恐ろしい目つきで睨み付けているという豪雪で雪山が出来てた、という方がまだ有難い光景が広がっていた。
「自然派生した雑魔、みかけは氷でできたゴーレムみたいな感じを想定してくれればわかりやすいかな。そういう力押しタイプの大型の雑魔が沸いて出て帝国の北方に向かっていた調査団が危うく壊滅に追い込まれかけてね。
もう冬も近いから今年中には再調査には向かえないだろうけどその雑魔が追いかけてきて人里に下りてきても事だし春まで居残ってたら調査自体も進まないし。
寒い中ちょっと遠出してもらうことになるんだけど調査団のキャンプ基地周辺に向かってくれないかな」
寒い季節に冷たそうな雑魔の相手とかちょっと嫌だけどね、とルカ・シュバルツエンド(kz0073)は軽く肩をすくめて敵の情報を伝えようと口を開いた。
「口から吹雪を吐き出す範囲攻撃のほか、強度がやたらある腕や足で殴ったり蹴ったりだね。知性がそれほどない雑魔の中でもそんなに賢いほうではないけど一撃一撃は重いし水系の攻撃は吸収して氷に変えて自分の体の一部にしてしまうから注意して。
反面炎なんかには弱いみたいだけど耐久力自体が結構あるから上手く連携を取らないと持久戦にはなってしまうかな。
狂暴な性格で射程に入れば問答無用で攻撃してくる。でも大きいからよく周りを見ていれば不意打ち自体は避けられるはずだ。幸い雪景色で白一色というほど冬が深くないからね」
アイスゴーレムのような雑魔は一体だけで行動し、キャンプ地周辺を荒らしまわっている模様だ、とルカが付け加える。
「開発地というか地層に埋もれた化石なんかがあるんじゃないかって推測されてる場所らしくてね。あんまり手ひどく荒らされると貴重な歴史的資料の損失につながるかもしれない。そんなわけで雑魔の討伐を頼むね」
帝国の北方、まだ開発が進んでおらず手つかずの土地になっているそこには雪がちらつき始めていた。
本格的な開発は春を予定しているが事前調査に来た調査団は予想より早い初雪の到来に一度帰還を検討し始めたところだ。
野宿の用意はしてあるものの雪が降る中では調査もはかどらないし凍傷や下手をすれば凍死という危険もある。
「引き上げる準備をしないとな……ん?」
「おい、どうした?」
「いや、なんか……山みたいなのが」
「山?雪山ができるほどは流石にまだ積もっていないだろう」
寝ぼけているのか、とどしたのかと問いかけた男性が最初に声をあげた仲間の視線を追いかける。
そこには雪山ではなく、氷の巨人が恐ろしい目つきで睨み付けているという豪雪で雪山が出来てた、という方がまだ有難い光景が広がっていた。
「自然派生した雑魔、みかけは氷でできたゴーレムみたいな感じを想定してくれればわかりやすいかな。そういう力押しタイプの大型の雑魔が沸いて出て帝国の北方に向かっていた調査団が危うく壊滅に追い込まれかけてね。
もう冬も近いから今年中には再調査には向かえないだろうけどその雑魔が追いかけてきて人里に下りてきても事だし春まで居残ってたら調査自体も進まないし。
寒い中ちょっと遠出してもらうことになるんだけど調査団のキャンプ基地周辺に向かってくれないかな」
寒い季節に冷たそうな雑魔の相手とかちょっと嫌だけどね、とルカ・シュバルツエンド(kz0073)は軽く肩をすくめて敵の情報を伝えようと口を開いた。
「口から吹雪を吐き出す範囲攻撃のほか、強度がやたらある腕や足で殴ったり蹴ったりだね。知性がそれほどない雑魔の中でもそんなに賢いほうではないけど一撃一撃は重いし水系の攻撃は吸収して氷に変えて自分の体の一部にしてしまうから注意して。
反面炎なんかには弱いみたいだけど耐久力自体が結構あるから上手く連携を取らないと持久戦にはなってしまうかな。
狂暴な性格で射程に入れば問答無用で攻撃してくる。でも大きいからよく周りを見ていれば不意打ち自体は避けられるはずだ。幸い雪景色で白一色というほど冬が深くないからね」
アイスゴーレムのような雑魔は一体だけで行動し、キャンプ地周辺を荒らしまわっている模様だ、とルカが付け加える。
「開発地というか地層に埋もれた化石なんかがあるんじゃないかって推測されてる場所らしくてね。あんまり手ひどく荒らされると貴重な歴史的資料の損失につながるかもしれない。そんなわけで雑魔の討伐を頼むね」
リプレイ本文
●凍てつく大地、凍てつく巨人
帝国領の北方、史跡探索のキャンプ地はうっすらと雪化粧が施され、吹き抜ける風も身を切るように冷たい。
この地に現れるということでオフィス経由で覚醒者たちに討伐を依頼された雑魔はと言えばこの景色にふさわしく氷でできたゴーレムのような姿の雑魔だという。
攻撃手段の一つに吹雪を口から吹き出すというものがあるというあたりがただでさえ寒いこの地で戦う気を削がれる、もといまともに当たったら色々な面で脅威になりそうな敵でもある。
「さて、果たしてどのくらい、氷の特性を保持しているのだろうか、な」
今回の一戦は討伐自体よりむしろ敵の氷としての特性に興味を持ち、実験を行うような精神状態で参加したロイド・ブラック(ka0408)が仲間と協力しながらゴーレム状の雑魔の片足がある程度はまるくらいの大きさの穴を掘りながら呟く。
彼は防寒対策としてアーマーとゴーストシャツの間にカイロを加熱材として仕込んでいる他、主武器として予定しているランタンも武器であると同時に暖を取るための手段でもあるという出で立ちである。
タフで鈍重とはいえ当たれば辛い物理攻撃力を誇り、吹雪の吐息で周りを凍てつかせる雑魔に動き回られては困るから、ということで罠を仕掛けることでメンバーの意見は一致していた。
巨大さが逆にあだとなり、また氷のゴーレムのような外見から柔軟性に乏しいことが予測されることから片足が不自由になるだけでもそれなりに効果があるだろうというのが覚醒者たちの見通しだ。
「はあああああクッソ寒い! 何これ!山嘗めてた!」
馬鹿じゃないの! 馬鹿じゃないの!! 思わずいつものニヤケ顔も凍るわ! と若干大袈裟に寒がりながら穴を掘るため毛布から出てきたのはイリヤ・エインブロウ(ka0897)、穴掘り中もぶつくさと文句は絶えなかったが意識はゴーレムから不意打ちを食らわないか、接近する気配を探ることに余念がない。
理想は罠を準備したうえで先手を取れるように相手に見つからずにこちらが先に雑魔を見つけること。
そうすれば罠にも誘導しやすいしかなり有利に戦闘を進められる。その結果この寒い環境にさよならする時間も早まるだろう。
「防寒対策はそれなりにしたつもりだが、寒いな。もふもふの着ぐるみがなかったので仕方ないが。それなりにはしたつもりだがそうそう自分ではこういう風に着んからなぁ。
依頼達成のために着てはみたが……スースーする。
確か、粗筋は足を止めるために罠にはめ、囲み叩く! だったな。罠はもうじきできるしあとは誘導してフルボッコにするだけか」
赤やオレンジのレースやフリルをふんだんにあしらったゴシックドレスを重ね着したクリスティン・ガフ(ka1090)が手をこすり合わせながら息を吹きかける。
ドレスの飾りを風が揺らしまるで炎が踊っているようにも見えるが着ぐるみよりは確かに寒いだろう。
雑魔のおおよその大きさを聞いていた八人は雑魔の股の辺りまでの深さで片足分ほどの大きさの穴を掘り終えた。
キャンプ基地に残されていた資材から板を拝借して蓋をした後雪でカモフラージュする。
覚醒者たちには罠の場所がわかるように周辺に三つほど小さな目印を用意してゴーレムを待ち伏せることとなった。
「……まったく、初めての任務だっていうのに随分と面倒な相手ね。下準備も力仕事だし寒いし。
いいわ、どの道倒さなければならないことには変わりはない。少し手間が増えるだけよ。
さて、この力がどこまで通用するか……」
カレン・ラングフォード(ka3622)は罠を作るために荒れた地面から人の痕跡を消す作業に移りながら吐息と共にそんな言葉を吐き出した。
吐息は白い蒸気となって一瞬存在を主張した後空気に掻き消えていく。
人がやってきた痕跡をある程度消すと覚醒者たちはそれぞれの戦闘配置についたのだった。
●極寒の戦い
キャンプ地から見て北方からズシンズシンと地響きとともに巨大な氷の塊――氷でできたゴーレムのような姿の雑魔――が歩いてくる。
一度止まって、嗅覚があるのかどうかは謎だが辺りを探るように周りを見渡した後再び歩み始めた雑魔の前に立ちはだかるのはティーア・ズィルバーン(ka0122)だ。
「おぅおぅ、頑丈そうな敵じゃねぇか。やっぱ季節的にはこういったのが出てくるわな。ま、手ごたえがないのはつまらんし、いい狩りになればいいな」
獲物と認識したのは雑魔側も同じだったようで巨大な腕を振り上げてティーアを薙ぎ払おうとするのをティーアはストライダーの素早さを生かした動きでかわしつつゴーレムを罠の方向へと誘導する。
「やっぱストライダー的にはこういった役割が適任だよな」
雪道を駆けながらわずかにあがる口角。
「追われるのは趣味じゃないがこれも狩りの一つだ……それじゃ、銀獣の狩りを始める」
そう宣言するのと同時に板が割れ雑魔が罠にかかる。
そのタイミングにあわせて攻撃を受け止めることを捨て、立体的な動きで敵を翻弄しながら攻撃を回避するマルチステップとより精度の高い確実な一撃を繰り出すために体にマテリアルを潤滑させ洗練させた動きで敵に迫るスラッシュエッジを併用しながら雑魔の膝元へとせまり、その膝へ横薙ぎの一撃を叩き込む。
「キャンプ基地に被害が出ないように戦わねぇとな」
味方から離れつつ雑魔を狙撃できる位置に陣取っていた柊 真司(ka0705)が銃身の側面にファイアパターンが刻まれた赤銅色の銃身を持つ魔導銃「サラマンダー」を構えてティーアが薙ぎ払った箇所を狙って弾丸を撃ち込む。
その名のとおり火の精霊の加護を受けており、火属性を持つ銃弾は本来の攻撃力以上の威力を氷でできているが故に炎属性には弱い雑魔に与えたようだった。
威力を確認した真司は部位破壊は他のメンバーに任せることにして頭や胸と言ったゴーレムであれば弱点として持つ核がありそうな場所を狙って次々とゴーレムの巨体に着弾させていく。
Luegner(ka1934)は股まで落とし穴にはまったゴーレムの強度を確かめる意味も込めて跳弾が味方を傷つけることのないよう注意しながらマテリアルのエネルギーにより弾丸を射出する、側面に五芒星の模様が描かれた魔導拳銃ペンタグラムを撃ちこむ。弾丸が装てんされていることの証として五芒星の頂点に光がともり、ゴーレムに向かって弾丸が放たれた。
白主・アイノネ(ka2628)は強く踏み込むことで次の打撃の威力を上昇させた後マテリアルを柄の上端部に六十センチほどの三日月状の斧頭がついた、三日月斧とも呼ばれる戦闘用の大斧に込めた激しい打撃をダメージの積もっている膝頭へと打ち付けた。
ゴーレムが苛立ったように腕を振りかざして殴りつければ大斧を構えてしっかりと立つことでなんとかしのぐ。
「氷割りの作業には重量こそ正義、だと思います」
氷に点で穿った後にその点と点をつなげるように戦で衝撃を与えて割るという地面の氷をツルハシで割る際のやり方をイメージしてひざ裏かっくんの要領で破壊を試みるアイノネ。
雪避けマントを羽織って毛を逆立てた人間大のうさぎ(の着ぐるみ)がバルディッシュ、すなわち氷割り斧を振るう様は中々にシュールだったが誰も突っ込むものはいない。
「ほんと、重量は正義なんです。厄介ですよね」
雑魔の巨大すぎるほど巨大な図体を見上げてため息交じりに一言。
「遮蔽物らしい遮蔽物もないまま正面から……あまりやりたくはないけれど仕方ないわ、持たせましょう」
カレンがリアルブルーで作られたオートマチックのシンプルな作りの拳銃を構えてそろそろ折れそうな膝の部分を狙い撃つ。
氷が砕ける音がして人間でいうなら膝関節から下と上が分離し、巨体がどう、と雪煙をあげて倒れこむ。
足を破壊されてますます怒り狂ったような咆哮を雑魔があげると吐き出した分の空気を取り込み直すように大きく息を吸い込む。
「多分情報にあった吹雪の息が来るわよ、備えて」
カレンが警告を放ち後方へと後ずさる。
吹きだされる吹雪から仲間がそれぞれ離脱して回避を図るなり防御を固めて耐えるなりしている間に雑魔の斜め後ろに移動したクリスティンが守りを捨て攻撃を重視した構えを取り、強く踏み込んだ後柄に組み込まれた特殊モーターを起動させて特殊強化鋼を用いて作られた銅線を編んで一本のワイヤーにした武器でゴーレムの背中を切り裂く。
「……ところで、対巨大ゴーレム戦ってなると背中駆け上がったりしたくならねえ? いや、しないけど。……しませんよ?」
目を泳がせつつ駆け上がってみたいなぁ、という雰囲気を見せるイリヤに横倒しになってるから駆け上りたいなら登ったらどうだ、と声がかけられる。
同時に滑らないように気を付けて、やどうせ駆け上るなら立っていた時は高い位置にありすぎて狙い難かった頭へ一撃食らわせて、と意外と好意的に行動の希望を受け入れられすこしだけ面喰いつつ、地上を高速で移動する動物霊の力を借りることで素早い身のこなしを可能にするとその速度のままゴーレムの背中を駆け上がり空気のように透明な刀身を持つ繊細な、けれど突風すら切り裂くという鋭い刃をゴーレムの頭頂部に突き立てる。
「今から銃弾撃ちこむから着弾の衝撃で落ちるなよ!」
真司が歓声を上げるイリヤに声をかけると慌てて滑り降りるようにしてゴーレムから離れたのを見届けてサラマンダーでイリヤが傷つけた頭部付近を狙って炎の属性を帯びた銃弾を放つ。
ロイドは直接ランタンを押し付けて腕関節部にあたる場所を溶解、および再凍結による動きの封じ込めを試みた。
「この温度ならば溶けた部分ももう一度凍ろう。それで動けるかは、分からんがな」
雑魔は知能の低さからか生命の危機からか腕がへし折れるのも構わないという様子で腕を持ち上げ二の腕で薙ぎ払おうと試みるがスピードは明らかに先ほどより落ちている。
ランタンで一度溶解を試みてから機導剣で突くロイド。
「柔らかくしてから叩く。戦の基本だな。……全員、少し離れてくれ。エレクトリックショックを使用して麻痺させられないか試してみよう。
氷の表面が溶ければ水となる。そこに電流を流せば……どうなるかな?」
あくまで戦いというより実験を行うようなスタンスで呟き、仲間が距離を取ったのを確認してからランタンでの攻撃の際に雷撃が放たれてゴーレムを襲う。魔力を帯びた雷撃はゴーレムを麻痺させるだけに留まらず体全体に通電したらしくゴーレムが痙攣するように、けれど体格の問題でかなり大きく体を跳ねさせた。
「よし、大分弱ってきてるな。……その首、俺において逝けやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ティーアが痙攣が収まると同時に死角からランアウトで加速して接近し、斧をつっかえ棒にして棒高跳びの要領で跳躍、その加速と跳躍時に発生した回転の勢いのまま斧をゴーレムの首めがけて振り下ろすと首と体が分断され、同時にタフさも流石に限界を迎えたようで雑魔は跡形もなく消えたのだった。
「……ちっ……首を置いていけっつったのによ。全部消えちまった。雑魔だからしゃーねーか」
とどめを刺したのにどこか不服気にティーアが呟くと同時に戦闘態勢をとっていた覚醒者たちは次々に構えを解く。
「さて、と。戦闘も終わったことだし。……もふもふしていいだろうか」
クリスティンがずっと機会をうかがっていたらしくもふもふとした着ぐるみを身にまとったアイノネににじり寄っていく。
「お好きにどうぞ、です」
「有難う! ずっとこの時を心待ちにしていたんだ……! うん、吹雪で若干凍っているがそれでももふもふさは損なわれていないな……良い手触りだ!」
心ゆくまでもふもふさを堪能するまでは移動したくなさそうなクリスティンに僅かに苦笑しながらされるがままになっているアイノネ。
「……来春にはまた調査が始まるんだろうしあまり荒らしたままにしておくというのも、な。キャンプ地の被害を確認して復興作業をした後撤収するとしよう。
自分でも被害状況を確認して適宜動くつもりだが何か手伝うことがあれば遠慮せずに言ってくれて構わないぜ」
真司の言葉にそのまま帰るつもりだったメンバーも落とし穴位は埋め戻しておかないと速やかに調査に戻れないか、という意見でまとまり手分けして大雑把にではあったが戦場となったキャンプ地跡の修繕作業に取り掛かり、事前準備と戦闘、戦闘後の修復作業で寒さというより暑さを感じながらも体裁を整え終えた後でキャンプ地を後にしたのだった。
帝国領の北方、史跡探索のキャンプ地はうっすらと雪化粧が施され、吹き抜ける風も身を切るように冷たい。
この地に現れるということでオフィス経由で覚醒者たちに討伐を依頼された雑魔はと言えばこの景色にふさわしく氷でできたゴーレムのような姿の雑魔だという。
攻撃手段の一つに吹雪を口から吹き出すというものがあるというあたりがただでさえ寒いこの地で戦う気を削がれる、もといまともに当たったら色々な面で脅威になりそうな敵でもある。
「さて、果たしてどのくらい、氷の特性を保持しているのだろうか、な」
今回の一戦は討伐自体よりむしろ敵の氷としての特性に興味を持ち、実験を行うような精神状態で参加したロイド・ブラック(ka0408)が仲間と協力しながらゴーレム状の雑魔の片足がある程度はまるくらいの大きさの穴を掘りながら呟く。
彼は防寒対策としてアーマーとゴーストシャツの間にカイロを加熱材として仕込んでいる他、主武器として予定しているランタンも武器であると同時に暖を取るための手段でもあるという出で立ちである。
タフで鈍重とはいえ当たれば辛い物理攻撃力を誇り、吹雪の吐息で周りを凍てつかせる雑魔に動き回られては困るから、ということで罠を仕掛けることでメンバーの意見は一致していた。
巨大さが逆にあだとなり、また氷のゴーレムのような外見から柔軟性に乏しいことが予測されることから片足が不自由になるだけでもそれなりに効果があるだろうというのが覚醒者たちの見通しだ。
「はあああああクッソ寒い! 何これ!山嘗めてた!」
馬鹿じゃないの! 馬鹿じゃないの!! 思わずいつものニヤケ顔も凍るわ! と若干大袈裟に寒がりながら穴を掘るため毛布から出てきたのはイリヤ・エインブロウ(ka0897)、穴掘り中もぶつくさと文句は絶えなかったが意識はゴーレムから不意打ちを食らわないか、接近する気配を探ることに余念がない。
理想は罠を準備したうえで先手を取れるように相手に見つからずにこちらが先に雑魔を見つけること。
そうすれば罠にも誘導しやすいしかなり有利に戦闘を進められる。その結果この寒い環境にさよならする時間も早まるだろう。
「防寒対策はそれなりにしたつもりだが、寒いな。もふもふの着ぐるみがなかったので仕方ないが。それなりにはしたつもりだがそうそう自分ではこういう風に着んからなぁ。
依頼達成のために着てはみたが……スースーする。
確か、粗筋は足を止めるために罠にはめ、囲み叩く! だったな。罠はもうじきできるしあとは誘導してフルボッコにするだけか」
赤やオレンジのレースやフリルをふんだんにあしらったゴシックドレスを重ね着したクリスティン・ガフ(ka1090)が手をこすり合わせながら息を吹きかける。
ドレスの飾りを風が揺らしまるで炎が踊っているようにも見えるが着ぐるみよりは確かに寒いだろう。
雑魔のおおよその大きさを聞いていた八人は雑魔の股の辺りまでの深さで片足分ほどの大きさの穴を掘り終えた。
キャンプ基地に残されていた資材から板を拝借して蓋をした後雪でカモフラージュする。
覚醒者たちには罠の場所がわかるように周辺に三つほど小さな目印を用意してゴーレムを待ち伏せることとなった。
「……まったく、初めての任務だっていうのに随分と面倒な相手ね。下準備も力仕事だし寒いし。
いいわ、どの道倒さなければならないことには変わりはない。少し手間が増えるだけよ。
さて、この力がどこまで通用するか……」
カレン・ラングフォード(ka3622)は罠を作るために荒れた地面から人の痕跡を消す作業に移りながら吐息と共にそんな言葉を吐き出した。
吐息は白い蒸気となって一瞬存在を主張した後空気に掻き消えていく。
人がやってきた痕跡をある程度消すと覚醒者たちはそれぞれの戦闘配置についたのだった。
●極寒の戦い
キャンプ地から見て北方からズシンズシンと地響きとともに巨大な氷の塊――氷でできたゴーレムのような姿の雑魔――が歩いてくる。
一度止まって、嗅覚があるのかどうかは謎だが辺りを探るように周りを見渡した後再び歩み始めた雑魔の前に立ちはだかるのはティーア・ズィルバーン(ka0122)だ。
「おぅおぅ、頑丈そうな敵じゃねぇか。やっぱ季節的にはこういったのが出てくるわな。ま、手ごたえがないのはつまらんし、いい狩りになればいいな」
獲物と認識したのは雑魔側も同じだったようで巨大な腕を振り上げてティーアを薙ぎ払おうとするのをティーアはストライダーの素早さを生かした動きでかわしつつゴーレムを罠の方向へと誘導する。
「やっぱストライダー的にはこういった役割が適任だよな」
雪道を駆けながらわずかにあがる口角。
「追われるのは趣味じゃないがこれも狩りの一つだ……それじゃ、銀獣の狩りを始める」
そう宣言するのと同時に板が割れ雑魔が罠にかかる。
そのタイミングにあわせて攻撃を受け止めることを捨て、立体的な動きで敵を翻弄しながら攻撃を回避するマルチステップとより精度の高い確実な一撃を繰り出すために体にマテリアルを潤滑させ洗練させた動きで敵に迫るスラッシュエッジを併用しながら雑魔の膝元へとせまり、その膝へ横薙ぎの一撃を叩き込む。
「キャンプ基地に被害が出ないように戦わねぇとな」
味方から離れつつ雑魔を狙撃できる位置に陣取っていた柊 真司(ka0705)が銃身の側面にファイアパターンが刻まれた赤銅色の銃身を持つ魔導銃「サラマンダー」を構えてティーアが薙ぎ払った箇所を狙って弾丸を撃ち込む。
その名のとおり火の精霊の加護を受けており、火属性を持つ銃弾は本来の攻撃力以上の威力を氷でできているが故に炎属性には弱い雑魔に与えたようだった。
威力を確認した真司は部位破壊は他のメンバーに任せることにして頭や胸と言ったゴーレムであれば弱点として持つ核がありそうな場所を狙って次々とゴーレムの巨体に着弾させていく。
Luegner(ka1934)は股まで落とし穴にはまったゴーレムの強度を確かめる意味も込めて跳弾が味方を傷つけることのないよう注意しながらマテリアルのエネルギーにより弾丸を射出する、側面に五芒星の模様が描かれた魔導拳銃ペンタグラムを撃ちこむ。弾丸が装てんされていることの証として五芒星の頂点に光がともり、ゴーレムに向かって弾丸が放たれた。
白主・アイノネ(ka2628)は強く踏み込むことで次の打撃の威力を上昇させた後マテリアルを柄の上端部に六十センチほどの三日月状の斧頭がついた、三日月斧とも呼ばれる戦闘用の大斧に込めた激しい打撃をダメージの積もっている膝頭へと打ち付けた。
ゴーレムが苛立ったように腕を振りかざして殴りつければ大斧を構えてしっかりと立つことでなんとかしのぐ。
「氷割りの作業には重量こそ正義、だと思います」
氷に点で穿った後にその点と点をつなげるように戦で衝撃を与えて割るという地面の氷をツルハシで割る際のやり方をイメージしてひざ裏かっくんの要領で破壊を試みるアイノネ。
雪避けマントを羽織って毛を逆立てた人間大のうさぎ(の着ぐるみ)がバルディッシュ、すなわち氷割り斧を振るう様は中々にシュールだったが誰も突っ込むものはいない。
「ほんと、重量は正義なんです。厄介ですよね」
雑魔の巨大すぎるほど巨大な図体を見上げてため息交じりに一言。
「遮蔽物らしい遮蔽物もないまま正面から……あまりやりたくはないけれど仕方ないわ、持たせましょう」
カレンがリアルブルーで作られたオートマチックのシンプルな作りの拳銃を構えてそろそろ折れそうな膝の部分を狙い撃つ。
氷が砕ける音がして人間でいうなら膝関節から下と上が分離し、巨体がどう、と雪煙をあげて倒れこむ。
足を破壊されてますます怒り狂ったような咆哮を雑魔があげると吐き出した分の空気を取り込み直すように大きく息を吸い込む。
「多分情報にあった吹雪の息が来るわよ、備えて」
カレンが警告を放ち後方へと後ずさる。
吹きだされる吹雪から仲間がそれぞれ離脱して回避を図るなり防御を固めて耐えるなりしている間に雑魔の斜め後ろに移動したクリスティンが守りを捨て攻撃を重視した構えを取り、強く踏み込んだ後柄に組み込まれた特殊モーターを起動させて特殊強化鋼を用いて作られた銅線を編んで一本のワイヤーにした武器でゴーレムの背中を切り裂く。
「……ところで、対巨大ゴーレム戦ってなると背中駆け上がったりしたくならねえ? いや、しないけど。……しませんよ?」
目を泳がせつつ駆け上がってみたいなぁ、という雰囲気を見せるイリヤに横倒しになってるから駆け上りたいなら登ったらどうだ、と声がかけられる。
同時に滑らないように気を付けて、やどうせ駆け上るなら立っていた時は高い位置にありすぎて狙い難かった頭へ一撃食らわせて、と意外と好意的に行動の希望を受け入れられすこしだけ面喰いつつ、地上を高速で移動する動物霊の力を借りることで素早い身のこなしを可能にするとその速度のままゴーレムの背中を駆け上がり空気のように透明な刀身を持つ繊細な、けれど突風すら切り裂くという鋭い刃をゴーレムの頭頂部に突き立てる。
「今から銃弾撃ちこむから着弾の衝撃で落ちるなよ!」
真司が歓声を上げるイリヤに声をかけると慌てて滑り降りるようにしてゴーレムから離れたのを見届けてサラマンダーでイリヤが傷つけた頭部付近を狙って炎の属性を帯びた銃弾を放つ。
ロイドは直接ランタンを押し付けて腕関節部にあたる場所を溶解、および再凍結による動きの封じ込めを試みた。
「この温度ならば溶けた部分ももう一度凍ろう。それで動けるかは、分からんがな」
雑魔は知能の低さからか生命の危機からか腕がへし折れるのも構わないという様子で腕を持ち上げ二の腕で薙ぎ払おうと試みるがスピードは明らかに先ほどより落ちている。
ランタンで一度溶解を試みてから機導剣で突くロイド。
「柔らかくしてから叩く。戦の基本だな。……全員、少し離れてくれ。エレクトリックショックを使用して麻痺させられないか試してみよう。
氷の表面が溶ければ水となる。そこに電流を流せば……どうなるかな?」
あくまで戦いというより実験を行うようなスタンスで呟き、仲間が距離を取ったのを確認してからランタンでの攻撃の際に雷撃が放たれてゴーレムを襲う。魔力を帯びた雷撃はゴーレムを麻痺させるだけに留まらず体全体に通電したらしくゴーレムが痙攣するように、けれど体格の問題でかなり大きく体を跳ねさせた。
「よし、大分弱ってきてるな。……その首、俺において逝けやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ティーアが痙攣が収まると同時に死角からランアウトで加速して接近し、斧をつっかえ棒にして棒高跳びの要領で跳躍、その加速と跳躍時に発生した回転の勢いのまま斧をゴーレムの首めがけて振り下ろすと首と体が分断され、同時にタフさも流石に限界を迎えたようで雑魔は跡形もなく消えたのだった。
「……ちっ……首を置いていけっつったのによ。全部消えちまった。雑魔だからしゃーねーか」
とどめを刺したのにどこか不服気にティーアが呟くと同時に戦闘態勢をとっていた覚醒者たちは次々に構えを解く。
「さて、と。戦闘も終わったことだし。……もふもふしていいだろうか」
クリスティンがずっと機会をうかがっていたらしくもふもふとした着ぐるみを身にまとったアイノネににじり寄っていく。
「お好きにどうぞ、です」
「有難う! ずっとこの時を心待ちにしていたんだ……! うん、吹雪で若干凍っているがそれでももふもふさは損なわれていないな……良い手触りだ!」
心ゆくまでもふもふさを堪能するまでは移動したくなさそうなクリスティンに僅かに苦笑しながらされるがままになっているアイノネ。
「……来春にはまた調査が始まるんだろうしあまり荒らしたままにしておくというのも、な。キャンプ地の被害を確認して復興作業をした後撤収するとしよう。
自分でも被害状況を確認して適宜動くつもりだが何か手伝うことがあれば遠慮せずに言ってくれて構わないぜ」
真司の言葉にそのまま帰るつもりだったメンバーも落とし穴位は埋め戻しておかないと速やかに調査に戻れないか、という意見でまとまり手分けして大雑把にではあったが戦場となったキャンプ地跡の修繕作業に取り掛かり、事前準備と戦闘、戦闘後の修復作業で寒さというより暑さを感じながらも体裁を整え終えた後でキャンプ地を後にしたのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 5人 |
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参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/08 17:16:56 |
|
![]() |
相談卓 カレン・ラングフォード(ka3622) 人間(リアルブルー)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/12/13 15:12:06 |