• 日常

種まきの季節

マスター:DoLLer

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/03/17 07:30
リプレイ完成予定
2017/03/26 07:30

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

「そこまでだ」
 薬草を摘んでいた少女の後ろから冷たく低い声が響いた。
 少女ルーフィは胃が掴まれたようになって息もできずに凍りついた。
「こんな辺鄙なところまで来て泥棒とは度胸あんな」
 背負った編み籠の中身を覗いているのが、目の前に伸びるルーフィの影と重なって見えた。低い声が想像させるほどには巨躯でも年寄りない様子に、ルーフィは相手が全く想像ができずに、そっと後ろを振り向いた。
 森の管理人だとすればエルフが相場だと思っていたが、そこにいたのはドワーフだった。濃いヒゲと骨太の体躯がそれだとすぐ気付かせた。
 ルーフィは一瞬どうしてと思う気持ちもあったが、そうした疑問が恐怖を解き放ってくれたのか、息せき切って話し始めた。
「あの、すみません。ここから川下の町にゾンビが襲来して、怪我人が多く出たんです。聖導士さんもいるんですが、間に合わなくて。それで怪我に効く薬草が欲しくて……」
「弟切、片栗、鹿蹄……ふぅん、本当みたいだな」
 ドワーフの方も森に関わっているだけあるようで、籠の中身を見ただけでそれが外傷に使う薬草であることをすぐに見抜いたようだった。
 ルーフィは体を向き直ると、籠をおろして、めいっぱい頭を下げた。
「ここが管理されている森とは知らず、荒らしたことはお詫びいたします。でも、本当に歪虚の攻勢が激しくて聖導士さんの力もギリギリなんです。薬草が必要なんです。ここの薬草はマテリアルをたくさん含んでいるからきっとたくさんの人が助けられると思うんです。お金なら支払いますので……」
 素直に頭を下げたルーフィに、ドワーフは髭をしごきながらそれでも厳しい視線を緩めたりはしなかった。
「あんたさ、自分の行為が金でどうにかなるもんか? マテリアルが籠もっている事を見抜いた目は褒めてやるけどよ、そんなけマテリアルに満ちた状態にするのに、どんなけ手間暇かけてると思う?」
「……ごめんなさい」
 ドワーフの言い分はもっともだった。うなだれて黙りこくるルーフィの前で、ドワーフは軽く鼻を鳴らすと、下ろした籠を持ち上げた。
 取り上げられる。どうしよう。
「って言っても、抜いた草を植え直したところで元に戻るでもなし。歪虚と戦ったやつらに怪我したままでいろだなんて思わねぇよ」
 さらに怒られるとばかり思っていたルーフィにかけられたその言葉の意味を掴みとるのに、少しばかり時間がかかった。
 呆けるルーフィに手を差し出して立たせると、そのまま籠を背負い直させて、ドワーフはまた鼻を鳴らした。
「治療するなら時間が惜しいだろ? 早く持っていきな」
 それどころか、ドワーフはルーフィよりずっと手慣れた速さで薬草を見つけていくと、自分で刈ってその籠に詰め込んでくれた。
「あ、あの。ありがとうございます」
「バカヤロウ。泥棒した分は許したわけじゃないからな。俺もこの森も歪虚ってのは敵なんだ、それだけだ」
 ドワーフはそう言うと、革袋を一つルーフィに放りだした。
 触れた瞬間に手の中でホロホロとした感触と共に形が変わったことから、それが細かい粒状の何か、いや、種であることはすぐに推察がついた。
「採った分だけ種をまいてもらうから、ちゃーんと戻って来いよ」
 不器用なウィンクをとばすドワーフに対して、ルーフィはどんな顔をしていいのかわからなかった。
 嬉しい顔をしたくとも目蓋が熱くなってどうしても強張ってしまうのだから。
「はい、必ず。たくさんの人で、お返しに来ます!!」


 それが数週前のことだった。
「いや、まあ……ちゃんと約束守ってくれるのは嬉しいけどな」
 ドワーフ、ギムレットと名乗った彼は目の前にいる『あなた』達の顔ぶれを見て、唖然とした顔をしていた。
 ルーフィ一人で種まきに来るだろうと思っていたのだろう。そこに加えてハンターがいるというのだから。そして『森に恩返しするために種まきを手伝ってほしいとルーフィより依頼された』というのだから言葉も無くすはずだ。
「ハンター雇う金があるなら、こんなところで摘まなくとも買ってくれば良かっただろうに」
「それだけ緊急だったんです。本当にありがとうございました」
 ルーフィの屈託のない笑顔に、ギムレットは完全にしてやられた顔になった。
 それに追い打ちをかけたのは彼の後ろから現れた巻き髪のエルフ、この森の管理者らしい女性であった。
「以前のあなたと同じですね、ギムレット」
「同じ……?」
 問いかけ直したのはルーフィだった。その言葉にエルフの女は静かにほほ笑むと、膝をついてルーフィと視線を合わせて話した。
「思うよりずっと良い人ばかり。そういうことです。皆さんが種を撒けばまた助けられる人も増えるでしょう。どうぞよろしくお願いしますね」
「それだけじゃあ申し訳ないな、種まきが終われば欲しい薬草を摘んでいっていいぜ。調合の仕方も教えてやるから」
 ギムレットは立ち上がると麦わら帽子をかぶりて、まだ荒涼とした大地、未来の緑の野へと案内してくれるのであった。

解説

森の外縁部で種まきをしてください。
歪虚の襲来など主だった危険はありませんが、種を撒く地域は元々歪虚による負のマテリアルによって汚染された地域です。
覚醒をしていないと長時間労働していると普段より息苦しさなどを感じ、短時間しか活動できません。覚醒していない状態での種まき可能な場所もあります。
汚染された地域はそのままでは発芽できない可能性もあります。NPCのエルフやドワーフが適宜浄化していきますが、他に思いつくことがあればご自由にどうぞ。

●森
帝国北東部に位置しています。ちょっとした川があり、下ることで町にたどり着きます。
森自体は一度歪虚の攻撃を受けて滅びたのを、復興中のものです。
木々も若く、皆さんの背丈を少し超す程度のものばかりです。

●町
ゾンビによる襲撃がありましたが、奮闘のかいあり退治されました。
今は平和が戻っています。
こちらの防衛戦に参加していたとすることもできます。

●登場人物
ルーフィ 女 人間 薬草士
皆さんの依頼人です。覚醒者ではありませんので影響の少ないところで種まきをしています。

ギムレット 男 ドワーフ 機導士
この森の管理をしています。道具製作や施設の保全などを担当しています。

森のエルフ(アガスティア) 女 エルフ
歪虚に襲撃される前から森に棲んでいたエルフです。
森の守護や汚染の浄化、植物の手入れなどを担当しています。

●蒔く種について
基本は薬草にも使える野草類が主としていますが、詳細な設定はありません。
各自で思いつく植物の種(現実の植物、架空の植物)だと設定してくださっても構いません。ただし世界観から逸脱すると判断するものは適当に修正されます。

マスターより

この舞台は「小さな森」で始まるシナリオと同一の舞台ですが、そちらとは直接関係はありませんので、そんなことあったんだー。くらいに思っていただけると幸いです。(特に知らなくても問題ないように、必要な情報は解説などにまとめています)

種まきの時季。
新たな一歩を生み出すものとして穏やかな一時を過ごしませんか。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/03/20 20:35

参加者一覧

  • ボラの戦士
    アーシュラ・クリオール(ka0226
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • エルフ式療法士
    ソナ(ka1352
    エルフ|19才|女性|聖導士
  • 光森の絆
    ラティナ・スランザール(ka3839
    ドワーフ|19才|男性|闘狩人
  • 浄化の兎
    明王院 穂香(ka5647
    人間(蒼)|16才|女性|聖導士
  • 豪放なる慈鬼
    文挟 ニレ(ka5696
    鬼|23才|女性|符術師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

  • ギャリー・ハッシュベルト(ka6749
    人間(蒼)|48才|男性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/03/17 06:07:16
アイコン 森の種まき
星野 ハナ(ka5852
人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2017/03/13 22:49:06