• 血盟
  • 無し

オーラン・クロスの受難 ―プラト院―

マスター:ムジカ・トラス

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―

難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/06/18 19:00
リプレイ完成予定
2017/06/27 19:00

オープニング


「へえ、これは……想定以上に進んでるんだね」
 長い時の流れが糊塗された重厚な石造りの建物の一室に、男の声が染み込んでいく。
 軽薄さの滲む声だが、表情にはたしかに、驚きの気配が滲んでいる。
 ヘクス・シャルシェレット(kz0015)。木製の椅子に腰掛けた青年は、手元の分厚い資料を興味深げに眺めている。
「解るのかい、それ」
 彼の眼前には、二人の男性がいた。方や、オーラン・クロス。聖堂教会所属の、法術陣――曳いては『巡礼陣』の専門家。ぼさぼさのくすんだ金髪は相も変わらずだが、少しばかり無精髭が目立つようになっている。げっそりとやつれた顔は――これも、以前の通りか。
「どうだろうな。ヘクス卿にとっては冗句の一貫、あるいは布石かもしれん」
 もう一人は、アダム・マンスフィールド。オーランとは対称的に筋肉質な壮年男性だ。容姿は前衛戦士の装いであるが、身に纏うローブだけが魔術師らしさを遺している。禁術指定されて久しい刻令術を研究し、その自律性は限定的ではあるものの実用化にこぎつけた鬼才である。
 ヘクスは資料を鞄に詰め込むと、人を食った笑みを浮かべる。
「刻令術のところなら少しは、かな。法術陣そのものはさっぱりわからないけれど、目的はまあ、解るね」
 返答に、オーランとアダムは顔を見合わせた。笑うべきかどうかをお互いに探り合ったと見えて、ヘクスは吹き出してしまう。
 彼ら二人は、どちらかといえば理論家だ。となればすでに、"仕事"は終わっている。だからこそ、ヘクスの評価など必要としていないのだろう。
「いや、凄いな。正直なところ、もう少し時間がかかると思っていたよ。これはボーナスを考えなくちゃいけないなあ」
 ヘクスは先ず、アダム・マンスフィールドの煤けた瞳を真っ直ぐに見つめた。
「アダム。君が刻令術の技術的限界を指摘したときはどうなるかと思ったけれど」
「…………私としては、最初から説明義務を果たしていたつもりだったがね」
「確かに、ね。けれど、ナサニエル・カロッサ(kz0028)の元へ留学し機導術を学んだ結果、Gnomeと……Volcaniusの開発にこぎつけた。随分と、金は掛かったけどね」
 もっと売れないかなあ、とぼやくヘクスを前に、話の流れが読めてきたアダムは不快げな顔をした。
 一方で、事情が解らないオーランとしては呆気に取られるしかない。
「一体、なんの話をしてるんだい?」
「や、今回の結果は、それぐらい重要なことだったんだ。刻令術ゴーレムが抱える問題点は、その命令精度や攻撃性の程度……なんかじゃなくてね。もっと運用面の問題だったのさ。具体的には、ゴーレムを動かすためのマテリアルを調達するための金、コストなんだけど」
「金……?」
 聖堂教会からの資金もあり金に困ったことのない研究者であるオーランは小首を傾げたまま、言う。
「だからこそ、アダムが法術陣に目をつけたのはある意味で自然な流れだったわけだ」
 気づけば、ヘクスはオーランを見つめていた。静かで、深い目で。

「結果として"刻令術と法術陣は組み合わせることが出来た"」

 ヘクスはそのまま、今回の成果を端的にまとめた。
「小規模な法術陣を使い、魔具にマテリアルをプールする。機体を必要稼働時間分動かすためのプールを果たしさえすれば、ゴーレムは動かせる。それはいい。けれど――問題は、君だ。オーラン」
「……?」
「何故、協力したんだい? 何故君はアダムの提案を受け入れたんだい。小規模化は出力の低下とほぼイコールである以上、法術陣の本来の目的とは相容れない方向性だよね。法術陣はそもそも、人の身ではなし得ないような未踏の偉業を成し遂げるための術理のはずだ」
「…………」
 たとえば、古の塔のアーティファクトのような。たとえば、巡礼陣のような。小規模に何かを達成するならば、他の技術でも代償できるものだ。法術陣を使わなくてもいいもののはずだ。
「それを"わざわざ"小さくしようとした理由を、知りたいんだ。こんなに早くしあがったのには、理由があるんだろう、オーラン」
「それは……」
 言い淀んだオーランを、ヘクスは見つめたまま応えを待つ……が。

「ゴチャゴチャ五月蝿ァーーーーーーーーーーーい!!!」
 想定外の闖入者の声で、ご破産になった。



「セッセェイ!」
 という声と共に現れた巨大なソレを前に、ヘクスを含めて三人の男たちは一様に唖然としていた。
 知る人ぞ知る、節制の準大精霊、プラトニスである。
「え。え? なんだこれ?!」
 驚愕するオーランをよそに、他の二人――ヘクスとアダムは頭を抱えている。
「あ、あれ!? お知り合いなのかな?!」
「…………昨夜会った程度だがね」
「ぬはは! あれはよい語らいであった! ところでヘクス! お主は相も変わらずそのような問答を……!」
「……………………」
 オーランの問いに渋い表情で応えるアダム。一方で、頭を抱えたまま何事かを呟いているヘクスであったが、
「ん?」
 ふと、何事かに気づいたか、そのままさっと立ち上がると、
「あ、僕、不意に用事を思い出して勤労意欲が湧き上がってきたので、仕事に行ってこようと思う。じゃあ、これで!」
「む! そうか! ならば気をつけて行くのだぞ! ヘクスよ!」
「うんうん、そうするね! どうぞごゆっくり!!!!」
 さらば! と片手を挙げたまま、疾影士もかくやという速度で消えていった。

「…………」
「………………」
「む?」

 後には、オーランとアダムと、プラトニスが残された。
 プラトニスはともかく、オーランとアダム二人は、現状を良く理解していたのだ。

 つまり――話の結末よりも、プラトニスを押し付ける好機であることを優先して、ヘクスは逃亡したのだと。



 オーラン・クロスは運が悪い。
 じゃんけんで負けた結果、プラトニスを引き取ることになった。
 アダムは今後、刻令ゴーレムを製造しているスタッフ達への教導や技術的な実装に向けて動くことになる。
 対して、オーランは、というと。
「これから何をするのだ?」
「実験、ですね……」
 聞けば、水と光の属性を兼ね備えた精霊とのことで、畏れ多さに身が縮む思いである。
「実験ンンン?」
「……ええ、まあ」
「ハンターたちと、か?」
「そうなります……」
「ほっほぅ……やはりか」
 ふむ、と髭をさするプラトニスに、嫌な予感を覚えた。
「ですので、プラトニス様はこちらでゆっくり」
「なぁに、我輩も行こう!」

 そういうことになってしまった。

解説


●目的
 オーランの実験に協力してください。

●解説
 オーランが開発した、『小型法術陣』実験への協力をお願いします。
 『正のマテリアルをプールする』という術式を可能な限り小型化した結果、『所定領域においてマテリアルをプールすることが出来るようになった』法術陣の理論が構築されました。
 とはいえ、作成者であるオーランと協力者アダムそれぞれの実力不足もあり、現状では緩徐な勢いでのプールしか試行しておらず、貯留速度をあげた際の検証されていません。

 今回は小規模な実験ですので、インナーシャツに術式を施したものを着てもらい、
 1.そこへの吸収速度と量的の評価
 2.使用者に対する影響の評価
 を行います。
 その上で、モニターである皆様には、
 3.「どういう状況で使用すれば効率良く運用可能か」「どのような技術に転用可能か」といった案
 も期待されています。


▼詳説
 1.吸収評価
 元となった技術の影響もあり、放出されたマテリアルの自然吸収がベースになります。
 (そのため、トラップなどへの流用は困難でもあります)
 本依頼では特殊なルールとして『BS:マテリアル放出』というBSを使用します。
 強度はご自身で決定可能ですが、覚醒可能時間が/【強度】分減少します。
 レベルによって貯留されるマテリアル量がやや変動します。
 その他、特殊な行動などによって量や速度が変化するかについても検証ください。

 2.影響評価
 観測されている情報は以下の通りです。
 どうやら症状については個人差があるらしく、その他のBSも掛かり得るでしょう。
 『BS:マテリアル放出』の強度が高いほど抵抗判定に失敗する傾向があります。

 参考
 ・BS:酩酊(アダム)
 ・BS:抑うつ(オーラン)

▼NPC
 1.オーラン・クロス:法術陣の専門家。いざという時の治療要因。
 2.プラトニス:節制の準大精霊。興味深さに同席中。遊んだりもできる高性能精霊。

マスターより

「やはりハンターか。我輩も行く。」
お世話になっております、ムジカ・トラスです。
という感じのタイトルです。ヘクスはプラトニスみたいなタイプクソ苦手みたいですね。ぬはは。気持ちがよいぞ!

さて。
基本的に貧乏くじを引きまくりなオーランですが、今回の依頼を受けて諸々調整をかけてアダムたちに技術的フィードバックを掛けるつもりではいるみたいです。
どう見ても危険な人体実験なのですが、オーランやプラトニスも要るので、ご安心ください。
え? BSがどう見てもモノボケだって!?
ご安心ください。仕様によりBS解除が失敗することもございます。ご安心のうえ、プレイングをお書き下さい。

それでは、よろしくお願いします。

関連NPC

  • ガンナ・エントラータ領主
    ヘクス・シャルシェレット(kz0015
    人間(クリムゾンウェスト)|34才|男性|猟撃士(イェーガー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/06/25 22:09

参加者一覧

  • THE "MAGE"
    フワ ハヤテ(ka0004
    エルフ|26才|男性|魔術師
  • フューネラルナイト
    クローディオ・シャール(ka0030
    人間(紅)|30才|男性|聖導士
  • 明日も元気に!
    クレール・ディンセルフ(ka0586
    人間(紅)|23才|女性|機導師
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 囁くは雨音、紡ぐは物語
    雨音に微睡む玻璃草(ka4538
    人間(紅)|12才|女性|疾影士
  • 甘苦スレイヴ
    葛音 ステラ(ka5122
    人間(蒼)|19才|女性|舞刀士

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン 実験の打ち合わせ!
クレール・ディンセルフ(ka0586
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/06/18 14:56:23
アイコン 【質問卓】教えて☆へクス様
アシェ-ル(ka2983
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/06/16 00:23:52
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/06/15 21:51:04