• 戦闘

死色悪鬼

マスター:楠々蛙

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加人数
現在10人 / 8~10人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
プレイング締切
2015/11/11 19:00
リプレイ完成予定
2015/11/25 19:00

オープニング

 とある町に、馬に騎乗した瀕死の男が訪れた。
「……村が、俺、達の村が……襲わ、れた」
 彼はそう告げると、息絶えた。

「惨い……」
 同盟国陸軍の兵達は、襲撃を受けたという村落に辿り着くと、そこに広がっていた惨劇の爪痕を見て眉間を顰めた。
 死屍累々。老若男女、区別なく。村人の死骸で築かれた、屍山血河。
「これは、刀傷……か?」
 大尉の階級章を身に着けた派遣隊の長は死体に刻まれた裂傷──村の襲撃の報をもたらしたという男の背にもあったものだ──を見て、滑らかな切り口からそう判断する。別の死体を見れば、その肢体を矢が貫いていた。これで襲撃者の候補から獣という線が消える。ゴブリンなどの好戦的な亜人という可能性も薄い。切り口が綺麗に過ぎる。彼らが扱う様な粗末な武具、そしてその技量でここまで鮮やかな切り口を残せるとは思えない。
 だとすれば残る可能性は──、例えば武芸者が寄り集まった盗賊か。
「いや、違うな」
 この惨劇を繰り広げた者がそういう類の集団であれば、この光景には違和感が残る。老若男女区別なく、その死体の構成に。
 こんな善性の欠片も見当たらない所業を犯す者達が、女子供をただ殺す様な真似をするだろうか。程良い温もりを持った柔肌を、一刃一矢の元に冷たい死体に変える様な真似を。
 この惨劇の中には、そういう歪んだ欲望が欠けているのだ。ここにあるのは、徹底した殺意と、純粋な悪意。飼い犬や家畜までもが斬殺されているのだから、恐れ入る。
 考えられる襲撃者の正体は、生命無き死の世界をこの世に現界させんとする──歪虚。それも、武芸者の骸を贄とした歪虚。
「まあ、憶測に過ぎないが」
 そう、憶測に過ぎない。断定できる程の材料はない。
「た、隊長……」
 しかし、正答が示されたなら憶測も何もない。兵士の一人が、村の奥を見詰めて固まる。その表情にあるのは、恐怖。生命が最も恐れる、死に対する根源的な恐怖。
 兵士が見詰めるその先にあったのは、四つの人影。否、人の形を保った異形の者。
 武者鎧、だろうか。彼らは東方の戦士が纏うと言われる、特徴的な甲冑を身に着けていた。そして更に、特筆すべき点が二つあった。
 彼らはそれぞれ、色彩の異なる鬼面を着けていた。
 蒼、朱、白、玄。
 そして、それぞれ異なる武具を携えていた。
 大薙刀、和弓、双刀、野太刀。
「……各員備えろ。来るぞ!」

 まず、先に動いたのは大薙刀を構える、蒼鬼。
 蒼き鬼面の武者は長大な得物を構えながら、手近な兵士を目掛けて烈震の踏み込みで迫る。その勢力は、歩く死体に成り果てているとは思えない、達人のそれ。殺意の対象となった哀れな兵士は、その動きに対応できず、振り下ろされた大薙刀の刃に脳天から股間までを掛けて両断された。
「貴様ぁ!」
 味方の仇討ちとばかりに、他の兵が斬って掛かる。応じる蒼鬼は、袈裟切りの軌道を描く長剣を、旋回させた長柄で絡め取る。得物を絡め取られ姿勢を崩した兵の頭部を、遠心力を乗せた石突が叩き砕いた。単純な薙刀術だけではない。長柄武器を扱う武芸者の当然の作法として棒術までも極めている事は、その手並みから明らか。

 次手を放ったのは、民家の屋根に立つ朱鬼。
 弓張り月より放たれた矢は、兵士が身に着けた鎧を易々と貫通し人肉に突き刺さる。そしてそれは、一矢だけに留まらない。連射に次ぐ連射。秒間にして二連射。秒針が三度動く間に、六人の兵を屠ってみせた。
 神速にして、必殺。一矢一矢が非覚醒者を一撃の下に終わらせる、超連射。

 二体の悪鬼が振るう猛威に兵達が混乱を来す中、その真っ只中へと白鬼が斬り込んで行く。させじと弓兵達が矢を射るが、飛来する矢の悉くを左右に広げられた双刀──打刀と脇差の二刀が払い除ける。
 矢幕を突破した白鬼は、白兵戦で応じようとした兵士の初撃を脇差で容易くいなすと、打刀で喉元を裂く。
 裂傷から心臓の脈動に合わせて血泉を噴き上げる味方を、死角として利用した兵の刺突が白鬼に迫る。しかし白鬼は、突き込んで来る刀身に脇差を絡ませ跳ね上げると、打刀の鋒を兵の喉に突き入れた。
 二刀流の真骨頂、攻防一体。攻と防を同時に成立させる二刀の構え。そしてその構えが可能とする、後の先こそが二刀流の奥義。これを攻め崩すのは容易な事ではない。

「力量に差があり過ぎる。止むを得ん、退け!」
 ただ損害だけが増えていく中、隊の長足る大尉が撤退の指揮を下す。が、
「しかし、奴らに背を向ければ……」
 今撤退するという事は、悪鬼達の前に無防備な背中を晒すという事に他ならない。そしてそれは、大尉とて百も承知の事の筈。それでも彼は尚指揮を変えない。
「構わん、退け。……案ずるな、殿は私が務める」
 長剣と盾を構えて、隊唯一の覚醒者である大尉が、悪鬼達の前へと立ち塞がる。
「なっ、それは承服致しかねます!」
「我々の任を忘れたか。敵戦力の報を持ち帰る事が何よりも優先される。ならば、今、お前達が何をすべきかわかるな」
「しかしっ」
 尚も逡巡する部下に、大尉は背を向けたまま、
「早くしろ。……私も英雄などではないのでな。早くして貰わねば、覚悟が鈍る。それとも、お前達の上官は、背中を任せるに足らぬ男だと言いたいのか?」
「……いえっ、了解しました!」
 村の入口付近に留めてある騎馬へと向かう部下達を、背中で送った大尉は、地に転がった村人の、そして部下達の骸を一瞥すると、剣先を悪鬼達へと向ける。
「好き放題にやってくれたものだな、死人共。生者の意地というものを、その腐った目玉に刻んでやろう」
 静かな咆哮に応える様に、先ず仕掛けたのは白鬼。先程は守勢に主眼を置いていた型を、攻勢に切り替えて斬り掛かる。それでも、常に守りに割く手を残してはいるが、しかし、だからこそ双刀の攻めを長剣一本で凌ぎ切る事を可能とさせた。
 とは言え、人心地吐く暇はない。大尉は、盾を掲げて飛来した矢の雨を迎える。一矢一矢が重い、骨身に響く。
 更に続けて、大上段から振り下ろされた大薙刀の一振りを再び盾で受ける。盾が軋み、血が染み込んでぬかるんだ地面に足が沈んだ。押し込もうとする薙刀を振り払って、大尉が構えを取り直したその時、

 ──蹄鉄の音が響いた。地獄の底から木霊す様な、死の足音を思わせる不吉な音色が。音源へと目を向ける。そこに居たのは、こちらを目掛けて駆けて来る黒馬。その両眼にあるのは仄暗き穴、そして太い首には裂傷が刻まれていた。
 嘶き一つ上げない盲目の黒馬に跨るは、野太刀を構えた玄鬼。
「づあぁぁあ!」
 大尉は損耗した盾を投げ捨て、長剣を両手で握り締めて、人馬、否、鬼人屍馬を迎え討つ。
 騎兵と歩兵、その一合の幕は、
 …………。
 一つの首と長剣が地に転がる事で降ろされた。しかし、
 玄鬼が自馬の大腿部を見下ろす。そこには筋まで届く斬撃の痕が刻まれていた。

解説

目的
歪虚武者の殲滅

・フィールド
廃村。歪虚武者が陣取るのは、中央広場。OP中に「血が染み込んで僅かにぬかるんだ地面」と描写しているが、地形効果は特になし。

・敵情報
蒼鬼
武装 大薙刀
スキル
烈震脚 闘狩人「踏込」強化
竜骨砕芯 闘狩人「渾身撃」強化
竜旋尾 闘狩人「強打」強化
補足
得物である大薙刀は近接格闘において長大な間合いを誇り、懐に飛び込まれても棒術で応戦する。

朱鬼
武装 和弓
スキル
弓張り月 猟撃士「引き絞り」強化
雀蜂 猟撃士「フォールシュート」強化
鳳凰殺し 猟撃士「強弾」強化
補足
近接格闘能力は低い。

白鬼
武装 打刀、脇差
スキル
苛勢猛虎 闘狩人「攻めの構え」強化。回避・受け減少なし
虎獅眈々 闘狩人「守りの構え」強化。近接命中・威力減少なし
後の先 虎獅眈々使用時、敵近接攻撃に対しリアクションとして使用。反撃を加える。
補足
攻守共に優れる

玄鬼
武装 野太刀
騎乗 歪虚馬
スキル
人馬一体 闘狩人「チャージング」強化。騎乗時のみ使用可
タイ捨の心得 闘狩人「攻めの構え」強化
兜割 闘狩人「渾身撃」強化
大亀割 タイ捨の心得、兜割の重ね技
人馬一体・大亀割 人馬一体、タイ捨の心得、兜割の重ね技
補足
馬と主は別個の個体、それぞれに生命力が設定されている。馬を倒しても玄鬼は倒れず、玄鬼を倒しても馬は倒れない。馬を残した場合、他の歪虚武者が騎乗する事も可能。
馬の傷はリプレイ時でも癒えておらず、その性能はOP時よりも減少している。

歪虚武者の分類は、暴食。しかし特殊能力は使用せず、生前のものと思われる技術のみで戦う。
村人、同盟陸軍兵士の死体がリプレイ中に歪虚化する事はない。ただし、放置しておけばその可能性はあり。
装備、技から東方の落ち武者ではないかと推測は可能だが、歪虚武者の正体を確定できる材料はない。

マスターより

はい、戦闘回です。技名考えるの超楽しい、個人的には「雀蜂」がベストネーミング。
しかし彼ら、モデルが四神なんだか黙示録の四騎士なんだか、しっちゃかめっちゃかになってますね。一応、始まりは四神だった筈でしたが、「死の足音」辺りから見失ってます。もう全く亀らしさが無いですね♪ 四騎士だとしても半端だし。ペイルライダーは青だろうに。
彼らとの意思疎通は不可能かと思われます。喋りませんし、だから技名考えた意味も特にないです。
いやはや、背中で語る男というのはロマンですな。『別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?』とかね。……まあ案の定、死亡フラグでしたが。
──かなりの強敵です。覚悟して挑んで下さい。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/11/21 18:35

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士

  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • くノ一
    藤林みほ(ka2804
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人
  • それでも私はマイペース
    レイン・ゼクシディア(ka2887
    エルフ|16才|女性|機導師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/11/08 21:15:24
アイコン 歪虚退治
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/11/11 00:12:08