東方エトファリカで起きた、大規模な合戦。その戦いは、人類史上初の『歪虚王撃破』という結末を以って幕を閉じた。
　だが……決して、手放しで喜べるような状況ではない。戦いの犠牲になった英霊達、歪虚によって傷付けられた大地、そして……大いなる守護者、黒龍の消滅。
　人類が手に入れたものは大きいが……失ったもの、失われたものは、同じくらい大きい。
　それでも、人々は足を止める事なく、前に進もうとしている。東方エトファリカ復興に向け、多くの人材や物資が搬入。歪虚の脅威から解放された東方は、新しい『明日』に向けて歩み始めていた。
「エトファリカの人達、これから大丈夫でしょうか？」
「大丈夫だって！　もう歪虚は居ないんだぜ？　こっちに負けないくらい発展するさ！」
「そう巧く進む保証は無いが……お前のように楽天的に考えるのも悪くないかもしれんな」
　東方での大戦は、西方世界の各国でも話題になっている。勝った事を共に喜び、黒龍の一件で心を痛め、エトファリカの行く末を案じていた。今や、東方世界が人々の関心を集めている、と言っても過言ではないだろう。
　そんな希望に満ちた状況だからこそ……歪虚は暗躍する。頭で考えた行動ではなく、本能に従って。
「マ～マ～、あれ、なぁに？」
　最初に気付いたのは、小さな子供だった。帝国の上空を飛び回る、２つの影。弧を描くような動きは、機械ではなく鳥類だろう。
「何だろうね？　大きな鳥さんかな」
　子供の頭を撫でながら、母親は優しく言葉を返した。
　次の瞬間。
　２つの影が、風を切りながら急降下。親子との距離を瞬く間に詰める。その正体が巨大な鷲だと分かった時には、親子の体が宙に浮き、意識は完全に途切れていた。
　鷲が人を襲う事は滅多にないが……この鷲の正体は、死体型の雑魔。死した鳥が自然の摂理を無視して蘇り、人々を襲っているのだ。命とマテリアルを奪い、本能に従って血肉を貪るために。
　運が良いのか悪いのか、事件の一部始終を目撃してしまった少年が１人。彼は急いで町長の家に駆け込み、事情を説明。町長は事件現場で『血の跡』を確認すると、少年を連れてハンターズソサエティへと急いだ。

　平和な町に突然現れた、不死型雑魔の鷲。奴らのせいで１組の親子が命を落とし、次の獲物を探して上空を旋回しているようです。町の平和を取り戻すためにも、雑魔の撃破をお願いします。

　鷲が出現したのは、帝国にある小さな田舎町。人口は50人前後で、農業が盛んな町です。
　この町の中央にある広場で、親子が襲われて命を失いました。広場は円形で直径200m程度。周囲は街路樹で囲まれ、ベンチや遊具も若干あります。ですが『何も無い空間』の方が広いので、移動を制限される事は無いでしょう。

　殲滅対象は、２匹の鷲。死体型の雑魔で、体長は2m前後。翼を広げると4m近くなります。
　普段は地表から20m程度の上空を旋回していますが、獲物を発見すると急降下して襲ってきます。状況から推測するに、小柄な子供や女性の方が狙われ易いかもしれません。
　強襲が成功しても失敗しても上空に舞い戻りますが、翼を傷付けられると高度が減少します。ダメージ次第では、飛べなくする事も可能でしょう。
　攻撃方法は、爪と嘴による直接攻撃。あと、翼から風の球を撃ち出す能力を持っています。爪と嘴は近接攻撃で、命中とダメージが若干高いです。
　風の球は射程10m程度で、鷲を中心に90度の扇型に広がる魔法攻撃。複数対象を同時に攻撃するため、威力は若干低めです。
　目撃された雑魔を２匹倒せなければ、依頼は失敗となります。作戦中は広場周辺を立ち入り禁止にするので、一般人が巻き込まれる可能性はありません。

　この依頼に目を通して下さった方、参加して下さった方、過去に参加して下さった方に感謝を。
　香月丈流です。

　町中での戦闘になるので、遊具等の破損にはご注意を。
　戦闘に巻き込まれても依頼失敗にはなりませんが、壊さない方が住民には喜ばれます。
　理由もなく意図的に破壊した場合は、減点対象になります。