• 冒険

秋のはちみつを探して

マスター:きりん

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
参加費
1,000
参加人数
現在4人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
プレイング締切
2018/11/19 09:00
リプレイ完成予定
2018/11/28 09:00

オープニング

●はちみつが食べたい
 その日も、トアの朝食は芋だった。
「さんしょくいもはあきたの……せっかくのあきだしべつのものがたべたいの」
 大皿に盛られている蒸かしたジャガイモをしょんぼりと見て、トアが呟く。
 あまり喜んでいる様子ではない娘を見て、母親のアンティが苦笑した。
「ならお昼はサツマイモにしましょうか」
 幸い、今は実りの季節なので、食材が豊富に手に入る。特に芋類は安価に出回っているので、貧乏な田舎の家族としては大助かりだ。
「いいね。焼き芋にしようよ」
 トアの兄で、アンティの息子であるアルムがジャガイモを手に取り、齧りながら母親の意見に賛成する。
「そういえばサトイモもあったな。夕飯は芋煮汁にしてくれ」
 頼れる一家の大黒柱、トアとアルムの父親かつアンティの夫であるディルクが、同じくジャガイモを食べながら夕飯の内容をリクエストした。
 しかし、三人に対しトアの不満が噴火した。
「そうじゃないの! いいかげんいもからはなれるの!」
 子ども特有の舌足らずな甲高い声で、精いっぱい怒りをアピールする。
 それでも幼児の激怒など大人にとっては可愛らしいものでしかなく、アンティに抱き上げられてあやされてしまう。
「わがままな子ねぇ」
「こどもあつかいしてけむにまこうとするななの!」
 じたばたじたばた。
 アンティの腕の中で身を捩って暴れるトアを、ディルクが抱き上げた。
「ははは。食べ物があるだけ恵まれてるんだぞ」
「そんなことばでごまかされないの!」
 じたばたじたばた。
 トアによる抗議のじたばたは止まない。
「こら。父さんと母さんを困らせるんじゃない」
 少し怖い顔で、兄としてアルムがトアを叱る。
「とあのわがままなのこれ!?」
 芋責めという拷問を受けている気分なトアとしては心外である。
「せめてあまいものがいいの!」
「じゃあ、はちみつでも食べるか?」
 ディルクの言葉を聞いて、ぴたりとトアは泣き止んだ。

●蜂はいるけど……
 村の店で買い物を済ませてきたアンティは、空振りに終わったことをディルクに報告する。
「あなた、やっぱり秋にはちみつなんてお店で売ってないわよ。春とか夏ならともかく」
「でも、蜂自体は飛んでるだろ。よく村でも巣を作っててそのたびに駆除で大変な思いしてるじゃないか」
 どこかできっと手に入ると楽観的なディルクに、アルムが口出しした。
「あれは蜜を作らない蜂だよ。他の蜂を襲ったりするやつ」
 トアはまだ駄々をこねている。
「はちみつたべたいの!」
 完全にスイッチが入ったらしく、はちみつを食べられるまで持久戦も辞さない構えである。
「ごめんね、トア。はちみつは手に入らないわ。代わりにお芋食べる?」
 アンティが娘の機嫌を取ろうとするが、代替案が最低であった。
「きたいさせておいてひどいの! あといもからはなれるの!」
 他の家族たちにしてみれば、芋ならば毎日食べるほどいっぱいあるのでそっちで満足してくれという思いである。
「ははは。そういえば最近村の女の子たちの会話で、『私たちって芋っぽい顔だよね』とか『芋に満ちている』とかよく聞くなぁ」
 呑気なディルクの発言にトアが突っ込みを入れた。
「どうみてもいいいみのことばじゃないの! あかぬけてないとかそういうのなの!」
「へえ、トアってばそんなことも分かるようになったんだ。ちゃんと勉強してるんだね。感心感心」
 トアの成長を兄として喜ぶアルムに、トアは憤慨した。
「どうでもいいの!」
 父も母も兄も駄目だ。これは自分で何とかするしかない。
 密かにトアは決意した。

●秋のはちみつ、『甘露蜜』
 それから家族で街に出かける機会があったので、トアはハンターズソサエティに寄ってもらった。
「はちみつたべたいの!」
「は、はちみつですか?」
 たまたま受付嬢として応対をしたジェーン・ドゥが目を丸くする。
「すみません、娘のわがままでして。別に依頼をしたいとかそういうのじゃないので」
「こら、お姉さんを困らせないの!」
「はちみつ……」
「諦めろよ。無理なものは無理なんだ」
「はちみつなら、秋に取れるものもございますが」
 ディルク、アンティ、アルムの誰もが、『アンタなんてことを言ってくれたんだ』みたいな顔で愕然とジェーンを見た。
 ジェーンはにっこりと営業スマイルを浮かべている。とてもうさんくさい。
「あるの!?」
 くいついたトアに、ジェーンの笑みがさらににこやかになる。
 背中と尻に黒い尻尾と尾が生えた幻影が見えそうだ。何なら頭に黒い触角を追加してもいい。
「ええ。甘露蜜というんです。樹液を採取して作られるはちみつなんですよ。市場にはあまり出回りませんが、ハンターの皆様の手を借りればほぼ確実に手に入ると思いますよ。依頼、如何ですか?」
 ジェーンの誘導にトアの表情が輝いた。
「いらいするの!」
 完全勝利という言葉を背中にしょったジェーンが、天を仰ぐディルクを見る。
「娘さんはこうおっしゃっていますが、どうなさいますか?」
「……お願いします」
 断った時の面倒くささを考えると、ディルクはこう答えるしかなかった。

解説

●概要
 冒険シナリオです。
 街の近くの森に入ってミツバチの巣を探し、そこに蓄えられているはちみつ『甘露蜜』を入手してください。
 必要な道具は街の養蜂家に交渉すれば借り受けることができます。ハンターとしての身分があれば問題ないでしょう。
 巣を見つけたら、中の蜂を何とかしてから巣ごと持ち帰って街の養蜂家に渡しましょう。巣からはちみつを採取してくれます。自分で巣から直接採取を試みることも可能ですが、当然専門家に預けるより上質なはちみつが取れる率は下がります。
 無事『甘露蜜』を入手できたら、トアに食べさせてあげください。
 残った分があれば、自分たちで食べても構いません。

●達成条件
・トアに秋のはちみつ『甘露蜜』を食べさせる

●森とはちみつについて
 街近くの森です。街から近いのである程度道が整備されており、騎乗状態でも通行に支障はありません。
 蜂は樹液に群がる虫から樹液を分けてもらい、それを持ち帰ってはちみつにするので、樹液が出ている木を探してください。高確率で蜜蜂を見つけることができるでしょう。
 見つけたら追跡し、巣を見つけましょう。その際は木々などの遮蔽物で見失ったり、蜂に追跡しているのがばれて警戒されたりしないようご注意ください。
 巣の中の蜂は煙でいぶせば一時的に失神状態になりますので、その隙に巣の確保を試みることができます。何なら失神した蜂ごと持ち帰ってもいいでしょう。街の養蜂家が引き取ってくれるはずです。

●敵
○ミツバチ……二百匹
 二十二ミリ程度。普通の蜜蜂です。命と引き換えに毒針で刺してきますが元々の気性が大人しく、またハンターであれば大した被害も出ないでしょう。百匹で二スクエア上に存在し、二百匹で一部のスクエアが共有され遮蔽されます。

●ギミック
○ミツバチの巣……一つ
 六十センチほど。巣としては小さめですが、たっぷり秋のはちみつ『甘露蜜』が蓄えられています。

マスターより

初めまして、こんにちは。
マスターのきりんです。
今回のシナリオははちみつ探しです。
ぜひ成功させてトアちゃんに食べさせてあげてください。
必要なのは『甘露蜜』がある蜂の巣です。樹液を採取した働き蜂の後を追えば見つかるでしょうが、それをせずに蜂の巣を見つけた場合はただのはちみつである可能性があります。街の養蜂家に巣の中のはちみつを見せなければ判別は難しいでしょう。ご注意ください。
もしどうしてもはちみつが取れなかった場合は、駄目元で街の養蜂家にどこで手に入るか聞いてみましょう。案外養蜂家自身が持っていたり、街の食料品店に置いてある可能性があります。
それでは楽しんでくださいね。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/11/20 13:31

参加者一覧

  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 背後にお姉さん
    神紅=アルザード(ka6134
    人間(紅)|17才|女性|疾影士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/11/19 08:24:06
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/11/19 08:20:35