ゲスト
(ka0000)
雨の中の激闘
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/22 12:00
- 完成日
- 2014/07/01 00:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
叩きつけるような激しい雨、
空が怒っているようにとどろく雷鳴、
その中で、ゆっくりと移動するモノがあった。
※※※
辺境にある、とある集落。
老人や子供たちが身を寄せ合って過ごしており、
若い男女はほとんど集落には存在していない。
ある者は移動の際に雑魔に殺され、ある者は食料を取ると言って戻ってこなかった。
一人、また一人と減っていく仲間たちに、集落の者は怯え、生きるために細々と場所を転々としていたのだ。
「……僕たち、いつになったら安心して眠れるの?」
幼い少年が、自分よりも幼い妹を抱きしめながら、集落の老人に問いかける。
大丈夫、などと気休めの言葉を言える時期は過ぎており、老人は言葉に困り、少年から視線をそらす。
少年も聞く前からわかっていたのだろう。
自分達が雑魔に見つからぬよう、隠れ、逃げ、そうでしか生きていけない事を。
「……僕が、もっと大人だったらよかったのに。そうすれば、みんなを、妹を守れるかもしれないのに」
響く雨音、とどろく雷鳴、そしていつ死ぬかわからぬ恐怖、それらに耐えながら、少年は妹を抱きしめながら眠る。
「……どうか、この子たちが大人になる頃には平和な世の中になっていてくれれば良いのだが……」
誰に祈っているのか、おそらく老人本人にもわからない。
神様を信じたいと思っていても、自分たちに与えられる試練が大きすぎるから。
そして、祈る者をあざ笑うかのように、雑魔の群れが近づいている事など、集落の人間は誰も気づかなかった。
だが、老人の祈りが通じていたのか、集落の近くには偶然にもパトロールの任務を受けていたハンターたちが存在していた――……。
空が怒っているようにとどろく雷鳴、
その中で、ゆっくりと移動するモノがあった。
※※※
辺境にある、とある集落。
老人や子供たちが身を寄せ合って過ごしており、
若い男女はほとんど集落には存在していない。
ある者は移動の際に雑魔に殺され、ある者は食料を取ると言って戻ってこなかった。
一人、また一人と減っていく仲間たちに、集落の者は怯え、生きるために細々と場所を転々としていたのだ。
「……僕たち、いつになったら安心して眠れるの?」
幼い少年が、自分よりも幼い妹を抱きしめながら、集落の老人に問いかける。
大丈夫、などと気休めの言葉を言える時期は過ぎており、老人は言葉に困り、少年から視線をそらす。
少年も聞く前からわかっていたのだろう。
自分達が雑魔に見つからぬよう、隠れ、逃げ、そうでしか生きていけない事を。
「……僕が、もっと大人だったらよかったのに。そうすれば、みんなを、妹を守れるかもしれないのに」
響く雨音、とどろく雷鳴、そしていつ死ぬかわからぬ恐怖、それらに耐えながら、少年は妹を抱きしめながら眠る。
「……どうか、この子たちが大人になる頃には平和な世の中になっていてくれれば良いのだが……」
誰に祈っているのか、おそらく老人本人にもわからない。
神様を信じたいと思っていても、自分たちに与えられる試練が大きすぎるから。
そして、祈る者をあざ笑うかのように、雑魔の群れが近づいている事など、集落の人間は誰も気づかなかった。
だが、老人の祈りが通じていたのか、集落の近くには偶然にもパトロールの任務を受けていたハンターたちが存在していた――……。
リプレイ本文
●パトロール中にて……
「やれやれ、この大雨ン中にパトロールか……」
ロクス・カーディナー(ka0162)は降りしきる雨の中、ため息混じりに呟く。
今回、ハンター達が請け負った仕事はパトロール。大雨の中で雑魔が現れると危険、という事から8名のハンター達にパトロール要請が出されていた。
「ここまで雨が降ると、さすがに嫌気がさしてきますね」
苦笑気味に呟いたのは、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)。大雨の中のパトロールという事で、雨合羽の支給はされていたが、視界が悪く、少々うんざりしていた。
「靴に滑り止めを施してますけど、気を弛めれば滑ってしまいそうです……」
佐倉 桜(ka0386)は足元を気にしながら、滑らないよう、泥濘に足を取られないよう、気をつけながら歩いており、その腰にはランタンが下げられていた。
「……はぁ、雨は嫌いなんですよ。ストレスの発散先が欲しいですね」
雨に濡れた眼鏡を拭い、拭った傍から再び濡れる――……そのやり取りに、少々苛立ちながら猫実 慧(ka0393)が低い声で呟く。
「パトロールとはいえ、初陣……しっかり気を引き締めなくてはいけませんね」
白神 霧華(ka0915)は、やや緊張した面持ちで呟くが、その表情は雨に紛れ、他のハンター達が白神の緊張に気づく事はなかった。
(こんな雨の日にパトロールなんて、気が滅入るね……まぁ、嫌いじゃないんだけどさ)
シドウ(ka1962)は小さなため息を吐きながら、心の中で呟く。彼は雑魔の襲撃で故郷を追われた身であり、パトロールそのものは嫌いではなかった。
「……視界も足場も悪い、最悪の環境……それに、僕はまだ弱い……」
雨音に紛れてしまいそうな小さな声で、ライガ・ミナト(ka2153)が呟く。
「……うーん、まだ止みそうにないな」
エイル・ヤールンサクサ(ka2168)は空気の匂いを嗅ぎながら、雨がまだ止まない事を告げる。
「せめて雨が止んでくれれば、パトロールもやりやすくなるんだけどね……まぁ、あたいのやれることをやる、今回はそれだけだね」
「この先には小さな集落があるはずです、その辺まで回ったら帰還してもいいでしょうね」
猫実が呟いた時、雨音に混じって獣の鳴くような声が聞こえてきた。
「……おいおい、今のァ何だ? この辺の雑魔情報はなかったはずだが……」
ロクスが呟き、ハンター達は声の聞こえた方を見ると……大勢の雑魔が移動している姿を発見する。
「集落が近いと言いましたよね? ……まさか、あの方向に集落があるのでは?」
ユーリは嫌な予感がして、猫実に問い掛けると……「えぇ、その通りです」と無情な言葉が返ってくる。
「こうしてる場合じゃない、パトロールから雑魔殲滅に切り替えよう」
「そうですね、あのまま雑魔を見逃せば、集落に惨劇が起こる事は目に見えています」
シドウの呟きに、白神が答え、ハンター達はそれぞれ所有している武器を手に取る。
「俺とシドウ、霧華の3名は集落襲撃に備えましょう、その他の皆さんはなるべく集落に近づけないよう、雑魔と戦って下さい」
猫実はてきぱきと指示を出し、ハンター達もそれに頷き、行動を開始する。
「ユーリ、集落班の雑魔が5匹を超えるようでしたら『ハンディLEDライト』で円を描きますから、すぐにこちら側に来て下さい」
「分かりました……さて、飢えたケダモノにはご退場して頂きましょうか」
ユーリは『ロングソード』を構え、集落班と離れて行動を開始した。
●雑魔との交戦、雨の中、10体の雑魔と……
※維持班
「何だ、こりゃ……」
猫実達と別れ、ロクスが苦笑気味に呟く。
それもそのはずだ、目の前にいるのは犬、狼、熊……様々な動物の形をした雑魔だから。
「動物園にでも来たような錯覚を覚えてしまいますね、あまり楽しくなさそうですけど……」
佐倉は『ロッド』を構えて『ホーリーライト』を使用して、狼型雑魔に攻撃を仕掛ける。
「……弱いなんて言ってる場合じゃない」
ライガは喝を入れるように、自分の頬を強く叩く。
「強いか弱いか、玄人か素人かなんて関係ねえ! 助けられる奴が動かなくてどうすんだ!」
覚醒を行い、ライガは口調を荒げながら、佐倉が攻撃を仕掛けた狼に向かって『日本刀』を振り下ろした。
「ウオオオオオオンッ!」
同じく覚醒を行ったエイルが狼の遠吠えを真似ながら叫ぶ。雨の中でもしっかりと聞こえる咆哮に、集落班に向かいかけていた2匹がその場に留まった。
「5人で6匹か、この悪天候じゃなけりゃ余裕と言いたい所だがな……」
「それでも、何とかするしかありませんね。ここで食い止めなければ、集落に住む人々が犠牲になってしまいますから……!」
ロクスの言葉に応えた後、ユーリは『踏込』と『強打』を使用する。
その後、間を開ける事もせず、ロクスは『強打』で攻撃を仕掛け、まず1匹目の狼型雑魔を退治した。
「単体だと大した力はねぇ、叩くなら一点集中したい所だが……」
「それを相手が許してくれるかって事だな、はっ、美味そうな獲物がいると腹が減るな」
ロクスの呟きに、ライガが舌なめずりをしながら熊型雑魔を見る。
(ポン刀ってのは、攻撃用の武器じゃねぇ……攻めるんじゃねぇ、使われてた時代を考えれば防御用の武器だし、タイミング的に難しいんだよな……)
ライガは『日本刀』を構えながら、ぐるぐると色々な事を巡らせる。
「わたしの、ランタンで気を引きますから……その隙に攻撃を、お願いします!」
佐倉はハンター達に告げた後、ランタンを大きく振り回し、雑魔の気を引く。雑魔と言えど獣の習性と同じなのか、灯りがあればそちらに向かって行くようだ。
「そっちには、いかせないよ!」
エイルは『闘心昂揚』を使用して、構えた『ハンドアックス』で犬型雑魔を攻撃する。
「カーディナーさん、ユーリさん、エイルさん、ミナトさん……! 狼の足を止めますから、よろしくお願いします!」
佐倉は大きな声で叫んだ後、狼型雑魔に『ホーリーライト』を使用する。
彼女の攻撃を受け、狼型雑魔の足が止まった所を、それぞれが攻撃を仕掛け、1匹ずつ確実に仕留めていく。
「……ユーリ!」
その時、猫実の大きな声が聞こえる。
猫実は『ハンディLEDライト』で円を描き、合図を送って来ていた。
(まさか、5体以上の雑魔が向こうに……!?)
「ここは俺達だけで問題ない、幸いにもデカいのは1匹だけだから」
ライガは『日本刀』を構え、ユーリに背中を向けながら淡々と言葉だけを投げかける。
「そうだね、こっちは残り3匹だし、この調子なら大した怪我なくいけるはずだよ」
「ユーリさんは、向こう側の救援を……! わたし達も、こちらが終わり次第駆けつけます」
「……てェこった、俺らの事は気にせず、向こうに行け」
エイル、佐倉、ロクスはびしょ濡れになりながらも力強い言葉で応え、ユーリは小さく頷いて、集落班の方に駆けだした。
退治:狼2 犬1
登場:狼3 犬4 熊3
残り:狼1 犬3 熊2
※集落班
「ケダモノ風情が、頭が高ぇ!!」
猫実は『機導剣』で狼型雑魔の足を攻撃しながら、雨にも負けない声で叫んでいた。
維持班側が受け持ってくれた雑魔は6匹、集落班が受け持つのは4匹。
数としては悪くない数字だった――……大型が2匹、集落班側に来なければ。
「さすがに多少の攻撃じゃ、よろめく事さえもしてくれないね」
シドウは『ホーリーライト』を熊型雑魔に仕掛けながら、苦笑気味に呟く。
「犬型を1匹倒しはしましたが、熊型が邪魔をして狼型に致命傷を与えられませんね」
熊型雑魔の攻撃を『ロングソード』で受けながら、白神が眉根を寄せて呟く。やはり他の雑魔と違って身体が大きいせいか力も強く、攻撃を受け止めた白神の足が泥濘に埋まっていくのが分かる。
「キリカ、避けて下さい!」
猫実が大きな声で叫び、白神は受け止める事を止め、直ぐにその場から離れる。
それと同時に『機導砲』が放たれ、熊型雑魔の頭に命中する。
「……ようやくデカいの1匹か――ッ!?」
ほっ、と息を吐いたのも束の間、真後ろに迫った熊型雑魔の爪が猫実に振り下ろされる。
(チィッ! 油断した……っ!)
衝撃に備え、覚悟を決めた時、熊型雑魔がグラリとよろめく。
「すみません! 遅くなりました!」
猫実のピンチを救ったのは、先ほど救援として呼んでいたユーリだった。
「向こう側はロクス達に任せていれば問題なさそうです、こちらを一気に片付けましょう」
「分かった、私と猫実君で足を止めるから……その間に、白神君とユーリ君が叩く……という感じで大丈夫かな?」
「そうですね、それで問題はないでしょう……行きますよ、シドウ!」
猫実が『機導砲』、シドウが『ホーリーライト』を犬型雑魔に仕掛け、白神とユーリが『強打』で仕留める。
「狙い通りに行けば、こんなに早く片付く相手なんですけどね……さっきから、アイツが邪魔をしてくれてたのですよ」
「私達みたいに連携を取るってほどじゃないけど、それでも各々好き勝手に動かれると、こっちとしても動きづらかったんだよね」
「残り1匹、どんな手段を用いても集落の方には行かせません」
猫実、シドウ、白神は残り1匹になった熊型雑魔を見つめながら、各々の想いを吐露する。
「向こう側も片付いたみたい、正真正銘……目の前のこいつが最後の敵、ですね」
通常とは違う状態での戦闘は、ハンター達を大きく疲弊させており、限界が近いハンターも存在する。
残る力を振り絞り、それぞれのスキルを駆使して、最後の雑魔を退治したのだった……。
●死闘、終えて……
「雨合羽着ててもびしょ濡れ、泥だらけ……洗濯が大変そう」
戦闘が終了した後、白神は自分の格好を見ながら深いため息を吐いた。雑魔の爪や牙で雨合羽は所々破れており、服は勿論、足や腕、露出している肌にも泥がべったりだった。
「けど、良かったです……力なき人達が、悲しむ事がなくて……」
泥に塗れた顔で、佐倉はホッと安堵のため息を吐く。
今回、彼女はディスプレイを通さず、自分の目で悪意の塊――……雑魔を見た。
その時の恐怖は測り知れないものだったけど、戦えぬ人のため、誰も傷つかないように、その想いが彼女の身体を突き動かしていた。
「とりあえず傷を回復したら、集落の方にも行ってみるかね。雑魔は入ってないが、一応この辺に現れた事を伝えにゃならんだろ。その上で集落移動とか、安全な場所が必要になる」
素っ気ない言葉だが、ロクスの言葉には集落の住人を心配する色が伺える。
「もう少し待ってもらえませんか? さすがに、ちょっとヘトヘトで……」
自分の持つ『ロングソード』を杖代わりに地面に刺しながら、ユーリが呟く。
「大丈夫? まだ傷があるみたいだし『マテリアルヒーリング』を使っておくよ」
シドウがユーリにスキルを使用すると、腕の怪我が癒えていく。
「ありがとうございます」
「ライガ君にも使っておくよ、君が一番怪我をしているみたいだからね」
「あ、ありがとうございます……手間を掛けさせて、すみません」
覚醒を解いているせいか、ライガは何度も頭を下げながら優しい口調で言葉を返す。
「このまま雨に濡れ続けるのもなんだし、集落で休ませてもらおうか」
エイルが呟き、ハンター達は気怠い身体を動かしながら、集落へと向かい始めた。
●集落にて……
「……雑魔が、この付近に!? しかも10体なんて……!」
ハンター達の報告を受けて、集落の長らしき老人は酷く驚いた表情を見せた。
「おにいちゃん達、これ……本当に、食べてもいいの?」
ハンター達は持っていた食糧をすべて差し出し、皆で分けて食べるようにと言った。
「あぁ、腹減ってんだろ? たんと食え」
「雑魔退治までして頂き、食糧まで……何から何まですみません、最近は雨が酷くて食糧を取りに行けなかったものですから、おかげで子供達の飢えを凌ぐ事が出来ます」
「これからどうするんだ? 雑魔が現れた以上、ここには居続けられないだろう」
ロクスが問い掛けると、老人は「明日には、ここを発つ予定です」と答えてきた。
「明日には雨も上がりましょう、それを見計らって、私達はまた移動していくだけです。恐らくこれから先も似たような生活しか出来ないでしょうな」
「別な集落に受け入れてもらうとか、そう言う事は考えないんですか?」
老人の諦めたような表情に、ユーリが複雑そうに問い掛ける。
「見ての通り、ここは年寄りの多い集落です。足手まといになる事が分かっていて、受け入れて欲しいなど……言えるはずがありませんよ」
「ギルドの方で、移住先など斡旋してもらえないか聞いてみましょうか? 闇雲に移住していくよりは、ギルドが斡旋した場所の方が安全かと……」
白神の言葉に、老人はゆっくりと首を振る。
「お気遣いありがとうございます、ですがそこまでお世話になる事は出来ません。今までも上手くやってこれましたし、これからも何とかなるでしょう」
「あたいは難しい事なんて分かんないけど、それでいいなら、止められないよ」
この世界、自分の生き方を決めるのは自分自身でしかないのだから。
「僕が、大人だったら……おじいちゃん達や妹を守れるのかな……」
しょんぼりとした子供の頭を、ロクスは乱暴に撫でる。
「出来たらだの、かも、だのは要らねェ。これからは……お前がじいさんや妹を守るんだよ」
「……うん! 分かった、僕が……今度は、僕が守るよ……!」
「あの、世の中は都合よく助けが来るように出来ていないかもしれません。でも、伸ばしたこの手が届く範囲なら、駆けつけますよ、これからも」
佐倉が老人に伝えると、何度も「ありがとうございます」と繰り返し呟いてきた。
その後、猫実は子供達を集め、リアルブルーで歪虚を撃破していた話を子供達に聞かせ始める。子供が好むように活劇調で話した物語は、子供だけじゃなく老人達まで勇気づけられた事を、彼自身は知らなかった――……。
END
「やれやれ、この大雨ン中にパトロールか……」
ロクス・カーディナー(ka0162)は降りしきる雨の中、ため息混じりに呟く。
今回、ハンター達が請け負った仕事はパトロール。大雨の中で雑魔が現れると危険、という事から8名のハンター達にパトロール要請が出されていた。
「ここまで雨が降ると、さすがに嫌気がさしてきますね」
苦笑気味に呟いたのは、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)。大雨の中のパトロールという事で、雨合羽の支給はされていたが、視界が悪く、少々うんざりしていた。
「靴に滑り止めを施してますけど、気を弛めれば滑ってしまいそうです……」
佐倉 桜(ka0386)は足元を気にしながら、滑らないよう、泥濘に足を取られないよう、気をつけながら歩いており、その腰にはランタンが下げられていた。
「……はぁ、雨は嫌いなんですよ。ストレスの発散先が欲しいですね」
雨に濡れた眼鏡を拭い、拭った傍から再び濡れる――……そのやり取りに、少々苛立ちながら猫実 慧(ka0393)が低い声で呟く。
「パトロールとはいえ、初陣……しっかり気を引き締めなくてはいけませんね」
白神 霧華(ka0915)は、やや緊張した面持ちで呟くが、その表情は雨に紛れ、他のハンター達が白神の緊張に気づく事はなかった。
(こんな雨の日にパトロールなんて、気が滅入るね……まぁ、嫌いじゃないんだけどさ)
シドウ(ka1962)は小さなため息を吐きながら、心の中で呟く。彼は雑魔の襲撃で故郷を追われた身であり、パトロールそのものは嫌いではなかった。
「……視界も足場も悪い、最悪の環境……それに、僕はまだ弱い……」
雨音に紛れてしまいそうな小さな声で、ライガ・ミナト(ka2153)が呟く。
「……うーん、まだ止みそうにないな」
エイル・ヤールンサクサ(ka2168)は空気の匂いを嗅ぎながら、雨がまだ止まない事を告げる。
「せめて雨が止んでくれれば、パトロールもやりやすくなるんだけどね……まぁ、あたいのやれることをやる、今回はそれだけだね」
「この先には小さな集落があるはずです、その辺まで回ったら帰還してもいいでしょうね」
猫実が呟いた時、雨音に混じって獣の鳴くような声が聞こえてきた。
「……おいおい、今のァ何だ? この辺の雑魔情報はなかったはずだが……」
ロクスが呟き、ハンター達は声の聞こえた方を見ると……大勢の雑魔が移動している姿を発見する。
「集落が近いと言いましたよね? ……まさか、あの方向に集落があるのでは?」
ユーリは嫌な予感がして、猫実に問い掛けると……「えぇ、その通りです」と無情な言葉が返ってくる。
「こうしてる場合じゃない、パトロールから雑魔殲滅に切り替えよう」
「そうですね、あのまま雑魔を見逃せば、集落に惨劇が起こる事は目に見えています」
シドウの呟きに、白神が答え、ハンター達はそれぞれ所有している武器を手に取る。
「俺とシドウ、霧華の3名は集落襲撃に備えましょう、その他の皆さんはなるべく集落に近づけないよう、雑魔と戦って下さい」
猫実はてきぱきと指示を出し、ハンター達もそれに頷き、行動を開始する。
「ユーリ、集落班の雑魔が5匹を超えるようでしたら『ハンディLEDライト』で円を描きますから、すぐにこちら側に来て下さい」
「分かりました……さて、飢えたケダモノにはご退場して頂きましょうか」
ユーリは『ロングソード』を構え、集落班と離れて行動を開始した。
●雑魔との交戦、雨の中、10体の雑魔と……
※維持班
「何だ、こりゃ……」
猫実達と別れ、ロクスが苦笑気味に呟く。
それもそのはずだ、目の前にいるのは犬、狼、熊……様々な動物の形をした雑魔だから。
「動物園にでも来たような錯覚を覚えてしまいますね、あまり楽しくなさそうですけど……」
佐倉は『ロッド』を構えて『ホーリーライト』を使用して、狼型雑魔に攻撃を仕掛ける。
「……弱いなんて言ってる場合じゃない」
ライガは喝を入れるように、自分の頬を強く叩く。
「強いか弱いか、玄人か素人かなんて関係ねえ! 助けられる奴が動かなくてどうすんだ!」
覚醒を行い、ライガは口調を荒げながら、佐倉が攻撃を仕掛けた狼に向かって『日本刀』を振り下ろした。
「ウオオオオオオンッ!」
同じく覚醒を行ったエイルが狼の遠吠えを真似ながら叫ぶ。雨の中でもしっかりと聞こえる咆哮に、集落班に向かいかけていた2匹がその場に留まった。
「5人で6匹か、この悪天候じゃなけりゃ余裕と言いたい所だがな……」
「それでも、何とかするしかありませんね。ここで食い止めなければ、集落に住む人々が犠牲になってしまいますから……!」
ロクスの言葉に応えた後、ユーリは『踏込』と『強打』を使用する。
その後、間を開ける事もせず、ロクスは『強打』で攻撃を仕掛け、まず1匹目の狼型雑魔を退治した。
「単体だと大した力はねぇ、叩くなら一点集中したい所だが……」
「それを相手が許してくれるかって事だな、はっ、美味そうな獲物がいると腹が減るな」
ロクスの呟きに、ライガが舌なめずりをしながら熊型雑魔を見る。
(ポン刀ってのは、攻撃用の武器じゃねぇ……攻めるんじゃねぇ、使われてた時代を考えれば防御用の武器だし、タイミング的に難しいんだよな……)
ライガは『日本刀』を構えながら、ぐるぐると色々な事を巡らせる。
「わたしの、ランタンで気を引きますから……その隙に攻撃を、お願いします!」
佐倉はハンター達に告げた後、ランタンを大きく振り回し、雑魔の気を引く。雑魔と言えど獣の習性と同じなのか、灯りがあればそちらに向かって行くようだ。
「そっちには、いかせないよ!」
エイルは『闘心昂揚』を使用して、構えた『ハンドアックス』で犬型雑魔を攻撃する。
「カーディナーさん、ユーリさん、エイルさん、ミナトさん……! 狼の足を止めますから、よろしくお願いします!」
佐倉は大きな声で叫んだ後、狼型雑魔に『ホーリーライト』を使用する。
彼女の攻撃を受け、狼型雑魔の足が止まった所を、それぞれが攻撃を仕掛け、1匹ずつ確実に仕留めていく。
「……ユーリ!」
その時、猫実の大きな声が聞こえる。
猫実は『ハンディLEDライト』で円を描き、合図を送って来ていた。
(まさか、5体以上の雑魔が向こうに……!?)
「ここは俺達だけで問題ない、幸いにもデカいのは1匹だけだから」
ライガは『日本刀』を構え、ユーリに背中を向けながら淡々と言葉だけを投げかける。
「そうだね、こっちは残り3匹だし、この調子なら大した怪我なくいけるはずだよ」
「ユーリさんは、向こう側の救援を……! わたし達も、こちらが終わり次第駆けつけます」
「……てェこった、俺らの事は気にせず、向こうに行け」
エイル、佐倉、ロクスはびしょ濡れになりながらも力強い言葉で応え、ユーリは小さく頷いて、集落班の方に駆けだした。
退治:狼2 犬1
登場:狼3 犬4 熊3
残り:狼1 犬3 熊2
※集落班
「ケダモノ風情が、頭が高ぇ!!」
猫実は『機導剣』で狼型雑魔の足を攻撃しながら、雨にも負けない声で叫んでいた。
維持班側が受け持ってくれた雑魔は6匹、集落班が受け持つのは4匹。
数としては悪くない数字だった――……大型が2匹、集落班側に来なければ。
「さすがに多少の攻撃じゃ、よろめく事さえもしてくれないね」
シドウは『ホーリーライト』を熊型雑魔に仕掛けながら、苦笑気味に呟く。
「犬型を1匹倒しはしましたが、熊型が邪魔をして狼型に致命傷を与えられませんね」
熊型雑魔の攻撃を『ロングソード』で受けながら、白神が眉根を寄せて呟く。やはり他の雑魔と違って身体が大きいせいか力も強く、攻撃を受け止めた白神の足が泥濘に埋まっていくのが分かる。
「キリカ、避けて下さい!」
猫実が大きな声で叫び、白神は受け止める事を止め、直ぐにその場から離れる。
それと同時に『機導砲』が放たれ、熊型雑魔の頭に命中する。
「……ようやくデカいの1匹か――ッ!?」
ほっ、と息を吐いたのも束の間、真後ろに迫った熊型雑魔の爪が猫実に振り下ろされる。
(チィッ! 油断した……っ!)
衝撃に備え、覚悟を決めた時、熊型雑魔がグラリとよろめく。
「すみません! 遅くなりました!」
猫実のピンチを救ったのは、先ほど救援として呼んでいたユーリだった。
「向こう側はロクス達に任せていれば問題なさそうです、こちらを一気に片付けましょう」
「分かった、私と猫実君で足を止めるから……その間に、白神君とユーリ君が叩く……という感じで大丈夫かな?」
「そうですね、それで問題はないでしょう……行きますよ、シドウ!」
猫実が『機導砲』、シドウが『ホーリーライト』を犬型雑魔に仕掛け、白神とユーリが『強打』で仕留める。
「狙い通りに行けば、こんなに早く片付く相手なんですけどね……さっきから、アイツが邪魔をしてくれてたのですよ」
「私達みたいに連携を取るってほどじゃないけど、それでも各々好き勝手に動かれると、こっちとしても動きづらかったんだよね」
「残り1匹、どんな手段を用いても集落の方には行かせません」
猫実、シドウ、白神は残り1匹になった熊型雑魔を見つめながら、各々の想いを吐露する。
「向こう側も片付いたみたい、正真正銘……目の前のこいつが最後の敵、ですね」
通常とは違う状態での戦闘は、ハンター達を大きく疲弊させており、限界が近いハンターも存在する。
残る力を振り絞り、それぞれのスキルを駆使して、最後の雑魔を退治したのだった……。
●死闘、終えて……
「雨合羽着ててもびしょ濡れ、泥だらけ……洗濯が大変そう」
戦闘が終了した後、白神は自分の格好を見ながら深いため息を吐いた。雑魔の爪や牙で雨合羽は所々破れており、服は勿論、足や腕、露出している肌にも泥がべったりだった。
「けど、良かったです……力なき人達が、悲しむ事がなくて……」
泥に塗れた顔で、佐倉はホッと安堵のため息を吐く。
今回、彼女はディスプレイを通さず、自分の目で悪意の塊――……雑魔を見た。
その時の恐怖は測り知れないものだったけど、戦えぬ人のため、誰も傷つかないように、その想いが彼女の身体を突き動かしていた。
「とりあえず傷を回復したら、集落の方にも行ってみるかね。雑魔は入ってないが、一応この辺に現れた事を伝えにゃならんだろ。その上で集落移動とか、安全な場所が必要になる」
素っ気ない言葉だが、ロクスの言葉には集落の住人を心配する色が伺える。
「もう少し待ってもらえませんか? さすがに、ちょっとヘトヘトで……」
自分の持つ『ロングソード』を杖代わりに地面に刺しながら、ユーリが呟く。
「大丈夫? まだ傷があるみたいだし『マテリアルヒーリング』を使っておくよ」
シドウがユーリにスキルを使用すると、腕の怪我が癒えていく。
「ありがとうございます」
「ライガ君にも使っておくよ、君が一番怪我をしているみたいだからね」
「あ、ありがとうございます……手間を掛けさせて、すみません」
覚醒を解いているせいか、ライガは何度も頭を下げながら優しい口調で言葉を返す。
「このまま雨に濡れ続けるのもなんだし、集落で休ませてもらおうか」
エイルが呟き、ハンター達は気怠い身体を動かしながら、集落へと向かい始めた。
●集落にて……
「……雑魔が、この付近に!? しかも10体なんて……!」
ハンター達の報告を受けて、集落の長らしき老人は酷く驚いた表情を見せた。
「おにいちゃん達、これ……本当に、食べてもいいの?」
ハンター達は持っていた食糧をすべて差し出し、皆で分けて食べるようにと言った。
「あぁ、腹減ってんだろ? たんと食え」
「雑魔退治までして頂き、食糧まで……何から何まですみません、最近は雨が酷くて食糧を取りに行けなかったものですから、おかげで子供達の飢えを凌ぐ事が出来ます」
「これからどうするんだ? 雑魔が現れた以上、ここには居続けられないだろう」
ロクスが問い掛けると、老人は「明日には、ここを発つ予定です」と答えてきた。
「明日には雨も上がりましょう、それを見計らって、私達はまた移動していくだけです。恐らくこれから先も似たような生活しか出来ないでしょうな」
「別な集落に受け入れてもらうとか、そう言う事は考えないんですか?」
老人の諦めたような表情に、ユーリが複雑そうに問い掛ける。
「見ての通り、ここは年寄りの多い集落です。足手まといになる事が分かっていて、受け入れて欲しいなど……言えるはずがありませんよ」
「ギルドの方で、移住先など斡旋してもらえないか聞いてみましょうか? 闇雲に移住していくよりは、ギルドが斡旋した場所の方が安全かと……」
白神の言葉に、老人はゆっくりと首を振る。
「お気遣いありがとうございます、ですがそこまでお世話になる事は出来ません。今までも上手くやってこれましたし、これからも何とかなるでしょう」
「あたいは難しい事なんて分かんないけど、それでいいなら、止められないよ」
この世界、自分の生き方を決めるのは自分自身でしかないのだから。
「僕が、大人だったら……おじいちゃん達や妹を守れるのかな……」
しょんぼりとした子供の頭を、ロクスは乱暴に撫でる。
「出来たらだの、かも、だのは要らねェ。これからは……お前がじいさんや妹を守るんだよ」
「……うん! 分かった、僕が……今度は、僕が守るよ……!」
「あの、世の中は都合よく助けが来るように出来ていないかもしれません。でも、伸ばしたこの手が届く範囲なら、駆けつけますよ、これからも」
佐倉が老人に伝えると、何度も「ありがとうございます」と繰り返し呟いてきた。
その後、猫実は子供達を集め、リアルブルーで歪虚を撃破していた話を子供達に聞かせ始める。子供が好むように活劇調で話した物語は、子供だけじゃなく老人達まで勇気づけられた事を、彼自身は知らなかった――……。
END
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依頼相談スレッド ロクス・カーディナー(ka0162) 人間(クリムゾンウェスト)|28才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/06/22 20:34:15 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/18 09:11:34 |