ゲスト
(ka0000)
このダニ野郎が!
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2018/04/30 19:00
- 完成日
- 2018/05/06 00:42
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●春のもぐやん様
あちこちで種蒔きや苗植えが始まるこの季節、土の精霊もぐやんはマテリアルをばらまきつつ見回りをしていた。草木がスクスク育つように。きれいな花が咲くように。
みんな~いっぱいお日さまあびてずんどこ大きくなるだよ~
彼は山や草原ばかりでなく、牧場や畑にも見回りに訪れる。
もぐやんが訪れた場所は植物の生育がすこぶるよくなるので、界隈の人々からとても有り難がられ親しまれている次第。言葉が通じるということもあり、何かと頼りにされている。
もぐやんは人間に対し友好的。土の眷属を束ねるアメンスィ様は気難しいとの評判だが、彼はそうではない。何事も請われれば、気さくに応じてくれる。
「もぐやん様ー、もぐやん様ー……出てきてくだせぇええ……」
おんや、なにかしらおらに助けを求める声が。今行くべぇえええ……
もぐやんは見回りを一時中断し、地表に向かう――生き物のモグラとは違い彼は、地面を掘って進まない。土そのものに同化し泳ぐようにして進んでいく。地中の生き物や根っこなどを傷つけないように。
土の中から花咲く丸い頭がもりっと出てきた。ついでつぶらな瞳と出っ歯。太鼓腹についた太短い腕と足が姿を現す。
誰かおらを呼んだべかー
近在のお百姓衆は我先にと彼の足元にすがりついた。
「おお、もぐやん様。お助けくだせえ」
「せっかく植えた苗が次々枯れてしもうとるです」
「牧草が萎れてしもうたのです」
「果樹の花も咲かずに落ちるのです」
「羊が次々倒れてしもうて。その上死産ばかり続いておりまして」
「仕事中具合が悪くなって、寝込むものが多発しておりまして」
「このままでは生活出来なくなってしまうとです」
いずれも大変なことばかり。もぐやんとしてはほうっておけない。
あんれまあ、それはどうしたことだんべえ。この間おらが来たときには皆すくすくしとっただがなあ
口調はのんびりながら、急いで現場へ向かう。
するとそこには人間たちが言った通りの景色が広がっていた。
春の盛りというのに草は色あせ萎れ、動物たちはぐったり。家畜は鶏も牛も羊もうずくまり、餌も食べようとしない。
もぐやんは尖った鼻をひくひくさせた。
むー、負のマテリアルがむんむかしてるべ
それが草や木のひいては動物や人間たちの調子をおかしくしているのだ。この近くに歪虚がいるのだろうか。ならば取り除くべし。
そう思ったもぐやんは地上のあちこち見回ったが、それらしき存在を確認出来なかった。
だが近くに何かがいることは確かなのだ。でなければ、こんなことになるはずがない。
ここは一つ、地面の中をよーく見てみねばならんべ
もぐやんは軽く準備体操し、えいやと土の中に飛び込む。すいすいと泳ぎ回る。浅いところから、深いところへと。
その時なにやら頬のあたりがちくりとした。
んや?
続いてやたら痒くなってきた。
な、なんだべ?
大きな手でぼりぼり頬を掻くもぐやん。そこにちくり。またちくり。ちくりちくりちくりちくり……。
あたたたた、一体なんだべぇ
●あなた誰ですか
冒険都市リゼリオ、の郊外。
異様なものが現れたとの通報を受けたハンターたちは、チームを組んで現場に向かった。
「う……ぉっ!? な、なんだありゃ……」
全長9メートルはあろうかという巨大な何かがそこにいた。全身青黒いデキモノで覆われ、顔があるのかないのかもよく分からない。とりあえず手足はあるようだが。
「見るからに歪虚っぽいですよねー」
「ていうか歪虚しかないだろ、あの悪趣味なビジュアル」
「確かに。しかしでかいなー。こりゃユニット持って来た方がよかったかな」
「まあ見ていると動きは鈍そうですから、なんとかいけるのではないでしょうか」
などと口々に言いながら接近して行ったところ、思いがけず歪虚から声が発された。
おー、おめえさんたちハンターだべか?
歪虚にしては邪気のない声。
ちょうどよかった。おらの体についてるこれ、とってくれねえべか。痒うてたまらんべよ
どういうことなのか。
ハンターたちは一応の注意をしつつ、相手に近づいてみた。
そして知る。デキモノだと思っていたものが、実はダニ形態の歪虚だということに。
機械のような頭部とは裏腹に、膨れ上がった腹の部分がいやに生っぽい。見ているこちらも痒くなってきそうだ。
ハンターの1人が聞く。
「あなたは誰ですか?」
おらは土の精霊もぐやんだべ
「一体なんでこんなことに?」
話せば長くなるだべが……
ハンターたちはもぐやんから、事の次第について説明してもらった。
――この歪虚が土んなかに隠れて、周辺のマテリアルを吸ってたらしいべよ。そんでみんな、具合がおかしくなってたらしいべ
「……なるほど、そこにマテリアルの塊である精霊が来たものだから、一斉にたかってきたわけか」
のようだべな。まあ、おらに全部くっついて来て集落からおらんようになったのはええことだえべが……とにかく痒いべ
と言いながらもぐやんはぼりぼり腹を掻いた。
膨れ上がったダニが何匹が潰れたが、体に食い込んでいる頭部から再生していく。
●またお前か
地下の奥深く。
『全然足りねーぞ! お前らもっとどっからでもじゃんじゃんマテリアル吸って持ってこーい!』
おさる歪虚モンキチは群れをなすダニ歪虚たちに発破をかける。
ダニ歪虚はCAMに繋がれたケーブルに噛み付く。するとその膨れた腹が、一瞬にしてぺしゃんこになった。
蓄えられていたマテリアルがCAMに移動したのだ。
モンキチは少しずつ上昇して行くエネルギーゲージを睨みながら、歯を剥き出した。
『ウキキキ、見てろよー。これが完成したらお前らなんか、ギッタギタのメッタメタだからな!』
あちこちで種蒔きや苗植えが始まるこの季節、土の精霊もぐやんはマテリアルをばらまきつつ見回りをしていた。草木がスクスク育つように。きれいな花が咲くように。
みんな~いっぱいお日さまあびてずんどこ大きくなるだよ~
彼は山や草原ばかりでなく、牧場や畑にも見回りに訪れる。
もぐやんが訪れた場所は植物の生育がすこぶるよくなるので、界隈の人々からとても有り難がられ親しまれている次第。言葉が通じるということもあり、何かと頼りにされている。
もぐやんは人間に対し友好的。土の眷属を束ねるアメンスィ様は気難しいとの評判だが、彼はそうではない。何事も請われれば、気さくに応じてくれる。
「もぐやん様ー、もぐやん様ー……出てきてくだせぇええ……」
おんや、なにかしらおらに助けを求める声が。今行くべぇえええ……
もぐやんは見回りを一時中断し、地表に向かう――生き物のモグラとは違い彼は、地面を掘って進まない。土そのものに同化し泳ぐようにして進んでいく。地中の生き物や根っこなどを傷つけないように。
土の中から花咲く丸い頭がもりっと出てきた。ついでつぶらな瞳と出っ歯。太鼓腹についた太短い腕と足が姿を現す。
誰かおらを呼んだべかー
近在のお百姓衆は我先にと彼の足元にすがりついた。
「おお、もぐやん様。お助けくだせえ」
「せっかく植えた苗が次々枯れてしもうとるです」
「牧草が萎れてしもうたのです」
「果樹の花も咲かずに落ちるのです」
「羊が次々倒れてしもうて。その上死産ばかり続いておりまして」
「仕事中具合が悪くなって、寝込むものが多発しておりまして」
「このままでは生活出来なくなってしまうとです」
いずれも大変なことばかり。もぐやんとしてはほうっておけない。
あんれまあ、それはどうしたことだんべえ。この間おらが来たときには皆すくすくしとっただがなあ
口調はのんびりながら、急いで現場へ向かう。
するとそこには人間たちが言った通りの景色が広がっていた。
春の盛りというのに草は色あせ萎れ、動物たちはぐったり。家畜は鶏も牛も羊もうずくまり、餌も食べようとしない。
もぐやんは尖った鼻をひくひくさせた。
むー、負のマテリアルがむんむかしてるべ
それが草や木のひいては動物や人間たちの調子をおかしくしているのだ。この近くに歪虚がいるのだろうか。ならば取り除くべし。
そう思ったもぐやんは地上のあちこち見回ったが、それらしき存在を確認出来なかった。
だが近くに何かがいることは確かなのだ。でなければ、こんなことになるはずがない。
ここは一つ、地面の中をよーく見てみねばならんべ
もぐやんは軽く準備体操し、えいやと土の中に飛び込む。すいすいと泳ぎ回る。浅いところから、深いところへと。
その時なにやら頬のあたりがちくりとした。
んや?
続いてやたら痒くなってきた。
な、なんだべ?
大きな手でぼりぼり頬を掻くもぐやん。そこにちくり。またちくり。ちくりちくりちくりちくり……。
あたたたた、一体なんだべぇ
●あなた誰ですか
冒険都市リゼリオ、の郊外。
異様なものが現れたとの通報を受けたハンターたちは、チームを組んで現場に向かった。
「う……ぉっ!? な、なんだありゃ……」
全長9メートルはあろうかという巨大な何かがそこにいた。全身青黒いデキモノで覆われ、顔があるのかないのかもよく分からない。とりあえず手足はあるようだが。
「見るからに歪虚っぽいですよねー」
「ていうか歪虚しかないだろ、あの悪趣味なビジュアル」
「確かに。しかしでかいなー。こりゃユニット持って来た方がよかったかな」
「まあ見ていると動きは鈍そうですから、なんとかいけるのではないでしょうか」
などと口々に言いながら接近して行ったところ、思いがけず歪虚から声が発された。
おー、おめえさんたちハンターだべか?
歪虚にしては邪気のない声。
ちょうどよかった。おらの体についてるこれ、とってくれねえべか。痒うてたまらんべよ
どういうことなのか。
ハンターたちは一応の注意をしつつ、相手に近づいてみた。
そして知る。デキモノだと思っていたものが、実はダニ形態の歪虚だということに。
機械のような頭部とは裏腹に、膨れ上がった腹の部分がいやに生っぽい。見ているこちらも痒くなってきそうだ。
ハンターの1人が聞く。
「あなたは誰ですか?」
おらは土の精霊もぐやんだべ
「一体なんでこんなことに?」
話せば長くなるだべが……
ハンターたちはもぐやんから、事の次第について説明してもらった。
――この歪虚が土んなかに隠れて、周辺のマテリアルを吸ってたらしいべよ。そんでみんな、具合がおかしくなってたらしいべ
「……なるほど、そこにマテリアルの塊である精霊が来たものだから、一斉にたかってきたわけか」
のようだべな。まあ、おらに全部くっついて来て集落からおらんようになったのはええことだえべが……とにかく痒いべ
と言いながらもぐやんはぼりぼり腹を掻いた。
膨れ上がったダニが何匹が潰れたが、体に食い込んでいる頭部から再生していく。
●またお前か
地下の奥深く。
『全然足りねーぞ! お前らもっとどっからでもじゃんじゃんマテリアル吸って持ってこーい!』
おさる歪虚モンキチは群れをなすダニ歪虚たちに発破をかける。
ダニ歪虚はCAMに繋がれたケーブルに噛み付く。するとその膨れた腹が、一瞬にしてぺしゃんこになった。
蓄えられていたマテリアルがCAMに移動したのだ。
モンキチは少しずつ上昇して行くエネルギーゲージを睨みながら、歯を剥き出した。
『ウキキキ、見てろよー。これが完成したらお前らなんか、ギッタギタのメッタメタだからな!』
リプレイ本文
レイア・アローネ(ka4082)は、もぐやんの体に張り付く無数の虫型歪虚に目をやった。
「見てるだけで痒く……いや、痛くなってくるな……とりあえずもぐや……精霊を助けなければな」
シレークス(ka0752)はバキバキ指を鳴らす。
彼女は熱心なエクラ教徒。崇める対象とは違えど精霊であるもぐやんに害がなされたことで、怒り心頭状態となっている。不届き者には死あるのみだ。
「ったく、何処のどいつがこんな奴らを……!!」
天竜寺 舞(ka0377)もまた、しかめ面をしている。
「うわ、ダニかぁ。バ〇サンでもあればよかったんだけど」
ルベーノ・バルバライン(ka6752)はもぐやんの周囲をぐるりと回り、ダニがどういう風に食いついているかを確認する。
「ふむ、下手に打撃を与えてはもぐやんにまでダメージが入る恐れがあるな……これは困った」
マルカ・アニチキン(ka2542)とエーミ・エーテルクラフト(ka2225)は持ち合わせた掃除スキルを元に、対策を練った。
「もしこれがダニをベースにしている歪虚なら、熱や乾燥に弱いと思うのよね」
「ニンニクにも弱いのではないでしょうか。ノミやダニなどが嫌がる硫黄成分を含んでいますので」
それを聞いたソラス(ka6581)は荷を解き松明を取り出し、着火の指輪で火をつける。体のあちこちをぼりぼりしているもぐやんに話しかける。
「僭越ながら、お助けします。以前の御恩もありますし、この土地にとってなくてはならない大切な方ですから――熱いかもしれませんが我慢してくださいね」
ほいよ。おら土で出来てるだでな。多少のことは大丈夫だべ。
松明の炎がもぐやんにくっついていたダニを炙る。
途端にダニがぱっと顎を外した。そのまま地面に落下し――沈んでいく。
「えっ!?」
ソラスは急いで捕まえようとしたが間に合わず、逃げられてしまう。
一部始終を見た舞は腕組みし、うーんと唸った。
「これは何か敷いた方がいいかも」
ルベーノもその意見に賛成だ。
「確かにこれは何か敷いた方がいいかも知れんな」
ところで龍宮 アキノ(ka6831)はこの場においてただ1人、愉快そうにしている。弾んだ声でこう呟きながら。
「検体になりそうなダニが一度にこんなに見つかるとはねぇ」
ソラスは別のダニに再度炎を近づけた。片手で腹を掴み、落ちないようにしてから。
今度はうまく引きはがせた。
持ってみて分かったのだが、見た目より随分軽い。腹に詰め込まれているのが血や体液といった物質ではなく、マテリアルという非物質であるためか。
ダニを至近距離から観察し、ルベーノ、アキノと意見交換をする。
「頭部は固く腹部は何かを貯め込んだようにぶよぶよか……」
「まさに機械っぽいですね。腹のこの感じはマテリアルですが――この単純構成の機械がこんなに使うとも思えないですね」
「そうそう、気になるのはそこだよ。このダニ共は何のために精霊の生き血、もといマテリアルを啜っているんだい?」
「単純に考えるなら、マテリアルを吸い上げてどこぞへ運ぶ運搬目的だろうな」
「どこに?」
「……そのことなんですけどね、アキノさん。確信は持てませんが、心当たりがなくもないんですよ、私」
「へえ? それはそれは興味深いね。ソラスくん、よかったら詳しく聞かせてくれるかい?」
そこに舞が入ってきた。
「心当たりって、誰?」
「ほら、あのブリキのサル――モンキチですよ。確か、超強いCAMを作るとかなんとか言ってましたでしょう? だからそれへのエネルギー源として、マテリアルを採取しているんじゃないかと思いまして」
ソラスの考察を聞いた彼女は、瞬時に眉を吊り上げる。
「またあのエテ公か!」
「い、いえ、あくまでも想像でしかありませんけど……」
「いーや、それで間違いないよ。この間もドローンもどき使ってコソドロしてたしね……こんなセコイ真似するのは絶対あのエテ公しかいない!」
ダニの正体、並びに目的等についての考察は彼らに任せるとしよう。思ってエーミは、もぐやんに向き直る。
「全身を地上に出していただいてもかまわないかしら? その方がダニを取りやすいと思うのだけれど」
よかんべえ。よっこらさあ。
もぐやんは全身を地上に出してきた。ビヤ樽のようなお腹、短い手足。どこもここもダニが食いつき倒している。
惨状に同情しつつ、マルカが言った。
「もぐやん様、でよろしかったでしょうか? どうか駆除はお任せください。仕事柄、歪虚退治から害虫駆除までそつなくこなせますので……もぐやん様《激臭大蒜弾》を食べていただいて構いませんでしょうか」
はて。それはどんなものだべ?
「えーと……ニンニク成分をギュッと濃密に凝縮したものです。ダニはニンニクの匂いが嫌いですので、もしかしたら効果があるのではないかと。痒み軽減にも効果があるそうですし」
そんだべか。はあ、そんならもらっておくべし。
と快諾を戴いたものの、残念ながらこの作戦は効果がなかった。ダニ歪虚が生物から作られたものではなく、機械から作られたものであるがゆえに。
とはいえ、以下の効用は多少あったらしい。
あ、ちょっとだけ痒くなくなったべ。
●
「もぐやん様、しっかりその古代銃を持っててくださいね。銃から手を放したら落ちてしまいますので、ご注意ください」
あいよー。
マルカがマジックフライトを施した古代銃「トニトルス」を両手に挟んだもぐやんが、宙に浮いていく。
おおお。これはすごいべ。おら空飛んでるべ~。
高度2メートルに留まる飛行だが、精霊様は感激されているようだ。
それはさておき浮いた真下に組み立て大型テントの布部分、魔法陣レジャーシート、花柄のレジャーシート、民家から借りてきたむしろが手早く広げられる。落ちてきたダニが逃げてしまわないために。
続けて舞がテントの骨組み部分を組み立てた。もぐやんの体に上る際、足掛かりとするために。
その間にエーミが仲間たちの武器へファイアエンチャントをかけ、炎のオーラをまとわせる。
――これで、駆除の準備は整った。
皆からやや離れた位置に陣取ったシレークスとレイアは、引き付けのためのソウルトーチを発動させる。
「さて、ちと覚悟を決めてやってみますです」
「……こんな大掛かりなダニ退治があろうとはな」
組み立てた足場を使いもぐやんの体に取りついた舞は、そのまま頭部まで上った。
強力なニンニクの香りがぷーんと漂ってきたが……まあそれはさておき。
「よっし汚物は消毒だー」
ヒートソードでもぐやんの頭部に食いついたダニの頭を潰しにかかる……つもりだったが、ここでちょっとしたハプニングが起きた。ファイアエンチャントをかけられた武器が近づくやダニは、熱さを感じ取り、頭を潰されるのを待たず顎を外し落下して行くのである。
「あ、こらー! 勝手に落ちるな!」
と言っても相手が聞く訳がない。
ひとまずはダニが離れればいいのだと考え直して、ヒートソードを縦横無尽に振るって行く。
彼女の後からもぐやんに取り付いたルベーノは、1匹1匹地道に頭を引き剥がし、片手で殴って潰すを繰返すやり方を取る。いくぶん効率が悪いが、これが一番もぐやんにダメージが入らない、かつ相手に逃げられないやり方だったので。
エーミは片手にマジックフライトをかけた混元傘を、もう片方の手に松明を持ち、もぐやんの体表面に着いているダニをあぶり落としている。下に声をかけながら。
「いくわよー?」
●
炙られたダニが上からぼたぼた落ちてくる。
「さて、こちらも緊急手術をしないとねぇ」
と言ってアキノは浮いたもぐやんの尻目がけ、ファイアスローワーを発動させた。
扇状の炎に嘗められたダニが、次々落下してくる。
あっちちち
と声を上げ短い足をばたばたさせるもぐやん。
精霊から離れたダニはソウルトーチの醸し出すマテリアルに引かれ、移動し始める。
本物そっくりなよちよちした動きにシレークスの嫌悪感が爆発した。盾で接近を阻みつつ問答無用の力で潰す。
「だぁ~っ! ワラワラと気色が悪ぃですっ!」
レイアは炎のオーラをまとった剣で群がるダニたちを、鮮やかに切り捨てて行く。
マルカは落下してくるダニを待ち構え、ファイアーボールで滅殺。
「駆逐……一匹残らず駆逐……細胞も残さない……」
丁度その頭の上に、1匹が落下してきた。
不意打ちに度を失うマルカ。絶叫する。
「ひいいあああああ!」
ソラスは火属性を帯びさせたマジックアローを放ち、彼女の頭にしがみついたダニを駆除した。
「マルカさん、大丈夫ですか!」
「……だ、大丈夫ですぅ……」
シレークスは大忙しだ。ホーリーパニッシャーを鉄球が見えないほどの高速で振り回している。
「エクラ教修道女舐めんじゃねぇですよ!」
修道女というには野性的すぎる形相だ。
聖闘術『怒りの日』を付与している彼の一撃は、一瞬にしてダニを影も形も無くしてしまう。
彼女と同じく引き付け係となっているレイアもまた、存分に魔剣を振るいダニを潰していた。
「ええい、後から後から!」
上空にいるエーミは、作業の合間に地上を見下ろした。
彼女にはダニの動きがよく見える。
――ほとんどはソウルトーチに引き付けられているのだが、誘導されない何匹かがいる。
どうやら地上班はそのイレギュラーについて、よく把握出来ていないようだ。
地面の上に行かれると逃げられてしまう。それは困る。というわけで彼女は、上空からその旨を広報した。大きな手振りを交えて。
「皆ー、そっちの端の方、シートから出そうなのがいるわよー」
それを受けてソラスは、そちらへと赴いた。フォースリングを利用したマジックアローで、一気に5体片付ける。
その横を一条の光線が走った。シレークスの青竜翔咬波が炸裂したのである。
「害虫はとっとと消えやがるがいいのですよ!」
●
アキノのファイアースローワーが打ち止めになった。
その時点でもぐやんの尻付近についていたダニは、全て落とされていた。あらわになったお尻表面は乾燥のあまり細かにひび割れている。
あちちち。お尻がすっかりカサカサになってしまったべえ。
「君も腐っても精霊なんだからちょっとやそっとの痛みぐらい我慢しなよ」
ぼやくもぐやんにそう返した彼女は、機動砲、並びにデルタレイへと攻撃方法を切り替える。
ダニが特に群がっている手足の付け根付近に向け発動。
光の三角形から放たれた3つの光が、もぐやんの皮膚に潜り込むダニの頭部を破壊する。
あっちっち
とは言っているもののもぐやんは大きな損傷を受けた様子はない。巨体がものを言っているようだ。
エーミはマジックフライトをかけた傘に腰掛け(その方が持っているより楽なことに気づいたのだ)リトルファイアを発動させた――エクステンドレンジをかけて。
虫に対する忌避感は低いのだが、あまりにも密集している部分については、やはりこう、あまり近寄りたくなくて。
「今から本物の火を出すから、気を付けて」
ほいよう。
火の玉に焼かれたダニが顎を外す。
舞がその落下に合わせ紅蓮斬をお見舞いしていく。
熱と振動が伝わるのか、他の場所に食いついているダニたちも落ちつかなげにもぞつき出している。
腹を踏まれた1匹が、彼女の足を噛んだ。
「いっ!」
焼けるような一撃に思わず顔をしかめる舞。返す刃でそのダニを駆逐する。
一方ルベーノは、引き続き地道な剥ぎとりと粉砕を繰り返していた。
エーミと舞の繰り出す熱に負け自ら落ちて行こうとする分のダニに関しては、直に部位狙いをかけていく。
「やれやれ、だいぶ減ったな」
と息をついたところで、どすんと振動。
古代銃にかけられていたマジックフライトが切れ、もぐやんが地上に落ちたのである。
おとと。みんな、だいじょうぶだべかー。
という声にシレークスは、元気よく答えた。
「大丈夫ですよお、もぐやんさまー!」
白かった彼女のホーリーパニッシャーは、潰したダニの体液によって黒くなっていた。レイアの剣も同様である。
皆の奮闘のかいあって、もぐやんの体についていたダニは激減していた。尻の部分と顔の部分はすっかりとれている。残っているのは体の脇とか背中とか、もぐやんが自分でも取りにくそうな所だけ。
なので大型精霊がどんな姿をしているいかが、はっきり分かるようになる。
いったん地上に降りた舞は改めてもぐやんを眺め、感じ入った。
「妹に聞いた事はあったけど本当に大きい土竜だねぇ」
新たにダニ1匹が落ちてきたので、すかさず斬り伏せておく。
●
ダニ駆除が終わった。
シレークスは顔を上げもぐやんを見上げる。
「よくもまぁ、アレだけ集られて……」
ルベーノは背中に上りチャクラヒールをかけた。親愛の情をこめ、元通りになった体表を軽くポンポンと撫でる。
「畑の不作が回避できたのはありがたいが、あまり無茶をしないでくれよ? 知り合いになった精霊が傷つくのは悲しいからな」
めんぼくねえ。あんがとさんだべ。
もぐやんの尻付近ではアキノが、ヒールをかけている。
「悪いけどあたしにはこういう荒療治しか思いつかなくてねぇ。精霊を病院に担ぎ込むわけにもいかないだろう?」
舞はもぐやんの体をつついた。
「ねえ、そこに立ってみてくれない?」
いいべよ。
気さくに応じてくれた安定感のある太鼓腹に、ぴょーんと飛びつく。
「これがト〇ロに飛びつく〇イの気分か!」
童心に返りはしゃぐ。
そこへソラスが、真顔の質問をした。
「ト〇ロとは何です?」
舞は少し赤くなった。コホンと咳払いしながら場を離れる。ちょっと子供っぽかったかなと自分でも思いつつ。
ヒールを終えたアキノはシートにクギで固定されている資料ダニの頭に、ドライバーを突き刺す。鼻歌交じりにぐりぐり抉る。
「こいつの構造をよくよく調べてみないとね」
レイアは彼女に聞いた。
「穴を掘ってダニを追うことは出来ないのか?」
「うーん、難しいね。どうもこの機械、このもぐやん同様土に同化して潜んだり移動したりしてるみたいだし。だとすると、穴は残らないはずだ」
「そうなのか……では黒幕は分からずじまいだな」
「今のところは。だけどそれはそれで謎解きの醍醐味が増えて面白いじゃないか。あたしに目を付けられた以上、その命をあたしの研究のために捧げる覚悟はきっとあるんだろうしね……フフフフ……」
アキノの含み笑いはとても楽しげであった。
エーミはもぐやんの体を撫で、話しかける。
「どこか他にかゆい所あるー?」
もうないべ。皆には大変世話になったべえ。お礼をせねばならんべえ。
と言ってもぐやんは体に力を入れた。頭にポコポコ花が咲く。彼はそれを摘み、8つの小さな束にしてハンターたちに渡した。
どんぞ。
マルカが間を置いて一人ごちる。
「……これ、ニンニクの花ですね」
「見てるだけで痒く……いや、痛くなってくるな……とりあえずもぐや……精霊を助けなければな」
シレークス(ka0752)はバキバキ指を鳴らす。
彼女は熱心なエクラ教徒。崇める対象とは違えど精霊であるもぐやんに害がなされたことで、怒り心頭状態となっている。不届き者には死あるのみだ。
「ったく、何処のどいつがこんな奴らを……!!」
天竜寺 舞(ka0377)もまた、しかめ面をしている。
「うわ、ダニかぁ。バ〇サンでもあればよかったんだけど」
ルベーノ・バルバライン(ka6752)はもぐやんの周囲をぐるりと回り、ダニがどういう風に食いついているかを確認する。
「ふむ、下手に打撃を与えてはもぐやんにまでダメージが入る恐れがあるな……これは困った」
マルカ・アニチキン(ka2542)とエーミ・エーテルクラフト(ka2225)は持ち合わせた掃除スキルを元に、対策を練った。
「もしこれがダニをベースにしている歪虚なら、熱や乾燥に弱いと思うのよね」
「ニンニクにも弱いのではないでしょうか。ノミやダニなどが嫌がる硫黄成分を含んでいますので」
それを聞いたソラス(ka6581)は荷を解き松明を取り出し、着火の指輪で火をつける。体のあちこちをぼりぼりしているもぐやんに話しかける。
「僭越ながら、お助けします。以前の御恩もありますし、この土地にとってなくてはならない大切な方ですから――熱いかもしれませんが我慢してくださいね」
ほいよ。おら土で出来てるだでな。多少のことは大丈夫だべ。
松明の炎がもぐやんにくっついていたダニを炙る。
途端にダニがぱっと顎を外した。そのまま地面に落下し――沈んでいく。
「えっ!?」
ソラスは急いで捕まえようとしたが間に合わず、逃げられてしまう。
一部始終を見た舞は腕組みし、うーんと唸った。
「これは何か敷いた方がいいかも」
ルベーノもその意見に賛成だ。
「確かにこれは何か敷いた方がいいかも知れんな」
ところで龍宮 アキノ(ka6831)はこの場においてただ1人、愉快そうにしている。弾んだ声でこう呟きながら。
「検体になりそうなダニが一度にこんなに見つかるとはねぇ」
ソラスは別のダニに再度炎を近づけた。片手で腹を掴み、落ちないようにしてから。
今度はうまく引きはがせた。
持ってみて分かったのだが、見た目より随分軽い。腹に詰め込まれているのが血や体液といった物質ではなく、マテリアルという非物質であるためか。
ダニを至近距離から観察し、ルベーノ、アキノと意見交換をする。
「頭部は固く腹部は何かを貯め込んだようにぶよぶよか……」
「まさに機械っぽいですね。腹のこの感じはマテリアルですが――この単純構成の機械がこんなに使うとも思えないですね」
「そうそう、気になるのはそこだよ。このダニ共は何のために精霊の生き血、もといマテリアルを啜っているんだい?」
「単純に考えるなら、マテリアルを吸い上げてどこぞへ運ぶ運搬目的だろうな」
「どこに?」
「……そのことなんですけどね、アキノさん。確信は持てませんが、心当たりがなくもないんですよ、私」
「へえ? それはそれは興味深いね。ソラスくん、よかったら詳しく聞かせてくれるかい?」
そこに舞が入ってきた。
「心当たりって、誰?」
「ほら、あのブリキのサル――モンキチですよ。確か、超強いCAMを作るとかなんとか言ってましたでしょう? だからそれへのエネルギー源として、マテリアルを採取しているんじゃないかと思いまして」
ソラスの考察を聞いた彼女は、瞬時に眉を吊り上げる。
「またあのエテ公か!」
「い、いえ、あくまでも想像でしかありませんけど……」
「いーや、それで間違いないよ。この間もドローンもどき使ってコソドロしてたしね……こんなセコイ真似するのは絶対あのエテ公しかいない!」
ダニの正体、並びに目的等についての考察は彼らに任せるとしよう。思ってエーミは、もぐやんに向き直る。
「全身を地上に出していただいてもかまわないかしら? その方がダニを取りやすいと思うのだけれど」
よかんべえ。よっこらさあ。
もぐやんは全身を地上に出してきた。ビヤ樽のようなお腹、短い手足。どこもここもダニが食いつき倒している。
惨状に同情しつつ、マルカが言った。
「もぐやん様、でよろしかったでしょうか? どうか駆除はお任せください。仕事柄、歪虚退治から害虫駆除までそつなくこなせますので……もぐやん様《激臭大蒜弾》を食べていただいて構いませんでしょうか」
はて。それはどんなものだべ?
「えーと……ニンニク成分をギュッと濃密に凝縮したものです。ダニはニンニクの匂いが嫌いですので、もしかしたら効果があるのではないかと。痒み軽減にも効果があるそうですし」
そんだべか。はあ、そんならもらっておくべし。
と快諾を戴いたものの、残念ながらこの作戦は効果がなかった。ダニ歪虚が生物から作られたものではなく、機械から作られたものであるがゆえに。
とはいえ、以下の効用は多少あったらしい。
あ、ちょっとだけ痒くなくなったべ。
●
「もぐやん様、しっかりその古代銃を持っててくださいね。銃から手を放したら落ちてしまいますので、ご注意ください」
あいよー。
マルカがマジックフライトを施した古代銃「トニトルス」を両手に挟んだもぐやんが、宙に浮いていく。
おおお。これはすごいべ。おら空飛んでるべ~。
高度2メートルに留まる飛行だが、精霊様は感激されているようだ。
それはさておき浮いた真下に組み立て大型テントの布部分、魔法陣レジャーシート、花柄のレジャーシート、民家から借りてきたむしろが手早く広げられる。落ちてきたダニが逃げてしまわないために。
続けて舞がテントの骨組み部分を組み立てた。もぐやんの体に上る際、足掛かりとするために。
その間にエーミが仲間たちの武器へファイアエンチャントをかけ、炎のオーラをまとわせる。
――これで、駆除の準備は整った。
皆からやや離れた位置に陣取ったシレークスとレイアは、引き付けのためのソウルトーチを発動させる。
「さて、ちと覚悟を決めてやってみますです」
「……こんな大掛かりなダニ退治があろうとはな」
組み立てた足場を使いもぐやんの体に取りついた舞は、そのまま頭部まで上った。
強力なニンニクの香りがぷーんと漂ってきたが……まあそれはさておき。
「よっし汚物は消毒だー」
ヒートソードでもぐやんの頭部に食いついたダニの頭を潰しにかかる……つもりだったが、ここでちょっとしたハプニングが起きた。ファイアエンチャントをかけられた武器が近づくやダニは、熱さを感じ取り、頭を潰されるのを待たず顎を外し落下して行くのである。
「あ、こらー! 勝手に落ちるな!」
と言っても相手が聞く訳がない。
ひとまずはダニが離れればいいのだと考え直して、ヒートソードを縦横無尽に振るって行く。
彼女の後からもぐやんに取り付いたルベーノは、1匹1匹地道に頭を引き剥がし、片手で殴って潰すを繰返すやり方を取る。いくぶん効率が悪いが、これが一番もぐやんにダメージが入らない、かつ相手に逃げられないやり方だったので。
エーミは片手にマジックフライトをかけた混元傘を、もう片方の手に松明を持ち、もぐやんの体表面に着いているダニをあぶり落としている。下に声をかけながら。
「いくわよー?」
●
炙られたダニが上からぼたぼた落ちてくる。
「さて、こちらも緊急手術をしないとねぇ」
と言ってアキノは浮いたもぐやんの尻目がけ、ファイアスローワーを発動させた。
扇状の炎に嘗められたダニが、次々落下してくる。
あっちちち
と声を上げ短い足をばたばたさせるもぐやん。
精霊から離れたダニはソウルトーチの醸し出すマテリアルに引かれ、移動し始める。
本物そっくりなよちよちした動きにシレークスの嫌悪感が爆発した。盾で接近を阻みつつ問答無用の力で潰す。
「だぁ~っ! ワラワラと気色が悪ぃですっ!」
レイアは炎のオーラをまとった剣で群がるダニたちを、鮮やかに切り捨てて行く。
マルカは落下してくるダニを待ち構え、ファイアーボールで滅殺。
「駆逐……一匹残らず駆逐……細胞も残さない……」
丁度その頭の上に、1匹が落下してきた。
不意打ちに度を失うマルカ。絶叫する。
「ひいいあああああ!」
ソラスは火属性を帯びさせたマジックアローを放ち、彼女の頭にしがみついたダニを駆除した。
「マルカさん、大丈夫ですか!」
「……だ、大丈夫ですぅ……」
シレークスは大忙しだ。ホーリーパニッシャーを鉄球が見えないほどの高速で振り回している。
「エクラ教修道女舐めんじゃねぇですよ!」
修道女というには野性的すぎる形相だ。
聖闘術『怒りの日』を付与している彼の一撃は、一瞬にしてダニを影も形も無くしてしまう。
彼女と同じく引き付け係となっているレイアもまた、存分に魔剣を振るいダニを潰していた。
「ええい、後から後から!」
上空にいるエーミは、作業の合間に地上を見下ろした。
彼女にはダニの動きがよく見える。
――ほとんどはソウルトーチに引き付けられているのだが、誘導されない何匹かがいる。
どうやら地上班はそのイレギュラーについて、よく把握出来ていないようだ。
地面の上に行かれると逃げられてしまう。それは困る。というわけで彼女は、上空からその旨を広報した。大きな手振りを交えて。
「皆ー、そっちの端の方、シートから出そうなのがいるわよー」
それを受けてソラスは、そちらへと赴いた。フォースリングを利用したマジックアローで、一気に5体片付ける。
その横を一条の光線が走った。シレークスの青竜翔咬波が炸裂したのである。
「害虫はとっとと消えやがるがいいのですよ!」
●
アキノのファイアースローワーが打ち止めになった。
その時点でもぐやんの尻付近についていたダニは、全て落とされていた。あらわになったお尻表面は乾燥のあまり細かにひび割れている。
あちちち。お尻がすっかりカサカサになってしまったべえ。
「君も腐っても精霊なんだからちょっとやそっとの痛みぐらい我慢しなよ」
ぼやくもぐやんにそう返した彼女は、機動砲、並びにデルタレイへと攻撃方法を切り替える。
ダニが特に群がっている手足の付け根付近に向け発動。
光の三角形から放たれた3つの光が、もぐやんの皮膚に潜り込むダニの頭部を破壊する。
あっちっち
とは言っているもののもぐやんは大きな損傷を受けた様子はない。巨体がものを言っているようだ。
エーミはマジックフライトをかけた傘に腰掛け(その方が持っているより楽なことに気づいたのだ)リトルファイアを発動させた――エクステンドレンジをかけて。
虫に対する忌避感は低いのだが、あまりにも密集している部分については、やはりこう、あまり近寄りたくなくて。
「今から本物の火を出すから、気を付けて」
ほいよう。
火の玉に焼かれたダニが顎を外す。
舞がその落下に合わせ紅蓮斬をお見舞いしていく。
熱と振動が伝わるのか、他の場所に食いついているダニたちも落ちつかなげにもぞつき出している。
腹を踏まれた1匹が、彼女の足を噛んだ。
「いっ!」
焼けるような一撃に思わず顔をしかめる舞。返す刃でそのダニを駆逐する。
一方ルベーノは、引き続き地道な剥ぎとりと粉砕を繰り返していた。
エーミと舞の繰り出す熱に負け自ら落ちて行こうとする分のダニに関しては、直に部位狙いをかけていく。
「やれやれ、だいぶ減ったな」
と息をついたところで、どすんと振動。
古代銃にかけられていたマジックフライトが切れ、もぐやんが地上に落ちたのである。
おとと。みんな、だいじょうぶだべかー。
という声にシレークスは、元気よく答えた。
「大丈夫ですよお、もぐやんさまー!」
白かった彼女のホーリーパニッシャーは、潰したダニの体液によって黒くなっていた。レイアの剣も同様である。
皆の奮闘のかいあって、もぐやんの体についていたダニは激減していた。尻の部分と顔の部分はすっかりとれている。残っているのは体の脇とか背中とか、もぐやんが自分でも取りにくそうな所だけ。
なので大型精霊がどんな姿をしているいかが、はっきり分かるようになる。
いったん地上に降りた舞は改めてもぐやんを眺め、感じ入った。
「妹に聞いた事はあったけど本当に大きい土竜だねぇ」
新たにダニ1匹が落ちてきたので、すかさず斬り伏せておく。
●
ダニ駆除が終わった。
シレークスは顔を上げもぐやんを見上げる。
「よくもまぁ、アレだけ集られて……」
ルベーノは背中に上りチャクラヒールをかけた。親愛の情をこめ、元通りになった体表を軽くポンポンと撫でる。
「畑の不作が回避できたのはありがたいが、あまり無茶をしないでくれよ? 知り合いになった精霊が傷つくのは悲しいからな」
めんぼくねえ。あんがとさんだべ。
もぐやんの尻付近ではアキノが、ヒールをかけている。
「悪いけどあたしにはこういう荒療治しか思いつかなくてねぇ。精霊を病院に担ぎ込むわけにもいかないだろう?」
舞はもぐやんの体をつついた。
「ねえ、そこに立ってみてくれない?」
いいべよ。
気さくに応じてくれた安定感のある太鼓腹に、ぴょーんと飛びつく。
「これがト〇ロに飛びつく〇イの気分か!」
童心に返りはしゃぐ。
そこへソラスが、真顔の質問をした。
「ト〇ロとは何です?」
舞は少し赤くなった。コホンと咳払いしながら場を離れる。ちょっと子供っぽかったかなと自分でも思いつつ。
ヒールを終えたアキノはシートにクギで固定されている資料ダニの頭に、ドライバーを突き刺す。鼻歌交じりにぐりぐり抉る。
「こいつの構造をよくよく調べてみないとね」
レイアは彼女に聞いた。
「穴を掘ってダニを追うことは出来ないのか?」
「うーん、難しいね。どうもこの機械、このもぐやん同様土に同化して潜んだり移動したりしてるみたいだし。だとすると、穴は残らないはずだ」
「そうなのか……では黒幕は分からずじまいだな」
「今のところは。だけどそれはそれで謎解きの醍醐味が増えて面白いじゃないか。あたしに目を付けられた以上、その命をあたしの研究のために捧げる覚悟はきっとあるんだろうしね……フフフフ……」
アキノの含み笑いはとても楽しげであった。
エーミはもぐやんの体を撫で、話しかける。
「どこか他にかゆい所あるー?」
もうないべ。皆には大変世話になったべえ。お礼をせねばならんべえ。
と言ってもぐやんは体に力を入れた。頭にポコポコ花が咲く。彼はそれを摘み、8つの小さな束にしてハンターたちに渡した。
どんぞ。
マルカが間を置いて一人ごちる。
「……これ、ニンニクの花ですね」
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【相談卓】精霊の緊急手術 龍宮 アキノ(ka6831) 人間(リアルブルー)|26才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/04/30 18:48:38 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/29 16:44:21 |