『第一回！　ハンターズソサエティ主催武闘大会【戦祭】！　これにて全行程が終了????ッ！！』 　マイクごしの竹村　早苗（kz0014）の叫び声に会場に数多の雄叫びが響き渡る。 　全ての試合を終えた今でも、会場の熱気が覚める事はない。その想いはきっとこれからも多くの人々の胸を焦がし続けるだろう。 『皆の者、痛みに耐えてよく頑張った！　わらわ正直戦いの事はよくわかっておらぬが、皆の一生懸命な姿には胸を打たれたぞ！』 『割と金目当ての企画ってところも含めてな』 　神妙な面持ちで腕を組むスメラギ（kz0158）の横槍に、ナディア・ドラゴネッティは大きく咳払いする。 『と、ともかくじゃ！　わらわ達がゴチャゴチャ言うより、まずは主役にご登場いただくとしよう！』 『はいはい！　皆さ??ん、お待たせしました！　各リーグ優勝者の入場でーす！！』 　リゼリオ内特設ステージには、何度も割れんばかりの歓声が響き渡った。 　そのどれと比べても最高の、惜しみない拍手と共に三人のハンターが姿を見せる。 『ルーキーリーグ優勝者、アルフレート・ウォーーーーダーーーン！！』 『いや?、こやつはルーキーなの？　っていう感じじゃったな?』 『一合で敵をねじ伏せる圧倒的な力強さは、闘狩人の一つの理想形を見せてくれたな』 『イケメンじゃしな！』 『勿論、幸運にも恵まれたが総合的に見ても戦闘力は随一。特に長期戦になりやすいルーキーリーグでは、頭一つ抜き出た破壊力だったと思うぜ』 　台座に上がったアルフレート・ウォーダン（ka6161）は剣を抜き、それを高々と掲げる。 　それに応じるように、観客らは大きな声援を送った。 『ファンも増えたんじゃないかの？』 『続きましてミドルリーグ優勝者！　フィルメリア・クリスティアーーーー！！』 『今回唯一の女性優勝者だな。実は俺様勝利の瞬間は現場にいなかったんだが、見事な戦いだったと聞いているぜ』 『卓越した機導術を駆使し、魔法剣士として幅広い戦いを見せてくれましたね！』 『一つ一つの技を丁寧に磨いてこそ、機導師は万能のペースメイカー足りえるって事だな』 『おっぱいでっかしいの！』 　手を振りながらステージに上がったフィルメリア・クリスティア（ka3380）は、歓声を全身で感じるように目を閉じる。 　深く息を吐き出すと、見渡す限りどこまでも観客たちが彼女に拍手を送っていた。 『そして??マスターリーグ優勝者！　万！　歳！　丸ーーーー！！』 　ド派手に前転とロンダートを組み合わせた動作でステージに転がり込んだ万歳丸（ka5665）は、両腕を力いっぱい掲げシャウトする。 　それに応じるように会場は湧きあがるのを確認すると、満足したように白い歯を見せながらステージの上でふんぞり返った。 『いや????まさかの格闘士、しかも鬼が優勝するっていうの』 『俺様も驚きだぜ。まったくどんな鍛え方してるのか不思議だ……』 「ちゃんと毎日メシ食って寝て身体動かしてるだけだぜェェェエ！！」 『わかった、わかったから』 『なんなのもう??』 『ある意味最も武闘大会らしいハンターでしたね?！』 『ムッキムキじゃしの』 『つっても、ああ見えて卓越した技巧の持ち主でもある。単なる力技で突破してきたわけじゃねぇことは、対戦者が証明しているだろうぜ』 　こうして三名の優勝者が全員揃うと、ソサエティを代表してナディアが近づいていく。 「あーあー。それではこれより、優勝賞品の授与を行うのじゃ！　一応首からかける称号みたいなのあるんじゃが……お前ら全員デカいんじゃあああああ！！」 「ああ……そう言われてみるとそうね」 「ふむ。総長が平均より小さいのもあると思いますが」 「ちゃんとメシ食ってんのかァアアア！？」 「うるせーーーーッ！！　お前！　万歳丸！　お前のデカさ！！　もうっ！！！！」 　それぞれ屈んで（万歳丸はほぼ四つん這いになって）首に称号が描かれたメダルを授与された。 「ちなみに優勝賞品は後日送付されます」

スメラギ 竹村　早苗 ナディア・ドラゴネッティ アルフレート・ウォーダン フィルメリア・クリスティア 万歳丸

「要するに準備できてないんですね」
「ま……まあまあ。色々忙しい時期だったし……」
「なんだァ！？　食いモンかァ！？」
「うるせーーーーッ！！　もう！　後日送付！！」
『ちなみに優勝賞品の中には、スキルの作成権が含まれている』
　見かねたスメラギがマイクを手に、遠巻きに声をかける。
『まずは優勝おめでとうと言わせてくれ。今回の武闘大会で優勝者含め、お前たちハンターは様々なものを示してくれた』
　龍奏作戦を最後に、長く続いた北伐戦は幕を閉じた。
　北を目指す戦いの最中で人々は多くを失い、そして多くと出会ってきた。
『今回の大会は、ハンターズソサエティはもちろん、王国、帝国、同盟、辺境だけではなく、東方や地球、そして北方の連中も協力をしてくれている。この戦いの中でお前たちが見せてくれたもの、そしてこの大会を成立させようという流れそのものが、国同士の距離を一段と近づけてくれたように思う』
　特に、龍奏作戦直後の北方も技術提供などでずいぶんと手を貸してくれたし、おかげで相応に馴染むことができた。
『覚醒者の力は、常に正義にだけ振るわれるわけじゃない。中にはその力を悪意を以て振るう者もいるだろう。世界秩序は今、ハンターに依存している。だからこそ、この世界の根本には、ハンターを見定めようという動きがある』
　かつて各国の軍がハンターを快く思っていなかった時期があったように。
　その力が正しき刃であるかどうかを、人々は常に監視しているのだ。
『俺達はそれを戦いの中で証明してきた。だが、それが世界のすべての人に伝わっていたわけじゃない。もちろん、今回の大会でもそうだろう。だが、お前たちの戦いぶりが、“覚醒者”を見る目をまた少し変えたのも事実だと俺は思う』
　種族も、国家も、あらゆる立場を超えて一つの大会を実施し、最後までこれを終えられた事。
　それはきっと、この世界にとって偉大な出来事の一つに数えられるはずだ。
『お前たちは己の正しさを、美しさを多くの人々に証明した。すべての戦いが余すことなく、人々の心へ訴えるものであったと俺が保証する』
　スメラギは立ち上がり、優勝者に呼びかける。
『お前たち三人は、ハンターの規範となるにふさわしい。よって、ソサエティはお前たちの能力、嗜好をベースとし、新たなスキル開発に挑む用意がある。これは実はお前たちにとっての褒美というよりは、ソサエティの願いだ。どうかこれからもソサエティを……世界秩序を正しく導く戦士であってほしい。諸君らの過去と未来に、惜しみない称賛を送る！』
『以上、スメラギ様からのお言葉でした?。それではみなさん、三人の優勝者に今一度惜しみない拍手を！！』
　こうして多くのドラマを生んだ武闘大会イベント【闘祭】は幕を閉じた。
「そして好評ならば第二第三の【闘祭】が行われることであろう……！」
「さすがにずーっとやってるわけにゃいかんけどな」
「お祭りがあったらまた呼んでよね！！」
「「わかった、わかった」」