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「やあ、こんにちは。“古の塔”攻略戦については、もう知っているかな？　……あ、そうか。知っていないと此処には来てないね」
はは、と草臥れた苦笑と共に無精髭を撫でる男性の名を、オーラン・クロスという。現代に於ける法術陣の権威――というには、些か、言葉が過ぎるかもしれない。オーラン自身は確かに専門家ではあるが、権威というものは振るう機会がなければ過言になってしまう。
「先立って、王国騎士団長のゲオルギウス・グラニフ・グランフェルトが号令をかけた“古の塔”攻略戦の中で、一つ、お願いごとがあってね」
言いつつ、手で示す大きな木板には、いくつか紙の資料が貼り付けられている。
塔内部で確認されているゴーレム各種、ということを知るものもいるかもしれない。
「このゴーレム達は、『刻令術』という技術でもって動いている。Gnomeや……現在ハルトフォートで開発中のVolcaniusと同じ技術だ」
しかし、現在のそれとは大きく異なる――というのは、その事情に明るい者であれば誰であれ知っているであろう。
同じ自律型ではあるものの、まるで一個の生命のように高度に自律する、『古の』刻令ゴーレム。かつて禁術指定と共に封印された魔術の産物たちだ。現在は、その技術が損なわれているからこそ、限定的に許容されている技術でもある。
それだけに、この塔とゴーレム達の資料的価値は計り知れない。

「本格的な攻略を行う中で有耶無耶になっては困るものもあるんだ。だから……ついでに、“資料集め”に協力してほしいんだ」

限りなく盗掘行為に近しいが、それは、それ。王国関係者を始めとして然るべき所には話を通している。古の塔には“住民”がいたというから、一通りのことが落ち着いたら、改めて確認に伺えばいい。
敬虔なエクラ教徒であり、根が善人なオーランにとってはこの上なく心苦しいことだが、そうやって納得することにした。
「報酬はこちらで用意している。また、然るべき時に確認してくれると嬉しい」
言いつつ、肩を落とした。本当に気が乗らない仕事なのだろう。
そうだ。なにせ、彼は“法術陣”の専門家である。
刻令術は畑が違うのではないか……？
もの問う視線に、オーランは大きく慨嘆をしながら、こう結んだのだった。

「……それは、その、大人の事情……でね」

※当シナリオはハントシステムとなります。ＧＭによるリプレイの執筆は行われません。
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