ゲスト
(ka0000)
【陶曲】組み込まれた歯車
マスター:奈華里

- シナリオ形態
- シリーズ(新規)
関連ユニオン
魔術師協会広報室- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/07/28 19:00
- リプレイ完成予定
- 2017/08/06 19:00
オープニング
●
ポルトワール付近の小高い丘からは街が一望できる。
今日もあくせくと短い生を必死に生きる人間達を見下ろす人影があった。
『まったくもって矮小ですねぇ』
夏の太陽がその白磁の肌に照り返される。
人影は片目を閉じた無表情を、ふと街はずれへと向けた。
『あの施設は確か……』
目に留まったのはとある建物の脇に停められた一台の荷車…今まさに何かを積み込んでいるらしい。傍には質素とはいえそれなりの広さがある建物があり、中では複数の人間が働いているようだ。
『ふむ、どうやら軍需物資の様ですねぇ』
丘から建物までの距離は相当離れているにもかかわらず、人影はまるで隣で荷積みの作業を見ているかのように、積み荷を言い当てた。
「――これで全部だな。よし、後は早い事、海軍に届けなければ」
人影が口を動かし口調をまねる。
勿論、声など届くはずもないのだが、人影は作業を行う人間の発した言葉をコピーし表情を僅かに曇らせた。
『なるほど、どこかで見覚えがあるかと思えば……そんなものもありましたねぇ』
人影は閉じていた片目を開け、白磁に刻まれた記録を呼び起こす。
『……私の計画に支障をきたすほどではありませんが、イレギュラーは極力少ない方がいい。少し手を打っておきますかねぇ』
そうして、彼――クラーレ・クラーラ(kz0225)は、己が配下を呼び寄せる為、20ある指の二本を掻き鳴らした…。
●
「え……今なんて言いました?」
「だから、君のいう品は納品されていないよ。というか本当にこちらに送ったのかね?」
ここは軍の資材倉庫――ポルトワールには海軍本部があり、職人街の職人らは軍用武器を扱っている所もある。ギアの一品もこの度その一つに選ばれ納品された筈なのだが、どうやらまだこちらに届いていないらしい。
「もう一度確認して下さい。確かに二週間前に完成して納品されたは…」
「そんな事言われてもないものはないって…ほら、これ。どこに君の言う物品があるんだね?」
各所の書類を出し引き下がらないギアに少しばかりのイラつきを覚えて、衛兵も対抗するように納入記録を開示する。
「そんな、まさか…」
そのページには彼のいうものはないようだった。
念の為、前後を調べてみてもやはり彼の商品が納品された記録はない。
「すみません。でも届いていないのなら尚更おかしいです。だから調べてくれま…」
「調べる? あんた判っているのかい? 今は歪虚の事でてんで人が足りてないっていうのに、納品が出来ていないからと言って、そっちに人を割く余裕があるとでも?」
これだから子供はという表情で衛兵が答える。それに言い返そうと思った彼であったが、両者共に熱くなっては火に油。今日は出直そうという考えに至り、丁寧に一礼して彼はその場を後にする。
「全く、こっちは命を張ってるんだ…ガキの戯言に付き合ってられるか」
後方でそんな衛兵の愚痴が聞こえはしたが、それでもギアは冷静だった。
しかし、その帰り道。贔屓にして貰っている道具屋を訪れ、目にしたものについては些か動揺を隠せない。
(あれ、は…)
入った先にいたのは如何にも荒くれ者で傭兵を稼業としていそうな屈強な男――背中には大剣を背負い、剥き出しの上腕二頭筋は普通以上に盛り上がっている。そんな彼の足元に見覚えのあるブーツ。一見普通のブーツではあるが、ギアには判る。
(まさか設計図が奪われた時に…いや違う。あれはむしろ)
本物ではないだろうか。もし彼の作ったものならば、靴の側面に小さく歯車の模様が刻印されている筈だ。それを確かめるべく、ギアはそっと男に近付き自然を装い首のタオルを落とし、拾う振りをしつつ確認する。
「あ…」
するとそこには強引に歯車を打ち消し別の模様が印字されているではないか。
「あのすいません。少しお話いいですか?」
ギアはタオルを拾うと臆する事なく、男に声をかける。
「あぁん? ナンダこのガキは?」
男はそう言い睨み返してきたが、店主が間に入ってくれたおかげで事は割とスムーズに運ぶ。
「この靴は何処でお買い上げに?」
勿論自分の作ったものに似ている事は言わずにギアが問う。
「ああ、これか。こりゃあとある筋で買ったもんだ。なかなかのいい値がしたが、具合は悪くない」
はっきりとした店の明言は避けて、男の言葉。だが、はっきり言わないという事は逆に絞り易くもなる。
(おそらく汚れ具合からしてもまだそんなに経ってない。という事は考えたくないけれど…)
裏路地の闇市かあるいはダウンタウンか。ちなみにポルトワールには裏の顔が存在する。
珍しいものが多く集まる貿易都市でもあるからその品を狙ってくる賊やお尋ね者も集まり、やがてコミニティが形成されてしまっているのだ。だから少し路地に入れば昼でも薄暗く一人歩きには危険な場所もそこそこ存在する。そんな場所と海軍との確執は昔からあり、今でも少なからずいざこざが絶えない。
「そうですか。貴重な情報有難う御座いました」
ギアが男にそう言い、僅かながらのチップを渡す。
「ほう、わかってるじゃねえか」
男はそれに満足したようでその後彼を追ってくるような事はなく、無事工房まで帰りつく。
そうして状況を工房長に話し、事の解決を相談。ちなみにギアが作ったのならなぜ彼が届けなかったのかと言えば答えは簡単。今回のものは靴である事から、全てを彼が作っている訳でない。靴職人とのコラボ商品であり、ギミック自体は彼のからくりを取り入れているが本体の部分は靴屋の仕事。しかも大量受注であった為、別の場所で組み立てが行われ運ばれた為、その過程のどこかしらで何かが起きて今に至ったと考えられる。
(あれは明らかに僕の軍行きの商品だった…しかもあれはまだ市場には卸していない)
とすると、結論としては売っていたというその店の者が非常に怪しい。
納品の折には勿論軍人の立ち合いなどなかった筈だから、襲われたとしたら一溜りもないだろう。
「工房長。この件を依頼としてハンターにお願いしても構わないでしょうか?」
自分達で解決したいが、場所がダウンタウンとなれば勝手が違う。そうでなくても今は事件が多く物騒なのだ。刻印を消している辺りからしても相手がギアの事を知っている可能性もある。
「ああ、わかった。組合の方にも報告して援助して貰うよ」
工房長もギアの一大事に上への協力を申し出てくれる。
(軍の方には…まだ報告は控えよう。無闇に波風立てない方がいい)
あちらが少なからず関わっていると知れば、真偽はともかくそれだけでまた事が大きくなりかねない。
ギアはそう思い、静かにハンターの要請に向かうのだった。
ポルトワール付近の小高い丘からは街が一望できる。
今日もあくせくと短い生を必死に生きる人間達を見下ろす人影があった。
『まったくもって矮小ですねぇ』
夏の太陽がその白磁の肌に照り返される。
人影は片目を閉じた無表情を、ふと街はずれへと向けた。
『あの施設は確か……』
目に留まったのはとある建物の脇に停められた一台の荷車…今まさに何かを積み込んでいるらしい。傍には質素とはいえそれなりの広さがある建物があり、中では複数の人間が働いているようだ。
『ふむ、どうやら軍需物資の様ですねぇ』
丘から建物までの距離は相当離れているにもかかわらず、人影はまるで隣で荷積みの作業を見ているかのように、積み荷を言い当てた。
「――これで全部だな。よし、後は早い事、海軍に届けなければ」
人影が口を動かし口調をまねる。
勿論、声など届くはずもないのだが、人影は作業を行う人間の発した言葉をコピーし表情を僅かに曇らせた。
『なるほど、どこかで見覚えがあるかと思えば……そんなものもありましたねぇ』
人影は閉じていた片目を開け、白磁に刻まれた記録を呼び起こす。
『……私の計画に支障をきたすほどではありませんが、イレギュラーは極力少ない方がいい。少し手を打っておきますかねぇ』
そうして、彼――クラーレ・クラーラ(kz0225)は、己が配下を呼び寄せる為、20ある指の二本を掻き鳴らした…。
●
「え……今なんて言いました?」
「だから、君のいう品は納品されていないよ。というか本当にこちらに送ったのかね?」
ここは軍の資材倉庫――ポルトワールには海軍本部があり、職人街の職人らは軍用武器を扱っている所もある。ギアの一品もこの度その一つに選ばれ納品された筈なのだが、どうやらまだこちらに届いていないらしい。
「もう一度確認して下さい。確かに二週間前に完成して納品されたは…」
「そんな事言われてもないものはないって…ほら、これ。どこに君の言う物品があるんだね?」
各所の書類を出し引き下がらないギアに少しばかりのイラつきを覚えて、衛兵も対抗するように納入記録を開示する。
「そんな、まさか…」
そのページには彼のいうものはないようだった。
念の為、前後を調べてみてもやはり彼の商品が納品された記録はない。
「すみません。でも届いていないのなら尚更おかしいです。だから調べてくれま…」
「調べる? あんた判っているのかい? 今は歪虚の事でてんで人が足りてないっていうのに、納品が出来ていないからと言って、そっちに人を割く余裕があるとでも?」
これだから子供はという表情で衛兵が答える。それに言い返そうと思った彼であったが、両者共に熱くなっては火に油。今日は出直そうという考えに至り、丁寧に一礼して彼はその場を後にする。
「全く、こっちは命を張ってるんだ…ガキの戯言に付き合ってられるか」
後方でそんな衛兵の愚痴が聞こえはしたが、それでもギアは冷静だった。
しかし、その帰り道。贔屓にして貰っている道具屋を訪れ、目にしたものについては些か動揺を隠せない。
(あれ、は…)
入った先にいたのは如何にも荒くれ者で傭兵を稼業としていそうな屈強な男――背中には大剣を背負い、剥き出しの上腕二頭筋は普通以上に盛り上がっている。そんな彼の足元に見覚えのあるブーツ。一見普通のブーツではあるが、ギアには判る。
(まさか設計図が奪われた時に…いや違う。あれはむしろ)
本物ではないだろうか。もし彼の作ったものならば、靴の側面に小さく歯車の模様が刻印されている筈だ。それを確かめるべく、ギアはそっと男に近付き自然を装い首のタオルを落とし、拾う振りをしつつ確認する。
「あ…」
するとそこには強引に歯車を打ち消し別の模様が印字されているではないか。
「あのすいません。少しお話いいですか?」
ギアはタオルを拾うと臆する事なく、男に声をかける。
「あぁん? ナンダこのガキは?」
男はそう言い睨み返してきたが、店主が間に入ってくれたおかげで事は割とスムーズに運ぶ。
「この靴は何処でお買い上げに?」
勿論自分の作ったものに似ている事は言わずにギアが問う。
「ああ、これか。こりゃあとある筋で買ったもんだ。なかなかのいい値がしたが、具合は悪くない」
はっきりとした店の明言は避けて、男の言葉。だが、はっきり言わないという事は逆に絞り易くもなる。
(おそらく汚れ具合からしてもまだそんなに経ってない。という事は考えたくないけれど…)
裏路地の闇市かあるいはダウンタウンか。ちなみにポルトワールには裏の顔が存在する。
珍しいものが多く集まる貿易都市でもあるからその品を狙ってくる賊やお尋ね者も集まり、やがてコミニティが形成されてしまっているのだ。だから少し路地に入れば昼でも薄暗く一人歩きには危険な場所もそこそこ存在する。そんな場所と海軍との確執は昔からあり、今でも少なからずいざこざが絶えない。
「そうですか。貴重な情報有難う御座いました」
ギアが男にそう言い、僅かながらのチップを渡す。
「ほう、わかってるじゃねえか」
男はそれに満足したようでその後彼を追ってくるような事はなく、無事工房まで帰りつく。
そうして状況を工房長に話し、事の解決を相談。ちなみにギアが作ったのならなぜ彼が届けなかったのかと言えば答えは簡単。今回のものは靴である事から、全てを彼が作っている訳でない。靴職人とのコラボ商品であり、ギミック自体は彼のからくりを取り入れているが本体の部分は靴屋の仕事。しかも大量受注であった為、別の場所で組み立てが行われ運ばれた為、その過程のどこかしらで何かが起きて今に至ったと考えられる。
(あれは明らかに僕の軍行きの商品だった…しかもあれはまだ市場には卸していない)
とすると、結論としては売っていたというその店の者が非常に怪しい。
納品の折には勿論軍人の立ち合いなどなかった筈だから、襲われたとしたら一溜りもないだろう。
「工房長。この件を依頼としてハンターにお願いしても構わないでしょうか?」
自分達で解決したいが、場所がダウンタウンとなれば勝手が違う。そうでなくても今は事件が多く物騒なのだ。刻印を消している辺りからしても相手がギアの事を知っている可能性もある。
「ああ、わかった。組合の方にも報告して援助して貰うよ」
工房長もギアの一大事に上への協力を申し出てくれる。
(軍の方には…まだ報告は控えよう。無闇に波風立てない方がいい)
あちらが少なからず関わっていると知れば、真偽はともかくそれだけでまた事が大きくなりかねない。
ギアはそう思い、静かにハンターの要請に向かうのだった。
解説
内容
軍に納品される筈だったギアの商品の行方を突き止め、事の真相を明らかにする事
ギアの納品予定だったものは新作のバトルブーツとバトルヒール
市場に出す前に彼の腕に目をつけた軍が採用し、受注生産したものでした
しかし、どうやら途中で何かが起きたようで納品はされず
何故だか一部街に出回っているようです
こうなった理由を解明し、できればまだ残っているものの回収もお願いします
●近隣の状況
納品予定だった倉庫は海軍本部の近くにあります
そこへ至るまでの道のりには大小いくつかのダウンタウンが存在し
更に組み立て工場はポルトワールの割と郊外に当たる場所に存在します
組み立て工場付近には人気は少なく、旅人もあまり通りません
街道が近くにはありますが、出入りする人以外に立ち寄る者は少ないでしょう
●ギアとクラーレさんについてはNPC情報参照下さい
【注意】前半の段落については『PL情報』となります
工場の場所等はギアに聞く事で情報が得られるものである為
PC情報として取り扱って頂いて構いません
軍に納品される筈だったギアの商品の行方を突き止め、事の真相を明らかにする事
ギアの納品予定だったものは新作のバトルブーツとバトルヒール
市場に出す前に彼の腕に目をつけた軍が採用し、受注生産したものでした
しかし、どうやら途中で何かが起きたようで納品はされず
何故だか一部街に出回っているようです
こうなった理由を解明し、できればまだ残っているものの回収もお願いします
●近隣の状況
納品予定だった倉庫は海軍本部の近くにあります
そこへ至るまでの道のりには大小いくつかのダウンタウンが存在し
更に組み立て工場はポルトワールの割と郊外に当たる場所に存在します
組み立て工場付近には人気は少なく、旅人もあまり通りません
街道が近くにはありますが、出入りする人以外に立ち寄る者は少ないでしょう
●ギアとクラーレさんについてはNPC情報参照下さい
【注意】前半の段落については『PL情報』となります
工場の場所等はギアに聞く事で情報が得られるものである為
PC情報として取り扱って頂いて構いません
マスターより
小心者の私が大物をスカウト、もといゲストに連れて参りました奈華里です
いや、連れてきたというよりも力をお貸し頂いていると言った方が正しいかしら?
ともかく、何やら不穏な空気が流れております
次回に繋がる情報をしっかりと集めて頂ければと思いますので戦闘が苦手な方おススメ
調査はなかなかに動きにくいかもしれませんが、御参加お待ちしいます
いや、連れてきたというよりも力をお貸し頂いていると言った方が正しいかしら?
ともかく、何やら不穏な空気が流れております
次回に繋がる情報をしっかりと集めて頂ければと思いますので戦闘が苦手な方おススメ
調査はなかなかに動きにくいかもしれませんが、御参加お待ちしいます
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/08/05 00:58
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/26 06:08:43 |
|
![]() |
相談卓 カーミン・S・フィールズ(ka1559) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/07/28 03:04:48 |