ゲスト
(ka0000)
遠吠えに応えるものはなく
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- プレイング締切
- 2015/06/13 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/06/22 12:00
オープニング
●死に絶えた群れ
その狼の群れは優れたリーダーによって統率がなされ、森が豊かな時も狩りの獲物が少ない時も群れが団結して、狩りの喜びも飢餓の苦難も乗り越えてきた。
獲物が少ない時は狩りをする山間の人間と標的がダブる事があったがリーダーは的確に群れを纏め続け、必要以上に人を脅かすことはなかった。
そして人々も群れを束ねる一頭だけ色の抜けたように白銀の毛皮を持つその群れのリーダーにある種の敬意を払い、人と野生動物としてはかなり友好的な間柄をずっと築き続けていた。
異変があったのはいつからだっただろうか。賢くても人と違って明確な【時】に縛られずに生きてきた白狼――人は彼をホワイトファング、と呼んでいたが彼がそれを知るはずもない。
白狼が遠吠えをすれば同族たちから応えがあるのが山の夜の常だった。
人にとっては畏怖の対象になる、全てが同じに聞こえる遠吠えも、狼たちにとっては個体を識別することのできるもので、鳴き方からある程度の現状を把握することができるほど、遠吠えはそれぞれの特徴が出る物だった。
まだ幼い子狼が親を真似て懸命に高らかに吠えようとする微笑ましい声。
母狼となったものが子供にお手本として示す声。
父狼が別の群れの同胞に呼びかける太く雄々しい声。
白狼にとって遠吠えは離れていても仲間や顔見知りの狼たちの近況をしることのできる確実な手段だった。
毎晩お互いの安否を確認するようにかわされた遠吠えが、いつからだろう、櫛の歯が欠けるように一つ、また一つと聞こえなくなっていったのは。
いつからだろう、山で狩りをしていても同族に会うことが極端に減ったのは。
狼にとって分刻みの時間という概念は存在しない。動物にとっては過去も未来もなく、今が全てだ。
日増しに減っていく遠吠えに応える声たち。
そしてその魔手はやがて彼の群れにも食指を伸ばした。
最初に倒れたのは子狼だった。まだ幼く、抵抗力がないため食欲が落ちたと思ったころには骸になった。
それから年老いた狼。白狼にリーダーとしての全てを教えてくれた元のリーダーやそのつがい、一世代前の狼たちがバタバタと倒れ、息を引き取った。
市はまだまだ続く。若い雌の狼が次に倒れ始めた。
命を生み落したばかりの雌の狼は産後から体力を取り戻す前に子を追うように息絶えた。
ホワイトファングと呼ばれた、狼に慕われ人に畏怖の念を抱かせる群れのリーダーは、気付けば彼を除いてすべて骸と化していた。
今はもう、遠吠えに応える存在はいない。他の群れにも、自分の群れにも。
ホワイトファングはたった一頭で、この山に残された。
「そういえば最近狩りの途中でよく動物の死骸に行きあうな……狼の遠吠えもめっきり聞かなくなった」
山間の村に住む狩人の青年が仲間に声をかけると同じ年頃の青年はここ数日の記憶を手繰って確かに、とうなずいた。
「最近夜が妙に静かだと思ったけど、原因は遠吠えが聞こえないからか……虫の声とかはするけど、あの雄々しい、どこか背筋が寒くなる遠吠えは聞こえてこないな……」
「こんなこと、いままであったか? 動物の死骸はよく見かけるのに死肉を漁るカラスが見えないのもおかしい気がする」
「疫病の前触れじゃなきゃいいんだがな……」
「夏の暑さで参ってる女子供や年寄りが多い時期に疫病なんて流行ったら看護する手がいくらあっても足りないぞ……」
狩りをして過ごすためか、都市部より命を身近に感じる感性を持つ男性二人は自分たちの予測に薄ら寒いものを感じて思わず体をさすった。
「あれ、ホワイトファングだ。珍しいな、たった一頭で歩いてるなんて」
経緯を表して通り過ぎるのを待とうと二人が足を止めると白狼は眼を二人へ向けた。
「……なんか様子がおかしくないか?」
赤く染まった爪は異常に長く、牙も格段に長くなっている。
なにより体を伏せたその姿は獲物を狙う肉食獣のそれだ。
口からあふれ出す唾液は長距離を走ったわけでもないのに泡交じりで、血走った瞳にはかつて確かにあった動物にとっての理性の色がない。
「まさか、雑魔化してるのか……!?」
雑魔化していないにしろ変容した爪と牙、そして何より瞳がホワイトファングと崇められた存在が今は人に害をなす生き物だと雄弁に語る。
「できるだけ刺激しないように逃げるぞ。雑魔なら俺たちの手に負えない。それに……」
もし雑魔化しているのがホワイトファングだけでなく他の死体もだとしたら。
「ハンターズソサエティに急いで連絡を取らないと……!」
男性二人は茂みへと大きな石を投げつけ、ホワイトファングがそれに気を取られた隙に逃げ出し、村人に山に分け入らないように伝えた後、ハンターズソサエティに駆け込んだ。
調査の結果、ホワイトファング以外の狼や動物の死骸は雑魔化していないとのことだったが、山の中で最も賢く気高いと言われた白狼は一頭でも調査専門の舞台では歯が立たない程強力な雑魔と化していることが判明したのだった。
かつての山の主は偽りの命を吹き込まれ、殺戮の衝動のままに行きあった動物を襲い、夜にはそれまでの、恐ろしいながらもどこか温かみのある遠吠えではなく血の凍るような遠吠えを上げているという。
今となってはその遠吠えに応えるものはなく、ホワイトファング討伐の依頼が正式にオフィスからハンターに伝えられたのだった。
その狼の群れは優れたリーダーによって統率がなされ、森が豊かな時も狩りの獲物が少ない時も群れが団結して、狩りの喜びも飢餓の苦難も乗り越えてきた。
獲物が少ない時は狩りをする山間の人間と標的がダブる事があったがリーダーは的確に群れを纏め続け、必要以上に人を脅かすことはなかった。
そして人々も群れを束ねる一頭だけ色の抜けたように白銀の毛皮を持つその群れのリーダーにある種の敬意を払い、人と野生動物としてはかなり友好的な間柄をずっと築き続けていた。
異変があったのはいつからだっただろうか。賢くても人と違って明確な【時】に縛られずに生きてきた白狼――人は彼をホワイトファング、と呼んでいたが彼がそれを知るはずもない。
白狼が遠吠えをすれば同族たちから応えがあるのが山の夜の常だった。
人にとっては畏怖の対象になる、全てが同じに聞こえる遠吠えも、狼たちにとっては個体を識別することのできるもので、鳴き方からある程度の現状を把握することができるほど、遠吠えはそれぞれの特徴が出る物だった。
まだ幼い子狼が親を真似て懸命に高らかに吠えようとする微笑ましい声。
母狼となったものが子供にお手本として示す声。
父狼が別の群れの同胞に呼びかける太く雄々しい声。
白狼にとって遠吠えは離れていても仲間や顔見知りの狼たちの近況をしることのできる確実な手段だった。
毎晩お互いの安否を確認するようにかわされた遠吠えが、いつからだろう、櫛の歯が欠けるように一つ、また一つと聞こえなくなっていったのは。
いつからだろう、山で狩りをしていても同族に会うことが極端に減ったのは。
狼にとって分刻みの時間という概念は存在しない。動物にとっては過去も未来もなく、今が全てだ。
日増しに減っていく遠吠えに応える声たち。
そしてその魔手はやがて彼の群れにも食指を伸ばした。
最初に倒れたのは子狼だった。まだ幼く、抵抗力がないため食欲が落ちたと思ったころには骸になった。
それから年老いた狼。白狼にリーダーとしての全てを教えてくれた元のリーダーやそのつがい、一世代前の狼たちがバタバタと倒れ、息を引き取った。
市はまだまだ続く。若い雌の狼が次に倒れ始めた。
命を生み落したばかりの雌の狼は産後から体力を取り戻す前に子を追うように息絶えた。
ホワイトファングと呼ばれた、狼に慕われ人に畏怖の念を抱かせる群れのリーダーは、気付けば彼を除いてすべて骸と化していた。
今はもう、遠吠えに応える存在はいない。他の群れにも、自分の群れにも。
ホワイトファングはたった一頭で、この山に残された。
「そういえば最近狩りの途中でよく動物の死骸に行きあうな……狼の遠吠えもめっきり聞かなくなった」
山間の村に住む狩人の青年が仲間に声をかけると同じ年頃の青年はここ数日の記憶を手繰って確かに、とうなずいた。
「最近夜が妙に静かだと思ったけど、原因は遠吠えが聞こえないからか……虫の声とかはするけど、あの雄々しい、どこか背筋が寒くなる遠吠えは聞こえてこないな……」
「こんなこと、いままであったか? 動物の死骸はよく見かけるのに死肉を漁るカラスが見えないのもおかしい気がする」
「疫病の前触れじゃなきゃいいんだがな……」
「夏の暑さで参ってる女子供や年寄りが多い時期に疫病なんて流行ったら看護する手がいくらあっても足りないぞ……」
狩りをして過ごすためか、都市部より命を身近に感じる感性を持つ男性二人は自分たちの予測に薄ら寒いものを感じて思わず体をさすった。
「あれ、ホワイトファングだ。珍しいな、たった一頭で歩いてるなんて」
経緯を表して通り過ぎるのを待とうと二人が足を止めると白狼は眼を二人へ向けた。
「……なんか様子がおかしくないか?」
赤く染まった爪は異常に長く、牙も格段に長くなっている。
なにより体を伏せたその姿は獲物を狙う肉食獣のそれだ。
口からあふれ出す唾液は長距離を走ったわけでもないのに泡交じりで、血走った瞳にはかつて確かにあった動物にとっての理性の色がない。
「まさか、雑魔化してるのか……!?」
雑魔化していないにしろ変容した爪と牙、そして何より瞳がホワイトファングと崇められた存在が今は人に害をなす生き物だと雄弁に語る。
「できるだけ刺激しないように逃げるぞ。雑魔なら俺たちの手に負えない。それに……」
もし雑魔化しているのがホワイトファングだけでなく他の死体もだとしたら。
「ハンターズソサエティに急いで連絡を取らないと……!」
男性二人は茂みへと大きな石を投げつけ、ホワイトファングがそれに気を取られた隙に逃げ出し、村人に山に分け入らないように伝えた後、ハンターズソサエティに駆け込んだ。
調査の結果、ホワイトファング以外の狼や動物の死骸は雑魔化していないとのことだったが、山の中で最も賢く気高いと言われた白狼は一頭でも調査専門の舞台では歯が立たない程強力な雑魔と化していることが判明したのだった。
かつての山の主は偽りの命を吹き込まれ、殺戮の衝動のままに行きあった動物を襲い、夜にはそれまでの、恐ろしいながらもどこか温かみのある遠吠えではなく血の凍るような遠吠えを上げているという。
今となってはその遠吠えに応えるものはなく、ホワイトファング討伐の依頼が正式にオフィスからハンターに伝えられたのだった。
解説
・目的
山の主として人からも動物からも畏怖されていた白狼(通称ホワイトファング)の討伐。
・注意すること
一頭ですがもともと賢い狼だったことと仲間を失った悲しみが多少残っているため下級雑魔とはいえそれなりの強さを誇ります。
冷静さを保ちながら普段体を守るために使われない分の力も使ってくるため油断は禁物です。
ホワイトファングは雑魔として蘇ったものの日は浅く、どうやら傷ついた仲間がどこかにいて自分はそれを探しに行かなければならない、立ちふさがるのは仲間を傷つけた憎むべき存在、と認識しているらしく非常に攻撃的になっています。
今はもういない仲間をどうにか探し出そうと山を駆け回っているため正確にどこにいるのか、行きあうまで分かりません。
・ホワイトファングについて
美しい白銀の毛皮を持っていた狼。野生の狼にしては綺麗な白い牙でもあったことからこの通称が付きました。
今は毛皮は殺戮した動物の血で汚れ、牙も変色してしまっています。
かつては人々からも一目置かれる、いわゆる山の主のような存在でした。
夜ごと遠吠えで喪った仲間を呼び、返ってこない返事にますます凶暴さを露わにしながらもういない仲間を探し出そうとしています。
・その他
傷ついた仲間を探しているホワイトファングですが、これは感情がそうさせているというより仲間の死を理解する前に自らも倒れ、雑魔となった時に記憶が混乱しているためと思われます。
山の主として人からも動物からも畏怖されていた白狼(通称ホワイトファング)の討伐。
・注意すること
一頭ですがもともと賢い狼だったことと仲間を失った悲しみが多少残っているため下級雑魔とはいえそれなりの強さを誇ります。
冷静さを保ちながら普段体を守るために使われない分の力も使ってくるため油断は禁物です。
ホワイトファングは雑魔として蘇ったものの日は浅く、どうやら傷ついた仲間がどこかにいて自分はそれを探しに行かなければならない、立ちふさがるのは仲間を傷つけた憎むべき存在、と認識しているらしく非常に攻撃的になっています。
今はもういない仲間をどうにか探し出そうと山を駆け回っているため正確にどこにいるのか、行きあうまで分かりません。
・ホワイトファングについて
美しい白銀の毛皮を持っていた狼。野生の狼にしては綺麗な白い牙でもあったことからこの通称が付きました。
今は毛皮は殺戮した動物の血で汚れ、牙も変色してしまっています。
かつては人々からも一目置かれる、いわゆる山の主のような存在でした。
夜ごと遠吠えで喪った仲間を呼び、返ってこない返事にますます凶暴さを露わにしながらもういない仲間を探し出そうとしています。
・その他
傷ついた仲間を探しているホワイトファングですが、これは感情がそうさせているというより仲間の死を理解する前に自らも倒れ、雑魔となった時に記憶が混乱しているためと思われます。
マスターより
狼の遠吠えは流石に聞いたことがないのですが個体識別できるとどこかで聞いたのでこんなシナリオを。
喪った仲間を探し続ける山の覇者を、仲間の許へ送り届けてあげてください。
喪った仲間を探し続ける山の覇者を、仲間の許へ送り届けてあげてください。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/06/14 15:30
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 霧雨 悠月(ka4130) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/06/12 21:10:28 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/10 21:49:27 |