• 戦闘

戸惑いの用心棒

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
APV

難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2014/08/07 12:00
リプレイ完成予定
2014/08/16 12:00

オープニング

「ダンチョー、言われた通り盗賊をやっつけてきただよ……」
「おう、ご苦労だったな」
 しょんぼりと肩を落としながら部屋に入ってきた少女、シュシュ・アルミラに目を向けオズワルドは笑みを浮かべた。
 バルトアンデルス城内。自らの執務室で書類仕事を片付けながら待っていたオズワルドはソファに腰掛けたシュシュに温かい茶を淹れてやった。
「今回は帝国兵とうまく連携できたか?」
「できるわけないべ? 帝国兵はシュシュの事嫌いだし、シュシュは帝国兵嫌いだかんな?」
「帝国の兵士は確かにハンターを軽視するフシがある。まあ、個人差は大分あるがな。当然の事だ。戦場で命を預ける相手は見知らぬ傭兵よりも同じ目的意識を持った仲間の方がいいに決まっている」
 両手でカップを持ちながらシュシュは両足をぶらぶらと投げ出している。オズワルドは腕を組んだ体勢でその様子を見下ろしていた。
 シュシュ・アルミラはハンターだが、訳あってここ一か月ほどの間、第一師団の詰所で生活していた。名目は長期的な依頼を帝国政府から受け滞在中という事になっていたが、これはそう単純な事でもなかった。
 以前、シュシュは帝国軍の作戦を意図的に阻害した罪で第一師団に逮捕された。しかしオズワルドの温情によって罪人として裁かれる事なく、彼の管理下に置かれる事で監獄都市行きを免れていたのだ。
「ダンチョー、シュシュはいつまで帝都で暮らさなきゃいけないだよ? 帝都は変なにおいがするし、帝国人が一杯で住みづらいだよ……」
「アネリブーベ送りになるところを助けてやったんだ。感謝はされどもケチつけられる謂れはねェぞ」
 アネリブーベの名前が出た途端、シュシュは小刻みに振動を始めた。第十師団管理下の巨大監獄要塞。帝国唯一の刑務所は入れられたが最後、過酷な強制労働につかされるとオズワルドに教えられていたからだ。
「ダ、ダンチョー……刑務所はやだかんな? 刑務所だけはシュシュやだかんな?」
「心配すンな。ハンターを裁くのは、帝国としても色々面倒なんだよ。まあ、そうだな……次の仕事が終わったらお前さんを解放してやってもいい」
「ほんとだべか!? 家族に手紙書くだよ!」
「お前さんの家族は、今は保護区に住んでるんだろ?」
 嬉しそうに小躍りするシュシュ。しかし保護区という言葉に表情が陰ってしまう。
 正式には部族保護区と呼ばれるその場所は、帝国領内に保護された辺境部族を保護している区画の事で、その中で部族はある程度の自由を約束されている。しかし生活は決して楽ではなく、彼らの中で尊重されるべきルールが軽視されているのが実情だ。
「あんなのは保護じゃないべ。檻の中に閉じ込めてるのと一緒だ……」
「それの何が悪い?」
「悪いに決まってるべ!? 皆大切な故郷を奪われて、無理矢理働かされて……! 帝国の服を着せられて、帝国の食べ物を食べて……そんなのもう部族じゃないべ!」
 瞳に涙をためながら叫ぶシュシュ。その声に反応したのか執務室に兵士が顔を覗かせたが、オズワルドは片手を上げて制止する。
「お前さんの最後の仕事は、開拓地に出現する敵性亜人の殲滅だ。それが終わったら晴れて自由の身だ」
「開拓地……? それって……?」
「そうだ。集められた有志の人間が田畑を耕し、荒れた大地を人の住みやすいように作り変えている場所だ。お前達部族の力も借りている。アネリブーベの囚人も中にはいるだろうな」
 自分たちが囚人と同じ扱いを受けている。その事実に悔しさが溢れ、堪え切れずに歯軋りする。うめき声にも似た声を無視し、オズワルドは静かに語り続けた。
「元々帝国は人の住める土地じゃなかった。今よりずっと荒れていて、亜人共が跋扈していた。帝国に初めて領土を築き上げた初代皇帝とその騎士達は、この地を人の住める場所にする為に努力し、そして故郷を勝ち取った」
「それがなんだべ……? 帝国皇帝の話なんか関係ないべ?」
「関係はある。何故そいつらは人の住めない場所を住めるようにしたと思う? 危険で過酷な生活だ。何故それを好き好んでしただろう? 開拓地の連中はどうだ? 連中は何故帝国にこき使われ働いているのか……興味がないか?」
 正直、オズワルドの言いたいことはよくわからなかった。だがシュシュは知っている。この男は決して悪人ではない事を。
 罪人として裁かれるべき自分を救い、寝る場所と温かい食事を与え、戦いを教えてくれた。帝国兵は嫌いだ。けれどこの男を嫌いにはなれない。
「いいか、シュシュ? この世界の全てを知る事は出来ない。だがわからない事をわからないままでいいと思うな。いつかは理解できる事を夢見続けろ。決めつけの上に胡坐をかくな。お前が目を閉じ耳を塞いでも、決してこの世界はそのあり方を変えたりはしねェんだ」
 厳しい言葉で、しかし温かさのある声で、男は少女の頭を撫でた。話の内容はやっぱりわからない。けれど、この仕事にもきっと何か意味がある。そんな気がした。
「今回の仕事はハンターだけで行って来い。本来は帝国兵がやるべき仕事をお前さんに任せる。その意味も考えろ。APVに連絡をしておくから、依頼の募集と仲間集めには時間はかからん。その間、お前さんはこの仕事から何を学ぶべきなのか、そいつを考えておけ」
 話は終わったと言わんばかりに肩を叩かれシュシュは席を立った。部屋を後にし、バルトアンデルス城の廊下からくすんだ街を見渡す。
「シュシュにはわからないだよ、ダンチョー。わからない事ばっかりで、どうしたらいいのかも……わからないだよ」
 目で見た事だけしか信じられないけれど、その目で見つめる世界はいつも色を変えていく。
 差し伸べられた温かい手と、自分をどこかへ連れ去ろうとする冷たい手。そのどちらも現実で、どちらも嘘ではなくて。
 迷いを振り払うように激しく頭を振って踏み出した一歩でさえも、やはりどこか心許なかった――。

解説

●目的
開拓地住民の安全確保、及び敵勢力の殲滅。


●概要
帝国領内に存在する開拓地に出現するコボルドを殲滅する。
開拓地は険しい山の麓にあり、現在は移民や服役中の犯罪者、そして自発的に参加を申し込んだ帝国民による開拓が行われている。
田畑を耕し、未開の鉱山から鉱物性マテリアルを採掘する為の拠点として機能させる為、現在は過酷な労働が続いているようだ。
生活はお世辞にも豊かとは言えず、過労で倒れる者が後を絶たないと言う。
コボルドは山から出現し、村までやってきて人々を襲う。恐らくは開拓が進みコボルドの生活圏に踏み込んだのが原因だろう。
本格的なコボルドの掃討はまた別に帝国軍が行うとして、今回は開拓村を護衛し、襲ってきたコボルドを殲滅してもらいたい。
尚、いつ来るかはわからない為、出現するまでは村で待機する手筈になっている。


●敵情報
『コボルド』
普通のコボルド。爪や牙以外に、ちょっとした手持ち武器も装備。
戦闘力も数もさほどではないが、開拓者を襲われないように注意は必要。


●特筆
シュシュ・アルミラが同行。
辺境からやってきたらしいハンターの少女。霊闘士。
小柄で民族衣装を纏い、二つのハンドアックスで戦う。
帝国に対し良い感情を持っていない。アホ。

マスターより

お世話になっております、神宮寺でございます。

一応、勘違いの用心棒の続きになりますが、初見の方でも普通に参加頂けます。
オズワルドはシュシュに色々な考え方を理解してほしいと思っているようです。
普通にコボルドをやっつけ村人を守るだけでなく、シュシュの迷いや疑問を払拭出来れば大成功です。

それでは宜しくお願い致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/08/10 07:11

参加者一覧

  • まめしの伝道者
    ノーマン・コモンズ(ka0251
    人間(紅)|24才|男性|疾影士
  • ……オマエはダレだ?
    リカルド=フェアバーン(ka0356
    人間(蒼)|32才|男性|闘狩人

  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 《思いやる》心の聖女
    マリア・ベルンシュタイン(ka0482
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • 蒼狼奮迅
    妻崎 五郷(ka0559
    人間(蒼)|36才|男性|霊闘士
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士

  • マファルダ・ベルルーティ(ka2311
    人間(紅)|20才|女性|疾影士

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
神楽(ka2032
人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/08/07 11:03:47
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/08/05 20:02:49