• 戦闘

ビューティ・アンド・ザ・ビースト2

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/02/24 07:30
リプレイ完成予定
2016/03/04 07:30

オープニング

 帝国領に墜落したサルヴァトーレ・ロッソとそれを巡る暴食王との戦いが終わり、次の戦場は北へ……。
 そんな事も露知らず、帝国領の田舎町では以前と変わりない時間が流れ続けていた、
 土地だけは余っている山間の街で羊を飼って生活する老夫婦は、二週間に一回だけ村に届く新聞くらいが唯一の娯楽であった。
 ようやく空も白み始めた早朝に安いコーヒーを淹れながら広げた文面には、何やら色々と大変そうな世情が面白おかしく記されている。
「バルツは相変わらずじゃのう~」
「フレーベルニンゲンでしたっけ? 大変よねえ……あの辺りには牧場も沢山あったでしょうに」
「帝都で起きた戦いの傷跡も未だ癒えぬまま、人類は北へ……か」
 それを良いとも悪いとも言う事は出来ない。そもそも彼らの生活からすると全く関係のない事だった。
 同じ帝国領にあってもずっと遠くで起きた、違う世界の誰かの物語でしかない。
 この村はもうじき滅ぶだろう。若者は兵隊か出稼ぎに消えて、残っているのは女子供が少しだけ、後は殆ど老人だ。
 人口30人ほどのこの小さな村は、羊と一緒に歴史の中に消えていくさだめ。それはもう避けられない現実。
 しかしだからこそ、これと言って高位の歪虚に襲われるような事もなく。雑魔くらいなら見かける事も以前はあったのだが……。
「うおおお~! さびぃさびぃ! オレにも一杯くれねぇか?」
「あら。おかえりなさい」
「大丈夫だったのかい?」
 勢い良く扉を開いて駆け込んできたのは2メートルほどのがっしりとした体躯の大男である。
 獅子のような赤髪をあげて、背後で結んだだけのざっくばらんな髪型。服装もいかにも雑で、寝間着に上着を羽織っただけである。
 肩に薄く積もった雪を叩き落とし、男はドカっと音を立て椅子に座り込んだ。もういい加減椅子のほうが悲鳴をあげそうだ。
「おうよ。やっぱりアレだな……雑魔? ってやつだな」
「まあまあ……怪我はないの?」
「ああ。なんだかよくわからねぇが、パンチで倒せた」
 男はニンマリと笑みを作りサムズアップする。老夫婦は呆れたように脱力し、顔を見合わせるのであった。

 この男が村にやってきてからもう何年になるだろうか?
 ある日突然村の外れに全身血まみれで倒れ、羊に踏みつけられながら唸っていたところを介抱してやってからというもの、この村唯一のパワフルな労働力として老人たちを支えている。
 皆で朝食の準備をしていると階段を降りて幼い子供達が姿を見せた。男の子と女の子がひとりずつ。年齢は10にも満たない程だろう。
「おはよう、おじちゃん」
「おう、オハヨウ!」
「おじちゃん、朝出てったよね? 何かあったの?」
「いや、なんかヘンな生き物がいたからぶっ飛ばしてきた。オレ何故かそういうのが近づいてくるとわかるみてぇなんだ」
「えぇ~!? また~!?」
 子供が驚くのも無理は無い。ここ数ヶ月、急に雑魔の出現率があがっていた。
 それが帝国領で起きた歪虚との大きな戦いが影響したものであるという答えに彼らがたどり着くことはない。あまりにも情報が少なすぎたのだ。
 ともあれ本来であればこの村もそれなりの被害を受けるなりなんなりしていたはずなのだが、この男が一人で全てどうにかしてしまっていた。
「この間農作業中にも出たんだよ。おじちゃんが鍬でやっつけたけど……」
「はっはっは! 芋にも劣る奴らだぜ! 直ぐに消えちまうたぁ根性がねぇなあ!」
 豪快に笑い飛ばす男の膝に少女が飛びつく。ぎゅっとしがみつくその手は小刻みに震えていた。
「無理しないで、おじちゃん……」
 男は目を丸くし、大きな手で少女の頭をガシリと掴んで撫で回す。
「大丈夫だ。オレは強いからな。お前らの親父みたいに戦争で死んだりしねぇよ」
「ほんと? ずっとこの村にいてくれる?」
「任せろ! 男に二言はねぇ。ま~そもそもオレ、この村以外に行くところもねぇしな! な~んも昔の事覚えてね~し!!」
 またガハハと笑いながら少女を両手で抱き上げ、部屋の中をグルグルと回る。
 自分も混ぜてくれと駆け寄る少年と少女をムキムキの上腕二頭筋にぶら下げ走り回る。その様子を老夫婦は優しい眼差しで見つめていた。

 男は自分を何も知らないが、別段何も困ってはいなかった。
 発見時に装備していた金色の鎧と炎の刺繍が施されたマント、そして身の丈大の巨大な剣を見れば自分でも何かしらの戦士だったのだとわかる。
 だがさっぱり昔の事は覚えていないし、今はこの村の一員として暮らす事に満足していた。
 若い女が居ないのは残念だが、老人や子供たちを放ってはおけないし、彼らには命を救われた恩義がある。
 あまり安全とは言えない世の中だから、たまに意図せず不思議な力で雑魔を倒せるのもありがたかった。
 しかし、彼のその善意からの行動が、事件の悪化を招く事になってしまったのだ。
 口笛を吹きながら畑を耕していた男の表情が突然変わった。
 村の外にある森を険しい目つきで凝視すると、子供たちの手も止まる。
「おじちゃんどうしたの?」
「……何か来る。これまでの連中とは少し違うな。ただの雑魔じゃない……?」
 森の暗がりから無数の影が近づいてくる。フラフラとした足取りと不気味な気配。人型ではあるが、ヒトではない。
「お前ら、村の連中にこの事を伝えろ。集会場に集めて外に出ないようにしとけ」
「おじちゃんは!?」
「おじちゃんはあいつらを何とかする。大丈夫だ、オレには最強の武器である鍬のようなものがあるからな!」
 ニンマリと笑い、しかし直ぐに男は戦士の横顔に変わる。
 子供たちが普段見るものとは全く異なる、決して異を唱えられないような覇気にただ押し黙るしかない。
「助けを呼んでくるから!」
「はあ~? 帝国兵なんぞ呼ばんでいいぞ。オレ帝国兵嫌いなんだ。あいつら税金取る時しかこねーんだもん」
「とにかく、おじちゃんは一人で無茶しないでね!」
 馬に二人で乗り込んだ子供たちが去っていく。男は鍬を両手に握り締め、近寄る歪虚を睨んだ。
 鍬で襲いかかろうと考えたが、敵の一体が発砲。銃撃を奇跡的に鍬で防げたが、鍬そのものはお陀仏である。
「ぬおっ、武装したゾンビかありゃ!? 数も多いし分が悪いな……」
 再度の銃撃を直感的に跳んで回避し、匍匐状態で物陰に移動。新しい武器を探す。
「農園から村まではまだ距離がある。注意を引きつけ、村から逸らすか……余裕だぜ!」
 ときたま現れる不思議な力が使えればいいのだが、今はその力は感じられない。
 それならそれで仕方ない。恐怖するでも戸惑うでもなく、当たり前にように男は新しい農具を手に物陰から飛び出した。

解説

●目的
歪虚の殲滅


●概要
帝国領北部の村に出現した歪虚を殲滅してもらいたい。
任務地である村は総人口30名ほどのごく小さなもので、駐留する帝国軍も存在していない。
目撃情報によると鎧を着込んだゾンビが数体。正確な数は不明だが、6体は確認済みだ。
恐らくはエルトヌス型と思われる。だとすれば、フレーベルニンゲンの戦いから生き延びた個体である可能性も高い。
しかしまとまった数が存在しているという事は、付近にリンドヴルムが墜落している可能性もある。
もしも可能なら、敵を殲滅後発生源についても調査してもらいたい。
現場には農夫が一人で時間を稼いでいるという。
子供たちたっての希望だ。無茶をしたその農夫の身柄も確保し、村へ連れ帰って欲しい。


●敵情報
『エルトヌス型』
鎧を着込んだゾンビ兵。6体。
銃を装備した個体が3、剣を装備たのが3。
村に目的はなく、近場に居る生命体を襲っているだけ。
銃声が聞こえるので追いかければすぐ見つかる。

『リンドヴルム型』
色々あって村の近くの森に墜落していた。1体。
コンテナ輸送型なので武装らしい武装はなく、撃墜&墜落時のダメージで瀕死。
近づいても反撃してくることはない。
おじちゃんが雑魔を倒さず帝国軍を呼んでいればこんなことにはならなかったのだ。


●???
『赤髪の男』
かなりマッチョな大男。非覚醒者? 元ハンターか従軍者。
尋常ではない数の刀傷と銃創、それと火傷の痕跡がある。
顔の右半分が焼けており、右目が見えないのか常に瞼を閉じている。
記憶喪失で、色々あってこの村で世話になっているらしい。
エルトヌス型を村から引き離そうと陽動を行っている。

マスターより

お世話になっております。

普通の歪虚討伐依頼です。特に難しい事はないので、現場に行って倒すだけです。
……というと流石に白々しいでしょうか。
おじちゃんはほっといても死にはしませんが、一応助けてあげて下さい。
場合によっては皆さんの知っている奴かもしれません。

それでは宜しくお願い致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/03/01 06:21

参加者一覧

  • Stray DOG
    ヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139
    人間(紅)|28才|男性|闘狩人
  • SUPERBIA
    フォークス(ka0570
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 猫の守り神
    カナタ・ハテナ(ka2130
    人間(蒼)|12才|女性|聖導士
  • 質実にして勇猛
    夕鶴(ka3204
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 夢への誓い
    ハッド(ka5000
    人間(紅)|12才|男性|霊闘士
  • 聖堂教会司祭
    エステル(ka5826
    人間(紅)|17才|女性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/02/19 00:45:33
アイコン 相談所
カナタ・ハテナ(ka2130
人間(リアルブルー)|12才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/02/24 00:41:35