ゲスト
(ka0000)
世界はそれでも尚、貴方を愛している。
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在10人 / 4~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/09/27 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/10/06 07:30
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
「レイチェル、グイン!」
酒場の扉を開けた二人の姿を見て、店のマスターは思わず顔をほころばせた。
町から旅だったエルフの吟遊詩人の女性レイチェルと、彼女を一途に愛した少年グイン。半年は過ぎたが一年には満たない離別であったが、二人の雰囲気は全く変わっていた。
「マスター、お久しぶりね」
レイチェルの豊かなブロンドの髪はすっかりやせ細り、艶も失われていた。顔には戻らないであろうシワが増え、体も少し小さくなったように見えた。60か、70を過ぎたようにも見える。
だが、それよりも何よりも。彼女にはとびきりの笑顔があった。ビードロのようにキラキラ輝く瞳はまだ少女のようだし、口元のほほえみは自然で優しかった。飾りをつけた杖を持ってはいるがそれに頼るではなく自らの足で立つ姿は優美で彫刻家ならきっと彼女の立ち姿は題材を得るだろうと思うほど。
時の流れを受けてもなお美しい。人の喜びや自然の恵みを存分に受けて輝いていた。数多の詩を得て世に偏在する心の光を身に宿したような風格であった。
そんな彼女を導くように先導し、手を差し出すグインも違っていた。
前は歩むべき道も見つけられず若いのに死んだような目をしていた粗野な男だった。レイチェルと出会い人が変わったように真摯にはなったが、立ち居振る舞いはまだ青臭いとしか形容できなかった。
そんなグインも、顔つきはすっかり穏やかになり、歩き方一つとっても丁寧さがうかがえる。目はレイチェルと共にあろうとする喜びに燃えていて、所作の一つにもだらけたところがない。胸をはる姿も虚栄ではなくなっていた。
お似合いの。そんな形容がすぐに出てくるような二人であった。
「エルフの森に行って、すっかり端正になっちまったな。レイチェルは森から出てきて大丈夫なのか」
最初に出会ったときはまだ妙齢の美女と言っても差し支えなかった彼女。エルフは長命だが、マテリアルに強く影響を受けやすい特徴から、百を数え始める頃には森に戻り、森に守られた生活でなければ変調を起こすケースが多い。彼女の急激な老化は長年連れ添った人の死からマテリアルバランスを崩し始めた。そしてそれは今も緩やかに続いているのは彼女の外見を見れば明らかだった。
年のはじめにはこの酒場で倒れ、多分もう保たないだろうと誰もが思っていた。だが、多くの人の助けを得て森に帰ることができた。今日また自分の足でこの酒場にまたやって来たことはもう奇跡に違いない。
「お詫びとお礼をしたいと思って」
「迷惑かけっぱなしだったから。吟遊詩人は同じところにまた戻れるとは限らないから、できる時に精一杯のことしないといけないってレイチェルに怒られたよ」
グインは照れくさそうにそう言って背負っていたリュートを下ろした。
ずいぶん使い込まれた雰囲気だ。ハンターからもらった時はまだ新しかったそれも黒ずみが目立つ。特に弦を張っている首の部分の濃淡は手垢によるものだろう。片時も離さず練習に明け暮れていたことがよくわかる。それはグインの手慣れた動きからも。
「グインもとても上手になったのよ。お披露目もかねて今日はお礼の演奏をさせてもらいたいのだけど」
「そりゃあ大歓迎だ。せっかくだ。ハンターにも声をかけてやるよ。世話になった奴が来てくれるかもしれん」
マスターの一言にレイチェルとグインは丁寧に礼をした後、互いを見合わせて微笑んだ。
「なんか変な感じだな……自分の知った顔に聴いてもらうってのは。照れなんて今まで感じたことなかったけど、今は強く感じるよ」
グインがそう言ったのを聞いて、レイチェルはそっと彼の頬にキスをすると、その耳に囁いた。
「それはきっと貴方が周囲の心に敏感になっているせいね。でも大丈夫。世界はそれでも尚、貴方を愛している」
彼女が長年連れ添ったもう一人のグイン。天寿を全うした偉大なるグインにそっくりだな。ささやきを聞いたマスターは湯を沸かしながら小さく口元に笑みを作った。
そして、マスターはレイチェルの言葉を遡ったあと、ふと二人の顔を見直し、ああ。と理解した。
「旅立ちの時、か」
今夜はグインが吟遊詩人として立つ日。そしてレイチェルも立つ日になるのだろう。
世界はそれでも尚、美しい。
偉大なるグインの言葉は遠大すぎるなと、マスターは湯の中から沸き上がっては消える泡を見てそう思った。
「レイチェル、グイン!」
酒場の扉を開けた二人の姿を見て、店のマスターは思わず顔をほころばせた。
町から旅だったエルフの吟遊詩人の女性レイチェルと、彼女を一途に愛した少年グイン。半年は過ぎたが一年には満たない離別であったが、二人の雰囲気は全く変わっていた。
「マスター、お久しぶりね」
レイチェルの豊かなブロンドの髪はすっかりやせ細り、艶も失われていた。顔には戻らないであろうシワが増え、体も少し小さくなったように見えた。60か、70を過ぎたようにも見える。
だが、それよりも何よりも。彼女にはとびきりの笑顔があった。ビードロのようにキラキラ輝く瞳はまだ少女のようだし、口元のほほえみは自然で優しかった。飾りをつけた杖を持ってはいるがそれに頼るではなく自らの足で立つ姿は優美で彫刻家ならきっと彼女の立ち姿は題材を得るだろうと思うほど。
時の流れを受けてもなお美しい。人の喜びや自然の恵みを存分に受けて輝いていた。数多の詩を得て世に偏在する心の光を身に宿したような風格であった。
そんな彼女を導くように先導し、手を差し出すグインも違っていた。
前は歩むべき道も見つけられず若いのに死んだような目をしていた粗野な男だった。レイチェルと出会い人が変わったように真摯にはなったが、立ち居振る舞いはまだ青臭いとしか形容できなかった。
そんなグインも、顔つきはすっかり穏やかになり、歩き方一つとっても丁寧さがうかがえる。目はレイチェルと共にあろうとする喜びに燃えていて、所作の一つにもだらけたところがない。胸をはる姿も虚栄ではなくなっていた。
お似合いの。そんな形容がすぐに出てくるような二人であった。
「エルフの森に行って、すっかり端正になっちまったな。レイチェルは森から出てきて大丈夫なのか」
最初に出会ったときはまだ妙齢の美女と言っても差し支えなかった彼女。エルフは長命だが、マテリアルに強く影響を受けやすい特徴から、百を数え始める頃には森に戻り、森に守られた生活でなければ変調を起こすケースが多い。彼女の急激な老化は長年連れ添った人の死からマテリアルバランスを崩し始めた。そしてそれは今も緩やかに続いているのは彼女の外見を見れば明らかだった。
年のはじめにはこの酒場で倒れ、多分もう保たないだろうと誰もが思っていた。だが、多くの人の助けを得て森に帰ることができた。今日また自分の足でこの酒場にまたやって来たことはもう奇跡に違いない。
「お詫びとお礼をしたいと思って」
「迷惑かけっぱなしだったから。吟遊詩人は同じところにまた戻れるとは限らないから、できる時に精一杯のことしないといけないってレイチェルに怒られたよ」
グインは照れくさそうにそう言って背負っていたリュートを下ろした。
ずいぶん使い込まれた雰囲気だ。ハンターからもらった時はまだ新しかったそれも黒ずみが目立つ。特に弦を張っている首の部分の濃淡は手垢によるものだろう。片時も離さず練習に明け暮れていたことがよくわかる。それはグインの手慣れた動きからも。
「グインもとても上手になったのよ。お披露目もかねて今日はお礼の演奏をさせてもらいたいのだけど」
「そりゃあ大歓迎だ。せっかくだ。ハンターにも声をかけてやるよ。世話になった奴が来てくれるかもしれん」
マスターの一言にレイチェルとグインは丁寧に礼をした後、互いを見合わせて微笑んだ。
「なんか変な感じだな……自分の知った顔に聴いてもらうってのは。照れなんて今まで感じたことなかったけど、今は強く感じるよ」
グインがそう言ったのを聞いて、レイチェルはそっと彼の頬にキスをすると、その耳に囁いた。
「それはきっと貴方が周囲の心に敏感になっているせいね。でも大丈夫。世界はそれでも尚、貴方を愛している」
彼女が長年連れ添ったもう一人のグイン。天寿を全うした偉大なるグインにそっくりだな。ささやきを聞いたマスターは湯を沸かしながら小さく口元に笑みを作った。
そして、マスターはレイチェルの言葉を遡ったあと、ふと二人の顔を見直し、ああ。と理解した。
「旅立ちの時、か」
今夜はグインが吟遊詩人として立つ日。そしてレイチェルも立つ日になるのだろう。
世界はそれでも尚、美しい。
偉大なるグインの言葉は遠大すぎるなと、マスターは湯の中から沸き上がっては消える泡を見てそう思った。
解説
吟遊詩人のレイチェル、そして新米の詩人であるグインが、とある町の酒場で演奏会を開催します。
目的は特にありません。
演奏を聴くだけでも構いません、演奏への飛び入り参加も自由です。
レイチェルとグインの知り合いなら、自由に話しかけていただいて結構です。
目的は特にありません。
演奏を聴くだけでも構いません、演奏への飛び入り参加も自由です。
レイチェルとグインの知り合いなら、自由に話しかけていただいて結構です。
マスターより
「それでも尚」の後日談のシナリオです。
これも含めて全4話。たくさんの方々に関わっていただけたことを感謝申し上げます。
二人は幸せです。終わってしまうことに少しもの悲しさもありますが、二人は寂しいとは欠片も感じていません。
それは皆様の温かい手がさしのべられたからに他なりません。とても大切なことを皆様に教えていただきました。
二人の門出をお祝いいただけたなら幸いです。
ちなみに第1話が公開されたのがちょうど1年前の9月でした。大グインの1周忌でもあります。
これも含めて全4話。たくさんの方々に関わっていただけたことを感謝申し上げます。
二人は幸せです。終わってしまうことに少しもの悲しさもありますが、二人は寂しいとは欠片も感じていません。
それは皆様の温かい手がさしのべられたからに他なりません。とても大切なことを皆様に教えていただきました。
二人の門出をお祝いいただけたなら幸いです。
ちなみに第1話が公開されたのがちょうど1年前の9月でした。大グインの1周忌でもあります。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/10/05 05:32
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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演奏会を待つ間 エアルドフリス(ka1856) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/09/26 22:36:22 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/24 07:08:19 |