• 東征
  • 無し

【東征】恵土地乃下焔ノ道行

マスター:鳥間あかよし

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/07/20 19:00
リプレイ完成予定
2015/07/29 19:00

オープニング


 山本五郎左衛門を討ち果たし、歓喜に湧いた東方が、再び絶望で塗りつぶされようとしていた。
 突如その姿を表した九つの蛇をその尾に宿した大狐。妖怪の首魁にして、憤怒の歪虚の至高存在。比喩抜きに山の如き巨体を誇る妖狐は既に展開されていた結界を抜け、東方の地を蹂躙しながら天の都へと至ろうとしていた。
 ――数多もの東方兵士たちの生命を貪りながら。
 同時に、妖狐は東方の守護結界に大穴を作っていた。今もその穴を通じ妖怪たちが雪崩れ込んでおり、百鬼夜行が成らんとしている。

 かつて無いほどの窮地に立たされながら、東方はそれでも、諦めなかった。
 最後の策は指向性を持った結界を作り九尾を止め、結界に開いた穴を新たなる龍脈の力を持って塞ぐこと。それをもって初めて、最終決戦の為の舞台を作る。

 そのために今必要とされるのは人類たちは九尾達の後方――かつて妖怪たちに奪われし『恵土城』の奪還と、可及的速やかな結界の展開。
 東方の民と東方の兵の亡骸を――僅かでも減らすその為に。

●どこかの話
 龍尾城地下。結界の間で、スメラギは井戸へ体を預けてへたりこんでいた。
 足元から白い波動があふれ、黒龍の像がからみつく井戸へ吸い込まれていく。井戸の先は龍脈炉だ。いつでも結界が張れるようにしておかねば。それが守護結界であれ、四神のものであれ。辺りは血まみれだった。井戸のふちはしんしんと重く濡れていく。
「スメさん、演説おつかれさま」
 視界に影が映る。どこか浮わついた感の残る声。これで三つも年上なのだからあきれてしまうし……。
 相槌を打とうとして、スメラギはせきこんだ。酸化しかけた血痕へ真新しい紅が重なる。
「やってらんねェくらいデカイぜ。死んだなこれって思った」
 スメラギは小さく笑った。蒼人の声は、真夏に食べたスイカみたいに、ひやっと心地よい。
「それで盛大にビビッて結界を解除したのか」
「ビビッてねェよ、戦略的撤退だ。ちげーし、マジちげーし」
「ところでさ、西方料理はどうだった? 聞かせてよ」
「お断りだ」
「だって西方料理をたらふく食べたのは今のところスメさんだけだよ。気になるじゃないか」
「俺様がビビリならおまえは大概なアホ」
「いいじゃん。アホやってると楽しいよ」
 蒼人は明るい声を上げた。こんな時にも好奇心をにじませているのは器が大きい証かもしれない。
「僕もハンターに会ったよ。おかげで万事滞りなく行った。何よりさ……」
 いい人たちだったよ。
 スメラギが目を伏せた。沈黙のあとぽつりとこぼす。
 知ってる。
 静寂をやぶったのは蒼人だった。きびきびと回れ右をする。
「じゃあ僕は僕で動くよ。スメさん、お元気で」
 残されたスメラギも両脚へ力を込め、立ち上がる。
「……おまえもな、蒼人」

●いまの話
 立花院に呼ばれたあなた達は、六畳ほどの作戦室に居た。
 隣室へは続々と報告が届いている。総指揮を担う彼の、ほつれた髪へ疲れがにじんでいる。長卓へ置かれているのは桐の箱だ。

「皆さんには、恵土城攻略班の別働隊として地下へ潜入してもらいます」

 恵土城地下にも、井戸の形をした祭壇があるのだそうだ。
 そこへ要石を捧げ、南方の四神結界、朱雀の結界を張るという依頼だった。
 立花院はむしくいだらけの地図を示した。
 件の地下迷宮の広さは1km四方といったところか。四つの部屋が点在し、そのうちの一つに井戸の形をした祭壇があるらしい。
 入り組んだ廊下の道幅は最大で四メートル。細いところは人一人がやっと通り抜けられるほど。
 迷宮は、とうぜん憤怒の歪虚の巣窟になっているだろう。先遣隊の断片的な情報を頼りにするなら、獣型の歪虚が多く活動していることから、呼吸は問題なくできるようだ。確認した限り雑魚が大半とうかがい知れる。だが憤怒の彼奴らは炎を使う。地下迷宮で火に囲まれたとなればどうなるか。

 そのうえ。
「懸念が二点。ひとつは……」
 立花院が桐箱を開いた。中から綿で包まれたものが出てくる。石の人形だ。そろいの衣裳を着ているから、双子なのだろう。推測の範疇を出ないのは、顔が削り取られているからだ。
「この人形は長年神事に使われてきたものです。

 持っていると歪虚に勘付かれやすくなるでしょう」

 ふたつめは、朱雀の結界が」
 立花院が言葉を切った。口へ出すことを恐れているかのようだった。
「……必ずしも発動するとは限らないということです」
 すこし部屋の温度が下がった気がする。どういう意味かとあなたは問い返す。
「長い間歪虚が占拠していた炉です。正常に作動しない可能性があります」
 バクチな話だ。どうしたものかと首をひねったその時、ふすまが開け放たれた。
「よお」
 青い顔のスメラギが縁へ寄りかかっている。口元を布で覆ったまま、スメラギは咳こみながらしゃべった。白い布へ、鼻血の痕が広がっていく。
「話は聞いたぜ。おまえら手を貸してくれ。この人形に細工をするからよ」
 立花院の細面に動揺が浮かぶ。スメラギの声が一段低くなった。
「紫草、こいつらは昔々の約束に応えてくれた。なら、俺様もちったァ仕事しなけあご先祖に顔向けできねェ。歪虚が寄ってくるのはどうにもなんねェが、せめて間違いなく結界を張れるようにしとくのが、俺様の役目だろうが」
「しかしお体が……」
「今気張らないで、いつ気張るんだよ!」
 スメラギが吠えた。沈痛な面持ちのまま立花院が言う。
「御身の身代わりは石では勤まらぬことを、お忘れなきよう」
 一歩下がった立花院を通り抜け、スメラギは双子の石人形を持ち上げた。
「これより神事を行い、おまえたちのマテリアルをこの人形へ注ぐ」
 それで必ず結界が発動するのか、あなたがそう問うた。
「する」
 スメラギは断言した。
「龍脈越しに俺様がおまえたちのマテリアルを感じ取り、天ノ都から水を向ける。

 結界発動は心配すんな。おまえたちの仕事は、地下迷宮で井戸を探し、要石を投げ込む、それだけだ。

 行ってくれるか?」
 あなたはうなずいた。スメラギの表情が緩む。彼は背後へ回り、人形であなたの背を優しく叩く。
「うごなはれるひとども、はらへたまひきよめたまふことを……」
 わずかな時、六畳間は神前と化した。


 暴れ回る大妖狐を大きく迂回し、漸く辿り着いた恵土城を遠方に見やったハンターと東方武士達は、言葉を無くしていた。美しき東方の城。その天守閣を覆うほどに黒々と広がった、『泥』。
 同道していた術士が呆然と呟いた。
「……龍脈が」
 喰われている、と。
 地下から吸い上げられた龍脈が天守閣の泥へと吸い上げられている。しかし、果たして、この戦場における狙いは定まった。

 地下と天守閣。その二つを、落とさなくてはならない。
 この局面での失敗は、即ち東方の終わりを意味する。だが、恐れずにハンター達は歩を進めた。
 ――運命に、抗う。
 ハンター達は、その言葉の意義を自ら証するためにこの場にいた。

解説

恵土城地下の井戸へ石人形を放り込みましょう。
迷宮入り口からスタート。

>歪虚 迷宮内を5匹ほどの群れでうろうろしている。
羊頭狗肉 総数20
 盾型歪虚。マグマの固まりに羊の頭と犬の手足がはえている。
 マグマ嘔吐 射程2 燃えやすいものへは延焼する。
 近接物理へ炎上カウンター。

狡兎三窟 総数10
 回避型歪虚。三つ首のウサギ。
 泣声 射程4 状態異常睡眠を付与。
 HP半分以下で逃亡。

どこかの話はPL情報です。他はすべてPC情報として扱えます。

マスターより

>大轟寺蒼人 赤山MSのところからゲストです。ありがとうございます。

初めまして、もしくは改めまして。鳥間あかよしです。
白紙回避にひとまず

\髪が伸びる/

とでも送ってください。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/07/24 23:05

参加者一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢(ka0187
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • 王国騎士団非常勤救護班
    クルス(ka3922
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 現代っ子
    高円寺 義経(ka4362
    人間(蒼)|16才|男性|疾影士
  • 紅つ国朱雀の導き手
    衛 琳(ka4837
    人間(紅)|16才|男性|舞刀士

  • 雪加(ka4924
    人間(紅)|10才|女性|猟撃士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/18 14:39:31
アイコン 作戦相談
高円寺 義経(ka4362
人間(リアルブルー)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/07/20 18:36:19