• 天誓
  • 戦闘

【天誓】僕なんてただの絶火の騎士ですよー

マスター:窓林檎

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/12/18 19:00
リプレイ完成予定
2017/12/27 19:00

オープニング

 いやー僕なんてそんな、帝国の民衆を無辜救済した絶火の騎士ってだけなんだけどなー。
 内心で照れ照れしながら、僕は集落伝統の作法、『無辜救済の構え』で皆の前に顕現遊ばしていた。誰だよ、こんなふくらはぎに著しい負担がかかる構え考えた奴。この姿勢で数時間顕現遊ばされる祖神の身にもなってよ。僕ってお姉さま方に可愛がられそうな美少年な見た目なんだからね。「始祖様が憂い震えておられる!」とか感極まる人いるけど、ただの児童虐待だよ。後でこむら返りで悶絶ですよ、こちとら。
「ああ、我らが慈悲深き開闢の始祖たるリューグナー様、どうか、我ら無辜たる民に救済の光をぉ!」
 あー駄目だよおじいちゃん、そんな跪いてガンガン頭を地面についちゃ。最近夕ご飯を二回要求する頻度が増えて、お孫さんも呆れ返るボケっぷりだからって、集落の皆さんを導く首長さんなんだから。僕も主にふくらはぎが辛いけど、頑張ってニコニコしてるんですから。
「ああ、光をぉ! 光をぉおおおおぉぉぉおおおぉぉおん!」
 いや、なんだよ最後の鳴き声。鳴きたいのは僕のふくらはぎだよ。
 こんな感じで集落の皆さん、跪いて、泣いたり、叫んだり、拝んだり、白目を剥いて泡を吹いて痙攣したりして、僕に祈ってるわけです。
「いや、誰か介抱してあげてよ、泡吹いてる人……」
 でも僕なんて、たかがコボルドの大軍団を討伐して、帝国を救済しただけの凡人ですからね。
 昔ちょっと絶火の騎士をかじってたくらいで、無辜救済なんて実際、誰にでも出来ますわー。
 でもまあ、分からなくもないですよ。僕という絶火の騎士な藁に縋って無辜救済を祈っちゃう気持ちも。
「リューグナー様? ……おおっ! 始祖様が復活の奇跡を起こし遊ばされたぞ! リューグナー様ばんざーい!」
 泡拭いてた人を『無辜救済ハンド』で介抱してあげた僕は、万歳三唱を背にスタスタと簡素な物見櫓を駆け上る。
「マジですか、って感じだなあ……」
 思わずそう呟いた僕の眼下、粗末な囲いの向こう側、深く樹々が生い茂る森の中を、土色肌の二足歩行――動く死体の大群が集落を囲むように近づいて来て、もう間もなく囲いに辿り着く。
「囲いもどんだけ持つかなぁ。皆、ロクに手入れしてないし……」
 全く、可愛いくらいに平和ボケだよ。
「奴らがすぐそこまで来てるぞぉ!」
「ああああ! 死にたくないぃ!」
「怖いよー! 助けてよー!」
 阿鼻叫喚。高台から眺める、振り返った先の様子。
 こんな状況でも、逃げ出すことも立ち向かうことも出来ない辺りがらしいなあ。
 そんな皆の祈りだから、僕みたいな奴が顕現したんだろうね。
「ああ、リューグナー様あぁ!」
「って言うけどさあ」
 皆だって分かってるんでしょ? 僕、インチキですから。なんだよ、無辜救済って、絶火の騎士って、無辜救済ハンドって。僕はただの、『私達の開祖はこうあって欲しい』って思いから誕生したインチキ英霊ですー。僕が絶火の騎士? 皆はその末裔? 少しはおかしいって思おうよ。そんなんだからこんな状況でも、僕に縋り付くしか出来ないんじゃない?
「始祖様?」
 首長おじいちゃんのキョトンとした表情。
 実際そう言えたら、僕ももっと楽に英雄出来るんだろうけどさー。
 言えないよ。僕、皆のこと大好きだから。本当は僕も、皆のこと守りたいから。
 こんな絶火の騎士ってだけの、無辜救済だけが取り柄の――そういった全部が嘘っぱちだと、薄々気づいた上で僕に祈ってくれる皆のことを。
 だから――。
「かつもおぉく!」
 皆を見下ろす高台から、『無辜救済の構え』と共にご神託遊ばされる始祖様――僕。
 山の奥深くに、有り物でご飯作るかー、みたいなノリで作られた感じのちっちゃな集落――僕を始祖として崇め奉る集落。
 昔とった杵柄で、絶火の騎士として英霊を、無辜救済をさせて貰ってる――始祖『無辜救済の騎士・リューグナー』。
 遺憾ながらも滅亡の危機に瀕してる集落の皆を、僕自身で絶望の底に叩き落とすことだけはしてはいけないんだ。
 その使命を思えば、ふくらはぎへの著しい負荷も頑張って耐えちゃうもんね!
「とりま、祈っちゃってくださあい! 僕は無辜救済のリュ」
「皆聞いてくれえ!」
 ええぇ空気読んでよ……。
 そんな僕の思いを他所に、入口で門番をやっていた青年が、まるで無辜救済されたような晴れやかな笑顔で叫んだ。
「ハンターだ! ハンターが、助けに来てくれたぞぉ!」

 ※

「よく分からないな」
 資料に目を通した男は首を横に振った。その表情は、異世界文明の交通整理の様を表象した組み体操を見せられた直後のように、釈然としない表情だった。
 彼は、物静かな青年のような、老成した壮年のような、掴みどころのない男性職員だ。
「万人に慈悲を与え、全てを魅了し、傷が癒え、万病が治り、作物が豊作となり、永遠の幸福を約束され……」
 職員は朗々とその資料を音読する。その音読は完璧過ぎる余り、逆に白々しい印象を与えた。
「ねえ、掛け算もろくに出来ない連中ばかり集まった反政府的集団による偽史だって、これよりはマシな嘘を拵えるさ」
 しかし、悲しいことに、これが『十一人目の絶火の騎士』を名乗る『無辜救済の騎士・リューグナー』の伝承なんだ。
 やれやれ、と呟きながら職員は首を横に振った。
「ナイトハルトの騒動のことは聞いているね? 奴の主な狙いは『絶火の騎士』の英霊だ。奴は貪欲な大型犬のように精霊を取り込み、力を蓄えようとしている」
 例えそれが、明らかな偽の『絶火の騎士』の英霊でもね。
 職員は大げさに肩を竦める。
「目下最大の脅威が、少しでも戦力を増強する事態は避けねばならない。きみたちには直ちに、当該英霊のいる集落に向かい、保護して貰いたい」
 それにしても……と、職員は資料の続きを読む。
「『十一人目の絶火の騎士』の自称は論外だが、初代北部辺境伯の時代に、リューグナーなる男が率いる一隊が、ゴボルドの大軍を討伐した事例は本当にあったらしい。古代王国の英雄なる『ファルシュ』の使命を帯びた下級の貴族を自称したようだが、実際は脱走兵の集まりで、戦線とは全く関係ない地域を彷徨いていたところを、偶然大軍に遭遇した……というのが定説だそうだ」
 だが少なくとも、彼を慕った者たちが起こした集落があり、長年に渡り伝承されているわけだ……。
「しかし、歪んだ伝承が、それを唱え続ける人々の心に、影を落としていなければいいが、と僕なんかは思ってしまうわけだが……」
 想像力は、良くも悪くも、自由で自在だ。
 この地から宇宙を想像するのも想像力なら――思い描いた宇宙の有様が人を飲み込むのも、想像力の業なんだ。
「実際問題、そのような歪みが英霊の影となって、保護に支障をきたす可能性はあり得る。その点は実際的に留意して貰いたいかな。以上を踏まえた上で本案件を受けるなら、契約書にサインをお願いしたい。ピース」

解説

●依頼概要
・ゾンビ型雑魔の討伐および集落の防衛
・英霊『無辜救済のリューグナー』の保護

●討伐対象
・ゾンビ型雑魔×100体程度
ナイトハルトの先遣隊。攻撃はひっかきや組み付き、噛みつき。
個々の能力は低く、動きも遅くバラバラ。頑張れば一般人でも対抗可能。
敵~集落間の距離は30~50スクエア。

●保護対象(PC情報)
・『無辜救済の騎士・リューグナー』及び集落民100名(内成人男性約30名)程度
初代北部辺境伯時代の『十一人目の絶火の騎士』を自称する英霊。
美少年だが頼りなく、自信なさげにヘラヘラ笑う。
実際は古代王国の英雄『ファルシュ』の宣託を受けた下級貴族、を騙る詐欺師(詐欺罪で飛ばされた一兵卒)。
一方、先陣を切ってコボルドの大軍を討伐したのは事実で、兵たちに愛された。集落民はその末裔。
長年の伝承で『絶火の騎士』などの尾ひれがついた。
英霊含め、集落民は自身が『インチキ』だと薄々察し、卑屈で状況に絶望。

●当該地域
山奥深くの小さな集落。面積は約200×200m。
周囲を木製の堀で囲うが簡素な上に老朽化。
入口は四方。それぞれの入口に周囲を見渡せる見張り台。高さ6m。
OPの状況に駆けつけ、北側の入口から集落に入ったところで状況開始。

●特記事項
リューグナー自身は皆を救いたいと願い、英霊としての自負もある。
リューグナーが英霊として自信を取り戻し、人々が英霊を心から信じるほど、上からスキルが解禁される。
「ぼぼぼ僕が相手だかかかかってこい!」:ソウルトーチ(スキル強度2)
「大丈夫です、絶火の騎士な僕がついてますから!」:プロテクション(上昇値急所を除く各部30。継続ラウンド5)
「ふふーん! 無辜救済しちゃいますよー!」:フルリカバリー(回復値200)+ヒーリングスフィア(範囲自分を中心に3×3)
「ファルシュ様、どうか僕に皆を救う力を――くらえぇ!」:光属性の大ダメージ・射程0~10・範囲5×5・敵味方識別。

マスターより

どうも、遅くなりましたが秋どさではありがとうございました、窓林檎です。
伝承で英霊が生まれるなら、インチキ伝承で生まれる英霊だっていてもいいじゃない。
そんなわけで佳境を迎えている【天誓】ですが、その番外編的趣なシナリオをお届け致します。
基本的にはゾンビ型雑魔を相手にタワーディフェンスするだけの簡単なお仕事です。
が、保護対象の英霊くんもそれを信仰する集落の人々も、自分たちがインチキだと薄々察してしまっていて、結構卑屈になってます。
その辺の精神面をスルーして雑魔を倒しても成功度普通は保証しますが、余力があれば何か呼びかけてみてもいいかもしれませんね。
ハンターの皆様の奮っての参加、お待ちしております。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/12/27 19:30

参加者一覧

  • Sanctuary
    羊谷 めい(ka0669
    人間(蒼)|15才|女性|聖導士
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 天使にはなれなくて
    メアリ・ロイド(ka6633
    人間(蒼)|24才|女性|機導師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/12/14 19:15:38
アイコン 相談卓:どうか彼に皆を救う力を
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/12/18 18:37:44