ゲスト
(ka0000)
幸せな悪夢に囚われて
マスター:一要・香織

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/04/22 19:00
- リプレイ完成予定
- 2018/05/01 19:00
オープニング
広い庭の隅に佇む大きな木の陰に、二つの影があった。
暖かな日差し、甘い花の香りを纏った優しい風。
耳を擽る、大好きな父親の低い声。
広げた絵本を捲るのはゴツゴツと骨ばった大きな手。
父親のアイザックの膝の上に乗り、小さな少女は物語の先を急かした。
「どんな逆境にも笑顔を忘れず、一生懸命に夢を追いかけた女の子は、迎えに来てくれた王子様と末永く暮らしましたとさ……めでたしめでたし」
そう言って絵本を閉じると、少女は後ろを振り返り目を輝かせた。
「その子は幸せになったの?」
大きな目を見開き見上げてくるその存在を愛おしそうに見つめ、アイザックは口を開いた。
「そうだよ、幸せになったんだ」
そう伝えると、膝の上の少女は嬉しそうに絵本を抱きしめた。
「そうなんだ! 良かったね!」
笑顔を見せる少女を抱きしめ、アイザックは呟く。
「そう、だからレイナもいつも笑顔を忘れちゃいけないよ」
「うん!」
元気よく答えた少女の姿は陽炎の様に揺れ――――――消えた。
次にぼんやりと浮かび始めたのは可愛らしい部屋の中に佇む一人の若い女。
その女レイナは、視察に出掛けた父親のアイザックの帰りを待っていた。
窓辺へと歩み寄ったレイナの瞳に屋敷の門に近付く馬車の姿が映ると、嬉しさが一気に込み上げた。
「帰っていらしたんだわ」
レイナは部屋を後にしエントランスへと駆け出す。
いつもより早く帰ってきたことを疑問に思うこともなく、その足は軽やかだった。
しかしエントランスの正面に続く階段を下りると、何やら外が騒がしい。
皆、視察が早く終わった事に驚いているのだろうか?
レイナはそう思い、足を止めることなくエントランスの扉を開けた。
「お父様! お帰りなさい」
外に飛び出すと同時にそう叫んだレイナの顔が、一瞬にして強張る――――。
レイナの目に飛び込んできたのは、怪我をした私兵達。
その中には幼い頃から兄妹の様に育った、サイファーの姿も……。
腕に巻いた白い布は赤黒く染まり、顔にも大きな切り傷があった。
馬から降りると崩れるようにその場に倒れ込む。
そして――――、他の兵士によって馬車から降ろされたのは、青白い顔のアイザックだった……。
「お父、さま……」
目を見開き、呆然と見つめる。
地面に横たえられたアイザックの片腕は無く、体中の大きな斬り傷からは大量の血液が流れた跡があった……。
レイナの心臓がドクリ……と大きく鳴る……。
肌が粟立ち、恐怖が一気に襲い掛かった。
「お父様!」
そう言って駆け寄ったアイザックの身体は不快なほどに冷たい。
ピクリとも動かないその身体を激しく揺する。
「お父様、お父様!」
恐怖で身体はカタカタと震え、声は裏返る……。
「レイナ様、申し訳……ありません」
しゃがみ込むレイナの横に膝を着いたサイファーが、額を地面に擦りつけた。
「お守りできず申し訳ありません」
サイファーの震える声が……アイザックの死を確かなものにした。
「っ、いやあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!」
心臓が、心が爆発しそうな程の苦しみに襲われ、レイナは悲鳴を上げた―――――。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!」
ガバッ!!
「っ!!」
レイナ・エルト・グランツ(kz0253)は暗い部屋の中で飛び起きた。
そこは自分の部屋の暖かなベットの上だった。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
ドキドキと鳴る心臓は全力疾走を繰り返した後の様に苦しく、息も荒い。
額からは汗が流れ、背筋を伝う冷たい感覚が身体を震わせる。
それは先日の出来事。父親で前領主のアイザックが雑魔に襲われ、命を落とし戻ってきた時の光景だった。
「夢……だったの……?」
幼少の頃の父親との幸せな時間、そしてその幸せから突き落とすような父親を失った絶望の時―――忘れられないその瞬間が悪夢となりレイナを襲った……。
ギュッと握った手は自分の物とは思えないほどに冷たく、レイナは震える息を吐きだした。
「お父様……」
そう呟くと、視界は滲み、ポツリ、ポツリと涙が頬を伝い落ちて行く。
それからと言うもの、レイナはどこか上の空であった。
悪夢にうなされ、よく眠れない日が続いていたのだ。
ぼんやりとしたまま、レイナは書庫の整理を始めた。
書庫にはたくさんの棚が並び、その棚の奥に鍵のついた扉が一つ隠れるように存在している。
「書庫にある鍵の付いた部屋は、危険書の保管庫になっております」
数日前、執事のジルがそう教えてくれた。
危険書……それはグランツ領で見つかった本物かどうか疑わしい魔導書や呪いの本。王国に提出するまでではないが、領民の手元に置いておくのもどうか……、という本を回収し保管しているのだ。
それらの本に異常がないか時々見回るのも領主の仕事の一つ。
鍵を開け中に入ると、ムワッとかび臭い匂いが鼻を突く……。
顔を顰め、左右の棚に並ぶ本を見ながら一歩、一歩と進んでいくと――――、突然、グラリと視界が歪んだ。
寝不足のせいか……急激な眩暈にレイナの足はもつれ肩が棚に激突すると、ドサドサッと数冊の本が棚から落下した。
棚に肩を付いたまま眩暈が治まるのを待ち、小さく息を吐いたレイナは、床に落ちた本を拾い棚に戻していく。
しかし、最後の一冊を拾おうとした時、持ち上げようとした弾みで本が開いてしまった。
「あっ!」
そう思った瞬間、本の中から何かが飛び出しレイナに襲い掛かった。
何か……それは目に見えない何か。空気が歪んだ陽炎の様な、居るとするなら幽霊の様な……。
その一瞬の視界の歪みが、何かが居ると思わせた……。
「なに……?」
そう思う間もなく、視界は霞み始め頭の奥がジンと痺れる……。
強烈な眠気が押し寄せ、レイナはふら付く足を叱責し何とか部屋に戻った。
ベットに倒れ込むと、深く意識が沈んでいくのがぼんやりと理解できた。
そして、意識が底に着いた時、目の前にあったのは大好きな父親の姿。
いつの間にか自分は小さな少女になっていて、手招く父に駆け寄ると膝の上に座り、絵本を開く―――。
幸せな―――幸せな夢を見始めたのだ。
「レイナ様が目を覚まされないんです」
数刻後、屋敷の者は慌てふためいていた。
「医者を呼べ!」
呼ばれた医者にも原因は分からず、レイナは目を覚ますことなく数日が過ぎた。
「ふふっ……お父様……」
レイナは微笑み寝言でそう呟く。
幸せな夢でも見ているのだろうか……。
だが、レイナは徐々に衰弱し始めたのだ。
●ハンターオフィス
「どうか、レイナ様を助けて下さい。このままではレイナ様は衰弱して死んでしまう……」
己の力不足に怒りを覚え、震える拳を握りながらサイファーは頭を下げた。
「わかりました。至急依頼を出しておきます」
受付の女性は真摯な顔で力強く頷いた。
暖かな日差し、甘い花の香りを纏った優しい風。
耳を擽る、大好きな父親の低い声。
広げた絵本を捲るのはゴツゴツと骨ばった大きな手。
父親のアイザックの膝の上に乗り、小さな少女は物語の先を急かした。
「どんな逆境にも笑顔を忘れず、一生懸命に夢を追いかけた女の子は、迎えに来てくれた王子様と末永く暮らしましたとさ……めでたしめでたし」
そう言って絵本を閉じると、少女は後ろを振り返り目を輝かせた。
「その子は幸せになったの?」
大きな目を見開き見上げてくるその存在を愛おしそうに見つめ、アイザックは口を開いた。
「そうだよ、幸せになったんだ」
そう伝えると、膝の上の少女は嬉しそうに絵本を抱きしめた。
「そうなんだ! 良かったね!」
笑顔を見せる少女を抱きしめ、アイザックは呟く。
「そう、だからレイナもいつも笑顔を忘れちゃいけないよ」
「うん!」
元気よく答えた少女の姿は陽炎の様に揺れ――――――消えた。
次にぼんやりと浮かび始めたのは可愛らしい部屋の中に佇む一人の若い女。
その女レイナは、視察に出掛けた父親のアイザックの帰りを待っていた。
窓辺へと歩み寄ったレイナの瞳に屋敷の門に近付く馬車の姿が映ると、嬉しさが一気に込み上げた。
「帰っていらしたんだわ」
レイナは部屋を後にしエントランスへと駆け出す。
いつもより早く帰ってきたことを疑問に思うこともなく、その足は軽やかだった。
しかしエントランスの正面に続く階段を下りると、何やら外が騒がしい。
皆、視察が早く終わった事に驚いているのだろうか?
レイナはそう思い、足を止めることなくエントランスの扉を開けた。
「お父様! お帰りなさい」
外に飛び出すと同時にそう叫んだレイナの顔が、一瞬にして強張る――――。
レイナの目に飛び込んできたのは、怪我をした私兵達。
その中には幼い頃から兄妹の様に育った、サイファーの姿も……。
腕に巻いた白い布は赤黒く染まり、顔にも大きな切り傷があった。
馬から降りると崩れるようにその場に倒れ込む。
そして――――、他の兵士によって馬車から降ろされたのは、青白い顔のアイザックだった……。
「お父、さま……」
目を見開き、呆然と見つめる。
地面に横たえられたアイザックの片腕は無く、体中の大きな斬り傷からは大量の血液が流れた跡があった……。
レイナの心臓がドクリ……と大きく鳴る……。
肌が粟立ち、恐怖が一気に襲い掛かった。
「お父様!」
そう言って駆け寄ったアイザックの身体は不快なほどに冷たい。
ピクリとも動かないその身体を激しく揺する。
「お父様、お父様!」
恐怖で身体はカタカタと震え、声は裏返る……。
「レイナ様、申し訳……ありません」
しゃがみ込むレイナの横に膝を着いたサイファーが、額を地面に擦りつけた。
「お守りできず申し訳ありません」
サイファーの震える声が……アイザックの死を確かなものにした。
「っ、いやあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!」
心臓が、心が爆発しそうな程の苦しみに襲われ、レイナは悲鳴を上げた―――――。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!」
ガバッ!!
「っ!!」
レイナ・エルト・グランツ(kz0253)は暗い部屋の中で飛び起きた。
そこは自分の部屋の暖かなベットの上だった。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
ドキドキと鳴る心臓は全力疾走を繰り返した後の様に苦しく、息も荒い。
額からは汗が流れ、背筋を伝う冷たい感覚が身体を震わせる。
それは先日の出来事。父親で前領主のアイザックが雑魔に襲われ、命を落とし戻ってきた時の光景だった。
「夢……だったの……?」
幼少の頃の父親との幸せな時間、そしてその幸せから突き落とすような父親を失った絶望の時―――忘れられないその瞬間が悪夢となりレイナを襲った……。
ギュッと握った手は自分の物とは思えないほどに冷たく、レイナは震える息を吐きだした。
「お父様……」
そう呟くと、視界は滲み、ポツリ、ポツリと涙が頬を伝い落ちて行く。
それからと言うもの、レイナはどこか上の空であった。
悪夢にうなされ、よく眠れない日が続いていたのだ。
ぼんやりとしたまま、レイナは書庫の整理を始めた。
書庫にはたくさんの棚が並び、その棚の奥に鍵のついた扉が一つ隠れるように存在している。
「書庫にある鍵の付いた部屋は、危険書の保管庫になっております」
数日前、執事のジルがそう教えてくれた。
危険書……それはグランツ領で見つかった本物かどうか疑わしい魔導書や呪いの本。王国に提出するまでではないが、領民の手元に置いておくのもどうか……、という本を回収し保管しているのだ。
それらの本に異常がないか時々見回るのも領主の仕事の一つ。
鍵を開け中に入ると、ムワッとかび臭い匂いが鼻を突く……。
顔を顰め、左右の棚に並ぶ本を見ながら一歩、一歩と進んでいくと――――、突然、グラリと視界が歪んだ。
寝不足のせいか……急激な眩暈にレイナの足はもつれ肩が棚に激突すると、ドサドサッと数冊の本が棚から落下した。
棚に肩を付いたまま眩暈が治まるのを待ち、小さく息を吐いたレイナは、床に落ちた本を拾い棚に戻していく。
しかし、最後の一冊を拾おうとした時、持ち上げようとした弾みで本が開いてしまった。
「あっ!」
そう思った瞬間、本の中から何かが飛び出しレイナに襲い掛かった。
何か……それは目に見えない何か。空気が歪んだ陽炎の様な、居るとするなら幽霊の様な……。
その一瞬の視界の歪みが、何かが居ると思わせた……。
「なに……?」
そう思う間もなく、視界は霞み始め頭の奥がジンと痺れる……。
強烈な眠気が押し寄せ、レイナはふら付く足を叱責し何とか部屋に戻った。
ベットに倒れ込むと、深く意識が沈んでいくのがぼんやりと理解できた。
そして、意識が底に着いた時、目の前にあったのは大好きな父親の姿。
いつの間にか自分は小さな少女になっていて、手招く父に駆け寄ると膝の上に座り、絵本を開く―――。
幸せな―――幸せな夢を見始めたのだ。
「レイナ様が目を覚まされないんです」
数刻後、屋敷の者は慌てふためいていた。
「医者を呼べ!」
呼ばれた医者にも原因は分からず、レイナは目を覚ますことなく数日が過ぎた。
「ふふっ……お父様……」
レイナは微笑み寝言でそう呟く。
幸せな夢でも見ているのだろうか……。
だが、レイナは徐々に衰弱し始めたのだ。
●ハンターオフィス
「どうか、レイナ様を助けて下さい。このままではレイナ様は衰弱して死んでしまう……」
己の力不足に怒りを覚え、震える拳を握りながらサイファーは頭を下げた。
「わかりました。至急依頼を出しておきます」
受付の女性は真摯な顔で力強く頷いた。
解説
グランツの領主レイナが、危険な書物に襲われ目覚めなくなってしまいました。
その本には人々を幸せな夢に縛り付け、徐々に弱らせて自分の力を増幅させる恐ろしい魔物を退治する物語が書かれていました。
本に宿った悪霊はそのお話になぞらえるかのように、レイナを幸せな夢に縛り付けたのです。
本体である本を倒せば、レイナは目覚めるはずです。
本はいつの間にか屋敷の外に出てしまいました。表紙を翼の様に動かし飛ぶことが出来る様です。
しかし憑りついた人間から遠く離れる事が出来ないらしく、屋敷の塀の周りを、鳥の様に飛んでいます。
本の大きさは30センチ×20センチ。本を開くと30センチ×40センチになります。
本体からページが抜け落ち、紙一枚一枚をナイフの様に変え攻撃してきます。
見た目は紙ですが、もちろん強度も切れ味もナイフ其の物……。
何百とあるページがナイフになる可能性もありますが、ページが少なくなるごとに本体は弱くなっていきます。
ナイフは宙に浮かび、紙飛行機の様に飛び回り斬り付け攻撃してきます。
見つけ出し、その本を討伐してください。
どうかレイナを、幸せな悪夢から解放してあげて下さい。
よろしくお願いいたします。
その本には人々を幸せな夢に縛り付け、徐々に弱らせて自分の力を増幅させる恐ろしい魔物を退治する物語が書かれていました。
本に宿った悪霊はそのお話になぞらえるかのように、レイナを幸せな夢に縛り付けたのです。
本体である本を倒せば、レイナは目覚めるはずです。
本はいつの間にか屋敷の外に出てしまいました。表紙を翼の様に動かし飛ぶことが出来る様です。
しかし憑りついた人間から遠く離れる事が出来ないらしく、屋敷の塀の周りを、鳥の様に飛んでいます。
本の大きさは30センチ×20センチ。本を開くと30センチ×40センチになります。
本体からページが抜け落ち、紙一枚一枚をナイフの様に変え攻撃してきます。
見た目は紙ですが、もちろん強度も切れ味もナイフ其の物……。
何百とあるページがナイフになる可能性もありますが、ページが少なくなるごとに本体は弱くなっていきます。
ナイフは宙に浮かび、紙飛行機の様に飛び回り斬り付け攻撃してきます。
見つけ出し、その本を討伐してください。
どうかレイナを、幸せな悪夢から解放してあげて下さい。
よろしくお願いいたします。
マスターより
こんにちは。一要・香織です。
春の陽気でなんだか眠くなってしまいますね。
特に昼食後の睡魔は強敵です。
皆さんはどのように睡魔を追い払っているでしょうか。
今回は幸せな悪夢に囚われたレイナを助ける依頼です。
以前のシナリオ『その意志を受け継いで』に少しリンクしているので、そちらも読んで頂ければと思います。
どうぞよろしくお願いします。
春の陽気でなんだか眠くなってしまいますね。
特に昼食後の睡魔は強敵です。
皆さんはどのように睡魔を追い払っているでしょうか。
今回は幸せな悪夢に囚われたレイナを助ける依頼です。
以前のシナリオ『その意志を受け継いで』に少しリンクしているので、そちらも読んで頂ければと思います。
どうぞよろしくお願いします。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/04/26 21:15
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ちとせ(ka4855) 人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/04/22 11:08:56 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/18 23:10:25 |