• 戦闘

オレの親分は世界一だぜっ!

マスター:窓林檎

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/10/27 19:00
リプレイ完成予定
2017/11/05 19:00

オープニング

 オレの親分は世界一の男だ。
 親分さえいれば、どんな難攻不落の迷宮だって乗り越えられる。
 だから今回も、あっという間に遺跡の最奥部に辿り着いた。
「よくやったなピッコ。お前の手柄だ」
 兄貴分たちがせっせと戦利品を詰める中、親分が頭をクシャッと撫でてくれる。
 手柄というのは、オレが拾った大剣が、金銀財宝が眠る最奥部へ繋がる鍵だったからだ。
 普段の親分は威厳に満ちた恐怖の権化だが、部下の手柄には厳格で公平だ。
「親分! こいつぁ古代文明の遺物に違いねえぜ!」
「そんなもんがここにあるか! だが見せてみろ!」
 忙しなく駆ける親分――大きな背中。
 オレたちは所詮、卑しい盗掘の団。
 それでも親分さえいれば、どんな危険も乗り越えられる。
 親分や兄貴分たちと共に駆け抜ける日々、その末に手にするもの。
 その全てが、オレの掛け替えのない「財宝」だった。

 ――――。

 視線を感じた。
 振り返ると一領の鎧、くすんだ鋼色のプレートアーマーが佇んでいるのをそこに見つけた。
 俺はふと、自分が手にする、ここに通ずる鍵でもあった大剣を見つめる。
 それは――天啓だった。
 この大剣と鎧は一対でなくてはならない。
 鎧は大剣を欲しているのだ。
「……ピッコ、お前なにしてんだ?」
 兄貴分の誰かの声。
 こっちが聞きたかった。オレはなにしてんだ?
 いや、それは分かる――オレは、鎧を身に着けている。
 問題は、それは断じてオレの意志じゃないことだった。
 むしろオレは、この鎧に近づきたくなかった。
 この鎧には、真夜中に並ぶ墓石のような、濃厚な不吉さが漂っていた。
 しかしオレは今、現にこの鎧を身に着けている。
 胸当てを身に着け、腰当て、膝当て、脛当て――。
「おい、ピッコ」
 肩当てを身に着けたところで、一人の兄貴分が近づいてきた。
 冗談めかした笑みには、色濃い困惑も張り付いている。
 親分も含めた団の皆が、オレに視線を向けていた。
「お前、王国兵ごっこはえぐっ!」
 潰れた悲鳴と、固いものを砕いた感触。
 肩に手を置こうとした兄貴分を、オレは弾き飛ばした。
 ちょっと押した、どころじゃない。兄貴分は暴れ馬に衝突したように吹き飛び、岩壁に叩きつけられた。
 頭蓋は砕け、開いた口から舌が飛び出ていた。
 兄貴分は、死んでいた。
 オレはせっせと鎧を身に着け――最後に兜が頭を覆ったところで、オレは傍らに置いていた大剣を、団長たちの方へ向けた。
 団長が鋭い視線と共に剣を抜く。
「お前ら、今すぐ逃げ――」
 次の瞬間に飛んだのは、団長の叫びではなく、首と血しぶきだった。
 人の域を超えた速度で、オレは団長の首を刈ったのだ。
 血しぶきが兄貴分に降りかかり――オレの鎧も赤いまだらに染まった。
 自分の意志の一切を置き去りにした凶行に、オレは現実感を抱けない。
 少なくとも、返す刀で兄貴分を袈裟斬りにするまでは。

 ――うわあああっ!
 それは兄貴分たちの叫び声であり、オレの叫び声だった。

 ――やめろ、やめてくれえ!
 それは兄貴分たちの懇願であり、オレの懇願だった。

 ――助けてくれえ!
 それは兄貴分たちの命乞いであり、オレの命乞いだった

 オレが助けてくれと叫ぶと、兄貴分たちが命乞いをする――オレはそれを斬る。

「やめろよぉ! やめてくれよぉ!」
 兄貴分の叫び? 違う。これはオレの叫びだ。
「うわぁ! 助けて! 助けてくれよ、親分!」
 大切な兄貴分たちを斬り殺しながら、オレは必死に助けを求めていた。
 オレの世界一の親分に。
 オレが斬り殺した親分に。

 ※

「それは言わば、執念なのだろうね」
 クラシカルなキセルを吹かしながら、その女性は嫋やかに微笑む。
 ゴシック趣味の服に、戯画的なまでに巨大な黒いハット、首元にさがる小さな髑髏の飾り。
 彼女の風体は、少なくとも一般的な職員とは大きくかけ離れていた。
 身なりはもちろん、精巧な人形めいた美貌も――深奥の底知れぬ昏い瞳も。
「結論から言えば、依頼内容は討伐だ。北部の山脈にある遺跡の最奥部。そこに雑魔と見られる生物――かは意見が分かれるだろうが、ともかく出現したそいつを討伐して貰いたい」
 火口から甘く強い臭いの煙が流れ、職員に纏わりつく。
 しかし……生物かは意見が分かれる?
 どうにも――。
「歯切れの悪い説明、だと思っている表情をしているね」
 ざわっ、と動揺が走る。
 煙の臭いが、鼻腔を刺激した。
「今回の雑魔は変わり種でね。実は武装した鎧が動いたものなんだが――中に人がいるんだ」
 ……?
 人間が鎧を着て暴れまわっている?
 それは――。
「雑魔なのか? 君がそう思うのも無理はない」
 深まる動揺を楽しむように微笑みながら、職員は話を続けた。
「依頼主は盗掘団の団員、雑魔から逃れた唯一の生き残りだ。証言によると、鎧を身に着けた男はピッコという忠誠心の高い団員だそうだ。彼は財宝の眠る最奥部に繋がる鍵の役割を果たしていた大剣を持ち――何かにとり憑かれたように、鎧を身に着け始めたらしい」
 そして、惨劇。
 職員はその光景の想像を愉しむように、クツクツと笑った。
「雑魔は腕利きの団長も含め十数名を殺戮したが、ピッコ自身の剣技は拙かったらしい。そして――ピッコは殺戮の最中、『助けてくれ』と叫んだそうだ」
 推測の域は出ないが――と、職員は言葉を続ける。
「本来それは本当にただの鍵だったのだろう。しかし、生前の主にとって鎧と大剣は『一対でなくてはならない』ものだった。その思いが長い時を経て執念へと変質し、やがて魔と化した――その結果が、大剣を持った人間を操る雑魔なのだろう」
 執念、執念だねえ……。
 何がそんなにおかしいのか、職員は愉しそうに笑い続ける。
「さて。依頼主は雑魔――ピッコを含めた対象の討伐、つまりは殺害を希望している」
 そして私が思うに、と職員は言葉を続ける。
「恐らく、ピッコが助かったしても、彼は遠からず自害するだろう――伝聞でも分かるんだよ。『経験』上な」
 纏わり続ける、瞳の昏さ。
 人の身にはあまりに昏く、逸脱した狂いの気配。
「……ところで、これも私の推測だがな」
 灰を落とし、職員は徐に口を開いた。
「いくら剣が魔を帯びていたとて、鎧と対面するまでピッコはまともだった――つまり、剣と鎧の『一対』が成立しなくなったら?」
 唇の両端を吊り上げる。
 先ほどまでの笑みとは違って、少しだけこちら側に近い微笑みだった。
「いずれにせよ、我々の本領は歪虚の脅威の排除だ。その旨は依頼主に伝えているが、現に金を出している依頼主なことは事実だ。そして結局、ピッコが実際に何を思っているかは――本人以外の何者にも分からない」
 さて、と職員は傍らから契約書を取り出した。
「以上を踏まえた上でこの依頼を受けるなら、ここにサインをしてくれ。結局、状況をどうするかは、どこまで行っても現場の人間の判断次第なのさ。良きにつけ、悪しきにつけ」

解説

●依頼概要
 鎧型雑魔の討伐

●討伐対象
・鎧型雑魔×1
 大ぶりの両手剣を持つプレートメール型の雑魔。
 腕利きの非覚醒者(OPの親分)を問題にしない戦闘力。
 攻撃力は突出しておらず、むしろ速度・移動力に優れ、敵対者との間合いを一気に詰め斬りかかる。
 高い防御力と体力を持つが、動き自体は直線的で、回避行動もあまり取らない。
 また、物理に比べれば魔法への抵抗も突出して高いわけではない。

 斬りかかり:前方4スクエア以内を移動した後に剣を斬り降ろす。中ダメージ。
 斬り下ろし:特に大きく剣をかかげ、力強く振り下ろす。1スクエア以内の一人への攻撃。大ダメージ。

●当該地域
 遺跡最奥部。広さは50スクエア四方で、これと言った遮蔽物はない。出入り口は一箇所のみ。
 松明が灯っているため、明るいとはいい難いが、目視に影響が出るほど暗くもない。
 なお、依頼主の情報により、最奥部までは安全に辿り着けるものとする。

●特記事項
 鎧の中に盗掘団団員のピッコが入っている。
 雑魔によって行動の一切が操られている状態であり、ピッコの意志が介入する余地は一切ない。
 ただし、精神は完全に自由な状態であり、彼は雑魔が親分や兄貴分をこの手で殺し、ハンターたちと戦うところを、自我が残った状態で見ていた(見る)こととなる。
 精神状態は表面上は平静だが、実際は大切な人間を自ら殺害したことにより著しく不安定であり、捨て鉢になっている、といった方が正しい。
 ちなみに、ピッコは自由に声を発し、しゃべることは出来る。
 依頼主(盗掘団唯一の生き残り)はピッコも含めた雑魔の討伐、すなわち殺害を希望している(ただし依頼主には、あくまでハンターの本領は「雑魔の討伐」である旨は伝えているが、それに依頼主が納得しているかは別の問題である)。
 鎧型雑魔の体力が0になる程度のダメージを受けた時、中のピッコも死亡する。

マスターより

筋トレ? ダイエット? 知らんなあ。
どうも、窓林檎です。
前回から間が空いてしまいましたね。
強敵感が出ている描写ですが、雑魔の域は出ていない能力ですのでご安心ください。ちなみに雑魔の元ネタはありますが、ヒントすぎるので内緒です。
問題は鎧の中の人をどうするかでしょうね。普通に倒せば死にますが、倒し方次第では助けることはできます……が、助けるだけでは「助けたことにならない」のが難しいところで……。
一応言っておくと、ピッコを殺害しても、雑魔を討伐すれば成功度普通は保証します。
職員も言うように、状況をどうするかは現場の人間次第です。
ハンターの皆様のご参加をお待ちしています。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/11/05 05:41

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士
  • 交渉上手
    フーリィ・フラック(ka7040
    人間(紅)|22才|男性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 相談ですよ
フーリィ・フラック(ka7040
人間(クリムゾンウェスト)|22才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/10/27 00:01:56
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/10/26 11:50:58