• 戦闘

サヨナラの代わりに

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/04/01 19:00
リプレイ完成予定
2016/04/10 19:00

オープニング

※このシナリオは難易度が高く設定されています。所持金の大幅な減少や装備アイテムの損失、場合によっては、再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
再起不能、死亡判定の下されたキャラクターはログイン、及びコンテンツへのアクセスが制限されます。

 とても長い時間のような。いや、瞬く間だったかもしれない。
 探した。探した。探した――。せめてもう一度、そして終わりはそうあれかしと。
「会ってどうするつもりだ?」
 バイクを運転するゲルトの背中にしがみつきながらスバルは過ぎ去っていく景色を見ていた。
「わからない……でも、時間がないんだ。私が完全に私ではなくなってしまう前に……もう一度だけ」
 お尋ね者となった二人の逃亡兵は、追手から逃れつつ、帝国領を旅していた。
 反政府組織の根城から、歪虚の痕跡が残る地を渡り歩き、探して、探して……しかし、結果は実を結ばない。
 不変の剣妃、オルクス。ヒトの手で家族を奪われたスバルの命を救ってくれた恩人。
 いや、ただの気まぐれ。使い捨ての道具に過ぎない。それでも彼女は自分の命を繋いでくれた。新しい家族をくれた。
 皮肉屋で口は悪いが情に厚かったメイズ。楽観的でムードメーカーだったジルコ。
 たくさん居た姉妹たちもほとんど死んで、闇に堕ちた二人は心を壊してしまったけれど、それでもオルクスを憎めなかった。
「私があの人を救ってあげたかったけど……多分、私には過ぎた願いだったんだね」
 ゲルトはバイクを走らせながら、振り返ることも返事を返すこともしない。
「私は物語の主人公にはなれなかった。ヒトの英雄になることも、歪虚の怪物になることもできない」
 少年の背中に顔を埋め、少女は目を瞑る。こんなに哀しいのに、心は冷えきって、涙の一つもこぼれない。
「なりたかったなぁ……特別な何かに……」
 純白の雪のような少女を見た。
 吸血殺しの聖剣は、きっとああいう特別な存在にこそふさわしい。
 あれだけの深さを持つ器でなければ、きっとオルクスにはふさわしくない。
 闇を消すことも、闇を抱くことも出来ない自分。もう役割の終わってしまった自分。
 どうにもならない自分だけが、未だに終わりを拒絶して、ありもしない未来を模索していた。

 吸血鬼になった以上、歪虚になってしまった以上、もう人間らしい生活はできない。
 生半可に力があるせいで人里には近づけないし、覚醒者にそれと悟られれば命も狙われた。
 夜に眠ることはできなくなり。人間らしい食事もできなくなり。代わりにヒトを襲いたいという衝動が強くなった。
 それは日に日に増してゆき、もう近くに人間がいたらうっかり襲ってしまうほどに悪化している。
 だから結局帰ってきたのはもうとっくに誰も住むこともなくなった故郷の孤児院で、教会に一人膝を折って夜明けを待っていた。
「……ベルフラウ。言われた通りに依頼したぞ」
「ありがとう、ゲルト」
 両開きの扉を片方だけ開き、ゲルトはそこに背を預ける。
「本当によかったのか?」
「うん……。もう私は歪虚だから。自分で命を断とうにも、ダメージを受けて自我を失ったら危険だし……」
「だからハンターに頼むのか……」
 ため息を零し、ゲルトは目を瞑る。
「これまで通り、俺の血で何とか持たないのか? まだオルクスに会えないと決まったわけではないだろう。諦めるには早過ぎる」
「ここまで付き合ってもらっただけでも十分だよ。ゲルトこそよかったの? せっかくのエリートコースだったのに」
「良くはないな。俺が逃亡兵として手配されれば、当然故郷の家族を裏切ることになる。今頃弟や妹達がどうなっているか……」
 そうまでして付き合う程のことだったのか。それはゲルトにもいまいちわからなかった。
 だが、ベルフラウの存在はそもそも錬魔院の闇に通じているように思えたし、自分たちが扱っている試作兵器も無関係には思えなかった。
 これまではただイルリヒトから帝国軍に入り、そこで安定した収入を得て故郷の家族を養えればそれでよかった。
 しかしこれまでの戦いの中で、自分のなすべきことはなんなのか、それがわからなくなってしまった。
「ゲルトはもっとクールな人だと思ってたよ」
「ふん……まったくだ」
 二人はただのクラスメイト、ただのチームメイトだった。
 けれど二人の間には大きな隔たりがあった。それにゲルトはいつも気づいていなかった。
 人為的に作られた強化兵であり、オルクスに見捨てられた眷属でもあるスバル・ベルフラウと、その命を使って吸血鬼を倒す聖機剣。
 これは人事ではない。もしもイルリヒト機関の兵士見習いたちが、何らかの実験に参加させられているのだとしたら……。
「……こんばんは。いい夜ですね」
 か細い男の声が響いて視線を向けると、教会の入り口に誰かが立っていた。
 全身をすっぽりと黒い外套で包み、顔は紫色の花が覆っている。いや――これは仮面か?
 帽子を脱いで胸に当てると銀色の長髪が顕になる。男は恭しく一礼し、ステンドグラスから差し込む月光を見上げた。
「実験体ベルフラウさんですね? お迎えに上がりました」
「イルリヒト機関の者か?」
「いえ違います……ああ、そうとも言えるかもしれませんが……。さるお方の指示で、アナタをお迎えに来たのです」
「私はイルリヒトには戻りません。――たとえ、絶火隊の人が相手でも」
 聞き慣れない言葉に首を傾げるゲルト。男はかくりと肩を落とし、外套の内側に手を伸ばす。
「ご存知でしたら話が早い」
「殺すのではなく連れ帰る? スバルをどうするつもりだ」
「アナタには関係ありませんので、ハイ」
 次の瞬間、男の外套の内側から細長い刃が突き出しゲルトの腹を貫いた。
 刃は伸縮するのか穴だけ残して消え、血を流したゲルトが膝を着く。
「最強の吸血鬼の血を受けたアナタは貴重なサンプルなのです。そう安々と死なせるわけがないでしょう? その血、肉の一片まで人類に貢献して頂かなくては……」
 目を見開き飛びかかろうとするゲルトの拳を掴み、足払いを放つ。男は片手でゲルトを放り投げると、外套の内側から細長い形状の剣を取り出した。
「に……げろ、スバル……」
 音もなく駈け出した男はまだ間合いも離れたままで剣を振るう。
 刃はひゅんと風を切ると、スバルの髪を僅かに切り落とした。刃が伸びたのだ。
「剣……いや、鞭? 可変式武装……ナサニエル院長の!」
 反撃も可能だが、力を抑えなければ完全に歪虚として自我を失ってしまう。
 そうなれば目の前の男も、ゲルトさえも殺してしまう可能性があった。
 血の盾も使わずにまともに袈裟に斬りつけられると青い血が吹き出し、空中で凝固する。
「駄目……溢れてしまう!」
 結晶化した血は槍を成し、目の前の男へと襲いかかった。
 男は巧みに鞭のような剣を振るい、結晶槍を打ち払う。
「対吸血鬼戦闘に慣れている……?」
「ハイ。一応、本職ですので……」
 まるで自我を持つかのようにうねる、連なる刃。その二撃目がスバルを切り裂くと、教会に少女の悲鳴が響き渡った。

解説

●目的
???


●概要
こんにちは。スバル・ベルフラウです。
私のことを知っている人ならば話は早いのですが、そうでない場合は……そうですね……。
わかりやすく言うと、私は吸血鬼、つまり歪虚です。そしてみなさんへの依頼は、私を倒すことです。
少し、裏の事情を説明します。
私はある目的があって、人類とも歪虚とも交わらずに行動していました。
しかし、暴食の衝動は強くなる一方で、このままでは私は近いうちに人を襲ってしまうと思います。
そうなる前に皆さんに倒して欲しいのです。
帝国軍に依頼しないのには理由が別にあります。彼らは恐らく、私という存在を殺さずに利用しようとするでしょう。
ナサニエル・カロッサ……錬魔院の彼ならば、私という実験体を使って何かもっと恐ろしい物を作りかねません。
そうなれば、私のクラスメイトだったイルリヒト機関の皆にも、何か良くないことが起こる気がするのです。
誰かに利用される前に、そして私が私でなくなる前に……。
お願いします。私を倒してください。
夜明け頃、指定の場所でお待ちしています。


●???

「スバル」
不変の剣妃オルクスの元契約者にして錬魔院の実験体。
人間としての寿命が切れ、死と同時に歪虚化。吸血鬼になってしまった。
オルクスに近い能力を持ち、オルクスの次なる器となる可能性があったが、どうやら力不足らしい。
“自らの血で他の吸血鬼の血を相殺する”という特殊な能力を持っている模様。

「ゲルト」
元イルリヒト機関。現在は逃亡兵扱い。闘狩人。
腹を刺され、投げ飛ばされて気絶している。
いつも刺されている。

「???」
黒ずくめの男。花の仮面をつけている。
イルリヒト機関でも見られるような可変式の武器を装備している。
非常に高位の覚醒者で、何らか特殊な使命を帯びていると思われる。
スバルを人体実験に使う為、捕獲しようとしている。

マスターより

お世話になっております。神宮寺です。

あまりにも長らくお待たせしました……。
色々とスケジュールとか大変で、申し訳ございません。
スバルの最期のシナリオになるかな~という感じですが、邪魔者もいます。
目的は???なので、それぞれの動機で参加していただければOKです。

それではよろしくお願い致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/04/02 18:06

参加者一覧

  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • 愛しい女性と共に
    レイス(ka1541
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 特務偵察兵
    水城もなか(ka3532
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 夢への誓い
    ハッド(ka5000
    人間(紅)|12才|男性|霊闘士

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/03/29 21:42:46
アイコン 作戦相談所
ヒース・R・ウォーカー(ka0145
人間(リアルブルー)|23才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/04/01 18:09:42