ゲスト
(ka0000)
王国と、巡礼者の道と、雑魔化した大きな鼠
マスター:柏木雄馬

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/08/23 19:00
- リプレイ完成予定
- 2014/09/01 19:00
オープニング
リゼリオ沖の海に狂気の歪虚が現れ、大量に押し寄せて来ている── そのニュースは王国の各地に支局を持つ報道機関、『ヘルメス情報局』の号外によって、王国の全域に亘って徐々に広まりつつあった。
クリムゾンウェスト世界の正史に確実に刻まれる大事件。庶民にとっても、御伽噺に、講談に、吟遊詩人の詩の題材となって後世まで語り継がれるであろうその報は、だが、正直なところを言ってしまえば、遠い異国の出来事であり…… 商人たちなどを除いて、王国に住む殆ど大部分の民にとっては日々の暮らしに影響を与えるものではなかった。
王都イルダーナから王国中北部──巡礼の旅の出発点、トルティア村へと続く道の上── そこを行き交う旅人たちにしてみても、事情はなんら変わることはない……はずだった。
「お嬢様! 見えてきましたよ! あれが『始まりの村』、トルティアですよ!」
王都より出でて数日──先程まで疲れた、疲れたと荒い息を吐いていた若い侍女が、その村が見えた瞬間、疲れも忘れた様にはしゃぎだした。
汗まみれの表情を輝かせ、「やっと着きましたね」と背後を振り返る侍女。その変わり身の早さに呆れつつ、お嬢様、と呼ばれた女が釘を刺す。
「まだスタート地点に到着したばかりです。『巡礼』の旅は、トルティアからが本当の始まりですよ?」
それは分かっていますけど…… と、分かりやすくブーたれて見せる侍女。無理もない。なにせ王都から出て旅をするのは、二人ともこれが初めてだった。不安や緊張はもちろんあるが、それ以上にまだ見ぬ土地を巡るわくわくや高揚感が湧き上がって来るのを、お嬢もまた確かに胸の内に感じている……
2人は王都の第二街区に住む貴族の娘と侍女だった。侍女はお嬢の教育係でもあった乳母の娘で、幼い時からずっと一緒に育った間柄だ。
箱入り娘として育てられ、一度も王都から出たことがなかったお嬢は、そんな己の人生に疑問を持ち…… 意を決し、「成人を機に巡礼の旅に出たい」と厳格な父に申し出た。
『巡礼の旅』を出されては、父も反対のしようがなかった。巡礼は、王国と聖堂教会とが人々に奨励しているもので、王国の民なら一生に一度は必ず巡るとまで言われているものだった。回国型の巡礼で、定められた各地の聖堂を定められた順に巡って回り、最後に王都の聖ヴェレニウス大聖堂へと至る。数年ごとに巡る熱心な信者もいるが、大抵は成人や結婚、子供の誕生など人生の転機にのみ、巡る人が多い。最近では途中で観光地に寄り道したり、等、娯楽としての側面も強くなってきてはいるが、それでも重要な礼拝であることに変わりはない。
トルティアへと入った2人は予約してある宿へと向かった。
トルティアは面白い村だった。村民の数は少なく、決して規模も大きくないのだが、全国から巡礼者が集まるとあって宿泊施設や飲食街、おみやげ物屋などが、目抜き通りに並んでいた。盛況ではあるが、人数は(王都に比べれば)そこそこだ。巡礼の出発点とあって、すぐに次の巡礼地に向かう者も多いとか。
宿に着き、案内された部屋に荷(結局、侍女は身につけられる小さな土産物を買った)を置くと、2人は早速、トルティアの聖堂へと向かった。
宿から出ると、すぐに自分をガイドに、或いは、護衛に雇わないか、と声を掛けてくる者が多くいた。巡礼の旅は決して危険なものではないが、それでも長く旅を続けていれば、トラブルというものは起こるものだ。
お嬢はその全てをきっぱりと断った。ガイドに関しては物見遊山で巡礼の旅に出たわけではないし、聖堂や聖地に関しては事前に勉強を済ませてあった。護衛に関しては、旅の途中でどうしても必要になった場合は、出自が確かなハンターズソサエティの覚醒者を雇うと決めている。
礼拝を済ませると、2人は宿に帰って食事を取った。寝台で横になると、旅の興奮に眠れないのか、侍女が話し掛けてきた。
「それで、明日はどうするのです? 東回りと西回り、どちらから巡るか決めたのですか?」
侍女の言葉に、お嬢は見慣れぬ天井を見上げたまま思考した。特定の順番で特定の聖堂を回ることが定められた巡礼の旅ではあるが、東から巡るか、西から回るか、それは定められてはいなかった。
お嬢の脳裏に浮かぶは、リゼリオ沖での狂気の歪虚の大量発生── まさか、王国にまで波及することはないとは思うが……
「西回りにしましょう。巡礼の旅が東に到達する頃には、歪虚の騒動も収まっているでしょうし」
というか、収まってくれていなければ巡礼の旅どころではないのだが、とは口には出さずに胸にしまう。
返事はなかった。既に侍女は寝息を立てていた。それを見たお嬢は半眼で笑みを引きつらせると…… 苦笑と共に嘆息し、自らも布団を被った。
翌日──
眠気に目を擦る侍女を無理やり引き起こし、2人は早朝にトルティアを発ち、西回りで巡礼の旅に出た。
女の二人旅。どこかのんびりとした調子で巡礼の旅を往く。まだ出発したばかりとあって、トルティア周辺の巡礼路には同じ道を、同じ聖堂へ向かって歩く巡礼者たちが多く見受けられた。お嬢と侍女と同じく巡礼者の外套姿の者が多かったが、それに捉われない気ままな旅装の者も多い。
数日後。それぞれの巡礼者のペースもあり、あれだけいた巡礼者たちも日に何組かちらほらと見かけられる程度になってきた。
2人がいまいるのは王国中部、その北西側。岩と緑の草が広がる土地だった。その中を、巡礼者たちの道がただ真っ直ぐ続いている……
「あっ! あそこに見えるのは何でしょうね、お嬢様?」
代わり映えのしない風景の中を歩いていても、侍女はとにかく楽しそうだった。その笑顔を見ていると、お嬢もその感情に引っ張られて楽しくなってくる。
今度も侍女が指差す方向へ視線を振ったお嬢は…… それを視界に認めた瞬間、目を見開き、侍女の頭を抑えて身を伏せた。
見えたのは、路上に屯する『鼠』── とは言っても、全長が50cm(←翻訳済み)もある巨大なもの。雑魔だ。雑魔化した鼠がこんな王国の内部にまで入り込んでいたのだ。
(なぜ、こんなところにまで──!)
侍女の口を塞ぎながら、ジリジリと岩陰に身を隠すお嬢。元々、王都西部は海を越えて来る歪虚の多い土地ではあるが、それでもこんな内陸にまで侵入されることは稀だった。
そう言えば、と思い当たる。リゼリオに歪虚が大量発生したことを受けて、王国からも騎士や戦士団などの戦力が派遣されたと号外には記されていた。或いはそれで王国内の警戒が手薄になってしまったのかもしれない。
「……このまま前の村まで戻り、ハンターたちに駆除を依頼しましょう。雑魔とは言え、歪虚となれば私たちの手に余ります。……一刻も早く駆除しないと、私たちを含め、多くの巡礼者が足止めを喰らいますからね」
クリムゾンウェスト世界の正史に確実に刻まれる大事件。庶民にとっても、御伽噺に、講談に、吟遊詩人の詩の題材となって後世まで語り継がれるであろうその報は、だが、正直なところを言ってしまえば、遠い異国の出来事であり…… 商人たちなどを除いて、王国に住む殆ど大部分の民にとっては日々の暮らしに影響を与えるものではなかった。
王都イルダーナから王国中北部──巡礼の旅の出発点、トルティア村へと続く道の上── そこを行き交う旅人たちにしてみても、事情はなんら変わることはない……はずだった。
「お嬢様! 見えてきましたよ! あれが『始まりの村』、トルティアですよ!」
王都より出でて数日──先程まで疲れた、疲れたと荒い息を吐いていた若い侍女が、その村が見えた瞬間、疲れも忘れた様にはしゃぎだした。
汗まみれの表情を輝かせ、「やっと着きましたね」と背後を振り返る侍女。その変わり身の早さに呆れつつ、お嬢様、と呼ばれた女が釘を刺す。
「まだスタート地点に到着したばかりです。『巡礼』の旅は、トルティアからが本当の始まりですよ?」
それは分かっていますけど…… と、分かりやすくブーたれて見せる侍女。無理もない。なにせ王都から出て旅をするのは、二人ともこれが初めてだった。不安や緊張はもちろんあるが、それ以上にまだ見ぬ土地を巡るわくわくや高揚感が湧き上がって来るのを、お嬢もまた確かに胸の内に感じている……
2人は王都の第二街区に住む貴族の娘と侍女だった。侍女はお嬢の教育係でもあった乳母の娘で、幼い時からずっと一緒に育った間柄だ。
箱入り娘として育てられ、一度も王都から出たことがなかったお嬢は、そんな己の人生に疑問を持ち…… 意を決し、「成人を機に巡礼の旅に出たい」と厳格な父に申し出た。
『巡礼の旅』を出されては、父も反対のしようがなかった。巡礼は、王国と聖堂教会とが人々に奨励しているもので、王国の民なら一生に一度は必ず巡るとまで言われているものだった。回国型の巡礼で、定められた各地の聖堂を定められた順に巡って回り、最後に王都の聖ヴェレニウス大聖堂へと至る。数年ごとに巡る熱心な信者もいるが、大抵は成人や結婚、子供の誕生など人生の転機にのみ、巡る人が多い。最近では途中で観光地に寄り道したり、等、娯楽としての側面も強くなってきてはいるが、それでも重要な礼拝であることに変わりはない。
トルティアへと入った2人は予約してある宿へと向かった。
トルティアは面白い村だった。村民の数は少なく、決して規模も大きくないのだが、全国から巡礼者が集まるとあって宿泊施設や飲食街、おみやげ物屋などが、目抜き通りに並んでいた。盛況ではあるが、人数は(王都に比べれば)そこそこだ。巡礼の出発点とあって、すぐに次の巡礼地に向かう者も多いとか。
宿に着き、案内された部屋に荷(結局、侍女は身につけられる小さな土産物を買った)を置くと、2人は早速、トルティアの聖堂へと向かった。
宿から出ると、すぐに自分をガイドに、或いは、護衛に雇わないか、と声を掛けてくる者が多くいた。巡礼の旅は決して危険なものではないが、それでも長く旅を続けていれば、トラブルというものは起こるものだ。
お嬢はその全てをきっぱりと断った。ガイドに関しては物見遊山で巡礼の旅に出たわけではないし、聖堂や聖地に関しては事前に勉強を済ませてあった。護衛に関しては、旅の途中でどうしても必要になった場合は、出自が確かなハンターズソサエティの覚醒者を雇うと決めている。
礼拝を済ませると、2人は宿に帰って食事を取った。寝台で横になると、旅の興奮に眠れないのか、侍女が話し掛けてきた。
「それで、明日はどうするのです? 東回りと西回り、どちらから巡るか決めたのですか?」
侍女の言葉に、お嬢は見慣れぬ天井を見上げたまま思考した。特定の順番で特定の聖堂を回ることが定められた巡礼の旅ではあるが、東から巡るか、西から回るか、それは定められてはいなかった。
お嬢の脳裏に浮かぶは、リゼリオ沖での狂気の歪虚の大量発生── まさか、王国にまで波及することはないとは思うが……
「西回りにしましょう。巡礼の旅が東に到達する頃には、歪虚の騒動も収まっているでしょうし」
というか、収まってくれていなければ巡礼の旅どころではないのだが、とは口には出さずに胸にしまう。
返事はなかった。既に侍女は寝息を立てていた。それを見たお嬢は半眼で笑みを引きつらせると…… 苦笑と共に嘆息し、自らも布団を被った。
翌日──
眠気に目を擦る侍女を無理やり引き起こし、2人は早朝にトルティアを発ち、西回りで巡礼の旅に出た。
女の二人旅。どこかのんびりとした調子で巡礼の旅を往く。まだ出発したばかりとあって、トルティア周辺の巡礼路には同じ道を、同じ聖堂へ向かって歩く巡礼者たちが多く見受けられた。お嬢と侍女と同じく巡礼者の外套姿の者が多かったが、それに捉われない気ままな旅装の者も多い。
数日後。それぞれの巡礼者のペースもあり、あれだけいた巡礼者たちも日に何組かちらほらと見かけられる程度になってきた。
2人がいまいるのは王国中部、その北西側。岩と緑の草が広がる土地だった。その中を、巡礼者たちの道がただ真っ直ぐ続いている……
「あっ! あそこに見えるのは何でしょうね、お嬢様?」
代わり映えのしない風景の中を歩いていても、侍女はとにかく楽しそうだった。その笑顔を見ていると、お嬢もその感情に引っ張られて楽しくなってくる。
今度も侍女が指差す方向へ視線を振ったお嬢は…… それを視界に認めた瞬間、目を見開き、侍女の頭を抑えて身を伏せた。
見えたのは、路上に屯する『鼠』── とは言っても、全長が50cm(←翻訳済み)もある巨大なもの。雑魔だ。雑魔化した鼠がこんな王国の内部にまで入り込んでいたのだ。
(なぜ、こんなところにまで──!)
侍女の口を塞ぎながら、ジリジリと岩陰に身を隠すお嬢。元々、王都西部は海を越えて来る歪虚の多い土地ではあるが、それでもこんな内陸にまで侵入されることは稀だった。
そう言えば、と思い当たる。リゼリオに歪虚が大量発生したことを受けて、王国からも騎士や戦士団などの戦力が派遣されたと号外には記されていた。或いはそれで王国内の警戒が手薄になってしまったのかもしれない。
「……このまま前の村まで戻り、ハンターたちに駆除を依頼しましょう。雑魔とは言え、歪虚となれば私たちの手に余ります。……一刻も早く駆除しないと、私たちを含め、多くの巡礼者が足止めを喰らいますからね」
解説
1.状況と目的
ハンターズソサエティに王国より依頼あり。王国中北西部、巡礼路におおねずみ型の雑魔が出現。
ハンターは疾く現地に赴き、件の大鼠どもを駆除されたし。
2.戦場
馬車がすれ違える位の広さ(ゲーム的には3スクエア幅)の土の道が南北に一直線に走っている。
道の中央東側に目印となる木と岩あり。
道の東西は草原で、膝から腿辺りまでの高さの草が一面に生えている。
3.敵戦力
○雑魔『おおねずみ』×複数
全長50cm位の大きさをした巨大な鼠。雑魔化して大型化したものと思われる。
丸々と太った個体もいれば、幽鬼の如くガリガリにやせ細った個体もいる。
太った方はその見た目に反して動きが速く、どたどたと音を上げながら走り回り。
痩せた方は今にも死にそうな動き(に見えるが……)。
攻撃方法は共通。牙(毒判定あり)、爪、跳躍、体当たり。弱敵だが雑魔化した分は強くなっている。
開始時、道の上に4匹が確認できるが、攻撃を受けると左右の草原の中に逃げ込む。
総数は不明。この『おおねずみ』たちを駆逐し、巡礼路の交通を回復するのが今回のシナリオの目的。
ハンターズソサエティに王国より依頼あり。王国中北西部、巡礼路におおねずみ型の雑魔が出現。
ハンターは疾く現地に赴き、件の大鼠どもを駆除されたし。
2.戦場
馬車がすれ違える位の広さ(ゲーム的には3スクエア幅)の土の道が南北に一直線に走っている。
道の中央東側に目印となる木と岩あり。
道の東西は草原で、膝から腿辺りまでの高さの草が一面に生えている。
3.敵戦力
○雑魔『おおねずみ』×複数
全長50cm位の大きさをした巨大な鼠。雑魔化して大型化したものと思われる。
丸々と太った個体もいれば、幽鬼の如くガリガリにやせ細った個体もいる。
太った方はその見た目に反して動きが速く、どたどたと音を上げながら走り回り。
痩せた方は今にも死にそうな動き(に見えるが……)。
攻撃方法は共通。牙(毒判定あり)、爪、跳躍、体当たり。弱敵だが雑魔化した分は強くなっている。
開始時、道の上に4匹が確認できるが、攻撃を受けると左右の草原の中に逃げ込む。
総数は不明。この『おおねずみ』たちを駆逐し、巡礼路の交通を回復するのが今回のシナリオの目的。
マスターより
手札にキャラクターがない時に差し向けられたおおねずみを見た時の屈辱ったら(笑)。いえ、某カードゲーム(MM。TCGでない方ですョ?)の話ですけどね。柏木雄馬です()
というわけで、今回は王国の巡礼をシナリオネタにこんな感じで。柏木分類『戦術系』(目的達成が最優先。敵の存在も障害の一つに過ぎない)です。
いえ、シナリオ部分だけを要約すると、巡礼路のおおねずみ雑魔を駆逐してください、の一言で終わってしまうのですが…… Fnb世界や王国をイメージするに当たっての一助にしていただけましたら幸いです。などと以前のシナリオを含めて宣伝()
では、皆様、よろしくお願いします。
というわけで、今回は王国の巡礼をシナリオネタにこんな感じで。柏木分類『戦術系』(目的達成が最優先。敵の存在も障害の一つに過ぎない)です。
いえ、シナリオ部分だけを要約すると、巡礼路のおおねずみ雑魔を駆逐してください、の一言で終わってしまうのですが…… Fnb世界や王国をイメージするに当たっての一助にしていただけましたら幸いです。などと以前のシナリオを含めて宣伝()
では、皆様、よろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/08/31 21:24
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼相談卓 Capella(ka2390) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/08/23 13:25:18 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/19 12:38:45 |