ゲスト
(ka0000)
ドキッ! 漢だらけの対人訓練!
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/10/14 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/10/23 07:30
オープニング
「団長が……シュターク団長がいない……」
帝国軍第二師団上等兵イーリス・ベルファルは、その怜悧な美貌をげっそりとさせて呟きながら兵舎の机にだらりと全身を預けていた。
時間は早朝。兵舎の中はこれから仕事に向かう団員と、夜間の警備を終えあくび混じりに寝床へ向かう団員とでごった返している。
「……どうかしたんすか?」
通りすがりにそう問いかけたのは、彼女の部下である団員の一人だ。
声を掛けずにはいられなかった。凜々しい面持ちで常に人の前に立ち、自分達を導く隊長が、空気の抜けきった風船のような雰囲気を醸し出しているのだから。
だが同時に、彼は嫌な予感も覚えていた。この、厳格で怠けるという言葉を知らないような人物が、よく分からないことを言い出す時がたまに……いや、割と頻繁にあるからだ。
「団長が……遠くに行っているんだ……」
「え、ああ、そうっすね。大規模な作戦が始まってますし、こっちにも影響あるかもしれないってこの前から忙しいですし……」
団員がそう答えた瞬間――イーリスは突如目を光らせ、机に拳を叩き付けた。
「何故私は連れて行って貰えなかった!」
轟音が響く。木製の机は木くずを飛び散らせ、冗談のように二つに割れて近くに座っていた別の団員の朝食を跳ね飛ばし辺りに蒸かした芋が舞う。
周囲の男達が目を剥き、時間が止まる。その中でイーリスだけが、苦々しい表情を浮かべながら流れるような動きで宙に舞った芋を瞬時に回収していた。
「……私はな、常々、あの人のお側にいたいと願っているんだ」
芋を皿に戻し隣の関係ない団員に渡すと、イーリスは再び椅子に腰を下ろす。
関係ある団員は、そのイーリスの悲痛な面持ちに、何も言葉を掛けることが出来ない。その思いは全ての団員共通だろう。だが、何の力も持たない自分のような無力な一般兵士と、戦えると、誰かの役に立てるのだと自負のある彼女のような力のある兵士とでは、抱えているものの大きさが違うのかもしれない。
「私は、あの人のお側にいて! ――あの人の腹筋に思う存分頬ずりをしたいと、そう願っているというのに!」
違いすぎた。
●
それから数日、兵舎でのイーリスの奇行などという日常茶飯事もすっかり頭から消え去った頃。彼女の部下である十人の男達が、要塞内の北部に広大に横たわる北部練兵場に招集を掛けられていた。
この時期にもなると、カールスラーエ要塞も冬の気配を帯びてくる。
山から吹き下ろす風は強く冷たく、既に冷水で顔を洗うのもかなりの難事だ。鎧や剣の金属の冷たさに気が引き締まると笑顔で語る者は少なからず存在するが、大半の者は嫌な季節の到来だと口を揃えて愚痴をこぼす。雪が降り始めるのも、時間の問題だろう。
「記憶は気付かぬうちに、少しずつ摩耗していく。思い出す度に現実とは乖離していくだろう。それを補うことの出来ないままに、あの人の筋肉はまた一つ、また一つと戦いを経て更に美しく、強靱に成長していくのだ。……それを目の当たりに出来ないこの悲しみが、貴様らに分かるのかっ!」
「……スザナ副団長とかじゃダメなんすか」
「あの人いつもしっかり鎧着込んでるだろうが!」
そんな肌寒い早朝の冷気の漂う中、一列に並ばされる男達。遅番だというのにこんな時間から呼び出されても、上司の命令な手前、断ることなどできはしない軍属の悲しい性。
そして何故か始まったのは、一人小高い土塊の上に立ち、高らかに何か言ってるイーリスを整列して眺めるという謎作業。全員が全員、早く終わらないかなぁと頭の中に暖かいベッドを思い浮かべていた。……誰一人、こんな演説だけで終わるなどと思っていなかったが。
「まあそんなわけでだ」
イーリスが言葉を止め、彼らを睥睨する。そしてたっぷり時間を掛けてから、ゆっくりと口を開き、
「脱げ」
――男達は、死んだ羊の目で去年の冬を思い出していた。
名目上は、確認済み人型歪虚の増加により必要となった対人戦闘経験、その不足の補完。そして効率を求めるため、回避に重点を置いた今回の戦闘訓練では、当たれば即死の歪虚の攻撃を擬似的に再現するため防具の着用を禁止とする。ついでに、急所である上半身を晒すことによる警戒意識の向上。
その心は、
「団長に比べればひよっこ同然の、しかしそこそこ素晴らしい筋肉を持つ貴様らの肉体をより完璧とするためには、普段使わない筋肉のフル活用は必須条件と言えるだろう。そうして、より美しい肉体を作り上げるのだ!」
目の前に理想の筋肉がないならば、作ってしまえば良い。
キラキラと輝く瞳で謳い上げるイーリスとは対照的に、男達は上半身裸のまま丸太のような腕で自分の体を抱き、小動物のように小刻みに震えて鼻水をすすった。
「……で、あの、相手は?」
恐る恐る、一人が手を上げる。
「ハンターだ。昨日のうちに、私が依頼しておいた。ポケットマネーでな」
そしてイーリスはほくそ笑む。もしかしたら、ハンターという軍人とは毛色の違う良い筋肉が見られるかもしれないと。
ついでに男達は切に思う。これさえ、この異様な筋肉賛美さえなければなぁ、と。
帝国軍第二師団上等兵イーリス・ベルファルは、その怜悧な美貌をげっそりとさせて呟きながら兵舎の机にだらりと全身を預けていた。
時間は早朝。兵舎の中はこれから仕事に向かう団員と、夜間の警備を終えあくび混じりに寝床へ向かう団員とでごった返している。
「……どうかしたんすか?」
通りすがりにそう問いかけたのは、彼女の部下である団員の一人だ。
声を掛けずにはいられなかった。凜々しい面持ちで常に人の前に立ち、自分達を導く隊長が、空気の抜けきった風船のような雰囲気を醸し出しているのだから。
だが同時に、彼は嫌な予感も覚えていた。この、厳格で怠けるという言葉を知らないような人物が、よく分からないことを言い出す時がたまに……いや、割と頻繁にあるからだ。
「団長が……遠くに行っているんだ……」
「え、ああ、そうっすね。大規模な作戦が始まってますし、こっちにも影響あるかもしれないってこの前から忙しいですし……」
団員がそう答えた瞬間――イーリスは突如目を光らせ、机に拳を叩き付けた。
「何故私は連れて行って貰えなかった!」
轟音が響く。木製の机は木くずを飛び散らせ、冗談のように二つに割れて近くに座っていた別の団員の朝食を跳ね飛ばし辺りに蒸かした芋が舞う。
周囲の男達が目を剥き、時間が止まる。その中でイーリスだけが、苦々しい表情を浮かべながら流れるような動きで宙に舞った芋を瞬時に回収していた。
「……私はな、常々、あの人のお側にいたいと願っているんだ」
芋を皿に戻し隣の関係ない団員に渡すと、イーリスは再び椅子に腰を下ろす。
関係ある団員は、そのイーリスの悲痛な面持ちに、何も言葉を掛けることが出来ない。その思いは全ての団員共通だろう。だが、何の力も持たない自分のような無力な一般兵士と、戦えると、誰かの役に立てるのだと自負のある彼女のような力のある兵士とでは、抱えているものの大きさが違うのかもしれない。
「私は、あの人のお側にいて! ――あの人の腹筋に思う存分頬ずりをしたいと、そう願っているというのに!」
違いすぎた。
●
それから数日、兵舎でのイーリスの奇行などという日常茶飯事もすっかり頭から消え去った頃。彼女の部下である十人の男達が、要塞内の北部に広大に横たわる北部練兵場に招集を掛けられていた。
この時期にもなると、カールスラーエ要塞も冬の気配を帯びてくる。
山から吹き下ろす風は強く冷たく、既に冷水で顔を洗うのもかなりの難事だ。鎧や剣の金属の冷たさに気が引き締まると笑顔で語る者は少なからず存在するが、大半の者は嫌な季節の到来だと口を揃えて愚痴をこぼす。雪が降り始めるのも、時間の問題だろう。
「記憶は気付かぬうちに、少しずつ摩耗していく。思い出す度に現実とは乖離していくだろう。それを補うことの出来ないままに、あの人の筋肉はまた一つ、また一つと戦いを経て更に美しく、強靱に成長していくのだ。……それを目の当たりに出来ないこの悲しみが、貴様らに分かるのかっ!」
「……スザナ副団長とかじゃダメなんすか」
「あの人いつもしっかり鎧着込んでるだろうが!」
そんな肌寒い早朝の冷気の漂う中、一列に並ばされる男達。遅番だというのにこんな時間から呼び出されても、上司の命令な手前、断ることなどできはしない軍属の悲しい性。
そして何故か始まったのは、一人小高い土塊の上に立ち、高らかに何か言ってるイーリスを整列して眺めるという謎作業。全員が全員、早く終わらないかなぁと頭の中に暖かいベッドを思い浮かべていた。……誰一人、こんな演説だけで終わるなどと思っていなかったが。
「まあそんなわけでだ」
イーリスが言葉を止め、彼らを睥睨する。そしてたっぷり時間を掛けてから、ゆっくりと口を開き、
「脱げ」
――男達は、死んだ羊の目で去年の冬を思い出していた。
名目上は、確認済み人型歪虚の増加により必要となった対人戦闘経験、その不足の補完。そして効率を求めるため、回避に重点を置いた今回の戦闘訓練では、当たれば即死の歪虚の攻撃を擬似的に再現するため防具の着用を禁止とする。ついでに、急所である上半身を晒すことによる警戒意識の向上。
その心は、
「団長に比べればひよっこ同然の、しかしそこそこ素晴らしい筋肉を持つ貴様らの肉体をより完璧とするためには、普段使わない筋肉のフル活用は必須条件と言えるだろう。そうして、より美しい肉体を作り上げるのだ!」
目の前に理想の筋肉がないならば、作ってしまえば良い。
キラキラと輝く瞳で謳い上げるイーリスとは対照的に、男達は上半身裸のまま丸太のような腕で自分の体を抱き、小動物のように小刻みに震えて鼻水をすすった。
「……で、あの、相手は?」
恐る恐る、一人が手を上げる。
「ハンターだ。昨日のうちに、私が依頼しておいた。ポケットマネーでな」
そしてイーリスはほくそ笑む。もしかしたら、ハンターという軍人とは毛色の違う良い筋肉が見られるかもしれないと。
ついでに男達は切に思う。これさえ、この異様な筋肉賛美さえなければなぁ、と。
解説
・概要
対人戦闘訓練にとりあえず付き合え。
・敵
総勢十名からなる、暑苦しくむさ苦しい肉体を持つ第二師団の一般兵です。防具らしい防具は一切無し。上半身は裸で、下は薄いハーフパンツを履いています。
山賊のような容姿で長剣を振り回す巨漢、と考えれば分かりやすいかもしれません。
一般人としては極まりつつある練度の彼らですが、覚醒者ではないので勝利することは容易でしょう。
・場所
カールスラーエ要塞の最北部を東西に貫く、広大な練兵場です。より実戦に近い訓練を行うために、小さな林や川、丘、砂地など、起伏とバリエーションに富んだ地形が作られています。
・補足
好きに遊びましょう。
対人戦闘訓練にとりあえず付き合え。
・敵
総勢十名からなる、暑苦しくむさ苦しい肉体を持つ第二師団の一般兵です。防具らしい防具は一切無し。上半身は裸で、下は薄いハーフパンツを履いています。
山賊のような容姿で長剣を振り回す巨漢、と考えれば分かりやすいかもしれません。
一般人としては極まりつつある練度の彼らですが、覚醒者ではないので勝利することは容易でしょう。
・場所
カールスラーエ要塞の最北部を東西に貫く、広大な練兵場です。より実戦に近い訓練を行うために、小さな林や川、丘、砂地など、起伏とバリエーションに富んだ地形が作られています。
・補足
好きに遊びましょう。
マスターより
たまにこんなものが書きたくなりますT谷です。
イラストはイメージなので、実際はもうちょっと優しい目をしています。体格はこんなもんです。
イラストはイメージなので、実際はもうちょっと優しい目をしています。体格はこんなもんです。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/10/22 19:26
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 藤林みほ(ka2804) 人間(リアルブルー)|18才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/10/12 02:05:47 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/10 11:44:41 |