※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

　『王国観光庁』展覧会・共通OP

大司教「貴女に展覧会の代表をしていただきます」
王女「えーっ？！！！」

（大幅に省略）

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　貴族の娘・クリスティーヌとお供の侍女・マリーが王国巡礼の旅を始めて早数ヶ月──
　2人は、歪虚ベリアルによる一連の騒動により足止めを余儀なくされていた王国西部地域を抜け、ようやく王国南西部に入ろうとしていた。
　王国南西部──地勢的には王国の穀倉地帯である豊かな王国南部に属する。歪虚の侵入著しい西部のリベルタース地方に隣接した地域ではあるが、同じ隣接地域の北西部と比べれば治安はずっと安定している。海岸部には港町ガンナ・エントラータが存在し、王都イルダーナとの交通も盛んでその恩恵を受けている貴族領も多い。歪虚との戦いの最前線たるハルトフォート砦には定期的に兵を送っており、軍事と経済のバランスがもっとも取れた地域でもある。
　クリスの生家たるオードラン伯爵領も、この王国南西部に属していた。
「予定がすっかり狂ってしまいましたね……　本当ならもっとずっと先に南西部は通過してしまっていたはずだったのに」
　南西部に入って最初の宿の部屋で、すっかり少なくなった路銀を数えながら、クリスは困り顔で嘆息した。
　旅の当初、同盟に狂気の歪虚が発生したという報を受け、西回りの巡礼路を選択したというのに、今回の一連のごたごたで西部にひと月以上も足止めを食う羽目になった。王国の西部と南部、そして王都の一部に被害が出た未曾有の災害である。本来なら巡礼を中止して故郷に帰ることも検討すべきところではあるが……
「……あの、お嬢様……？」
　そんなことを悩んでいると、マリーが何か葛藤を吐露するような、複雑な表情でクリスを見やった。
　その内心を察したクリスは微苦笑を浮かべると、安心させるようにマリーへ言った。
「予定通り巡礼の旅は続けます。でも、そうですね……　路銀も心許なくなってきましたし、一度、領内へ寄り道しなければなりませんね」
　その答えにマリーは花開くようにその表情を輝かせ……　だが、すぐに何かを心配するような顔になった。
「ハッ！？　でも、領内に戻るとなると、変装をした方が良いかもしれませんね！　領主の姫だと分かれば大騒ぎになってしまいます！」

　そんなことはなかった。
　必要ないです、と却下され、変装もせずに入ったフィルトの町で。ごくごくふつーに行き交う人々。「一人も気づかないなんて！」となぜかぷりぷり怒るマリーを、クリスがまたまた苦笑で宥める。
「……名前ならともかく、領主の娘と言っても普通、館のある町以外の町で顔まで知られているなんてそうそうありませんからね」
「あ。クリスティーヌ様」
　ばれた。
　慌てるクリス。一瞬、喜色を浮かべながらも、直後、唇に人差し指を当て、シーっ！　と気づいた中年男を睨みつけるマリー。
　その仕草で事情を察した男は小さく頷くと、2人を自分の店へと招待した。
　男はオードラン伯の館に出入りする商人だった。2人が巡礼の旅に出発するに辺り、館に旅装束を届けた際に一度、顔を合わせている。
「地域振興の為の展覧会、ですか……　王女殿下を代表とする王国観光庁が主催する……」
　晩餐を終えての雑談中──　王女殿下自らが『主催』するという物産展について話題に上った。
　王国観光庁──　【黒祀】の後、大司教が王女をマスコット──もとい、代表として設立された王国の新しい機関である。
　ベリアルの復活と襲撃は、王国の人心を少なからず動揺させた。そんな中、ハンターたちは各地でトラブルを解決し、人心の安定に大きく寄与している。ハンターの存在そのものが、王国と人々の安全に深く関わっている──そう思わしめるだけの影響力を、彼らは発揮し始めているのだ。
　そんなハンターたちにより王国を知ってもらうことを目的に、今回の展覧会は企画された。黒祀により傷ついた地方経済の活性化と言う意味合いも勿論ある。
「ええ。領主様から、うちでも何か出せるものはないか、とのお話があったのですが、これがなかなか……」
　そう言って肩を竦めてみせる商人。なるほど、とクリスは頷いた。ここフィルトの町は、王都──ガンナ・エントラータ間の大街道、その側道の一つと、王国巡礼路とが交わる立地条件──　即ち、流通によって発展してきた町だ。ものづくりを主産業として発展してきたわけではないので、特産品と言えるものがなかなか無い。
「それはお困りですね」
「ええ、ええ。クリスティーヌ様には何か良い知恵はございませんか？」
　雑談の一部、形式的な質問に、だが、存外、クリスは真剣に考え始めた。
　フィルトの特色──　街道の交わる町。特産品の特にない町。……巡礼路。巡礼路沿いにある町としては、比較的、大きな町。大きな町……　行き交う商人と、巡礼者たち。巡礼者の数は顧客としては小さくない。彼ら相手の商売も成り立っているはず……
「……たしか、巡礼者向けに靴を販売してましたよね、この街の聖堂では？」
「？　ええ。木でも革でもない厚手の布で作った靴で、その丁寧な造りと、聖堂の司祭様が施してくださる祝福によって、巡礼の長旅にも耐え得る耐久性を付与されているそうです。その履き心地は抜群で、巡礼の途中で立ち寄った際、数足纏め買いしていく巡礼者もいるとか……」
「あるじゃないですか、特産品。私も巡礼の途中で出会った人たちから色々な話を聞いています。始まりの村『トルティア』では、この外套──デザイン的に見るべきところはありませんが、同じく精霊様の祝福により耐水性や保温性に優れた一品です。他にも、旅の安全を祈るお守りとか、杖とか、鞄とか、虫除けとか……　色々な物を見てきました。そういった巡礼者向けの品々を展覧会に出してみては？」
　なるほど、と商人が頷いた。面白い考えだ。だが、問題点は幾つもある。
　巡礼者向けの『商品』は各地の聖堂が独自に製造、販売しているもので、普通、他の地域には『流通』していない。司祭の祝福がある為、大量生産はできないし、そもそも一般向けのものではなく、あくまで巡礼者の旅の無事を祈って用意されているものだ。
　彼らは金儲けに興味がない──少なくとも表向きにはそういうことになっている。故に、それで商売をしようなどとは考えない。商売にすることも許さない。
「それに、観光庁の展覧会はハンター向けのものですよね？　巡礼者向けの品々は旅の必需品ではあるが、戦闘を前提に作られたものではない。果たして需要がありますかね？」
　雑談にしては真剣な口調と表情で、商人が疑問点を上げる。
　クリスははたと気づいて、そればっかりは、と苦笑した。
「この町にも多くのハンターさんがいるでしょうから……　彼らにいろいろと話を聞いてみるのも良いかもしれませんね」

１．状況と目的
　状況はOPの通り。PCたちは、依頼帰りとか旅の途中で王国南西部にある中規模の町、フィルトに立ち寄り、クリスたちに意見を求められたハンターとなります。
　果たすべき目的は特にありません。巡礼者向けのアイテムに対する意見の聴取（かつ、PCを描写すること自体）が、シナリオの目的となります。
　アイテムに対して率直な意見を述べたり、撃退士だったらこんなのがいいな、と希望を言ってみたり、NPCとふつーに会話してみたり、聖堂とか商人とかと交渉・説得してみたりしてみてください。
　シナリオが上手く行けば、それらの品々が王国の展覧会に並ぶかもしれません。あわよくばアイテム化されたりするのかも？

２．舞台
　王都南西部。オードラン伯爵領の町・フィルト。大街道の側道の一つと巡礼路が交わる位置にある中規模の町。
　二つの街道を中心に発展した街。聖堂は少し離れた郊外にあり、離れ小島の様に門前町があるイメージ。
　クリスの父、オードラン伯爵の館は別の町にあります。

　聖堂の老司祭は真面目で温厚的な聖職者タイプ。めったに激昂はしないが頑固かも。　何か新しいことを始めるかは皆様次第。
　商人はそこそこの規模。先祖代々、地元で堅実にやってきたタイプ。30～40代くらい？　何か新しいことを始めるかは皆様次第。

　Eでシリーズを始めた関係上、Fでは月１で進行中。こんにちは、柏木雄馬です。
　巡礼中の貴族の娘クリスティーヌの侍女。そして、王都第七街区のシスター。何をとち狂ったのか、両方に『マリアンヌ』って名前をつけちゃってました……　orz
　キャラ的にごっちゃになる可能性はないのですが、一応、こちらのマリアンヌは今後『マリー』表記で統一します。
　……あれ？　Eの天使姉の名前も『マリーアデル』だった気が……（汗　まぁ、あっちは世界ごと違うし、まあ、いいか……（）