ゲスト
(ka0000)
【羽冠】雑貨屋、鐘が鳴るを
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/04/24 07:30
- 完成日
- 2018/05/01 05:48
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●拠点
イスルダ島に着岸した場所を港とし、拠点とするため整える作業が行われている。並行して、イスルダ島各地へそれぞれ調査のため進む。
かつて住んでいた場所に向かったライル・サヴィスとシールは歪虚支配地域となっていた現状を目の当たりにした。商人や貴族の出資者の協力の元、探索をしていく予定には変わりはない。ただし、少人数にならないということだけは肝に銘じた。
非覚醒者が圧倒的に多い現状から、ライルとシールは自分たちが頑張らねばと考える。浄化されてきているとはいえ、負のマテリアルの影響はないとは言い切れないからだ。
そして、拠点となる場所に兵士たちと到着する。彼らはライルとシールと異なり、集団での行動になれているため、てきぱきと指示されていることをこなしていく。そのため、持ってきた材料で雨露しのげる場を作り、見回りや見張りなどもこなす。
雑魔の襲撃があったとしても、対応は的確であった。
徐々に探索範囲を広げて行った。その結果、隣の村、つまり、シールが住んでいた場所に到達しそうだった。
希望に満ちた日々は終わった。
●状況
森に入った兵士の一団は、もう少しで抜けきるということで異変に気付いた。
白っぽいぬいぐるみが落ちている。
歪虚に支配されていた場所に落ちているぬいぐるみに違和感を覚えないわけがない。
兵士たちは用心をしていた。どうやって確認するか、それとも目視だけで一旦退くか。警戒し、様子見る。
不安が募る。
じっと見ているとぬいぐるみが動いたようだった。
「退こう」
リーダー格の者が告げた。一部はそのぬいぐるみ目を向けつつ、隊形を維持して拠点がある方に戻る。
「何しているんだ?」
子どもの声に兵士は困惑し、足を止める。
兵士たちが確認に行こうとしていた方向から、少年が来た。ぬいぐるみの手前で足を止めた。
「おじさんたち、ここにぬいぐるみが落ちているんだ。つまり、『おかしい』と考えたうえで、拾って報告するとか、ボクが持ち主だろうと気にするのが通常じゃない?」
少年は言う。
単独行動をしているハンターとも考えられるが、少年の表情や抑えているけれども雰囲気から直感は敵だと告げる。
そのために兵士たちはじりじりと下がっている。
「親切というのが人間の美徳だよね? ああ、でも、人間ってさ、自分が助かるためなら何でもする生き物だよね? ボクの姉さんはボクのためにどうにかしようとしたみたいだけど……ま、よくわかんないな。で、おじさんたち、ボクにぬいぐるみを手渡していくれる? それとも同士討ちしてくれる?」
少年はにこりとした。
「走――ぐっ」
リーダーは指示を出そうとしたが、その言葉は最後まで発せなかった。近づいてた少年に威圧された、だけではなかった。
「おじさん、そこの人、殺して。せっかくだし、たくさん!」
少年は命令を下した。
兵は全力でかかってくるリーダーに対応するため、武器を抜かざるを得なかった。盾で防いだとしても鎧があるため、行動を止めることができなかった。
「あはははは! 面白い! 面白い」
少年は手をたたいた。
兵は何とかリーダーを取り押さえ、その場を離れた。
「ねえ、ボクの兄さんと友達、生きているのか知りたい。ボクはそれが知りたいからキミたちを逃すんだ」
名前はライル・サヴィスとシールだと告げる。
兵たちは必死に逃げた。
●撤退へ
リーダーの意識は戻った。歪虚の支配からは逃れたようである。
ライルとシールは報告を聞いてぎょっとした。シールの顔は真っ青になる。
兵が告げる少年の外見はまさに、ライルの養父母の実子であるリーヤ・サヴィスだった。
兵たちには嘘を吐くこともなくライルたちは告げ、考える時間をもらった。
二人きりになったところで、ライルはシールの肩を抱いた。シールは無意識にライルにしがみつく。
「リーヤが生きているなら嬉しい」
シールは震えている。
ここにリーヤの最期が最期でなかったということに通じる。
ライルが見たのは、血まみれで倒れている実弟を抱き、歪虚と契約を交わしている養父母の実子でライルの義姉に当たるエッタ・サヴィスの姿と、血まみれで呆然と天を見上げるシールの姿だった。そのあと、当時、騎士団にいた雑貨屋のオーナーとともにライルはシールを助け、島からの脱出をした。
ライルが見る前にあった状況を聞いたのは、最近のことだ。
シールが言うには歪虚の出没を聞いて、大陸に女子供を避難させようとしていたサヴィス家。そこに歪虚が来た。
エッタは実弟を守るために歪虚と契約をする道を選び、歪虚はその覚悟としてシールを殺すようにと命令した。エッタはためらいなくシールを殺そうとしたが、リーヤがシールをかばって刃を受けたという。
シールが聖導士としての初めて力を使ったのはリーヤを助けるためだった。親友のリーヤのために。
ライルは腕の中にいるシールの背を撫でる。
「あー、もう、いいよ! 子どもじゃないんだから」
シールが腕を動かした。
「シール君はぬくぬくで冬はいいんですがねぇ」
「その口調嫌だ! 本当、ライルって……」
「ん?」
「いや、いい……それより、リーヤのこと」
ライルの心は決まっていた。
「退く。このまま俺たちで対処できない」
「確認したほうが!」
「使われたのが【強制】ならば、リーヤはそれなりの力を持つ。俺とお前で対処できる相手じゃない。兵に危険が及ぶ」
きっぱりと言われ、シールはうなずく。
「ハンターに協力を仰ごう」
兵には一旦戻ることを告げる。作業が遅れることは嫌である反面、命があることが重要だと誰もが心得ているから、気にしなかった。
「解決するまで、港でも仕事はあるでしょう?」
兵のリーダー格の者は言うが、その通りだ。
●依頼
ライルとシールはオーナーを通じて、ハンターに依頼を出した。
森の奥の村跡にはリーヤ・サヴィスと思われる、傲慢の歪虚がいるとされる。確認から討伐であるが、まずは状況を知ることが重要とライルは考えている。
地理は変わっている可能性はあるが、森の中にある村で、その先には牧草地があるという。その村で一番大きく丈夫な建物は教会であった。
●鐘
教会の一番高いところに登るとリーヤは座った。その横にぬいぐるみの羊が座る。
「ねえ、メェメェ、お前の持ち主は生きているのかなぁ」
ぬいぐるみはもぞもぞ動く。可愛らしい姿は一回り大きくなり、どこか凶悪な雰囲気を醸し出す。
「ボクが契約したヒトはいない。エッタもどっか行っちゃった。それより、ひどいよね、エッタはボクが島にいたのに気づかないんだ」
肩をすくめた。
「遊び相手……シーと兄さんいるといいなー」
リーヤは手に持ったハンマーで鐘をたたいた。
イスルダ島に着岸した場所を港とし、拠点とするため整える作業が行われている。並行して、イスルダ島各地へそれぞれ調査のため進む。
かつて住んでいた場所に向かったライル・サヴィスとシールは歪虚支配地域となっていた現状を目の当たりにした。商人や貴族の出資者の協力の元、探索をしていく予定には変わりはない。ただし、少人数にならないということだけは肝に銘じた。
非覚醒者が圧倒的に多い現状から、ライルとシールは自分たちが頑張らねばと考える。浄化されてきているとはいえ、負のマテリアルの影響はないとは言い切れないからだ。
そして、拠点となる場所に兵士たちと到着する。彼らはライルとシールと異なり、集団での行動になれているため、てきぱきと指示されていることをこなしていく。そのため、持ってきた材料で雨露しのげる場を作り、見回りや見張りなどもこなす。
雑魔の襲撃があったとしても、対応は的確であった。
徐々に探索範囲を広げて行った。その結果、隣の村、つまり、シールが住んでいた場所に到達しそうだった。
希望に満ちた日々は終わった。
●状況
森に入った兵士の一団は、もう少しで抜けきるということで異変に気付いた。
白っぽいぬいぐるみが落ちている。
歪虚に支配されていた場所に落ちているぬいぐるみに違和感を覚えないわけがない。
兵士たちは用心をしていた。どうやって確認するか、それとも目視だけで一旦退くか。警戒し、様子見る。
不安が募る。
じっと見ているとぬいぐるみが動いたようだった。
「退こう」
リーダー格の者が告げた。一部はそのぬいぐるみ目を向けつつ、隊形を維持して拠点がある方に戻る。
「何しているんだ?」
子どもの声に兵士は困惑し、足を止める。
兵士たちが確認に行こうとしていた方向から、少年が来た。ぬいぐるみの手前で足を止めた。
「おじさんたち、ここにぬいぐるみが落ちているんだ。つまり、『おかしい』と考えたうえで、拾って報告するとか、ボクが持ち主だろうと気にするのが通常じゃない?」
少年は言う。
単独行動をしているハンターとも考えられるが、少年の表情や抑えているけれども雰囲気から直感は敵だと告げる。
そのために兵士たちはじりじりと下がっている。
「親切というのが人間の美徳だよね? ああ、でも、人間ってさ、自分が助かるためなら何でもする生き物だよね? ボクの姉さんはボクのためにどうにかしようとしたみたいだけど……ま、よくわかんないな。で、おじさんたち、ボクにぬいぐるみを手渡していくれる? それとも同士討ちしてくれる?」
少年はにこりとした。
「走――ぐっ」
リーダーは指示を出そうとしたが、その言葉は最後まで発せなかった。近づいてた少年に威圧された、だけではなかった。
「おじさん、そこの人、殺して。せっかくだし、たくさん!」
少年は命令を下した。
兵は全力でかかってくるリーダーに対応するため、武器を抜かざるを得なかった。盾で防いだとしても鎧があるため、行動を止めることができなかった。
「あはははは! 面白い! 面白い」
少年は手をたたいた。
兵は何とかリーダーを取り押さえ、その場を離れた。
「ねえ、ボクの兄さんと友達、生きているのか知りたい。ボクはそれが知りたいからキミたちを逃すんだ」
名前はライル・サヴィスとシールだと告げる。
兵たちは必死に逃げた。
●撤退へ
リーダーの意識は戻った。歪虚の支配からは逃れたようである。
ライルとシールは報告を聞いてぎょっとした。シールの顔は真っ青になる。
兵が告げる少年の外見はまさに、ライルの養父母の実子であるリーヤ・サヴィスだった。
兵たちには嘘を吐くこともなくライルたちは告げ、考える時間をもらった。
二人きりになったところで、ライルはシールの肩を抱いた。シールは無意識にライルにしがみつく。
「リーヤが生きているなら嬉しい」
シールは震えている。
ここにリーヤの最期が最期でなかったということに通じる。
ライルが見たのは、血まみれで倒れている実弟を抱き、歪虚と契約を交わしている養父母の実子でライルの義姉に当たるエッタ・サヴィスの姿と、血まみれで呆然と天を見上げるシールの姿だった。そのあと、当時、騎士団にいた雑貨屋のオーナーとともにライルはシールを助け、島からの脱出をした。
ライルが見る前にあった状況を聞いたのは、最近のことだ。
シールが言うには歪虚の出没を聞いて、大陸に女子供を避難させようとしていたサヴィス家。そこに歪虚が来た。
エッタは実弟を守るために歪虚と契約をする道を選び、歪虚はその覚悟としてシールを殺すようにと命令した。エッタはためらいなくシールを殺そうとしたが、リーヤがシールをかばって刃を受けたという。
シールが聖導士としての初めて力を使ったのはリーヤを助けるためだった。親友のリーヤのために。
ライルは腕の中にいるシールの背を撫でる。
「あー、もう、いいよ! 子どもじゃないんだから」
シールが腕を動かした。
「シール君はぬくぬくで冬はいいんですがねぇ」
「その口調嫌だ! 本当、ライルって……」
「ん?」
「いや、いい……それより、リーヤのこと」
ライルの心は決まっていた。
「退く。このまま俺たちで対処できない」
「確認したほうが!」
「使われたのが【強制】ならば、リーヤはそれなりの力を持つ。俺とお前で対処できる相手じゃない。兵に危険が及ぶ」
きっぱりと言われ、シールはうなずく。
「ハンターに協力を仰ごう」
兵には一旦戻ることを告げる。作業が遅れることは嫌である反面、命があることが重要だと誰もが心得ているから、気にしなかった。
「解決するまで、港でも仕事はあるでしょう?」
兵のリーダー格の者は言うが、その通りだ。
●依頼
ライルとシールはオーナーを通じて、ハンターに依頼を出した。
森の奥の村跡にはリーヤ・サヴィスと思われる、傲慢の歪虚がいるとされる。確認から討伐であるが、まずは状況を知ることが重要とライルは考えている。
地理は変わっている可能性はあるが、森の中にある村で、その先には牧草地があるという。その村で一番大きく丈夫な建物は教会であった。
●鐘
教会の一番高いところに登るとリーヤは座った。その横にぬいぐるみの羊が座る。
「ねえ、メェメェ、お前の持ち主は生きているのかなぁ」
ぬいぐるみはもぞもぞ動く。可愛らしい姿は一回り大きくなり、どこか凶悪な雰囲気を醸し出す。
「ボクが契約したヒトはいない。エッタもどっか行っちゃった。それより、ひどいよね、エッタはボクが島にいたのに気づかないんだ」
肩をすくめた。
「遊び相手……シーと兄さんいるといいなー」
リーヤは手に持ったハンマーで鐘をたたいた。
リプレイ本文
●注意事項
ディーナ・フェルミ(ka5843)はライル・サヴィスとシールに対して、厳しい現実を話した。
「ごめんなさい、今から私は二人にひどいことを言うの」
歪虚と者が会いたいといっても、死ぬ方が良いと思わせ歪虚になるようにささやいたり、命を落とすことにつながることもある、と。
ロニ・カルディス(ka0551)はそれを聞き複雑な表情になる。因縁めいた人物が歪虚化するとろくなことにならないと経験則から感じている。
「それがあちらの狙いなのかもしれないがな」
歪虚にとって人間に混乱が生じるのは面白いことだろう。
エルバッハ・リオン(ka2434)はライルとシールにあいさつをするタイミングを計る。
「過去はどうあれ、歪虚となった以上は倒すしかないでしょうね」
ライルとシールが表情を硬くしているのを見るが、決心の色も見えてほっとする。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は眉をひそめたが、生きている者を見て心は決まる。
「子供をした歪虚……戦いで鈍ることはないが、倒すときに気分がいいものではないな」
依頼人たちをどう守るかが重要だと、情報を確認する。
レイア・アローネ(ka4082)は厳しい表情になる。
「歪虚となった彼も犠牲者か……解放してやらねばならねばな……」
依頼人の情報からリーヤ・サヴィスが歪虚となった経緯は推測ではあるが、的は外れていないはずだ。
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は前回の様子も踏まえどう動くか考える。
「あの二人の関係者が歪虚となっているならば――」
二人が情に流されると、死や歪虚と契約する危険がある。そのため、護るため、歪虚の生前の人間関係を聞き出したいと思っていた。
ミオレスカ(ka3496)は前回の様子も考え、敵の何を調べるべきか考えておく。
「そろそろ出発しませんか?」
ディーナの注意が終わり、エルバッハがライルとシールに声をかけたのを見計らって声をかけた。
メイム(ka2290)はライルとシールに確認を取る。
「拠点にしているところにたどり着くまでに、どういう状況か聞いておいていいかな?」
「経緯だけでなく、もちろん質問もうかがいます」
ライルが丁寧に応じた。
●森
拠点としたかった場所には到達した。
メイムは敵の状況を考え質問をする。
「去年島に来た時、藻人間とか死人型なんかはいたけど、この辺何人くらい住んでいたか覚えている? 足跡の感じだと動物系だと思うけど?」
ライルはおおよその数を告げる。
「それなりの村ってことね」
その数が歪虚に取り込まれていた場合が恐ろしいが、前回、ここに人の姿に近いものは出ていない。
「どんな村だったの?」
ディーナは荒廃した地を見て尋ねる。
「田舎の村で特徴はない……エッタは出て行きたがっていたけど」
「が、義父が商用で連れて行こうとしたらリーヤがいるからと行かないんだよな」
二人はため息を漏らした。
「リーヤか」
明るい表情から一気に暗い表情になる。
ディーナは道中も食べ物や恋愛など話を振ったが、必ず家族や親友につながるのだった。それでも緊張は緩和されているようなので良かった。
「歪虚は知性がそれなりにあるというのは情報から伝わっています。歪虚がお二人の知り合いと仮定して、生前の何か好きだったとかありますか?」
「それと人脈……親しい人はいたかということも知りたい。
ミオレスカとエラが問う。
「かくれんぼしたり、木を登ったり……僕の羊のぬいぐるみを気に入っていたよ?」
「人懐っこいからな顔見知りは多いはず」
シールとライルの答え。
「子どもらしいということですね」
「親しいとなるとあなたたちくらいということか?」
ミオレスカとエラの確認に、二人はうなずく。
「同世代の子もいたけど、ゴブリン襲撃の時、いなくなっちゃたり、色々」
「かくれんぼ好きだと怖いですね」
「不意打ちは用心だな」
もとよりそれは気にしているが、より危険を感じたのだった。
森の中に入ると、どこか息苦しく感じる。負のマテリアルが強くなっているのかもしれない。
一番前を行くアルトは奇襲されないように特に用心していた。
(かくれんぼ好きで知恵はある……)
兵士を見逃し、あえて情報を求めたのだから。名前だけでは彼らが知る本人かはわからない。
(違うということの方がいいのだろうね)
外見特徴から楽観視はできない。
アルトは耳を澄ませる。特に異様な音はない。
開けたところが見えた。後方に対し、一旦停止の指示を出す。
メイムが【ファミリアアイズ】を使い、エルバッハはアルトが示した茂みに隠れ、軍用双眼鏡を使い様子を見る。
何かいる気配は明確にしている。地面は踏み固められ、最近も通ったことを明白に語る。
「教会の塔でしょうか? そこに人影があると思います」
エルバッハは動いた影からそう判断し、告げた。
「確かにいると思う」
メイムは距離があったため明確ではないが、スキルに使った妖精を相手は見ていた。
「すでにばれているということだな。ならば、ある程度こちらも考えて行動しないとならないな」
レイアは家の形が多く残ることが気になる。
「より一層慎重さも必要だ。だから、途中の建物は見て行きつつ、地図作成と情報の記録」
ロニが提案と確認をする。
「これを使ってしていきます」
ロニにエルバッハがPDAを見せた。
「できればスキルは温存したほうがいいよね。あたしが盾を持って前に出るよ。もし、撤退するときは言ってね、エラさん」
依頼人の側にいるエラにメイムは頼んだ。
二十軒ほどの建物、敵の状況を確認しつつ進む。不意打ちへの対応や今後の探索のために必要なことだ。
時間が足りないならば撤退するだけだから。
●鐘
メイムの陰からレイアが家の中を見る。
「何もいないか」
徐々に教会の方に向かう。
鐘の音が響いた。ハンターたちは武器を構え、陣形を整える。
教会や反対側にある道らしい方向から獣だったらしい雑魔が複数現れる。
「数は多いが烏合の衆」
アルトはどちらに向かうべきか仲間を見る。
「アルトさんは教会の方を見てください」
「適材適所なの」
ミオレスカとディーナが告げる。
「そうさせてもらう」
「適材適所、私は力不足の可能性もある」
レイアは【強制】を使われたら足を引っ張ることを危惧している。
「挟み撃ちに近い状況になりますね……うまく分散させましょう」
エルバッハは教会側の雑魔に対し魔法を使うべくマテリアルを解放した。
「ライルとシールは教会から死角になるところにいて。敵が来るなら、援護は頼む」
エラが教会を視野に入れつつ、ライルとシールを守るように位置を取る。
「塔の上の敵はいないみたいだ」
「下りてきていると見たほうがいいな」
ロニがエラの言葉を引き取った。
「嫌な感じがびしばしする」
メイムが眉をひそめ、盾を構え直した。
雑魔たちに対し、エルバッハが【グラビデフォール】を、ミオレスカが【フォールシュート】を放った。これにより戦端は開かれた。
アルトは【紅糸】【連華】とスキルを用い。素早く近づき攻撃する。メイムは教会に向き、【ファミリアアタック】で抜けてきた雑魔に攻撃をした。敵は後方に近づいてきており、ディーナが【セイクリッドフラッシュ】で応対し、レイアがそれから外れたモノに刃を振るった。
エラは用心のために【機導浄化術・白虹】を展開する。近づいてくる敵に対し、ロニが【シャドウブリット】で攻撃をした。
これでほぼ雑魔はいなくなる。
雑魔は敵であるハンターに向かう。
教会から着ぐるみのような物体が現れた。一見愛らしいが、凶悪そうな表情である。その陰から子供が顔をのぞかせた。
「本当に来た」
子供は楽しそうに言う。
「ハンターなら知ってる? ボクの兄さんライル・サヴィスって言うんだ。どこにいるかな?」
雑魔はハンターから距離を取り止まる。
エラが見るとシールが真っ青な顔をしている。ライルが厳しい顔つきになった。
「リーヤ?」
ライルが声をかける。
「その声はライル! 姿見せてくれないの? ボクの親友のシーはどうなったの? ボクが契約したヒトは言っていたけど、逃げたって」
「無事だ、お前が守ったシー坊は無事だ」
リーヤが目を丸くする。
「そっか。じゃ、シールはどこにいるんだ」
「……具合が悪い」
「それは大変だ! ねえ、シー! 姉さんはひどいんだ。あの後、ボクに気づかなかったんだ」
情報を引き出せるならばとハンターは会話を注視している。攻撃をするタイミングを計っているといってもいい。
ミオレスカは敵が持つ能力を警戒しているため、いつでも【アイデアル・ソング】をはじめらるれるように声帯を緩める。
「なぜ、今、現れたのか」
口をはさんだロニにリーヤは冷たい目を向ける。
「居場所がないんだ。べリアル様いなくなっちゃたし。ボクとエッタの契約元も消えちゃった」
リーヤは「ボク独りぼっち」と顔を伏せる。
「そもそも、ここはボクの家の近所で、遊び場。むしろ、おじさんたちこそ『なんでここに来たんだい?』と言われるべきだ」
リーヤははき捨てるように言った。
「ボクはつまらないし、寂しいから、シーも歪虚になろうよ!」
リーヤの笑顔は無邪気だ。
「そうしたら、あちこち冒険しよう! ボクとシーなら、なんでも無に還せるよ」
「リー!」
鋭くライルが警告のように名を呼ぶ。
「もちろん、兄さんもだよ」
エラはシールの怯えが限界に来ていると気づいた。
「ミオ、始めて!」
「はいっ! 皆さん、私たちの目的はなんでしたか?」
エラの言葉にミオレスカは元気な声で応じ、【アイデアル・ソング】が発動するきっかけとなる。
「……そっか……メェメェ、行って」
リーヤが指示を出すと羊のぬいぐるみ歪虚が突進してきた。
「こっちにおいで【鉄鎖『ドローミ』】」
メイムは羊ぬいぐるみ型歪虚をリーヤから引き離していくためマテリアルでからめとった。
エルバッハは敵の行動へ対応しようと考えた。ミオレスカは歌舞を維持しつつ、近づく雑魔に【フォールシュート】で応戦した。
アルトはリーヤよりもまずはメェメェを倒すことに注力する。攻撃は通ったが柔らかく、固いのとは違う意味で攻撃が通りにくいと感じる。メイムとレイアはメェメェに攻撃を仕掛け、攻撃は通りにくいと感じた。
ディーナはライルとシールを守ることと魔法の範囲を考え位置を変えた。エラが【三散】、ロニは【シャドウブリッド】を放ち、残る雑魔を討伐する。
「おねえちゃん、そんなことしないでよ?」
リーヤがメイムのそばに来てささやく。
「ちょっ……」
メイムの思考が揺らぐ。
「しっかりしてください!」
エルバッハが【カウンターマジック】を放つ。
「ちっ」
メイムはリーヤから距離を置くがそこにメェメェがくびきを放ち突進してくる。
メェメェは見た目柔らかいが当たると痛い。
勢いに乗ったメェメェとリーヤは攻撃を続ける。近くにいるメイムに二人とも殺到する。
「なんで、こっちに来るの!」
彼女の細い体は吹き飛ばされた。リーヤがハサミを取り出し、メイムの首に向かって突き出す。間一髪で回避した。
エルバッハがメェメェに向かって【ファイアアロー】を放つ。メェメェは破れたところから綿を吹き出し、無に還った。
アルトは近くにいるリーヤに攻撃を仕掛ける。【懲罰】を持っている可能性も否定できない相手であるが、躊躇ない攻撃だ。素早く近づき、連続で攻撃をする。
「うっ、痛い! ボク、こんな子どもなのに?」
リーヤは訴える。アルトは半分は回避されているが手ごたえはあった。攻撃を反射してきてはいない。この攻撃をあえて無視したのかわからない。
「兄さん、シー、助けて」
リーヤはアルトから離れようとしている。
「駄目なの」
ディーナはリーヤに集中しつつも後方に下がり、二人に声をかける。
「そこのおねえさん、うるさい」
リーヤはミオレスカを指さして怒る。指摘されたところでスキルを解く理由にはならないため、ミオレスカはそのままスキルを維持する。
「キミのメェメェを連れておいてあげたのに壊されちゃった」
リーヤはハンターへの批判を強める。
「ゴブリンに殺されたお母さんの形見じゃないか」
リーヤはハンターを見ながら後退する。
「ボクは姉さんから君をかばったのに、お礼もないのかな?」
リーヤは執拗にシールに話しかける。教会の位置からは見えなかったシールの様子が見えるからだろう。
パーン。
銃声が響き、リーヤに命中する。
「チッ」
「いい加減にしろ!」
エラが鋭く言った。情報収集の必要性もあるし、ライルとシールの相手への鎮魂や悔恨を断ち切ることも考えて会話はさせていたが、この一方的なことは無意味だ。
「四の五の言ってはいられませんね」
エルバッハが【ファイアアロー】を放った。
「何だよ! ボクが――」
「死者の魂の安寧は――」
リーヤの言葉を遮り、ロニが【レクイエム】を紡ぐ。
「お前ひとりになっても戦うなら、相手するぞ」
レイアは武器を構えた。魔法に対する抵抗を考えて、なるべくリーヤに近づかないようにはしていた。
「確かに……今、ボク独りだ。ねえ、兄さんとシー、ボクのおうちにおいでよ。今度、全力で相手してあげるから。そうしたら、ボクとまた一緒にいてくれる?」
リーヤはにっこりと笑い、道に入ると闇に紛れるように消えた。
●足がかり
リーヤが逃げて行ったのは森の奥、牧草地があった方。
「深追いはしないが」
何があるかとロニが問う。
「僕たちが知る限りで、あっちは牧草地だった」
シールが告げる。彼の生家であり、歪虚に攻められる前にゴブリンによって襲撃を受けていた。
「つまり、何があるかわからないということですね」
エルバッハがいう。牧草地のままか、罠が作られているかはわからない。
「誘い込んでいる可能性は高い」
アルトはリーヤが手を見せないまま逃げたことを考えた。攻撃の反射も他の者への変化もなかった。違う手を持っている。
「全力で相手する、と言ったな」
「それならば、その相手をするだけだ」
エラの言葉にレイアは言う。
「そうですね。教会の形は残っているのですね。改めて、橋頭保にできればいいんですが」
ミオレスカが見上げる。
形は残っているが扉等はない。
「試しに登ってみるの」
ディーナがすたすた行く。
「それと、納骨堂……あるのかな? 開いているか否かも確認しておきたい」
メイムが告げる。
見張り、確認と手分けをする。そして、この教会の建物自体は使うことが可能だと判明した。
その上で、高いところから見るとこの地域の状況がよくわかる。
自然に近い何かは残っている。形は残っている。そこに何がいるのかわからないが。
鐘のあるところから眺める景色は、変わり果てているのにどこか懐かしい。
シールの嗚咽が暫く教会に響いたのだった。
ディーナ・フェルミ(ka5843)はライル・サヴィスとシールに対して、厳しい現実を話した。
「ごめんなさい、今から私は二人にひどいことを言うの」
歪虚と者が会いたいといっても、死ぬ方が良いと思わせ歪虚になるようにささやいたり、命を落とすことにつながることもある、と。
ロニ・カルディス(ka0551)はそれを聞き複雑な表情になる。因縁めいた人物が歪虚化するとろくなことにならないと経験則から感じている。
「それがあちらの狙いなのかもしれないがな」
歪虚にとって人間に混乱が生じるのは面白いことだろう。
エルバッハ・リオン(ka2434)はライルとシールにあいさつをするタイミングを計る。
「過去はどうあれ、歪虚となった以上は倒すしかないでしょうね」
ライルとシールが表情を硬くしているのを見るが、決心の色も見えてほっとする。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は眉をひそめたが、生きている者を見て心は決まる。
「子供をした歪虚……戦いで鈍ることはないが、倒すときに気分がいいものではないな」
依頼人たちをどう守るかが重要だと、情報を確認する。
レイア・アローネ(ka4082)は厳しい表情になる。
「歪虚となった彼も犠牲者か……解放してやらねばならねばな……」
依頼人の情報からリーヤ・サヴィスが歪虚となった経緯は推測ではあるが、的は外れていないはずだ。
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は前回の様子も踏まえどう動くか考える。
「あの二人の関係者が歪虚となっているならば――」
二人が情に流されると、死や歪虚と契約する危険がある。そのため、護るため、歪虚の生前の人間関係を聞き出したいと思っていた。
ミオレスカ(ka3496)は前回の様子も考え、敵の何を調べるべきか考えておく。
「そろそろ出発しませんか?」
ディーナの注意が終わり、エルバッハがライルとシールに声をかけたのを見計らって声をかけた。
メイム(ka2290)はライルとシールに確認を取る。
「拠点にしているところにたどり着くまでに、どういう状況か聞いておいていいかな?」
「経緯だけでなく、もちろん質問もうかがいます」
ライルが丁寧に応じた。
●森
拠点としたかった場所には到達した。
メイムは敵の状況を考え質問をする。
「去年島に来た時、藻人間とか死人型なんかはいたけど、この辺何人くらい住んでいたか覚えている? 足跡の感じだと動物系だと思うけど?」
ライルはおおよその数を告げる。
「それなりの村ってことね」
その数が歪虚に取り込まれていた場合が恐ろしいが、前回、ここに人の姿に近いものは出ていない。
「どんな村だったの?」
ディーナは荒廃した地を見て尋ねる。
「田舎の村で特徴はない……エッタは出て行きたがっていたけど」
「が、義父が商用で連れて行こうとしたらリーヤがいるからと行かないんだよな」
二人はため息を漏らした。
「リーヤか」
明るい表情から一気に暗い表情になる。
ディーナは道中も食べ物や恋愛など話を振ったが、必ず家族や親友につながるのだった。それでも緊張は緩和されているようなので良かった。
「歪虚は知性がそれなりにあるというのは情報から伝わっています。歪虚がお二人の知り合いと仮定して、生前の何か好きだったとかありますか?」
「それと人脈……親しい人はいたかということも知りたい。
ミオレスカとエラが問う。
「かくれんぼしたり、木を登ったり……僕の羊のぬいぐるみを気に入っていたよ?」
「人懐っこいからな顔見知りは多いはず」
シールとライルの答え。
「子どもらしいということですね」
「親しいとなるとあなたたちくらいということか?」
ミオレスカとエラの確認に、二人はうなずく。
「同世代の子もいたけど、ゴブリン襲撃の時、いなくなっちゃたり、色々」
「かくれんぼ好きだと怖いですね」
「不意打ちは用心だな」
もとよりそれは気にしているが、より危険を感じたのだった。
森の中に入ると、どこか息苦しく感じる。負のマテリアルが強くなっているのかもしれない。
一番前を行くアルトは奇襲されないように特に用心していた。
(かくれんぼ好きで知恵はある……)
兵士を見逃し、あえて情報を求めたのだから。名前だけでは彼らが知る本人かはわからない。
(違うということの方がいいのだろうね)
外見特徴から楽観視はできない。
アルトは耳を澄ませる。特に異様な音はない。
開けたところが見えた。後方に対し、一旦停止の指示を出す。
メイムが【ファミリアアイズ】を使い、エルバッハはアルトが示した茂みに隠れ、軍用双眼鏡を使い様子を見る。
何かいる気配は明確にしている。地面は踏み固められ、最近も通ったことを明白に語る。
「教会の塔でしょうか? そこに人影があると思います」
エルバッハは動いた影からそう判断し、告げた。
「確かにいると思う」
メイムは距離があったため明確ではないが、スキルに使った妖精を相手は見ていた。
「すでにばれているということだな。ならば、ある程度こちらも考えて行動しないとならないな」
レイアは家の形が多く残ることが気になる。
「より一層慎重さも必要だ。だから、途中の建物は見て行きつつ、地図作成と情報の記録」
ロニが提案と確認をする。
「これを使ってしていきます」
ロニにエルバッハがPDAを見せた。
「できればスキルは温存したほうがいいよね。あたしが盾を持って前に出るよ。もし、撤退するときは言ってね、エラさん」
依頼人の側にいるエラにメイムは頼んだ。
二十軒ほどの建物、敵の状況を確認しつつ進む。不意打ちへの対応や今後の探索のために必要なことだ。
時間が足りないならば撤退するだけだから。
●鐘
メイムの陰からレイアが家の中を見る。
「何もいないか」
徐々に教会の方に向かう。
鐘の音が響いた。ハンターたちは武器を構え、陣形を整える。
教会や反対側にある道らしい方向から獣だったらしい雑魔が複数現れる。
「数は多いが烏合の衆」
アルトはどちらに向かうべきか仲間を見る。
「アルトさんは教会の方を見てください」
「適材適所なの」
ミオレスカとディーナが告げる。
「そうさせてもらう」
「適材適所、私は力不足の可能性もある」
レイアは【強制】を使われたら足を引っ張ることを危惧している。
「挟み撃ちに近い状況になりますね……うまく分散させましょう」
エルバッハは教会側の雑魔に対し魔法を使うべくマテリアルを解放した。
「ライルとシールは教会から死角になるところにいて。敵が来るなら、援護は頼む」
エラが教会を視野に入れつつ、ライルとシールを守るように位置を取る。
「塔の上の敵はいないみたいだ」
「下りてきていると見たほうがいいな」
ロニがエラの言葉を引き取った。
「嫌な感じがびしばしする」
メイムが眉をひそめ、盾を構え直した。
雑魔たちに対し、エルバッハが【グラビデフォール】を、ミオレスカが【フォールシュート】を放った。これにより戦端は開かれた。
アルトは【紅糸】【連華】とスキルを用い。素早く近づき攻撃する。メイムは教会に向き、【ファミリアアタック】で抜けてきた雑魔に攻撃をした。敵は後方に近づいてきており、ディーナが【セイクリッドフラッシュ】で応対し、レイアがそれから外れたモノに刃を振るった。
エラは用心のために【機導浄化術・白虹】を展開する。近づいてくる敵に対し、ロニが【シャドウブリット】で攻撃をした。
これでほぼ雑魔はいなくなる。
雑魔は敵であるハンターに向かう。
教会から着ぐるみのような物体が現れた。一見愛らしいが、凶悪そうな表情である。その陰から子供が顔をのぞかせた。
「本当に来た」
子供は楽しそうに言う。
「ハンターなら知ってる? ボクの兄さんライル・サヴィスって言うんだ。どこにいるかな?」
雑魔はハンターから距離を取り止まる。
エラが見るとシールが真っ青な顔をしている。ライルが厳しい顔つきになった。
「リーヤ?」
ライルが声をかける。
「その声はライル! 姿見せてくれないの? ボクの親友のシーはどうなったの? ボクが契約したヒトは言っていたけど、逃げたって」
「無事だ、お前が守ったシー坊は無事だ」
リーヤが目を丸くする。
「そっか。じゃ、シールはどこにいるんだ」
「……具合が悪い」
「それは大変だ! ねえ、シー! 姉さんはひどいんだ。あの後、ボクに気づかなかったんだ」
情報を引き出せるならばとハンターは会話を注視している。攻撃をするタイミングを計っているといってもいい。
ミオレスカは敵が持つ能力を警戒しているため、いつでも【アイデアル・ソング】をはじめらるれるように声帯を緩める。
「なぜ、今、現れたのか」
口をはさんだロニにリーヤは冷たい目を向ける。
「居場所がないんだ。べリアル様いなくなっちゃたし。ボクとエッタの契約元も消えちゃった」
リーヤは「ボク独りぼっち」と顔を伏せる。
「そもそも、ここはボクの家の近所で、遊び場。むしろ、おじさんたちこそ『なんでここに来たんだい?』と言われるべきだ」
リーヤははき捨てるように言った。
「ボクはつまらないし、寂しいから、シーも歪虚になろうよ!」
リーヤの笑顔は無邪気だ。
「そうしたら、あちこち冒険しよう! ボクとシーなら、なんでも無に還せるよ」
「リー!」
鋭くライルが警告のように名を呼ぶ。
「もちろん、兄さんもだよ」
エラはシールの怯えが限界に来ていると気づいた。
「ミオ、始めて!」
「はいっ! 皆さん、私たちの目的はなんでしたか?」
エラの言葉にミオレスカは元気な声で応じ、【アイデアル・ソング】が発動するきっかけとなる。
「……そっか……メェメェ、行って」
リーヤが指示を出すと羊のぬいぐるみ歪虚が突進してきた。
「こっちにおいで【鉄鎖『ドローミ』】」
メイムは羊ぬいぐるみ型歪虚をリーヤから引き離していくためマテリアルでからめとった。
エルバッハは敵の行動へ対応しようと考えた。ミオレスカは歌舞を維持しつつ、近づく雑魔に【フォールシュート】で応戦した。
アルトはリーヤよりもまずはメェメェを倒すことに注力する。攻撃は通ったが柔らかく、固いのとは違う意味で攻撃が通りにくいと感じる。メイムとレイアはメェメェに攻撃を仕掛け、攻撃は通りにくいと感じた。
ディーナはライルとシールを守ることと魔法の範囲を考え位置を変えた。エラが【三散】、ロニは【シャドウブリッド】を放ち、残る雑魔を討伐する。
「おねえちゃん、そんなことしないでよ?」
リーヤがメイムのそばに来てささやく。
「ちょっ……」
メイムの思考が揺らぐ。
「しっかりしてください!」
エルバッハが【カウンターマジック】を放つ。
「ちっ」
メイムはリーヤから距離を置くがそこにメェメェがくびきを放ち突進してくる。
メェメェは見た目柔らかいが当たると痛い。
勢いに乗ったメェメェとリーヤは攻撃を続ける。近くにいるメイムに二人とも殺到する。
「なんで、こっちに来るの!」
彼女の細い体は吹き飛ばされた。リーヤがハサミを取り出し、メイムの首に向かって突き出す。間一髪で回避した。
エルバッハがメェメェに向かって【ファイアアロー】を放つ。メェメェは破れたところから綿を吹き出し、無に還った。
アルトは近くにいるリーヤに攻撃を仕掛ける。【懲罰】を持っている可能性も否定できない相手であるが、躊躇ない攻撃だ。素早く近づき、連続で攻撃をする。
「うっ、痛い! ボク、こんな子どもなのに?」
リーヤは訴える。アルトは半分は回避されているが手ごたえはあった。攻撃を反射してきてはいない。この攻撃をあえて無視したのかわからない。
「兄さん、シー、助けて」
リーヤはアルトから離れようとしている。
「駄目なの」
ディーナはリーヤに集中しつつも後方に下がり、二人に声をかける。
「そこのおねえさん、うるさい」
リーヤはミオレスカを指さして怒る。指摘されたところでスキルを解く理由にはならないため、ミオレスカはそのままスキルを維持する。
「キミのメェメェを連れておいてあげたのに壊されちゃった」
リーヤはハンターへの批判を強める。
「ゴブリンに殺されたお母さんの形見じゃないか」
リーヤはハンターを見ながら後退する。
「ボクは姉さんから君をかばったのに、お礼もないのかな?」
リーヤは執拗にシールに話しかける。教会の位置からは見えなかったシールの様子が見えるからだろう。
パーン。
銃声が響き、リーヤに命中する。
「チッ」
「いい加減にしろ!」
エラが鋭く言った。情報収集の必要性もあるし、ライルとシールの相手への鎮魂や悔恨を断ち切ることも考えて会話はさせていたが、この一方的なことは無意味だ。
「四の五の言ってはいられませんね」
エルバッハが【ファイアアロー】を放った。
「何だよ! ボクが――」
「死者の魂の安寧は――」
リーヤの言葉を遮り、ロニが【レクイエム】を紡ぐ。
「お前ひとりになっても戦うなら、相手するぞ」
レイアは武器を構えた。魔法に対する抵抗を考えて、なるべくリーヤに近づかないようにはしていた。
「確かに……今、ボク独りだ。ねえ、兄さんとシー、ボクのおうちにおいでよ。今度、全力で相手してあげるから。そうしたら、ボクとまた一緒にいてくれる?」
リーヤはにっこりと笑い、道に入ると闇に紛れるように消えた。
●足がかり
リーヤが逃げて行ったのは森の奥、牧草地があった方。
「深追いはしないが」
何があるかとロニが問う。
「僕たちが知る限りで、あっちは牧草地だった」
シールが告げる。彼の生家であり、歪虚に攻められる前にゴブリンによって襲撃を受けていた。
「つまり、何があるかわからないということですね」
エルバッハがいう。牧草地のままか、罠が作られているかはわからない。
「誘い込んでいる可能性は高い」
アルトはリーヤが手を見せないまま逃げたことを考えた。攻撃の反射も他の者への変化もなかった。違う手を持っている。
「全力で相手する、と言ったな」
「それならば、その相手をするだけだ」
エラの言葉にレイアは言う。
「そうですね。教会の形は残っているのですね。改めて、橋頭保にできればいいんですが」
ミオレスカが見上げる。
形は残っているが扉等はない。
「試しに登ってみるの」
ディーナがすたすた行く。
「それと、納骨堂……あるのかな? 開いているか否かも確認しておきたい」
メイムが告げる。
見張り、確認と手分けをする。そして、この教会の建物自体は使うことが可能だと判明した。
その上で、高いところから見るとこの地域の状況がよくわかる。
自然に近い何かは残っている。形は残っている。そこに何がいるのかわからないが。
鐘のあるところから眺める景色は、変わり果てているのにどこか懐かしい。
シールの嗚咽が暫く教会に響いたのだった。
依頼結果
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面白かった! | 6人 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/22 20:58:47 |
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調査・倒して良いのか悪いのか? ディーナ・フェルミ(ka5843) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/04/24 00:31:16 |