ゲスト
(ka0000)
青の歌い手と春公演
マスター:春野紅葉

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在16人 / 1~25人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/03/28 22:00
- リプレイ完成予定
- 2018/04/11 22:00
オープニング
●
ヴィオラは町の中を歩きながら、町長だという女性の軍人から話を受けていた。
町の様子は田舎という割には活気がよく思える。田舎ならばどこでもそうではあるが、同世代などの自分の歌を聞いてくれそうな人がやや少ないようにも思えるものの、逆に特有の逼迫感というか、閉鎖的な感じがあまりしない。
「町の中で舞台になるような場所は、この大広場ぐらいでしょう」
円状に広がる町の中心部。そこまで案内してくれた町長は、振り返る。
「たしかにここなら、良いかもしれませんね」
付き人の男が頷いて返答するのを横目にしながら、ヴィオラは視線を巡らせる。
「……どうかしましたか? お嬢さん……ええっと、ヴィオラちゃん?」
不思議そうに町長はその瞳をこちらに向ける。
「あっ、いえ、ごめんなさい。あの、この町にハンターさんと一緒に大きな狼を退治したっていう女の子がいるって聞いて」
「ああ……あの子ですか。あの子なら今、この町にいませんよ?」
「えぇっ!?」
さらりと答えられ、ヴィオラの声は思わず大きくなった。
「まぁ、連絡自体はすぐに付くので、明日でも会えるとは思いますが」
そのことを聞いてほっと胸をなでおろす。その子と会って話をするためにわざわざここまで来た。ここで次の町へ行けと言われて、身体が持つかどうかは分からない。
「でも、なぜあの子のことを知りたいのでしょう?」
そういう女の表情はやや鋭く細められていて、こちらを警戒していることは否応なしに理解させられた。
緊張か、一瞬だけ脳裏を過ぎたあの黒と赤の顔のせいか、心臓がぎゅっと握られたような苦しさを覚えながら、ヴィオラは口を開く。
「その子が知っていることが、鍵になるかもしれないんです」
「鍵……?」
「はい、私が私としてここにいる理由の、鍵に」
乗り越えなくちゃいけないものがあるのに、それに踏み出す勇気はなくて。けれど、逃げて狂いながら死ぬだけの人生なんて嫌で、ここまできた。
「私と同じように苦しめられて――私と違う決断をした女の子がいるって、聞きました。その子と話がしたくて、私はここにいます」
少し暖かくなってきたばかりの春風が、ふわりと青髪をくすぐり、そっと抑える。町長は少しの間、何も言わずそこにいて、ふっと表情をやわらげ控えめな笑みを見せた。
「良いでしょう。この田舎まで来ていただいて、春華祭で歌っていただけるのなら、安いものです」
「歌うことに関しては、私が体調を崩し続けていたせいなので、本当にすいませんでした」
そう言って笑う。本当にやるはずだったライブは、体調を崩して二度にわたって中止にしてしまった。その罪悪感も、確かにある。
冬の寒さに気をやられていたのか、暖かくなってきてからはあいつの夢も見ない。今ならきっと、良い歌が歌える。そんな気がした。
「いえいえ……無理はいけませんから。それじゃあ、町を案内しながら打ち合わせと行きましょう」
春華祭――それは今年になってから始めるらしいこの町の新しい行事らしい。
冬の帳が上がり、春の陽気が満ちた頃、これからの一年の安寧と収穫を祝う――などと銘打ってはいるものの、実際は、恐らくこの田舎町を盛り上げるためといったところだろう。
縁日が開かれ、この町の特産品が多く提供される。
目玉となる奉納はただの奉納では面白くもないということで町長によって舞と歌を奉納することになった。
その前後、奉納をやるまでに無駄にぽっかりとあいた舞台で催し物をやっておこう、その際に舞台で歌を歌ってほしいというのが療養を済ませたヴィオラが町長から頼まれた仕事だった。
●
打ち合わせを終えたヴィオラはすぐに声出しの練習を始めていた。
数ヶ月、喉もあまり使えなかったからか、喉を開くところからの練習、体力を取り戻すための基礎トレーニング。死に物狂いでやらなければならないことは、山ほどある。
「とはいえ、ヴィオラさん一人で今回の舞台をぶっ通しですれば、また体調を崩すでしょう。ほかにも参加者を募った方がいいかもしれませんね」
「……分かり、ました」
付き人の男の判断に、ヴィオラはうなずくしかなかった。自分でも、一日歌い続けるのはまず不可能なことぐらい、分かっている。ぎゅっと拳を握り、一つ呼吸をして、手を開く。
「人の手配を、お願いします」
悔しいけれど、今はこれが限界だった。
たった一人で無理をして、多くの人に見せられないような酷い演技をするよりは、他の人も呼んで手伝ってもらう方が、遥かにいいはずだ。
分かっていても、自分の今の在り方に酷く腹が立ち、ヴィオラは下唇を噛み締めた。
ヴィオラは町の中を歩きながら、町長だという女性の軍人から話を受けていた。
町の様子は田舎という割には活気がよく思える。田舎ならばどこでもそうではあるが、同世代などの自分の歌を聞いてくれそうな人がやや少ないようにも思えるものの、逆に特有の逼迫感というか、閉鎖的な感じがあまりしない。
「町の中で舞台になるような場所は、この大広場ぐらいでしょう」
円状に広がる町の中心部。そこまで案内してくれた町長は、振り返る。
「たしかにここなら、良いかもしれませんね」
付き人の男が頷いて返答するのを横目にしながら、ヴィオラは視線を巡らせる。
「……どうかしましたか? お嬢さん……ええっと、ヴィオラちゃん?」
不思議そうに町長はその瞳をこちらに向ける。
「あっ、いえ、ごめんなさい。あの、この町にハンターさんと一緒に大きな狼を退治したっていう女の子がいるって聞いて」
「ああ……あの子ですか。あの子なら今、この町にいませんよ?」
「えぇっ!?」
さらりと答えられ、ヴィオラの声は思わず大きくなった。
「まぁ、連絡自体はすぐに付くので、明日でも会えるとは思いますが」
そのことを聞いてほっと胸をなでおろす。その子と会って話をするためにわざわざここまで来た。ここで次の町へ行けと言われて、身体が持つかどうかは分からない。
「でも、なぜあの子のことを知りたいのでしょう?」
そういう女の表情はやや鋭く細められていて、こちらを警戒していることは否応なしに理解させられた。
緊張か、一瞬だけ脳裏を過ぎたあの黒と赤の顔のせいか、心臓がぎゅっと握られたような苦しさを覚えながら、ヴィオラは口を開く。
「その子が知っていることが、鍵になるかもしれないんです」
「鍵……?」
「はい、私が私としてここにいる理由の、鍵に」
乗り越えなくちゃいけないものがあるのに、それに踏み出す勇気はなくて。けれど、逃げて狂いながら死ぬだけの人生なんて嫌で、ここまできた。
「私と同じように苦しめられて――私と違う決断をした女の子がいるって、聞きました。その子と話がしたくて、私はここにいます」
少し暖かくなってきたばかりの春風が、ふわりと青髪をくすぐり、そっと抑える。町長は少しの間、何も言わずそこにいて、ふっと表情をやわらげ控えめな笑みを見せた。
「良いでしょう。この田舎まで来ていただいて、春華祭で歌っていただけるのなら、安いものです」
「歌うことに関しては、私が体調を崩し続けていたせいなので、本当にすいませんでした」
そう言って笑う。本当にやるはずだったライブは、体調を崩して二度にわたって中止にしてしまった。その罪悪感も、確かにある。
冬の寒さに気をやられていたのか、暖かくなってきてからはあいつの夢も見ない。今ならきっと、良い歌が歌える。そんな気がした。
「いえいえ……無理はいけませんから。それじゃあ、町を案内しながら打ち合わせと行きましょう」
春華祭――それは今年になってから始めるらしいこの町の新しい行事らしい。
冬の帳が上がり、春の陽気が満ちた頃、これからの一年の安寧と収穫を祝う――などと銘打ってはいるものの、実際は、恐らくこの田舎町を盛り上げるためといったところだろう。
縁日が開かれ、この町の特産品が多く提供される。
目玉となる奉納はただの奉納では面白くもないということで町長によって舞と歌を奉納することになった。
その前後、奉納をやるまでに無駄にぽっかりとあいた舞台で催し物をやっておこう、その際に舞台で歌を歌ってほしいというのが療養を済ませたヴィオラが町長から頼まれた仕事だった。
●
打ち合わせを終えたヴィオラはすぐに声出しの練習を始めていた。
数ヶ月、喉もあまり使えなかったからか、喉を開くところからの練習、体力を取り戻すための基礎トレーニング。死に物狂いでやらなければならないことは、山ほどある。
「とはいえ、ヴィオラさん一人で今回の舞台をぶっ通しですれば、また体調を崩すでしょう。ほかにも参加者を募った方がいいかもしれませんね」
「……分かり、ました」
付き人の男の判断に、ヴィオラはうなずくしかなかった。自分でも、一日歌い続けるのはまず不可能なことぐらい、分かっている。ぎゅっと拳を握り、一つ呼吸をして、手を開く。
「人の手配を、お願いします」
悔しいけれど、今はこれが限界だった。
たった一人で無理をして、多くの人に見せられないような酷い演技をするよりは、他の人も呼んで手伝ってもらう方が、遥かにいいはずだ。
分かっていても、自分の今の在り方に酷く腹が立ち、ヴィオラは下唇を噛み締めた。
解説
お久しぶりになります。春野紅葉です。
さて、さっそくですが、今回は皆様に春祭りを楽しんでいただければと思います。
主な活動は3つ。
1:観客として春祭りを楽しむ。町の特産品である羊や牛の肉料理、ミルクなどが楽しめます。
2:催し物を開く。
舞台が用意されます。ある程度は動き回れるスペースはあります。
3:今回の祭りでは他の町からも観客が来ることを予想されるため、警護を手伝ってくれる方を募集します。
以上です。
さて、さっそくですが、今回は皆様に春祭りを楽しんでいただければと思います。
主な活動は3つ。
1:観客として春祭りを楽しむ。町の特産品である羊や牛の肉料理、ミルクなどが楽しめます。
2:催し物を開く。
舞台が用意されます。ある程度は動き回れるスペースはあります。
3:今回の祭りでは他の町からも観客が来ることを予想されるため、警護を手伝ってくれる方を募集します。
以上です。
マスターより
お久しぶりです。
この時期は花粉症でめちゃくちゃに目がかゆくなるわ、鼻がつらいわ、くしゃみは出るわ、
春の心地よさは素晴らしいものですね。
皆様の生活のゆったりとしたひと時の一助をさせていただければと思います。
この時期は花粉症でめちゃくちゃに目がかゆくなるわ、鼻がつらいわ、くしゃみは出るわ、
春の心地よさは素晴らしいものですね。
皆様の生活のゆったりとしたひと時の一助をさせていただければと思います。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/04/19 16:39