●悪は来る
　夜の帳が下りたリゼリオ。そこにある屋敷の中で事件は起きていた。
「これで４人目っと」
　燃えあがる火の前で赤髪の男が煙草を咥えた。赤髪のリュビと呼ばれるその男は指先に灯る火で煙草に火をつける。
　段々を燃えているソレの火が弱まっていくと、そこには人の形をした炭と灰の塊が残っていた。
　ほどなくしてリュビのいる部屋に数名の赤衣の者達が集まってくる。
「ちゃんと殺してきたか？」
「はい」
　リュビが問えば、大剣を背負う赤衣がそれに答えた。
「勿論皆殺しにしたよな？」
「ええ、可能な限り凄惨に」
　淀みない答えにリュビは満足そうに笑みを浮かべる。
「上出来だ。じゃあ引き上げるぞ」
　座っていた椅子から立ち上がり、リュビは屋敷の廊下を歩く。赤衣の集団は手にした筒から油を周囲に撒き散らしながらその後に続く。
　リュビは屋敷から出る前に煙草の煙をもう一度吸い、後ろに向けて放り投げた。
「さあ、次は上玉だ」
　燃え上がる屋敷を背に、赤い集団はその場を後にした。

●事件現場
「これで４件目か」
　燃え落ちた屋敷の敷地内でリゼリオの警ら隊の１人が呟く。
「立て続けにな。今回も火の回りを見るに、油を撒かれてからの放火だそうだ」
　もう一人の男が体についた灰を払いながら告げる。
　リゼリオでは今資産家を狙った放火事件が相次いでいた。しかも火を放たれる前に屋敷にいる人物は全員殺されている。
　死体が黒こげになっていては死因は分からないことが多いが、今回は体のパーツがあちこちに散乱しているのだ。何が起きたのかは誰でも察しがつくだろう。
「この家の主も船持ちか？」
「ああ、前の３件と同じで港に大きな船を持ってるんだとよ」
　どうもこの犯人に狙われているのは港に船を持つ人物らしい。同業者または交易関係のライバルからの刺客と専らの噂になっている。
「これでまた金持ち連中が騒ぎ出すな」
「警らを増やせって言われても手一杯だっての」
　男達はそうは言いつつもまたシフトが厳しくなることを想像して揃って溜息を吐いた。
「で、何か手掛かりは？」
「見ての通り全部灰の中だ。だが、目撃情報はあったな。赤衣の集団だ」
「おい、それって例の闇の何でも屋か？」
　闇の何でも屋。それはアンダーグラウンドに生きる犯罪者集団の名前だ。構成員の正確な数は分かっていないが全員が覚醒者であり、その中でも幹部クラスの数名はかなりの凄腕だと噂されている。
「リゼリオの外に出たって情報はまだない。またどこかで事件を起こすつもりなんだろうな」
「全く、物騒になってきたな。このリゼリオも」
　うんざりとした顔をした男は燃え尽きた屋敷を一瞥して言葉を零す。
「ハンター達の出番だな、こりゃ」

【依頼内容】
　暗殺者から主人とその家族を護衛すること

【敵情報】
　・赤髪のリュビ
　　闇の何でも屋の幹部の１人。高レベルの覚醒者でもある。
　　クラスは魔術師。炎の魔術を好んで使うが他の魔術にも精通している。
　　＜火柱＞
　　　魔法攻撃。目標地点に炎の柱を生み出し爆発させる。命中した対象はノックバックを受ける。
　　＜見えざる刃＞
　　　物理攻撃。詳細は不明。何らかの攻撃で相手を切り裂く。射程は短い。

　・赤衣の部下　４人
　　赤い衣を纏った人物。低～中レベルの覚醒者（※ＰＬ情報）
　　アンス
　　　大剣使い。大柄でパワータイプの闘狩人。部下の中では一番の実力者。
　　　リュビの護衛役でもあり彼を守るよう立ち回る。
　　トルワ
　　　ナイフ使い。素早さが売りの疾影士。
　　　闇討ちや奇襲などトリッキーな動きで翻弄してくるタイプ。
　　シスク
　　　機械刀使い。狼の魂を宿す霊闘士。
　　　バランスタイプで思慮深く隙を見せると気づけば切り裂かれる。
　　セプト
　　　メイス使い。小柄な聖導士。
　　　仲間の補助に回る援護型。近接戦闘もこなせる。

【戦域情報】
　リゼリオにあるとある屋敷。庭付き。
　３階建てで部屋割りは以下の通り。

　１階：玄関ホール、応接間、食堂、キッチン、使用人室
　２階：客室が複数、書斎、シガールーム
　３階：主人の部屋、妻の部屋、子供の部屋、貴重品部屋

【備考】
　ハンター達は屋敷の主の護衛として雇われている。
　襲撃は夜。決まった時間はなく暗殺者達の侵入ルートも不明。
　館には主人とその家族の妻と息子。使用人が４人いる。

皆さんこんにちわ。蒼かなたです。
今回は闇の何でも屋の再来です。強敵ですので心して当たってください。
尚、あくまで護衛依頼ですので少なくとも主人とその家族を守れないと失敗扱いになります。
では、良き戦いの舞台をお楽しみください。