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  • 日常

【猫譚】転がる林檎、嘘の結び目

マスター:藤山なないろ

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―

難易度
易しい
オプション
  • relation
参加費
1,500
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
プレイング締切
2016/12/05 22:00
リプレイ完成予定
2016/12/19 22:00

オープニング

●『【猫譚】光の系譜』

 今から1~2カ月程前のこと。
 ガンナ・エントラータ領主邸に、その日領主の姿はなかった。
「どうせこんな事だろうと思っていたが、君たちは甚だ趣味が悪いな。国民全てを騙すに値する“何か”は得られたのかい?」
 領主邸の使用人たちに促されるまま部屋に通された少年は、開口一番そう訊ねた。一見無礼にも思えるが、問われた相手は──少年は“君たち”と言ったが、この部屋には現在少年以外に“一人”しかいない──神妙な面持ちでいる。
「否定も言い訳もしない。叱りの言葉は甘んじて受ける。だが、敢えて答えるなら──“そうすべき必要があり、当時の王国にそれ以外の手段は用意出来なかった”、と」
 相対する男の目には、梃子でも動かぬ強い意志が感じられる。だからという訳ではないが、来客の少年は大人しく室内のソファへゆっくり腰を下ろすと、やがて見透かした口調でこう切り出した。
「ま、そうだろうね。君がその“印”を持っているということは、すなわち“君が今こうしている事は王家公認”と言うことだ。王女の独断か、大司教の入れ知恵か、そんなことは僕の知ったことじゃない。僕が問題視したいのは──」
 男が頑丈な鎖に通して首から下げている“それ”を指し、少年は言う。
「その“印”を持つ君は、確かに僕をここに呼びつける権利があることは認めよう。だが、それとこれとは話が別だ。“この僕を”、“こんな僻地へ”、“呼びつけた理由”を直ちに説明しろ。事と次第によっては、ただじゃ済まない」
 モノクルの奥、いつか見た“エメラルド・タブレット”のように神秘的な瞳が、鋭く男を見据えている。その威圧感は、たかだか10歳前後の少年が放つものとは到底思えない。
 睨みつける少年を前に男はゆっくりと立ちあがり──まるでその精神性を表すような、無駄のない洗練された所作で、少年の前に跪いた。
「パラディ卿。どうか、ご助力を賜りたい」
「またどうせ“この国のため”だとかつまらないこと、言うんだろう?」
「いいえ、厳密には──」

 ──“世界の存続のため”に。

 少年──フリュイ・ド・パラディ(kz0036)は無意識に口を噤んだ。

●そして現在

 ガンナ・エントラータでは、いよいよ音楽祭が開催を迎えた。今日から何日もの間、昼夜問わず歌えや踊れ、呑めや食えやの大祭りが始まる。常日頃以上の活気を見せる王国一番の港町では、みな準備に明け暮れてはいたが、忙しさよりも期待感が勝っているようだ。この街の民のみならず、国中の民がそこかしこで今日の宴を心待ちにしている。
 ──にもかかわらず、この街の雰囲気にそぐわぬ辛気臭い顔をした男が一人。
「……黒大公は去ったが、しかし」
 男は初老と言っても差し支えない年齢だろうが、青銀の鎧を纏い、厳とした風格を漂わせていた。
 手入れの行き届いた清潔感ある髭に触れながら、思案気に西の空を眺めている。何を──とは、誰も問わなかった。その男が、見据えるべきものは明白に“西に在った”からだ。
「だ……団長! ご報告差し上げます」
「手短に済ませろ」
「はっ。予定通り、ベリアル軍追撃作戦において、マーロウ大公率いる貴族軍を中心とした部隊が攻撃を開始したとのことです」
 脈絡なく取りだしたパイプをくわえ、“団長”と呼ばれた男は煙を吐き出した。だが、団長からの具体的な応答はない。居心地の悪さを味わいながら、ややあって厳しい視線で促されると、報告官はその場を辞した。
「抜け目のない男だ」
 確かに、大公はガンナ・エントラータに滞在中だった。だが、それだけで例の黒大公追撃指揮をとるわけではない。
 “大公が依頼で派遣した偵察が敵本隊を発見した”ことから“その流れを受けて主導権を握る”に至ったのだ。
 追撃戦はあくまで追撃戦。ベリアルそのものを討ち果せるものでもなければ、敵数をどれだけ減らせるかが争点であり“こちらが痛手を負ってまですべき事ではない”。
 控えていた騎士を呼びつけ、王国騎士団長は告げる。
「王国騎士団は此度の追撃に加わらない。直ちに国内全域に此度の騒動による戦況精査と結果報告を纏めさせ、体制見直しの為の施策を提案させろ。三日以内に、だ」
「は。ですが、その……相手は黒大公。既に一部の騎士は……」
「馬鹿者共め。……だが、積年の恨み、解らんでもない。“気の収まらん”連中は好きにしろ。だが、被害を出すな。無駄死には認めん」
 飛び出して行った騎士の背を見送ることもなく、初老の騎士は再び煙を燻らせた。
「……ふん。殿下のご命令と言えど、祭りは好かんな」



「ヴラドおじさま、今、なんと……」
「“我々グリム騎士団は、追撃戦に参加しない”。エレミア様からもそのように申しつけられている」
「何を仰るのです! 相手はあの怨敵ベリアル! 彼奴の配下クラベルにお父様の命が奪われたのならば、お父様を殺した“要因”はベリアルにあるも同じ!」
「まさかユエル。君は“その為に戦う”などと言うつもりか? 亡き人のため、今を生きる者に死地へ臨めと? 父を想う娘の願い故に? 聞こえはいいが、それだけだ」
「……っ、当家は武家です。戦で功をたてずして如何様に王家への忠誠を示すのです?」
 ガンナ・エントラータの外に敷設されたテントから、言い争う声が聞こえてくる。
「もとより此度の追撃戦においてベリアルとの戦は望めまい。さらに、現状得るべき首級もなし。追撃戦で上げられる武勲は“どれほど数を減らしたか”に主眼が置かれることになりそうだ。ならば、昨年繰り返された遠征で“数を減らした我々が敵う戦場ではない”。見極めも必要だ。先のベリアルとの戦いで騎士たちも消耗している」
「存じています。ですが継続して戦場に立つ多くの騎士にとって条件は同じ。……おじさまの仰りたい事は、つまり“此度の戦では他の貴族兵団に勝つ目がないから出るべきでない”と」
「……ユエル。此度の指揮は、かの大公マーロウが執る。君は、“あれ”をどう思う?」
「“どう”? 王国騎士団の後ろ盾ともなった方で、今やこの国の推進力にもなりつつある方だと──」
「なるほど、残念だ」
 やがてテントから出てきた身なりの良い男は、去り際にこう言い残していった。
「騎士たちは私が引き上げておくよ。君は、街の様子を視察してから帰ると良い。君の友人肝入りの音楽祭なのだから」

 王国西方に領地を持つ貴族グリムゲーテ家の長子、ユエル・グリムゲーテ(kz0070)はその日ガンナ・エントラータに居た。少女は賑わう街中で、何をするでもなくぼんやりと街の景色を眺めている。
「黒大公を前に、自分でも焦っていた事は解ってる。でも、私……」
 この一年で、彼女を取り巻く状況は大きく変わった。だが少女の心根に変わりはない。
 国の為に大きな戦いが起こっている傍で、祭りを見て回る気持ちになんてなれないのだ。
 少女は噴水に腰をかけ、小さく溜息をついた。

解説

【猫譚】決戦にてベリアルの撃退に成功。
ガンナ・エントラータにて、いよいよ音楽祭が開催の運びとなりました。
これまで音楽祭の準備や、本連動依頼にご助力下さいました全てのハンターさんに厚く御礼を申し上げます。

さて、本シナリオは「音楽祭」という舞台を用いたフリーシナリオです。
この音楽祭の開催目的が「正のマテリアルの回収」と、
それによる「ユグディラ女王へのマテリアル供給負荷軽減」にあるため
貴方らしくこのお祭りを楽しんでもらえれば、それだけでOK!

OP?
そんなものは無視してどうぞ!(爽やかな笑顔

さあ、みなさまの物語を綴りましょう。

▼ご参加にあたり、下記の条件をご確認ください
●場所はガンナ・エントラーナ内に限定(大きな港町。音楽祭が開催され昼夜問わず何日間もカーニバル状態)
●戦闘不可。模擬戦・個人的な歪虚狩りなど本依頼では執筆致しません
●PL情報は、必ずPC情報化してから扱ってください(プレイングの半分が駄目になったケースもあります…)
●下記のNPCと絡んで頂けます。共に過ごすのもよいかもですね
1)ゲオルギウス・グラニフ・グランフェルト
現王国騎士団長
OPの後、視察程度に街を見回り、夜は礼儀的に酒場に金を落としてから帰る予定です

2)ユエル・グリムゲーテ
先のベリアル急襲に際し、グリム騎士団も戦いに馳せ参じていたが、追撃戦への出陣は叶わなかった。
現在父の異母兄ヴラド・バークレーが、領の統治に協力してくれている。
旧知の仲ならPC情報化は容易。

3)他ご要望あれば掲示板でお問い合わせください

▼この依頼の遊び方の例
●基本的には飲み食い踊り歌うがよし
●一緒に参加する人と一緒に遊ぶもよし
●ガンナ・エントラータで何かを調査するもよし
●審判~猫譚の間、皆様が過ごした日々を振り返り史実化するも歓迎
(皆さん、どれだけ成長されましたか?)
●NPCと共に過ごすもよし

とにかくフリー。
楽しんだもの勝ち&利用したもの勝ち。

マスターより

【猫譚】を騙りながら猫が出てこない、猫譚詐欺2本目です。
(あ、音楽祭で猫の手が必要ならお申し付け下さいね)

さておき、【猫譚】は皆様のご活躍の御蔭で良い結末を迎えられそうです。
本連動では、ついに開催となった音楽祭を楽しみましょう!

……といいつつ、このOPです。

Q:楽しんで遊んでるだけだと、どうせ失敗判定出すんでしょ?
A:出しませんよ!

OPが胡散臭い雰囲気漂ってますが、無視してOK。
(もちろん気にしたい方がもしいらっしゃれば、気にして頂いても嬉しいですが!)

とにかく今は、お楽しみください。
意味のない事は一つもない。
今日の会話が明日の何かに繋がるかもしれないし
戦士に“明日”は保証されませんから、ね。

関連NPC

  • グラズヘイム王立学校生徒
    ユエル・グリムゲーテ(kz0070
    人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|聖導士(クルセイダー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/12/25 19:10

参加者一覧

  • 古塔の守り手
    クリスティア・オルトワール(ka0131
    人間(紅)|22才|女性|魔術師
  • その名は
    エステル・L・V・W(ka0548
    人間(紅)|15才|女性|霊闘士
  • 黒の懐刀
    誠堂 匠(ka2876
    人間(蒼)|25才|男性|疾影士
  • 平穏を望む白矢
    シルウィス・フェイカー(ka3492
    人間(紅)|28才|女性|猟撃士
  • 背徳の馨香
    ブラウ(ka4809
    ドワーフ|11才|女性|舞刀士
  • 想いの奏で手
    リラ(ka5679
    人間(紅)|16才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/12/04 18:30:23