グラズヘイム王国の南部平原地帯。
　依頼で地方貴族に貴金属を届けた帰り道、ハンター一行は荒野の直中にある村へと立ち寄る。
　日中に眺めた限りはごく普通の村だった。教会に出入りする村人の多さから平和を感じたのも確かなことだ。
　夕方までに宿部屋を借り、村で一軒だけの料理店へと向かう。
　そこは料理店とは名ばかりのうらぶれた酒場である。それでも空腹は満たされた。美味くも不味くもないそこそこの郷土料理によって。
　宿部屋に戻って寝ようとしていたところで激しい雷鳴が聞こえる。その直後、外では土砂降りの雨が降りだした。
　明朝には晴れるだろうと仲間同士で話していると、廊下に通じる扉が叩かれる。仲間の一人が応対すると扉の向こう側から小さな声が届いた。「どうか助けて」と。
　扉を開けてみれば廊下にはびしょ濡れのまだ幼い男の子と三十路の母親が立っている。宿部屋へ招き入れて事情を聞いたところ、耳を疑う話を聞かされた。
　母親によればここは盗賊の村で秘密裏に人身売買が行われているらしい。
　親子は旅の途中で拐かされて、昨日この村に連れて来られたのだという。はっきりと口にはしなかったが、父親は二人を庇って亡くなったようである。
　先程の落雷で名ばかりの教会の壁に穴が空いたそうだ。天の助けだと思って命からがら逃げだしたものの、城門は閉じていて村を取り囲む城壁を越えられなかった。
　仕方なく玄関の扉が開いていた宿へと忍び込む。廊下を歩いていたところ、ハンター達の会話が聞こえてきた。そして助けを求めたのがここまでの顛末だった。
　ハンター達が休んでいる宿部屋は二階にある。窓から野外を窺うと何やら騒がしい。どうやら母親がいっていたことは事実のようだ。
　雨降る真夜中だったが、ハンター一行は親子を連れて村を立ち去ることにした。馬車が置いてある宿の厩舎を目指す。
　一同が濡れながら庭を歩いていたとき、ランタンの輝きが遠くに見える。誰かが大声で叫んだ。こんな時間に村から逃げだそうとしている何者かがいると。

　みなさんは知らずに盗賊の村へ立ち寄りました。救助を求めてきた親子を連れて村を脱出してください。

　みなさんがハンターなのは料理店での会話から村人にばれています。人攫いの一件がばれなければ盗賊は普通の村人を演じきったことでしょう。

※ＰＬ情報（みなさんが事前に知り得ない情報）
　実は単なる盗賊の村ではありません。盗賊は資金を集めるための手段に過ぎず、村人は歪虚を信奉しています。雑魔をけしかけてくるかも知れませんのでお気を付けて。

　質問があればハンターオフィス職員のフミナ・エミエール（kz0131）が卓で答えます。質問締め切りは出発の一日前までです。

　変則的ですが成功判定はＯＰ上で終わったことになっている貴金属を届けた依頼と連動しています。

　盗賊の村を脱出した後は他の町村に駐留する騎士団や官憲に通報して下さい。
　脱出の際に襲ってきた村人を倒したとしても罪に問われることはないでしょう。村人は盗賊として扱われます。

　ＰＬ情報ですが親子の父親は生きています。大怪我して倒れたところを助けられて治療中です。