ゲスト
(ka0000)
【東幕】ふるさとの明日の空を想うこと
マスター:紺堂 カヤ

このシナリオは3日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在13人 / 1~25人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/08/03 09:00
- リプレイ完成予定
- 2019/08/15 09:00
オープニング
エトファリカ連邦国・天ノ都。史郎(kz0242)は『友人』と向き合っているところだった。
「……そうか。それが、お前の答え、か」
そう呟いたのは、スメラギだ。史郎の『友人』である。
「うん。俺は、『帝の配下』にはならない。スーさんの力になりたいとは思う。だけど、俺にとってそれは配下となってすべきことではないと思う。俺は俺の立場で、この国のためにできることをするよ」
「そうか」
史郎の真剣なまなざしを、スメラギはしっかりと受け取った。
「……俺とスーさんは、これからも『友だち』だ。悪いけど」
「悪くはねえだろ」
史郎が少しだけ眉を下げると、スメラギはさっぱりと笑った。
「むしろ、ちょっとホッとしてるくらいだ。自分から配下になれと言っておいてなんだよ、ってところではあるが。……俺様は友人をひとり、失わずに済んだわけだ」
スメラギの笑顔に、史郎も笑顔を返した。
配下になってほしい、とスメラギから言われて以来、史郎は随分と考えてきた。それに答えを出せたのは、詩天の子どもたちやハンターたちのおかげだが、出した答えをスメラギに伝えることができ、ようやく、史郎は一息つけそうな気持ちになっていた。
「ま、そうのんびりもしてられないんだけどさ」
この世の情勢は不安定かつ危機的だ。東方の民の不安は日々膨れ上がっているが、さりとて生活は日々続く。歩みをとめないためにも、史郎は商人としての仕事を、滞りなくこなし続けなければならないと思っていた。
「本当に、それだけでいいのか?」
史郎にそう問いかけた者がいた。白髪交じりでありながら、歳を感じさせない壮健さを持つ男である。
「急になんだよ。というか、今まで一体どこにいたんだい?」
「ま、いろいろとな」
カカカ、と笑うのは、史郎の養父である。商人としての仕事も……それ以外の仕事も、史郎にみっちり仕込んできたのは彼であった。
「なーんか、深堀したら怖そうだな、訊かないでおくよ。で? それだけでいいのか、っていうのは?」
「お前の未来のことさ」
「未来?」
「この仕事、続けていくだけで、満足かい? わざわざ、帝の誘いを断ったんだ、何か他に考えがあるんだと思っていたんだが……、まさか何もないってわけじゃないだろうな?」
年老いても眼光の鋭さは衰えない。史郎は養父の迫力に内心で冷や汗をかきつつ苦笑した。
「単に続けていくだけ、ってつもりはないよ。未来、って言うならさ、やっぱ、これからを生きる奴らを大切にしたいって思うしな」
史郎は、子どもたちのことを思い浮かべた。身寄りをなくした幼い子らが、自分たちで生きていくのを手助けしているのである。それを見透かしたように、養父がびしりと指を史郎の顔の前につきつけた。
「それさ」
「え?」
「お前、自分と同じような境遇の子どもたちに同情して支援してやっているだろう」
「同情、って」
史郎はどきりとした。養父の言う通り、史郎には血縁者がいない。赤ん坊の頃に捨てられていたのを、この養父が拾って育ててくれたのだ。
「それが悪いとは言わないさ。立派な行いだ。続けていくがいいさ。だが……、お前、忘れておるだろう」
「何をだよ」
「お前だってまだ、子どもの範疇なのだぞ」
「子ども、って」
史郎のことを一度だって子ども扱いしたことのない養父がそんなことを言うとは思わず、史郎は両目を見開いた。いつだって甘やかすことなく、一日でも早くひとりで生きて行けるよう、厳しく仕込んでくれたのだ。史郎はそれに感謝をしている。
「まだまだ学ぶこともたくさんあるだろうし、やりたいことをもっと増やしてもいいんじゃねえかということさ。自分の未来のための、な」
「ああ、なるほどね」
確かに、と史郎は頷いた。学ぶべきことは、山ほどある。
「ちょっと、じっくり考えてみてもいいんじゃねえか?」
養父はそう言ってから、悪戯っぽくニヤリとした。
「若いんだからよ、恋だっていっぱいした方がいいしな」
「恋、ねえ……」
史郎もニヤリとした。
「色恋沙汰は、いい金になるからね」
「お前なあ」
養父が呆れかえる。育て方を間違えたか、などとぼやくのを、史郎は笑って眺めた。
養父とそんな会話をした、数日後に。史郎は、仕入れ手続きや新たな商談のために詩天の市街地を忙しく走り回っていた。ひと段落ついたところで、ふと周囲を見回すと、ずいぶんと賑わっている店が、目に入った。
「へえ。甘味屋か。こんなところにあったとは知らなかった。あの繁盛の秘密を勉強がてら、ちょっと休憩するかな」
史郎は珍しく寄り道をすることにして、店へと足を向けた。
「……甘いものを食べながら、未来についてでも考えますかね」
養父の言葉を思いだし、なんとなくくすぐったくなって、史郎はひとりでくすくすと笑うのだった。
「……そうか。それが、お前の答え、か」
そう呟いたのは、スメラギだ。史郎の『友人』である。
「うん。俺は、『帝の配下』にはならない。スーさんの力になりたいとは思う。だけど、俺にとってそれは配下となってすべきことではないと思う。俺は俺の立場で、この国のためにできることをするよ」
「そうか」
史郎の真剣なまなざしを、スメラギはしっかりと受け取った。
「……俺とスーさんは、これからも『友だち』だ。悪いけど」
「悪くはねえだろ」
史郎が少しだけ眉を下げると、スメラギはさっぱりと笑った。
「むしろ、ちょっとホッとしてるくらいだ。自分から配下になれと言っておいてなんだよ、ってところではあるが。……俺様は友人をひとり、失わずに済んだわけだ」
スメラギの笑顔に、史郎も笑顔を返した。
配下になってほしい、とスメラギから言われて以来、史郎は随分と考えてきた。それに答えを出せたのは、詩天の子どもたちやハンターたちのおかげだが、出した答えをスメラギに伝えることができ、ようやく、史郎は一息つけそうな気持ちになっていた。
「ま、そうのんびりもしてられないんだけどさ」
この世の情勢は不安定かつ危機的だ。東方の民の不安は日々膨れ上がっているが、さりとて生活は日々続く。歩みをとめないためにも、史郎は商人としての仕事を、滞りなくこなし続けなければならないと思っていた。
「本当に、それだけでいいのか?」
史郎にそう問いかけた者がいた。白髪交じりでありながら、歳を感じさせない壮健さを持つ男である。
「急になんだよ。というか、今まで一体どこにいたんだい?」
「ま、いろいろとな」
カカカ、と笑うのは、史郎の養父である。商人としての仕事も……それ以外の仕事も、史郎にみっちり仕込んできたのは彼であった。
「なーんか、深堀したら怖そうだな、訊かないでおくよ。で? それだけでいいのか、っていうのは?」
「お前の未来のことさ」
「未来?」
「この仕事、続けていくだけで、満足かい? わざわざ、帝の誘いを断ったんだ、何か他に考えがあるんだと思っていたんだが……、まさか何もないってわけじゃないだろうな?」
年老いても眼光の鋭さは衰えない。史郎は養父の迫力に内心で冷や汗をかきつつ苦笑した。
「単に続けていくだけ、ってつもりはないよ。未来、って言うならさ、やっぱ、これからを生きる奴らを大切にしたいって思うしな」
史郎は、子どもたちのことを思い浮かべた。身寄りをなくした幼い子らが、自分たちで生きていくのを手助けしているのである。それを見透かしたように、養父がびしりと指を史郎の顔の前につきつけた。
「それさ」
「え?」
「お前、自分と同じような境遇の子どもたちに同情して支援してやっているだろう」
「同情、って」
史郎はどきりとした。養父の言う通り、史郎には血縁者がいない。赤ん坊の頃に捨てられていたのを、この養父が拾って育ててくれたのだ。
「それが悪いとは言わないさ。立派な行いだ。続けていくがいいさ。だが……、お前、忘れておるだろう」
「何をだよ」
「お前だってまだ、子どもの範疇なのだぞ」
「子ども、って」
史郎のことを一度だって子ども扱いしたことのない養父がそんなことを言うとは思わず、史郎は両目を見開いた。いつだって甘やかすことなく、一日でも早くひとりで生きて行けるよう、厳しく仕込んでくれたのだ。史郎はそれに感謝をしている。
「まだまだ学ぶこともたくさんあるだろうし、やりたいことをもっと増やしてもいいんじゃねえかということさ。自分の未来のための、な」
「ああ、なるほどね」
確かに、と史郎は頷いた。学ぶべきことは、山ほどある。
「ちょっと、じっくり考えてみてもいいんじゃねえか?」
養父はそう言ってから、悪戯っぽくニヤリとした。
「若いんだからよ、恋だっていっぱいした方がいいしな」
「恋、ねえ……」
史郎もニヤリとした。
「色恋沙汰は、いい金になるからね」
「お前なあ」
養父が呆れかえる。育て方を間違えたか、などとぼやくのを、史郎は笑って眺めた。
養父とそんな会話をした、数日後に。史郎は、仕入れ手続きや新たな商談のために詩天の市街地を忙しく走り回っていた。ひと段落ついたところで、ふと周囲を見回すと、ずいぶんと賑わっている店が、目に入った。
「へえ。甘味屋か。こんなところにあったとは知らなかった。あの繁盛の秘密を勉強がてら、ちょっと休憩するかな」
史郎は珍しく寄り道をすることにして、店へと足を向けた。
「……甘いものを食べながら、未来についてでも考えますかね」
養父の言葉を思いだし、なんとなくくすぐったくなって、史郎はひとりでくすくすと笑うのだった。
解説
■成功条件
詩天で思い思いの一日を過ごす。
■状況
・本シナリオは、フリーアタックです。皆さんはそれぞれ何らかの理由で詩天にいるハンターであり、誰かに雇われているわけではありません(よって報酬は出ません)。
・同行者同士は、必ずプレイング内でわかるようにしておいてください。
・史郎とは関わっても関わらなくてもまったく問題ありません。
詩天で思い思いの一日を過ごす。
■状況
・本シナリオは、フリーアタックです。皆さんはそれぞれ何らかの理由で詩天にいるハンターであり、誰かに雇われているわけではありません(よって報酬は出ません)。
・同行者同士は、必ずプレイング内でわかるようにしておいてください。
・史郎とは関わっても関わらなくてもまったく問題ありません。
マスターより
皆さまごきげんいかがでございましょうか。紺堂でございます。
世界はいまだ予断を許さない状態ではございますが、こんなときにこそ、未来について考えてみる時間をきちんと取るのも、いいのではないかと思う次第です。
どなたさまもご参加いただけます。どうぞよろしくお願い致します。
世界はいまだ予断を許さない状態ではございますが、こんなときにこそ、未来について考えてみる時間をきちんと取るのも、いいのではないかと思う次第です。
どなたさまもご参加いただけます。どうぞよろしくお願い致します。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/08/13 22:08