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【剣機】初陣の用心棒

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
APV

難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2014/09/27 12:00
リプレイ完成予定
2014/10/06 12:00

オープニング

 一応、それなりには憎んだ相手の筈だった。
 きっと手の届かない場所に生きる人。一度も会った事の無かった、夢の先に立つ人。騎士皇ヴィルヘルミナ・ウランゲルと帝国軍第一師団三等兵のシュシュ・アルミラの出会いは、少女が想定していた物よりも大幅に前倒しでやってきた。
 帝都防衛を主任務とする帝国軍第一師団シルバリーヴァントは治安維持部隊としての側面も持つエリート集団だ。剣機騒動で近辺の町村から避難にやってきた民衆の誘導管理もお手の物で、当然人々からの信頼も厚い。
 そんな中、完全に独りで浮いてしまっていたのがシュシュだ。彼女は帝都の地理にも明るくないし、民衆を誘導できる余裕もない。
 次々に不安を口にする人々を諌める事など出来ないし、気の利いた励ましの言葉も出てこない。シュシュは帝国という国が嫌いで、この国に暮らす人々が苦手だった。同僚からもほったらかされ特に仕事もなく暇そうに魔導トラックのボンネットに胡坐をかいていた時、ヴィルヘルミナは颯爽と民衆の前に姿を現したのだ。
「陛下! ヴィルヘルミナ皇帝陛下だ!」
 誰かが叫ぶと同時に陰鬱な雰囲気が一気に晴れやかに変わる。その人がいる、ただそれだけで誰もが安堵していた。
「皆、暫しの間不自由を強いる事を許してほしい。だが安心したまえ。私がこうして帝都に居る限り、守りは盤石である」
「そうだ、陛下は既に剣機を倒した経験がおありだ。今回も大丈夫に決まっている!」
 賑やかな声に囲まれ笑顔で手を振るヴィルヘルミナ。むすっとした様子で遠巻きに眺めていたシュシュだが、何故か二人の視線はばっちりと合ってしまった。
 皇帝は部下にあれこれ指示をするとゆっくり近づいてくる。シュシュは咄嗟に車から飛び降りて身構えるが、相手はあくまで自然体だ。
「シュシュ・アルミラだね? 私はヴィルヘルミナ・ウランゲル。この国の皇帝をやっている」
「そ、それくらい知ってるだよ……です」
「楽にして良い。私は個人的に君と話をしに来ているのだからね」
 そうは言われても、ついこの間試験になんとか合格し、訓練階級である三等兵になったばかりのシュシュだ。帝国と言う国家の頂点相手に緊張しないわけがない。
「オズワルドから聞いたよ。帝国を変える為に師団長を目指していると」
 びくりと背筋を震わせ、顔を真っ赤にするシュシュ。その夢は真剣な物だが、現実のトップに知られるには気恥ずかしかったのだ。しかしヴィルヘルミナは笑顔を作り。
「素晴らしい事だ。決して楽な道ではないだろうが、諦めなければ状況はきっと良い方向に転がってゆくだろう。切磋琢磨したまえ」
 ポンと頭を撫でられ目を丸くするシュシュ。なんというか、こう、色々想像と噛みあっていない。
「ダンチョーにちゃんと話聞いたべか? シュシュ、帝国は嫌いだべよ?」
「知っているよ。だから嫌いな所を正当な手段で改善したいのだろう? 実に前向きじゃあないか」
「当たり前だけんど、ヘーカの事も嫌いだ。そんなシュシュがダンチョーを目指していいのん?」
「全く構わないよ。現在の師団長クラスにだって、ちらほら私の首を狙ってるような不届き者はいるからね。はっはっは」
 キョトンとするシュシュを余所に皇帝は楽しげに笑って見せる。そうして優しく目を細め。
「辺境移民である君がそうやって帝国を変えようと志し、戦ってくれる事を私は心から嬉しく思う。ありがとう、シュシュ」
「どうして、お礼なんか……」
「“あきらめ”が人を殺す。諦めない限り可能性は無限に続く。ゼロではないという希望……それを私は信じている。君が諦めない限り、何もかも終わったりはしない。君のその命の灯が消えるまで、君の物語は語られ続けるだろう」
 トンと、シュシュの胸を軽く拳で叩いて女は目を瞑る。そうしてマントを翻し背を向けた。
「考え得る全ての努力を引っ提げて昇ってこい。誰にも許されず、誰にも追いつかれず、ただ私は頂点で君の未来を待つ」
 遠ざかる背中を呆然と見つめ、その場にへたりこんだ。なんだろう、あれは。どういう生き物なのだろうか。
 とても同じ人間とは思えない。人は弱い。だから迷ったり不安になったりする。眼を見ればわかる。人の弱さは瞳に宿るから。
 しかしあの眼差しからはただ強さしか感じられなかった。そんな人間居る筈がない。もしも実在するのなら、それはもう、バケモノの類だ。
「どうだ、本物の騎士皇は。悪名高きヴィルヘルミナ・ウランゲルの姿はよ」
「ダ、ダンチョー……」
 いつの間にか背後に立っていたオズワルドが差し伸べた手を取り立ち上がる。
「強い人だべな……びっくりするくらい」
「間違いなく最強だろうな。戦闘能力が、じゃねェ。あいつが真に人間離れしてるのは、その精神力だ」
 思わず俯いてしまう。自分の目はどうだろうか。きっと弱さしか映し出していない。あんな強さなんて……。
「俺はもうあいつがおまえさんよりチビっ子だった頃からずっとあいつを見てるが、あいつはいつもそうだ。ニコニコ穏やかに笑ってやがる。どんな困難も敵も、そいつでなんとなく乗り越えちまう。残酷な決断でさえも、な」
 呆けるシュシュの頭をわしわしと撫で回し、オズワルドはその肩をそっと叩いた。
「頂きは見えたか? おまえさんが目指すのはあの麓だ。へこたれている時間はないぜ?」
 オズワルドはニヤリと笑い、シュシュに新たな任務を言い渡した。


 故郷を失い、言われるがままにこの国へやってきた。
 帝国は嫌いだ。帝国に住む人たちも、嫌いだった。けれど、今はそれだけではないと感じている。
 今正に剣機という脅威にさらされ、当たり前にあった日常を奪われかけている彼らの悲しみを。大切な物を自分の力で守れずに逃げ出すしかなかった苦しみを、誰よりも理解出来るから。
「考えるのは苦手だ。シュシュ、頭いくないかんな。だから……どうするのが一番いいのかなんて、わかんないけど」
 効率よくやろうなんて思わなくていい。愚直に、ただ目の前にある問題に全力でぶつかっていけばいい。
 街道を進む避難民、その傍に落とされた剣機のコンテナ。放出されたゾンビに街道を警備する帝国兵が応戦する。
 シュシュはまだどの小隊にも配属されていない。だからこそフットワーク軽く、駆けつける事が出来る。
 非覚醒者の警備兵は強力なゾンビを相手に立ち向かう。それは背後に守るべき物があるから。命を賭けるに値する物、それが自分にもあるかはわからないけれど。
 飛び込んで、兵士を庇って盾を振るう。巨体相手でも受け流せば耐えられる。防ぐのは苦手だ。それでもこの盾はきっとその為にあるから。
「帝国軍第一師団、小隊未所属シュシュ・アルミラ三等兵! 師団長オズワルド様の命により、助太刀する!」
 想いのままに突き進もう。迷いも決意もないまぜでいい。今はまだ遠すぎるあの背中に、自分の気持ちをぶつけるまでは――。

解説

●目的
歪虚の殲滅、及び避難民の護衛。


●概要
帝国軍第一師団の依頼で避難民を襲う歪虚を殲滅する為現場に急行する。
剣機リンドヴルム出現により、帝都バルトアンデルスには現在避難の為近隣住民が殺到している。
諸君らハンターはこの警備担当として依頼を受けていたが、避難民が移動する街道付近にコンテナ爆撃を受けたという一報を受け、歪虚の殲滅を担当する事になった。
コンテナ落下の衝撃による被害はないが、そこから出現した大型の強化ゾンビが街道に向かっている。
現在は避難誘導に当たっていた第一師団の兵が集結し民衆を護衛しているが、非覚醒者ばかりで強力な歪虚を撃破するのは難しい。
また混乱する人々を正しく誘導する為にも人手を割かねばならず、歪虚の足止めをする事すら厳しい状況だ。
殲滅対象は毒攻撃を使うが、周囲は平原で遮蔽物は木や街道沿いにあるちょっとした石塀くらいしかない事に注意。
ハンターは魔導トラックで現場に急行。速やかに戦闘に参加せよ。


●敵情報
『ヴェル・ヴェルス』
巨大な腐った肉の塊のような新型ゾンビ。サイズ3。
ドロドロに腐り続ける胴体の様な部位で這いずっており、足はない。頭部もないが、人間の顔の様なものが体中に浮かびあがっている。
やけに長大な腕が四つあり。それぞれの長さは4メートル程。移動力はかなり低いが、腕を使って這う速度が上がる事も。
体中から毒ガスの様なものを噴出したり、毒液を吐き出したりする。凄まじく鈍感でタフ。


●特筆
第一師団より霊闘士のシュシュ・アルミラが同行。装備は片手斧と盾。
現地では鎧を着込んだ帝国兵六名が交戦中。一般人で、魔導銃使いと槍使いが半々。

マスターより

お世話になっております、神宮寺でございます。

シュシュは帝国嫌いな辺境移民の帝国兵(?)とだけ思って貰えれば……すごいな。
覚醒者がシュシュしかいないので、現場の兵士達の火力は大した事はありませんが、協力すれば少し楽になるでしょう。
大物一体だけで友軍が結構いるので難易度普通にしてますが、かなり強いので油断なさらぬように。
肉塊君は腕がめっちゃながいのでサイズ3なので、本体そのもの大きさは2くらいです。

それでは宜しくお願い致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/10/05 07:09

参加者一覧

  • 求道者
    猫実 慧(ka0393
    人間(蒼)|23才|男性|機導師
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 魔導アーマー共同開発者
    レオーネ・インヴェトーレ(ka1441
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • あふれ出る色気
    關 湊文(ka2354
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士

  • 雲類鷲 伊路葉 (ka2718
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士
  • 真摯なるベルベット
    アルルベル・ベルベット(ka2730
    人間(紅)|15才|女性|機導師
  • 命を刃に
    レオン・イスルギ(ka3168
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
レオン・イスルギ(ka3168
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/09/26 20:48:45
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/23 00:55:44