ゲスト
(ka0000)
【羽冠】踵が打ち鳴らす理想
マスター:紺堂 カヤ

このシナリオは3日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/06/03 07:30
- リプレイ完成予定
- 2018/06/15 07:30
オープニング
ため息が、重く落ちてゆく。
水分を含んだ分厚い雲で満ちた空のように、アメリア・マティーナ(kz0179)の心は曇っていた。
システィーナ王女殿下の政略結婚に反対する団体を結成し、決起集会を行ってからというもの、彼女の本分である「空の研究」は遅々として進まなくなった。それどころか、研究を押しのけて進めることとなったその反対運動も、実のところそう順調ではなかった。
「私はやはり、人の上に立ったり、人を率いることは向いていなかったようですねーえ」
アメリアがそう呟くと、彼女の正面に座るトリイ・シールズが首を横に振った。トリイは、空の研究所の後ろ盾となっている貴族カリム・ルッツバードの秘書である。
「そんなことはありません。アメリア所長は、充分、人の上に立つことのできる器だと思いますよ」
慰めはいりません、と言おうとして、アメリアはふと違和感をおぼえた。トリイの落ち着きぶりに、である。もともと穏やかな人物ではあるし、いつだってにこやかだが、今このときその態度でいられるのはどういうことなのだろう。アメリアを中心とした抗議団体を立ち上げることで市民運動をコントロールするのが、ルッツバード氏の狙いだったはずだ。しかしそれはどう贔屓目に見ても上手くいっているとは言えない。暴徒さながらの苛烈さで活動している市民たちの抑止力にはなりえず、アメリアのもとへ集っていた市民の中にも「そちらの方がいい」と言って去って行った者はたくさんいた。
「……もしや、こうなることが、わかっていたんですかねーえ? ルッツバード氏の本当の狙いは、ここからなのでは」
「お気づきになられましたか」
トリイがにっこり頷く。アメリアは、目深にかぶったフードの下からトリイを睨んだ。見事に使われてしまったということだ。
「多くの市民が暴徒と化してもなお、冷静さを失わず理論的解決を求める人物だけを、この団体に残したかった……。そういうことですよねーえ?」
「さすがアメリア所長。そのとおりです。初めから意図を説明せず申し訳ありませんでしたが……、それを言えばきっとあなたは協力してくださらないと思いましたので」
多くの市民を集め、そこからふるいにかける。確かに、アメリアの好むやり方ではない。
「……今回のことでは、私も個人的な目的にこの活動を利用しましたからねーえ。それで、おあいことしておきましょう」
個人的な目的、とは、アメリアを付け狙い続けていたシェーラを捕らえること、であった。
「そういえば、捕らえたシェーラさんは、今どこに?」
「王都内に家をひとつ借り、そこにいてもらっていますよーお。キランとスバルさんを監視につけて。逃げ出す様子はありませんが、相変わらず何も話そうとしません。何を考えているのやら」
アメリアはまたため息をついた。アメリアを疲弊させているのは、このシェーラの問題もあるからだ。
「それより……、市民をふるいにかけて何をするつもりなのですかねーえ? これ以上の抗議活動は、もう無意味でしょう。王女殿下は、そろそろ結論をお出しになるはずですよーお。ご自分の、お考えで、ね」
「ええ、そのとおりです。ご自分の、お考えで。そこが、重要なのです」
「と言うと?」
「市民にも、自分の考えをきちんと持ってもらわなければなりません。これからの王国に必要なのは、民がより賢くなることです。貴族の思惑に振り回されたりせず、きちんと国を守っていくには、それぞれがきちんとした考えを持ち、それを主張することが必要になります。今回の殿下の一件で、抗議する姿勢が市民にみられたことは僥倖でした。しかし、抗議の方法はもっと考えられるべきです」
「貴族の思惑に振り回されたりせず、ねーえ」
アメリアの皮肉に、トリイはさすがに苦笑した。貴族側であるトリイがそれを言うことに矛盾があることは、当然自覚があるらしい。
「アメリア所長にはこれから、そうした意識改革に乗り出していただきたいのです」
「ふむ……。しかし、私は本来、空の魔法を研究するのが仕事ですからねーえ」
いつまでもそちらをおろそかにはしていられない。どうしようか、と首をひねったとき。
「私に考えがあります!! どうか、私にやらせてください!!」
ガチャリ、と応接室の扉が開いて、少女がひとり、入ってきた。どうやら、扉の向こうで盗み聞きをしていたらしい。
「あなたは?」
「私は、ラゼルといいます。この抗議団体に参加しています。是非、私に、『生き方を考えるための雑誌』を作らせていただきたいのです!」
ラゼル、と名乗った少女は、瞳の奥に炎を燃え上がらせていた。
水分を含んだ分厚い雲で満ちた空のように、アメリア・マティーナ(kz0179)の心は曇っていた。
システィーナ王女殿下の政略結婚に反対する団体を結成し、決起集会を行ってからというもの、彼女の本分である「空の研究」は遅々として進まなくなった。それどころか、研究を押しのけて進めることとなったその反対運動も、実のところそう順調ではなかった。
「私はやはり、人の上に立ったり、人を率いることは向いていなかったようですねーえ」
アメリアがそう呟くと、彼女の正面に座るトリイ・シールズが首を横に振った。トリイは、空の研究所の後ろ盾となっている貴族カリム・ルッツバードの秘書である。
「そんなことはありません。アメリア所長は、充分、人の上に立つことのできる器だと思いますよ」
慰めはいりません、と言おうとして、アメリアはふと違和感をおぼえた。トリイの落ち着きぶりに、である。もともと穏やかな人物ではあるし、いつだってにこやかだが、今このときその態度でいられるのはどういうことなのだろう。アメリアを中心とした抗議団体を立ち上げることで市民運動をコントロールするのが、ルッツバード氏の狙いだったはずだ。しかしそれはどう贔屓目に見ても上手くいっているとは言えない。暴徒さながらの苛烈さで活動している市民たちの抑止力にはなりえず、アメリアのもとへ集っていた市民の中にも「そちらの方がいい」と言って去って行った者はたくさんいた。
「……もしや、こうなることが、わかっていたんですかねーえ? ルッツバード氏の本当の狙いは、ここからなのでは」
「お気づきになられましたか」
トリイがにっこり頷く。アメリアは、目深にかぶったフードの下からトリイを睨んだ。見事に使われてしまったということだ。
「多くの市民が暴徒と化してもなお、冷静さを失わず理論的解決を求める人物だけを、この団体に残したかった……。そういうことですよねーえ?」
「さすがアメリア所長。そのとおりです。初めから意図を説明せず申し訳ありませんでしたが……、それを言えばきっとあなたは協力してくださらないと思いましたので」
多くの市民を集め、そこからふるいにかける。確かに、アメリアの好むやり方ではない。
「……今回のことでは、私も個人的な目的にこの活動を利用しましたからねーえ。それで、おあいことしておきましょう」
個人的な目的、とは、アメリアを付け狙い続けていたシェーラを捕らえること、であった。
「そういえば、捕らえたシェーラさんは、今どこに?」
「王都内に家をひとつ借り、そこにいてもらっていますよーお。キランとスバルさんを監視につけて。逃げ出す様子はありませんが、相変わらず何も話そうとしません。何を考えているのやら」
アメリアはまたため息をついた。アメリアを疲弊させているのは、このシェーラの問題もあるからだ。
「それより……、市民をふるいにかけて何をするつもりなのですかねーえ? これ以上の抗議活動は、もう無意味でしょう。王女殿下は、そろそろ結論をお出しになるはずですよーお。ご自分の、お考えで、ね」
「ええ、そのとおりです。ご自分の、お考えで。そこが、重要なのです」
「と言うと?」
「市民にも、自分の考えをきちんと持ってもらわなければなりません。これからの王国に必要なのは、民がより賢くなることです。貴族の思惑に振り回されたりせず、きちんと国を守っていくには、それぞれがきちんとした考えを持ち、それを主張することが必要になります。今回の殿下の一件で、抗議する姿勢が市民にみられたことは僥倖でした。しかし、抗議の方法はもっと考えられるべきです」
「貴族の思惑に振り回されたりせず、ねーえ」
アメリアの皮肉に、トリイはさすがに苦笑した。貴族側であるトリイがそれを言うことに矛盾があることは、当然自覚があるらしい。
「アメリア所長にはこれから、そうした意識改革に乗り出していただきたいのです」
「ふむ……。しかし、私は本来、空の魔法を研究するのが仕事ですからねーえ」
いつまでもそちらをおろそかにはしていられない。どうしようか、と首をひねったとき。
「私に考えがあります!! どうか、私にやらせてください!!」
ガチャリ、と応接室の扉が開いて、少女がひとり、入ってきた。どうやら、扉の向こうで盗み聞きをしていたらしい。
「あなたは?」
「私は、ラゼルといいます。この抗議団体に参加しています。是非、私に、『生き方を考えるための雑誌』を作らせていただきたいのです!」
ラゼル、と名乗った少女は、瞳の奥に炎を燃え上がらせていた。
解説
■成功条件
ラゼル発案の雑誌に載せる記事づくりに協力する。
■雑誌
『生き方を考えるための雑誌』として刊行。タイトルは『透明な靴』を予定。
第一号のテーマは「結婚」。結婚に関する様々な意見を掲載する。
(例:親の決めた結婚に従うか否か? 結婚をしない生き方をどう思うか?)
■編集会議・インタビュー
ラゼルが編集長となり、参加者にインタビュー。様々な意見を出してもらう。
参加者は基本的に自由に考えを述べてよいが、ラゼルは全員に「あなたの理想の生き方は?」という質問だけは必ずしたいと考えている。
書記は抗議団体メンバーがつとめる予定。
表紙の案などもまったくない状態であるため、雑誌全体の構成についての意見も欲しいとのこと。
場所は空の研究所の食堂を借りる予定。
インタビューをしながらお茶を飲んで気軽な雰囲気を作りたいとラゼルは考えている。
■ラゼル
アメリアが結成した抗議団体に立ち上げから参加している少女。17歳。
厳格な両親のもとで育てられたが、成長するにつれその両親の古くて偏った考え方に疑問を持つようになった。
頭脳明晰で弁も立ち、行動力に溢れている。
※アメリアは同席しない予定です(顔を出す可能性はあります)。
※質問にはアメリアが対応いたしますが、主導権がないため答えられないことも多いかもしれません。出発24時間前までにお願い致します。
ラゼル発案の雑誌に載せる記事づくりに協力する。
■雑誌
『生き方を考えるための雑誌』として刊行。タイトルは『透明な靴』を予定。
第一号のテーマは「結婚」。結婚に関する様々な意見を掲載する。
(例:親の決めた結婚に従うか否か? 結婚をしない生き方をどう思うか?)
■編集会議・インタビュー
ラゼルが編集長となり、参加者にインタビュー。様々な意見を出してもらう。
参加者は基本的に自由に考えを述べてよいが、ラゼルは全員に「あなたの理想の生き方は?」という質問だけは必ずしたいと考えている。
書記は抗議団体メンバーがつとめる予定。
表紙の案などもまったくない状態であるため、雑誌全体の構成についての意見も欲しいとのこと。
場所は空の研究所の食堂を借りる予定。
インタビューをしながらお茶を飲んで気軽な雰囲気を作りたいとラゼルは考えている。
■ラゼル
アメリアが結成した抗議団体に立ち上げから参加している少女。17歳。
厳格な両親のもとで育てられたが、成長するにつれその両親の古くて偏った考え方に疑問を持つようになった。
頭脳明晰で弁も立ち、行動力に溢れている。
※アメリアは同席しない予定です(顔を出す可能性はあります)。
※質問にはアメリアが対応いたしますが、主導権がないため答えられないことも多いかもしれません。出発24時間前までにお願い致します。
マスターより
ごきげんいかがでございましょうか。紺堂カヤでございます。
理想に燃える少女・ラゼルちゃん爆誕です。青臭いことを言っているようですが、こういう若者も必要なんですよねえ……。
どうぞ助けてやっていただけたらと思います。
そういえば、この抗議団体、名前ついてないままですね……。
理想に燃える少女・ラゼルちゃん爆誕です。青臭いことを言っているようですが、こういう若者も必要なんですよねえ……。
どうぞ助けてやっていただけたらと思います。
そういえば、この抗議団体、名前ついてないままですね……。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/06/10 18:16
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/31 00:21:45 |
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控室(相談卓) エメラルド・シルフィユ(ka4678) 人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/06/03 00:22:54 |