ゲスト
(ka0000)
【東征】ひよことたまごの救急隊
マスター:鳥間あかよし

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在25人 / 1~25人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/08/24 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/09/02 12:00
オープニング
●小景
木々の隙間から少女が、天ノ都が燃えゆく様を眺めていた。
手足は細く、ごくごく幼い。七つになったかならぬかだろう。
ごわついた樹皮へ体を預け、焦げ臭い風に吹かれながら、生まれ育った場所が焦土へ帰っていくところを彼女はまばたきもせず見つめている。大きく見開いたままの瞳へ潮が満ちていく。
風が途切れた、わずかな間隙を縫って漂う異臭に、彼女は鼻を引くつかせた。
少女は歩き出した。わき目もふらず、あなたへ向かって。
●まれびとが来た話
天ノ都が燃えているのを、あなたも眺めていた。
炎にゆらめく都の影があたり一面の水田に映りこんで、蜃気楼のようだった。
ここは都から程近い避難所だ。
かろうじて残っている守護結界のおかげか雑魔は影も形もない。
警備の名目でやって来たが、歪虚相手の戦果はなしに終わりそうだ。
することが見つからず、水汲みの少年へついてため池まで足を伸ばす。水色の瞳のすりきれた狩衣の少年は、朱へ染まった都の姿に言葉を失っている。あなたが水を向けると、その少年、鴻池ユズル(こうのいけ・ゆずる)は独り言のように語りだした。
「どこかで見た景色だと感じてね」
紅蓮の炎に巻かれる都が、近くの寺の奉納画を彼に思い出させたのだという。金棒を持った異形が亡者を責めさいなむその絵は、すっかり色あせて、ところどころ剥げていたけれど、十と二つばかりの彼には、それがかえって生々しく感じられたと。
「地獄の絵だと、先生はおっしゃっていたよ」
鴻池が先生と呼ぶのは、都の下町にある泉玄舎の四代目のことだ。泉玄舎は陰陽師を育成する小さな学び舎で、鴻池を含めて六人のこどもが住み込んでいる。まだまだ家事や行儀見習いが主で、肝心の符術が使えるのは年長の二人だけ、その二人も駆け出しのひよっこだから、泉玄舎の看板は先生だけで背負っていた。その先生は、南の戦へいったきり、音沙汰がない。
つい先日のことが思い出されて鴻池はうなだれた。あの気のいい人たちは、無事だろうか。下町はたびかさなる火災と今回の作戦とで、壊滅してしまうかもしれない。
「こうなって初めて、守護結界の偉大さを感じているよ。僕にもっと力があれば……」
あなたはどう声をかけていいのかわからず彼へ一歩近づいた。鴻池はおとなしげな笑みを浮かべてあなたを見上げると、黙々と洗濯をしている兄弟子を呼んだ。
「なあ尼崎」
「なんだ」
「先生はご無事で、つめたっ!」
泡だらけの服が投げつけられ、鴻池が閉口する。少年、尼崎チアキ(あまがさき・ちあき)はすぐに背を向けた。
「だまってやれ」
ぶっきらぼうな声に、鴻池は言いたいことを腹へ飲み込んだ。不機嫌な尼崎とは議論しても無駄だとわかっているのだろう。それに、不穏なことは口に出すと本当になってしまう気がしたからかもしれない。
振り返ると、村長の家を取り巻くように簡素な小屋が並んでおり、都から逃れてきた人々がぼんやりと気の抜けたような顔でたたずんでいる。
ここは本来、小さな集落だったが、現在では七十人ほどに膨れあがっている。しかしこの日のために建てられた一時の宿があり、十分な備蓄があった。平坦で開けた土地には、お上が運び込んだ資材もある。魚の泳ぐため池と、風よけの林を基礎に築いた防壁まである。万一守護結界の加護からはずれようとも、数日はもちこたえると楽観視されていた。
今ではそこが、鴻池たちの寝起きする場所になっている。
泉玄舎を出る時も、彼らに焦りはなかった。先生から言われていたとおりにすればよかったから、アオナは先生のお茶碗を布にくるんで荷物へいれていたし、アケミはいつもどおり何を考えているのかよくわからない無表情で文句も言わずにいる。いちばん下の妹弟子、シロミツとクロミツなんかは遠足と勘違いしていたくらいだ。最低限の着替えといくばくかの銭、宝具の入った箱、必要なものはすべて持ち出せた。ただ、畳の間へ飾った大きな護符を持ってこれなかったのが、悔やまれる。
鴻池は炎の織り成す影絵を透明なまなざしで見つめた。
「これから先どうなろうと、僕はこの景色を忘れずにいようと思うよ」
勝手にしろと言い捨て、尼崎はたすきがけをした袖を無意味にまくりあげた。まだ十三になったばかりの彼は、じっとしていると不安に押しつぶされそうだったのかもしれない。尼崎が鴻池から視線をはずす。泡にまみれた手が、びくりと震えた。
遠くから人影の連なりが歩いてくる
まるで葬列のように、よろめきながらあぜ道を進む人々は、髪は乱れ服は泥だらけだ。大八車には重い傷を負った人が荷物のように積まれている。
雑魔に襲われた都はずれの村人だろう。かの歪虚王の猛攻により守護結界の加護を失ったがため逃げ出してきたのだ。親兄弟を奪われ、飢え渇き疲れきった彼らの前に広がったのは、業火に飲まれる都の姿だった。
「……おお」
「都が、天ノ都が」
青年が膝から崩れ落ち、年老いた婆が念仏を唱えだす。
「あきらめないで! ここまでおいで、あと一息だよ!」
顔をあげた彼らの瞳へ、ひよっこ符術師たちの姿が映る。それから、見慣れない格好の戦士たち。
あなたが手を振る。うわさに聞く西からのモノノフだと気づいた村人たちの瞳に希望の火がともる。彼らは最後の気力を振り絞り歩き出した。
都はずれから逃げてきた人々は三十人、避難所は百へ届く大所帯になった。
程度の差はあれ負傷者ばかりだ。
土地はあるが小屋が足りず、彼らは地面に敷いたござの上に寝かせられた。
追加の小屋を建てるべく腰を上げたあなたは、袖を引かれて驚いた。
泉玄舎の妹弟子アケミが、あなたの服をつかんでいる。一人で居ることの多いこの子にしては、珍しく切羽詰った様子だ。どうしても伝えたいことがあってここまで歩いてきたかのような。
「変なにおいがする。裏のごいんきょさんが寝ついて死んだときと同じにおい」
それだけいってアケミは口を閉じた。彼女は元よりつっけんどんなうえに、言いたいことだけ言うから話がぶつぎりになりがちだ。もっとも、七つの子に筋道立てろというのも無理な話ではある。悪気はないと承知している鴻池が、ひとつずつ丁寧に聞きだした。
「いつ?」
「ずっと」
「今もしてる?」
「今も」
「どこから?」
「ケガの人から」
あなたには思い当たる節があった。
三十人の村人は、疲れか、心労か、環境か。風邪を患っていた。
あなたが見立てたところ、まだ症状は軽い。時おり咳き込み、微熱が出ている程度だ。しかし放っておけば、とりかえしのつかない事態になるだろう。
疫病の広がる予感がした。
木々の隙間から少女が、天ノ都が燃えゆく様を眺めていた。
手足は細く、ごくごく幼い。七つになったかならぬかだろう。
ごわついた樹皮へ体を預け、焦げ臭い風に吹かれながら、生まれ育った場所が焦土へ帰っていくところを彼女はまばたきもせず見つめている。大きく見開いたままの瞳へ潮が満ちていく。
風が途切れた、わずかな間隙を縫って漂う異臭に、彼女は鼻を引くつかせた。
少女は歩き出した。わき目もふらず、あなたへ向かって。
●まれびとが来た話
天ノ都が燃えているのを、あなたも眺めていた。
炎にゆらめく都の影があたり一面の水田に映りこんで、蜃気楼のようだった。
ここは都から程近い避難所だ。
かろうじて残っている守護結界のおかげか雑魔は影も形もない。
警備の名目でやって来たが、歪虚相手の戦果はなしに終わりそうだ。
することが見つからず、水汲みの少年へついてため池まで足を伸ばす。水色の瞳のすりきれた狩衣の少年は、朱へ染まった都の姿に言葉を失っている。あなたが水を向けると、その少年、鴻池ユズル(こうのいけ・ゆずる)は独り言のように語りだした。
「どこかで見た景色だと感じてね」
紅蓮の炎に巻かれる都が、近くの寺の奉納画を彼に思い出させたのだという。金棒を持った異形が亡者を責めさいなむその絵は、すっかり色あせて、ところどころ剥げていたけれど、十と二つばかりの彼には、それがかえって生々しく感じられたと。
「地獄の絵だと、先生はおっしゃっていたよ」
鴻池が先生と呼ぶのは、都の下町にある泉玄舎の四代目のことだ。泉玄舎は陰陽師を育成する小さな学び舎で、鴻池を含めて六人のこどもが住み込んでいる。まだまだ家事や行儀見習いが主で、肝心の符術が使えるのは年長の二人だけ、その二人も駆け出しのひよっこだから、泉玄舎の看板は先生だけで背負っていた。その先生は、南の戦へいったきり、音沙汰がない。
つい先日のことが思い出されて鴻池はうなだれた。あの気のいい人たちは、無事だろうか。下町はたびかさなる火災と今回の作戦とで、壊滅してしまうかもしれない。
「こうなって初めて、守護結界の偉大さを感じているよ。僕にもっと力があれば……」
あなたはどう声をかけていいのかわからず彼へ一歩近づいた。鴻池はおとなしげな笑みを浮かべてあなたを見上げると、黙々と洗濯をしている兄弟子を呼んだ。
「なあ尼崎」
「なんだ」
「先生はご無事で、つめたっ!」
泡だらけの服が投げつけられ、鴻池が閉口する。少年、尼崎チアキ(あまがさき・ちあき)はすぐに背を向けた。
「だまってやれ」
ぶっきらぼうな声に、鴻池は言いたいことを腹へ飲み込んだ。不機嫌な尼崎とは議論しても無駄だとわかっているのだろう。それに、不穏なことは口に出すと本当になってしまう気がしたからかもしれない。
振り返ると、村長の家を取り巻くように簡素な小屋が並んでおり、都から逃れてきた人々がぼんやりと気の抜けたような顔でたたずんでいる。
ここは本来、小さな集落だったが、現在では七十人ほどに膨れあがっている。しかしこの日のために建てられた一時の宿があり、十分な備蓄があった。平坦で開けた土地には、お上が運び込んだ資材もある。魚の泳ぐため池と、風よけの林を基礎に築いた防壁まである。万一守護結界の加護からはずれようとも、数日はもちこたえると楽観視されていた。
今ではそこが、鴻池たちの寝起きする場所になっている。
泉玄舎を出る時も、彼らに焦りはなかった。先生から言われていたとおりにすればよかったから、アオナは先生のお茶碗を布にくるんで荷物へいれていたし、アケミはいつもどおり何を考えているのかよくわからない無表情で文句も言わずにいる。いちばん下の妹弟子、シロミツとクロミツなんかは遠足と勘違いしていたくらいだ。最低限の着替えといくばくかの銭、宝具の入った箱、必要なものはすべて持ち出せた。ただ、畳の間へ飾った大きな護符を持ってこれなかったのが、悔やまれる。
鴻池は炎の織り成す影絵を透明なまなざしで見つめた。
「これから先どうなろうと、僕はこの景色を忘れずにいようと思うよ」
勝手にしろと言い捨て、尼崎はたすきがけをした袖を無意味にまくりあげた。まだ十三になったばかりの彼は、じっとしていると不安に押しつぶされそうだったのかもしれない。尼崎が鴻池から視線をはずす。泡にまみれた手が、びくりと震えた。
遠くから人影の連なりが歩いてくる
まるで葬列のように、よろめきながらあぜ道を進む人々は、髪は乱れ服は泥だらけだ。大八車には重い傷を負った人が荷物のように積まれている。
雑魔に襲われた都はずれの村人だろう。かの歪虚王の猛攻により守護結界の加護を失ったがため逃げ出してきたのだ。親兄弟を奪われ、飢え渇き疲れきった彼らの前に広がったのは、業火に飲まれる都の姿だった。
「……おお」
「都が、天ノ都が」
青年が膝から崩れ落ち、年老いた婆が念仏を唱えだす。
「あきらめないで! ここまでおいで、あと一息だよ!」
顔をあげた彼らの瞳へ、ひよっこ符術師たちの姿が映る。それから、見慣れない格好の戦士たち。
あなたが手を振る。うわさに聞く西からのモノノフだと気づいた村人たちの瞳に希望の火がともる。彼らは最後の気力を振り絞り歩き出した。
都はずれから逃げてきた人々は三十人、避難所は百へ届く大所帯になった。
程度の差はあれ負傷者ばかりだ。
土地はあるが小屋が足りず、彼らは地面に敷いたござの上に寝かせられた。
追加の小屋を建てるべく腰を上げたあなたは、袖を引かれて驚いた。
泉玄舎の妹弟子アケミが、あなたの服をつかんでいる。一人で居ることの多いこの子にしては、珍しく切羽詰った様子だ。どうしても伝えたいことがあってここまで歩いてきたかのような。
「変なにおいがする。裏のごいんきょさんが寝ついて死んだときと同じにおい」
それだけいってアケミは口を閉じた。彼女は元よりつっけんどんなうえに、言いたいことだけ言うから話がぶつぎりになりがちだ。もっとも、七つの子に筋道立てろというのも無理な話ではある。悪気はないと承知している鴻池が、ひとつずつ丁寧に聞きだした。
「いつ?」
「ずっと」
「今もしてる?」
「今も」
「どこから?」
「ケガの人から」
あなたには思い当たる節があった。
三十人の村人は、疲れか、心労か、環境か。風邪を患っていた。
あなたが見立てたところ、まだ症状は軽い。時おり咳き込み、微熱が出ている程度だ。しかし放っておけば、とりかえしのつかない事態になるだろう。
疫病の広がる予感がした。
解説
避難所がえらいことになるのを防いでください。
>行動例
【救】傷や風邪の手当てなどなど直接的な行動。
【護】小屋の建築や炊き出し、健康な避難民の相手などなど間接的な行動。
土地ならびに必要な資材は現地へ十分に確保されているものとみなします。
避難民は総じて悲観的かつ不活性な傾向、ひらたくいうと都が燃えてガチでへこんでいる、ですが説得しだいでしょう。
NPCはハンターが好きなのでちょろちょろしています。
>避難所簡略図
池>空き地>小屋>村長宅>小屋>空き地>防風林
>NPC ガン無視してOKです
鴻池ユズル
ひよっこ符術師 十二才 熱意だけはある
尼崎チアキ
ひよっこ符術師 十三才 ネガティブなできすぎくん
妹弟子 符術師のたまご
アオナ 十才 おねえさん役
アケミ 七才 無口ふしぎちゃん
シロミツ・クロミツ 同時に拾われたっぽい 四才くらい
マスターより
おいといて、鳥間あかよしです。
ハンターは風邪薬をドリンク剤であおって二十四時間戦うのです。
参加された方はひとまず
\あなたの風邪はどこから/
とでも送ってください。
ハンターは風邪薬をドリンク剤であおって二十四時間戦うのです。
参加された方はひとまず
\あなたの風邪はどこから/
とでも送ってください。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/09/08 18:35
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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救護テント(相談卓) カール・フォルシアン(ka3702) 人間(リアルブルー)|13才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/08/24 00:37:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/23 19:52:22 |