ゲスト
(ka0000)
【幻痛】




天使達よ、あなた達は十分に役目を果たしました。
天使達の助けを得て、騎士は偽りの頂点に立つ殉教者を討ち果たしました。
彼の者が持っていた力はすべて騎士が引き継ぎました。
これで……終末の到来は、確実となりました。
私達は待つだけです。終末と共に楽園『フロンティア』へと誘われるその日まで。
神の御遣い:ブラッドリー(kz0252)
更新情報(10月10日更新)
▼【幻痛】グランドシナリオ「幕開?ベアーレヤクト決戦?」(9/20?10/10)▼
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【幻痛】ストーリーノベル「Die Tat wirkt machtiger als das Wort」(10月10日公開)

ヴィルヘルミナ・ウランゲル

キュジィ・アビトゥーア

ビックマー・
ザ・ヘカトンケイル
その顔には感情が一切感じられない。
怒っている?
そう考えた執事のキュジィ・アビトゥーア(kz0078)はフォローするつもりで話し掛けた。
「あ、あのですね。ハンターの皆さんも、精一杯尽力されてですね。それはもう……」
「……何を言っている? ハンターが力を尽くしたのは分かっている。怠惰王をあれだけ追い詰めたのだ。国家樹立も夢ではあるまい。今後は隣人として良き関係を保たねばな」
ヴィルヘルミナはキュジィに向き直った。
長い戦いではあったが、怠惰王ビックマーに何度も戦いを挑み、最終的にビックマー撃破に至ったのだ。これは誰にでもできるものではない。
ヴィルヘルミナは部族会議を力不足とは考えていないようだ。
「あ、そう言っていただけるとみんな喜ぶと思います。はい」
いつのように笑顔を見せるキュジィ。
だが、相変わらず目だけは死んだ魚のようである。
そんな笑顔をヴィルヘルミナは一瞥する。
「しかし、苦難は本番であろうな。国家建設ではないぞ。あの歪虚……青木燕太郎といったか。あれはクリムゾンウェストに災いをもたらす。倒せねばならん相手だ」
「……え。あ、はい」
キュジィは反射的に返答した。
ヴィルヘルミナは手放しで功績を讃えた訳ではない。
ビックマーの力までも吸収した青木を危惧していたのだ。
力を得れば、それだけ使いたくなる。
青木は更なる強敵となって連合軍の前に現れる事になるだろう。
「……そういえば、ヴェルナーはどうした?」
ヴィルヘルミナは、要塞『ノアーラ・クンタウ』の管理者であるヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)の姿が見えない事に気付いた。
作戦指揮を現地で執っていたのだから、ヴィルヘルミナへ報告に赴いてもおかしくはない。だが、記憶では戦いの後もヴィルヘルミナの前にヴェルナーは現れていない。
「あ、あのですね。やらなければならない事あるから、と何処かへ行かれました」
「逃げたか? いや、そんな奴じゃない。何を考えているのだ?」
首を傾げてもヴィルヘルミナの頭に答えは浮かばない。
実はヴェルナーが予想外の行動に出ていたと、後で知る事になる。
●

ヴェルナー・ブロスフェルト

ブラッドリー
ヴェルナーの前に現れたのは、神の御遣いを名乗るブラッドリー(kz0252)であった。
ヴェルナーは今回の戦いの裏で暗躍していた歪虚にどうしても会いたくなったのだ。その為、ブラッドリーが青木がやってきた森を通り抜けると考えて待ち伏せしていたのだ。
「天使の一人。何故私がここを通ると?」
「敵の目を逃れるのであれば、一度捜索した場所が最適と考えたものですから。ふふ、予想が的中して良かったです」
そう言いながらヴェルナーは馬上から降りようとしない。
傍らには数名のハンター。ブラッドリーが襲撃しようとした場合に備えての事だろう。
「その程度で私の行く手を遮るのですか?」
「残念ですが、そうではありません。お会いしたかったのです。終末を語る神の遣いに」
ヴェルナーは淡々と語った。
だが、その言葉には明確な怒気がある。
興味本位もあるだろうが、敵対する相手の顔を見ておきたかった。
それが、本心なのだろう。
「どう足掻いても無駄です。終末は必ず訪れる。偽りの王は倒され、真なる王は覚醒しました」
「真なる王……怠惰王オーロラ、と言った所でしょうか」
ヴェルナーが口にしたオーロラという名前。
報告書にも記載されたビックマーの傍らにいた少女だ。状況から推測すれば当時怠惰王であったビックマーはオーロラの王の座を移譲。ビックマーはオーロラを守る存在として力を振るっていたと考えられる。
「そう。終末は真なる王が呼び寄せる。かつて滅んだ古代文明も真なる王の前に倒された」
「そして、フロンティアなる楽園が終末にある、でしたね?」
ヴェルナーはブラッドリーの言葉に続けた。
今までブラッドリーの言動から推察した回答だが、間違ってはいないようだ。
「楽園……フロンティアには苦しみも憎しみもない。安らぎがあるだけ。
皆、そこへ向かう運命なのです」
「運命、ですか。残念ですが、それには従えませんね」
「…………」
「ここにいるハンター達も含め、様々な窮地を自らの手で切り拓いてきました。見えない運命に従った覚えはないと思いますよ?」
それはヴェルナーにとってブラッドリーへの挑戦状であった。
ハンターと共にブラッドリーの終末を打ち砕く。
ブラッドリーのいう楽園行きは断固拒否する、と。
「無駄な足掻きです。すべて徒労に終わるでしょう。終末の前では、すべてが無力です」
「どうでしょうか。神の手に負える程、私達は大人しくありませんよ?」
「……Die Tat wirkt machtiger als das Wort.」
そう言い残したブラッドリーは、光球でフラッシュを引き起こす。
気付けば既にブラッドリーの姿はなかった。
ブラッドリーの居た場所を見据えながら、ヴェルナーは静かに口を開く。
「言うは易し、行うは難し。やってみろという事ですか。では、こちらも本腰を入れて準備させていただきますか」
●

オーロラ

青木 燕太郎
オーロラは、悲しみに暮れていた。
常に一緒に居てくれたビックマーは、ハンター達の手で倒された。
もう――優しいビックマーは、もういない。
「ビックマーは最期まで勇敢に戦った。ハンターの術計に落ちたが……良い戦いぶりだったぞ」
オーロラに報告する青木燕太郎(kz0166)。
しかし、この報告には虚偽がある。ハンターの作戦にハマったのは事実だが、最後にビックマーを倒したのは青木だ。
その地位と力を手に入れる為、ハンターを利用した。
その事実を、オーロラは知らない。
「……案ずることはない。ビックマーの遺志は俺が継ごう」
「…………」
青木の言葉にオーロラは応えない。
――それでもいい。
自分だって、忘れていたことだ。
きっと彼女とて同じこと。
今まで策を弄して時に逃げ、力を付けてきたのは今日の為だ。
ハイルタイ、獄炎……そしてビックマー。
弱い敵まで入れれば、数え切れない。
そうしてまで、強くなった。
――■■は悲しむだろうか。
だが、これは……あの神の御遣いを名乗る男の言葉を借りるなら、『運命』だったのだろう。
ここまで来て、もう止まることは出来ない。
そうだ。俺は―――彼女との、あの日の約束を守る為に。
「何も心配はいらない。何も、だ」
声をかける青木。
だが、その言葉はオーロラには届かない。
その瞳は見開き、憤怒の炎が燃え上がる。
「ハンター……許さない……」
(執筆:近藤豊)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)