「最近寒くなってきたなぁ。すでに雪の降った地域もあるようだけど、体調に問題はないか？　この仕事は寒い地方での仕事になるんだ」
　ハンターオフィスの受付が依頼人として連れてきたのは、ベルンハルト・ベルガーと名乗る人物だった。
「唐突だけど、かき氷は知ってるよな？　……そう、それ。削った氷にシロップをかけるやつ。氷の保管が可能な北方や高地ならまだしも、運搬の困難な遠い場所や、暑い時期には贅沢品扱いされてる。天然水を使ったきれいで柔らかな氷を使えばなおさらだ」
　冬に清流の水を凍らせ、夏になってから高額で天然氷を販売する村が存在している。雑味がなく、その柔らかさから、非常に美味しいという評判だ。
　ベルンハルトの依頼とは、その村で発生した問題の解決である。
「最近になって、引き込んでいる川の水が汚れ始めた。川底に住み着いたヘドロ型の雑魔のせいなんだ。本格的に雪が積もり始めると製氷作業が困難になるため、今のうちに排除しなきゃならない」
　雑魔のいる川は特定できているものの、川底を移動しているため、どうしても捜索は必要となる。
「濁った水を辿れば、雑魔を見つけ出すのは簡単だと思う。だけど、ヘドロ型の雑魔と、川の中で戦ったり、倒したりするのは、水の汚染につながるから控えてくれ。川底からはどうにかしておびき出す必要がある」
　戦場となるのは、川沿いの河原か、まばらに木の生えた林となるようだ。
「軽く雪がつもっているらしいし、防寒には気を遣った方がいいだろうな。俺は服を汚すのも嫌なんで、防水用の合羽も準備するつもりだ」
　と、ベルンハルトは同行を前提とした発言をする。
　今回の依頼内容ならば、依頼者の同行は不要なはずだが、これは彼の個人的な事情によるものだ。
　作家である彼は、小説のネタ探しを目的として、これまでに幾度も現場に赴いている。
「依頼料には、俺の護衛料も含まれているからよろしく頼む。余録としては、夏に出荷し損ねた天然氷が村に残っているから、かき氷が食べ放題だって話だ。……まあ、冬にわざわざかき氷というのも微妙だけど、俺はもともとここのかき氷が好きなんで食べるつもりだ。暖かくした屋内でかき氷というのも、それはそれで、贅沢だしな」
　村にあるのは、シンプルな砂糖水と、村で採ったミカンのシロップのみ。
　異なる味を求めるならば、持参する必要があるようだ。
「話の種になるし、みんなの冒険心にも期待したいところだな」

●敵
ヘドロ型雑魔１体。
２ｍ程度の泥の山という形状。
ミミズのような触手を５ｍほど伸ばす。ある程度以上、大きな固まりに分割してしまうと、分裂して独立した行動を取る。
異臭をまき散らしており、接近するには覚悟が必要。

●状況
川での戦いを避ける。
解決後には、村長の家で軽い宴会がある。
かき氷はこちらで出される。

●ベルンハルト・ベルガー
小説家。戦力対象外。
取材目的なので、依頼には大きく関わらない予定だが、ハンターの要望次第では多少の手伝いも可能。
逆に放置されていたら、行間でお気楽に行動している。

おひさしぶりです。
最近寒くなってきましたね。すでに雪の降った地域もあるようですが、みなさんはお元気でしょうか？
時期はずれでありつつ、季節ネタとしてお楽しみください。