ゲスト
(ka0000)
【初心】壁も突けば倒れるかもしれない
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- LV1~LV20
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/04/27 22:00
- 完成日
- 2018/05/03 20:39
このシナリオは3日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●足を踏み外した
ラカ・ベルフは龍園のとあるところを歩いていた。雑魔が出るという噂があったため調査に来たのだった。情報確認であり、実際調査するのは駆け出しのハンターということになっている。
歩いていると、目の前を白いイタチが通り過ぎた。
「……フェレット! フェレットですか!」
ラカは走り寄った。先日色々あってフェレットへの思いが募っていた。
道の幅を考えていなかった。そのため、ラカは滑落した。
「……うっ、ううう」
幸いけがはない。落ちたところは谷になっている。岩の影に白いイタチが震えている。
「怖くないのですわ、怖くないのですわ」
おいでおいでとする。
イタチはやってきた。飼われていた可能性があるとラカは考えた。一応、フェレットの生態については調べたのだ。
「オコジョでもイタチでもないです。なんでこんなところに推定フェレットがいるのでしょうか?」
転移してきた可能性もゼロではないし、ペットが逃げ出してここにいたのかもしれない。
「帰りましょう!」
ラカは上を見た。
「登れるでしょうか? いえ、頑張れば登れますわ……それより、私、依頼の監督を頼まれていたのですが……」
ぶわっと冷や汗が出た。約束をたがえる方が問題だ。
「青龍さま」
祈った。たぶん、祈られても青龍も困ると思うけれど、祈った。
●オフィス
職員は依頼を眺め、ハンターを眺め、ため息を漏らした。
「たぶん大丈夫。危なくなったら戻ってくるんです」
今回の依頼はベテランのラカを伴っていく、もしも何かあれば助けてもらえるかもしれないけれど自分たちで頑張らなければハンターとして成長できないという内容の依頼。
結局は自分たちでするのだけれど、保険があるのは心強い、はずだった。ラカがこの場にいない。まさか滑落しているなど誰も知らない。
「敵の状況を確認してきてください」
丘に上がる道に壁ができることがあるというのだ。幸いにして、まだ大きな被害は出ていないがこのまま放置はできない。
十中八九雑魔の類。
「形状は壁です」
職員ははっきり言う。大きなタンスのようなサイズを示す。
「これが出現すると、道が通れません。通れなくても困りませんが、通行の邪魔です」
それは困っているという。
「とりあえず、頑丈そうですね」
現状がわからないために調査に行くため、そのあたりは「壁」というイメージからの連想に過ぎない。
「ラカさん見つけたらとりあえず、怒って良いです。頼まれた仕事をきちんとできない人にはなってはいけませんよ!」
職員は力強く言った。
「今回調査と言っていますが、討伐できるならば討伐してくださいね。もしも、危険ならば退くことを考えるのも重要です」
職員は念を押す。
「ラカさんがいれば、皆さんを立っている状態にはしてくれるんですけれどね」
それは生命力尽きない限り無理でも戦えというおそろしい話だ。つまり、ラカがいない方が選択肢は増えるのではないかと鋭いハンターは思ったかもしれない。そういう話でもないため、ラカがいないことは困ったことであるのだ。
「無茶をしろとは言いませんから、安心してくださいね」
職員、いい笑顔で内容を再提示した。すでに矛盾に満ちた職員の言動。本人は意図して言っているのだろうけれども、妙なプレッシャーを一同に与えた。
ラカ・ベルフは龍園のとあるところを歩いていた。雑魔が出るという噂があったため調査に来たのだった。情報確認であり、実際調査するのは駆け出しのハンターということになっている。
歩いていると、目の前を白いイタチが通り過ぎた。
「……フェレット! フェレットですか!」
ラカは走り寄った。先日色々あってフェレットへの思いが募っていた。
道の幅を考えていなかった。そのため、ラカは滑落した。
「……うっ、ううう」
幸いけがはない。落ちたところは谷になっている。岩の影に白いイタチが震えている。
「怖くないのですわ、怖くないのですわ」
おいでおいでとする。
イタチはやってきた。飼われていた可能性があるとラカは考えた。一応、フェレットの生態については調べたのだ。
「オコジョでもイタチでもないです。なんでこんなところに推定フェレットがいるのでしょうか?」
転移してきた可能性もゼロではないし、ペットが逃げ出してここにいたのかもしれない。
「帰りましょう!」
ラカは上を見た。
「登れるでしょうか? いえ、頑張れば登れますわ……それより、私、依頼の監督を頼まれていたのですが……」
ぶわっと冷や汗が出た。約束をたがえる方が問題だ。
「青龍さま」
祈った。たぶん、祈られても青龍も困ると思うけれど、祈った。
●オフィス
職員は依頼を眺め、ハンターを眺め、ため息を漏らした。
「たぶん大丈夫。危なくなったら戻ってくるんです」
今回の依頼はベテランのラカを伴っていく、もしも何かあれば助けてもらえるかもしれないけれど自分たちで頑張らなければハンターとして成長できないという内容の依頼。
結局は自分たちでするのだけれど、保険があるのは心強い、はずだった。ラカがこの場にいない。まさか滑落しているなど誰も知らない。
「敵の状況を確認してきてください」
丘に上がる道に壁ができることがあるというのだ。幸いにして、まだ大きな被害は出ていないがこのまま放置はできない。
十中八九雑魔の類。
「形状は壁です」
職員ははっきり言う。大きなタンスのようなサイズを示す。
「これが出現すると、道が通れません。通れなくても困りませんが、通行の邪魔です」
それは困っているという。
「とりあえず、頑丈そうですね」
現状がわからないために調査に行くため、そのあたりは「壁」というイメージからの連想に過ぎない。
「ラカさん見つけたらとりあえず、怒って良いです。頼まれた仕事をきちんとできない人にはなってはいけませんよ!」
職員は力強く言った。
「今回調査と言っていますが、討伐できるならば討伐してくださいね。もしも、危険ならば退くことを考えるのも重要です」
職員は念を押す。
「ラカさんがいれば、皆さんを立っている状態にはしてくれるんですけれどね」
それは生命力尽きない限り無理でも戦えというおそろしい話だ。つまり、ラカがいない方が選択肢は増えるのではないかと鋭いハンターは思ったかもしれない。そういう話でもないため、ラカがいないことは困ったことであるのだ。
「無茶をしろとは言いませんから、安心してくださいね」
職員、いい笑顔で内容を再提示した。すでに矛盾に満ちた職員の言動。本人は意図して言っているのだろうけれども、妙なプレッシャーを一同に与えた。
リプレイ本文
●まず出発だ!
パール(ka2461)は出発準備として木靴に紐を巻き付けていた。
「出発の時間に集合場所に来ないなんて、困った先導者です。ラカさんはそんな人だったのでしょうか?」
困惑気味につぶやく。
霧島 百舌鳥(ka6287)は楽しそうにケラケラ笑う。
「消えたベテランハンター。主題としては面白いけれど、こうも状況がそろっているならば推理と呼べるものにはならないねぇ」
探偵は告げる、彼女の性質と現場の地形を。
ミク・ノイズ(ka6671)はため息とともに魔導ワイヤーを確認する。武器にも機導の道具にもなる。
「先が思いやられる」
「まあ、そういうことだろうね」
ミクの道具を見て百舌鳥が肩をすくめる。
「どういうことです?」
パールが二人を見比べる。
「……知人から聞いた話だと、ラカ嬢は典型的な猪突猛進、考えるより先に体が動くタイプ。だが約束を反故にするタイプではない」
「そう、さぼりの線はないと思う。仮にも青龍の神官が、相手に非がないのに約束をたがえてはご主人様に顔向けができないってものさ」
ミクの説明と百舌鳥の推理にパールは「なるほど」とうなずいた。
「この話を聞いた後、何かの理由で行って雑魔と接触中もしくは滑落するなどして帰還できない……と推測されるから早急に行こう」
ミクの出発合図にパールも了解を示す。
「現場の状況から滑落は十分にありうるね」
百舌鳥も推理の上告げる。
「……ロープ、皆さんも靴につけておけば、滑り止めになりますし、もしもの時使えますよ」
「……短いがな」
「……ですよね……」
パールはミクの指摘を素直に受け入れた。
一行は用心しつつ急行したのだった。敵が倒せるか否かは後回し、見てみないと始まらないから。
●滑落者発見
「うっ……ううう」
ラカ・ベルフ(kz0240)はのり面をよじ登る。焦るとずり落ちる。片手に握るフェレットは何か訴える。怪我はしていないため、具合が悪いのか腹が減っているのか喉が渇いているのかだろうとラカは考える。
「頑張りますわ……」
ラカは何度かずり落ちたおかげでどのルートがいいかは分かってきたのだった。
なお、フェレットは手から逃れる為、必死にラカの手をかんだり、後ろ足でひっかいているのだ。意思疎通ができていない。
駆け出しハンター三人は雑魔討伐はちょっと心もとないと思ったりしつつ、途中にラカが落ちているといいなと願いながら坂道を登っていく。
「確かに、しっかりと崖になっていますね」
パールは眉をしかめた。
「雑魔より滑落か」
「そりゃ、そうでしょう?」
百舌鳥はケラケラ笑う。パールとミクが溜息を洩らした。
ズリズリ。
歩くでもなく、動物が通ったでもない音がする。
「これは雪山、氷の山。春が近づき緩んで落ちた、というのもあるねぇ」
「別のこともありうるんですよね?」
パールは百舌鳥の言い方に引っかかりを覚えていた。
「それはあるだろうねぇ」
「ラカ嬢の状況も気になるが、依頼の完遂も重要だ」
百舌鳥をぴしゃりとミクが抑える。しかし、奇妙な音は気になるところだ。
「念のため確認していきませんか? ラカさんとは別に遭難者がいて、無視したとなると後味が悪いです」
パールが慎重に進むことを提案した。依頼にないからといってありえないとは言い切れない。
「確かに、ラカ嬢のことも心配だが、彼女か否かは別として、確認しておいて損はない」
「では、このモフロウを放ち……【ファミリアズアイ】」
意見が一致したところで百舌鳥がスキルを使う。
モフロウは見た、谷底にいる青い物体を。
百舌鳥は認識した、雑魔や魔法生物ではないと。その上、手に何か小動物を持った人間だなと見た。
「ああ、たぶん、あれがラカ君だねぇ。先に助けるかい?」
モフロウを戻して百舌鳥が告げる。
パールとミクが崖を覗くとそこに、金髪の青い動くものがいた。手にはびちびち動く白い生き物を持っているようだ。
「職員さんが見せてくれた絵と同じですね」
「そうだな……聞いた姿と一致する……ような」
「ラカさんですかー」
ミクの言葉で確信を持ちつつ、パールは声をかけた。
壁に張り付いていた人物は顔をあげると、ずりーと滑り落ちていった。
「そうですわ……えっと……」
「今回、ご一緒するはずでしたハンターです」
パールの答えに、ラカが遠い目をした。
「やぁ、ラカ君……いや、敬意をこめてラカ先輩と?」
百舌鳥の言葉にラカが、ヒクッと顔を引きらせた。頭の中、青龍さまのことが一杯という噂のラカが言葉の裏にあるニュアンスに気づけたらしい。
「ジェットブーツなんぞつんできていないからな……こいつに捕まれ、こっちで引き上げる」
ミクが魔導ワイヤーを使う。機導のため武器としても使い勝手がいいということで持ってきたわけであるが、大いに役に立つ。
ラカが手に持っているモフモフを頭に載せた。が、慣れていないものは落ちる。
「モフモフ? それは服の胸にでも入れていろ」
ミクがきっぱり言う。モフモフは白いフェレットに見える。
ラカはコートのポケットの中に隙間を作り、フェレットを突っ込んだ。
「……白フェレットくん、強く生きてください。それと、ラカさーん、断崖絶壁ではないので落ち着いて登ってくださいね」
パールはフェレットへの扱いの雑さに少し危険を感じつつも、ラカが登ってきてしまえばすべて解決すると思えた。
両手を使って、ワイヤーを使えば、ラカもすんなり登れた。
「面目ないですわ」
「で、なんで落ちたかと伺っても?」
百舌鳥が楽しい答えだといいなという視線を向ける。
「この子がいて、このようなところにいる生き物ではないので捕まえようとしたら、落ちました」
ラカの頬が真っ赤だ。
「ロープを靴に巻くと滑りにくくなりますよ? 今からでもしませんか?」
パールが勧める。
「無事でよかった。それより、依頼を進めないとならない。反省会は後だ」
ミクがきっぱりと言う。
「そうそう、事情はともかく、職員さんは怒っていいといっていましたよー?」
パールはにこりとした。
「それは、終わってからがいいだろうねぇ。このまま説教していたら、暗くなってしまって雑魔どころでなくなってしまうよ?」
百舌鳥が恐ろしいことを言った。
「うぅうう。それより、ポスターを貼らないと」
「いや、それも後だ……そもそも、どこに貼るんだ」
ミクは「ここ」と首をかしげて答えたラカにめまいを覚えた。
●敵を倒せるか否か
一行は現場に到着した。雑魔たちは地面から湧き上がるわけではなく、のり面に張り付いていたらしくそのまま道をふさぐように出てきた。
「これは懐かしい。東方にこんな感じの壁の妖怪の話があったねぇ!」
百舌鳥が目を細める。妖怪は東方での憤怒の歪虚の呼び名であり、リアルブルーの伝承にある妖怪に似ているモノも多い。
「さて、頑張ってください」
ラカはモーニングスターを持ちつつ、後方で声をかける。
「え」
三人は振り返る。
「人数的に最低限だと聞きました。根本解決できないかもしれませんとあきらめもありましたが、ラカさんがいれば倒せます」
パールが記録用にパルムのキノコに情報をしっかり記録するようにと告げつつ、ラカに訴える。
「そうだ、人手が足りないから働いてもらうぞ」
「現実逃避で拾った生き物の確認を始めたねぇ」
百舌鳥が笑う中、ラカはミクの声を聞かなかったふりをしている。
「せめて、応援とかしてください」
パールが告げる。
「そのあたりは任せてください。回復魔法はありますから」
ミクはラカの言葉に遠い目をした。どう考えても敵は固そうだ。「皆さんを立っている状態にはしてくれる」と職員が冗談ぽく言っていたことが現実になりそうだった。
「やってみるのが先だねぇ」
百舌鳥は戦槍を構えた。
「【プロテクション】かけますね」
「助かるねぇ。キミも行くぞ」
パールと百舌鳥が戦闘準備をするにあたり、ミクは心を固める。
「分かった。百舌鳥、できるだけ相手を押さえて。魔法で攻撃していく」
「倒せれば一番いいんだよね」
ミクの言葉に百舌鳥が敵の頭上を見る。形状として、壁の形であり、後方に倒れる可能性が見える。うまくいくことを願った。
まず、乱戦状態になっていないうちにミクが【ファイアスローワー】を放つ。敵が身じろぎはしているが、回避行動はなかった。
「……これは暑がっているというものだろうか?」
動きからそう判断できる。それにしても、壁を焼くが手ごたえは感じない。かすかに動いているから、効いているのだろうと感じられるが。
百舌鳥が【ノックバック】を試みる。一体を後方に移動させることはできた。
「これは下手に懐に入ると危険だねぇ」
なんとなく、壁の形状から押し戻される、踏みつぶされるということが想像できる。一体ずつ交互に攻撃していくことになりそうだ。
「弓で攻撃をしておきますね」
少しでも壁を削るためにパールが矢を放った。ぷすりとちょっと刺さった。
ここで思ったことは「時間、かかりそうだな」ということ。
敵は動きが鈍いのか、ひとまず、じっとしていた。
用心をしつつ、ハンターは同じ攻撃をしていく。攻撃は当たるが、手ごたえを感じない。
再び……と何度か攻撃をした後、突然それは動いた。
異様に素早く動き、ミクの前に一体が立ち、のり面に平行するように一体が立った瞬間、崖から突き落とそうとしてきた。
「あっ」
ミクは斜め後方に飛んだのは良かったが、ずり落ちた。
「あーーーーーーーーーーーー」
魔導ワイヤーが役に立った。壁の足元にある隙間に巻き付け、落下はまぬかれた。
「ミクさんー!」
「なるほど……一見行動しないように見えるのはタイミングを計っているというわけだねぇ」
「私は自力で登る。敵をどうにかしてくれ」
パールと百舌鳥に声をかけた。
ラカが覗き込んで怪我していないことを確認していた。
「頑張ってください」
「確かに……」
「そのワイヤーがあれば行けますわ」
ラカがグッとこぶしを握り締め見せた。本当に手助け不要ならしないようだ。
ミクは頑張って登ることにした。壁が変な動きをしない限り、登るのはできそうだ。
ミクが戦線離脱中、百舌鳥が攻撃を引き受け、パールは【プロテクション】を掛け直したりする。
「スキル切れたねぇ」
百舌鳥が少し困った声を出した。
「地道にたたくしかないですね」
パールの声にうなずくしかなかった。
ミクもちょっとすれば登ってきたので、攻撃に加わる。
「たたいて行けばいずれはどうにかなる……というか、薄くなっているか」
ミクが登る最中に見えていた壁の厚さは、正面から見たときより、薄くなっているようであった。
「まだ、私の魔法は残っているから」
「それは効きやすいのか、複数行けますので効率はいいですね」
パールがうなずいた。
ハンターたちはせっせと力の限り戦った。敵の動きがわかれば、どう逃げるかも検討が付く。
長い間戦い、スキルも全部切れるのではないかと思ったころ、壁は砕けて消えた。
●何とかなった
討伐完了となり、三人は肩で息をしていたが大きく息を吐いて呼吸を整え始めた。
ラカが「お疲れ様でしたわ」と声をかける。ポケットから顔を出す、白い毛並みのフェレットが落ちないように片手はそこに添えられている。
「ところで、敵に有効そうな攻撃は考えてこなかったんですの?」
ラカが首をかしげて問う。
「一応、倒れたら攻撃しやすいとは考えたんだよ?」
百舌鳥は意外とどっしりしていた敵に当ては外れた。【ノックバック】は弾き飛ばす技なため、倒すのは難しかったかもしれない。
「機導術も効率は良いけれど、こう、手ごたえを感じなかった……効果はあったみたいだけれど」
ミクはうーんとうなる。
「ひょっとして、ボクは攻撃できる魔法を持ってきた方が良かったですかねぇ?」
パールの弓矢は刺さってはいた。刺さっていたが、深くは刺さっていない。
「地道な作業でしたが倒せたのは事実です。見た目が地味ですわね……ひょっとしたら楽に倒せる方法があったかもしれません。ほら、城壁壊す時は槌みたいなの使いますわよね?」
ラカは愛用のモーニングスターをしまう。壁をたたくにはよさそうな物体にも見えなくはない。
「……あー」
三人は何とも言えない声が出る。滑落した人間の方が気になっていたのは事実。
城壁壊すのにはもっと大きな兵器がいるとか思っても疲れた三人はツッコミを入れない。
「さて、ケガはありませんか? それを治すのが私の仕事ですわ」
微笑むラカと彼女のポケットから愛嬌を振りまくフェレットに、三人は大きな息を吐いた。冗談とか説教とかより、ベッドに潜り込みたいほど疲弊していた。
パール(ka2461)は出発準備として木靴に紐を巻き付けていた。
「出発の時間に集合場所に来ないなんて、困った先導者です。ラカさんはそんな人だったのでしょうか?」
困惑気味につぶやく。
霧島 百舌鳥(ka6287)は楽しそうにケラケラ笑う。
「消えたベテランハンター。主題としては面白いけれど、こうも状況がそろっているならば推理と呼べるものにはならないねぇ」
探偵は告げる、彼女の性質と現場の地形を。
ミク・ノイズ(ka6671)はため息とともに魔導ワイヤーを確認する。武器にも機導の道具にもなる。
「先が思いやられる」
「まあ、そういうことだろうね」
ミクの道具を見て百舌鳥が肩をすくめる。
「どういうことです?」
パールが二人を見比べる。
「……知人から聞いた話だと、ラカ嬢は典型的な猪突猛進、考えるより先に体が動くタイプ。だが約束を反故にするタイプではない」
「そう、さぼりの線はないと思う。仮にも青龍の神官が、相手に非がないのに約束をたがえてはご主人様に顔向けができないってものさ」
ミクの説明と百舌鳥の推理にパールは「なるほど」とうなずいた。
「この話を聞いた後、何かの理由で行って雑魔と接触中もしくは滑落するなどして帰還できない……と推測されるから早急に行こう」
ミクの出発合図にパールも了解を示す。
「現場の状況から滑落は十分にありうるね」
百舌鳥も推理の上告げる。
「……ロープ、皆さんも靴につけておけば、滑り止めになりますし、もしもの時使えますよ」
「……短いがな」
「……ですよね……」
パールはミクの指摘を素直に受け入れた。
一行は用心しつつ急行したのだった。敵が倒せるか否かは後回し、見てみないと始まらないから。
●滑落者発見
「うっ……ううう」
ラカ・ベルフ(kz0240)はのり面をよじ登る。焦るとずり落ちる。片手に握るフェレットは何か訴える。怪我はしていないため、具合が悪いのか腹が減っているのか喉が渇いているのかだろうとラカは考える。
「頑張りますわ……」
ラカは何度かずり落ちたおかげでどのルートがいいかは分かってきたのだった。
なお、フェレットは手から逃れる為、必死にラカの手をかんだり、後ろ足でひっかいているのだ。意思疎通ができていない。
駆け出しハンター三人は雑魔討伐はちょっと心もとないと思ったりしつつ、途中にラカが落ちているといいなと願いながら坂道を登っていく。
「確かに、しっかりと崖になっていますね」
パールは眉をしかめた。
「雑魔より滑落か」
「そりゃ、そうでしょう?」
百舌鳥はケラケラ笑う。パールとミクが溜息を洩らした。
ズリズリ。
歩くでもなく、動物が通ったでもない音がする。
「これは雪山、氷の山。春が近づき緩んで落ちた、というのもあるねぇ」
「別のこともありうるんですよね?」
パールは百舌鳥の言い方に引っかかりを覚えていた。
「それはあるだろうねぇ」
「ラカ嬢の状況も気になるが、依頼の完遂も重要だ」
百舌鳥をぴしゃりとミクが抑える。しかし、奇妙な音は気になるところだ。
「念のため確認していきませんか? ラカさんとは別に遭難者がいて、無視したとなると後味が悪いです」
パールが慎重に進むことを提案した。依頼にないからといってありえないとは言い切れない。
「確かに、ラカ嬢のことも心配だが、彼女か否かは別として、確認しておいて損はない」
「では、このモフロウを放ち……【ファミリアズアイ】」
意見が一致したところで百舌鳥がスキルを使う。
モフロウは見た、谷底にいる青い物体を。
百舌鳥は認識した、雑魔や魔法生物ではないと。その上、手に何か小動物を持った人間だなと見た。
「ああ、たぶん、あれがラカ君だねぇ。先に助けるかい?」
モフロウを戻して百舌鳥が告げる。
パールとミクが崖を覗くとそこに、金髪の青い動くものがいた。手にはびちびち動く白い生き物を持っているようだ。
「職員さんが見せてくれた絵と同じですね」
「そうだな……聞いた姿と一致する……ような」
「ラカさんですかー」
ミクの言葉で確信を持ちつつ、パールは声をかけた。
壁に張り付いていた人物は顔をあげると、ずりーと滑り落ちていった。
「そうですわ……えっと……」
「今回、ご一緒するはずでしたハンターです」
パールの答えに、ラカが遠い目をした。
「やぁ、ラカ君……いや、敬意をこめてラカ先輩と?」
百舌鳥の言葉にラカが、ヒクッと顔を引きらせた。頭の中、青龍さまのことが一杯という噂のラカが言葉の裏にあるニュアンスに気づけたらしい。
「ジェットブーツなんぞつんできていないからな……こいつに捕まれ、こっちで引き上げる」
ミクが魔導ワイヤーを使う。機導のため武器としても使い勝手がいいということで持ってきたわけであるが、大いに役に立つ。
ラカが手に持っているモフモフを頭に載せた。が、慣れていないものは落ちる。
「モフモフ? それは服の胸にでも入れていろ」
ミクがきっぱり言う。モフモフは白いフェレットに見える。
ラカはコートのポケットの中に隙間を作り、フェレットを突っ込んだ。
「……白フェレットくん、強く生きてください。それと、ラカさーん、断崖絶壁ではないので落ち着いて登ってくださいね」
パールはフェレットへの扱いの雑さに少し危険を感じつつも、ラカが登ってきてしまえばすべて解決すると思えた。
両手を使って、ワイヤーを使えば、ラカもすんなり登れた。
「面目ないですわ」
「で、なんで落ちたかと伺っても?」
百舌鳥が楽しい答えだといいなという視線を向ける。
「この子がいて、このようなところにいる生き物ではないので捕まえようとしたら、落ちました」
ラカの頬が真っ赤だ。
「ロープを靴に巻くと滑りにくくなりますよ? 今からでもしませんか?」
パールが勧める。
「無事でよかった。それより、依頼を進めないとならない。反省会は後だ」
ミクがきっぱりと言う。
「そうそう、事情はともかく、職員さんは怒っていいといっていましたよー?」
パールはにこりとした。
「それは、終わってからがいいだろうねぇ。このまま説教していたら、暗くなってしまって雑魔どころでなくなってしまうよ?」
百舌鳥が恐ろしいことを言った。
「うぅうう。それより、ポスターを貼らないと」
「いや、それも後だ……そもそも、どこに貼るんだ」
ミクは「ここ」と首をかしげて答えたラカにめまいを覚えた。
●敵を倒せるか否か
一行は現場に到着した。雑魔たちは地面から湧き上がるわけではなく、のり面に張り付いていたらしくそのまま道をふさぐように出てきた。
「これは懐かしい。東方にこんな感じの壁の妖怪の話があったねぇ!」
百舌鳥が目を細める。妖怪は東方での憤怒の歪虚の呼び名であり、リアルブルーの伝承にある妖怪に似ているモノも多い。
「さて、頑張ってください」
ラカはモーニングスターを持ちつつ、後方で声をかける。
「え」
三人は振り返る。
「人数的に最低限だと聞きました。根本解決できないかもしれませんとあきらめもありましたが、ラカさんがいれば倒せます」
パールが記録用にパルムのキノコに情報をしっかり記録するようにと告げつつ、ラカに訴える。
「そうだ、人手が足りないから働いてもらうぞ」
「現実逃避で拾った生き物の確認を始めたねぇ」
百舌鳥が笑う中、ラカはミクの声を聞かなかったふりをしている。
「せめて、応援とかしてください」
パールが告げる。
「そのあたりは任せてください。回復魔法はありますから」
ミクはラカの言葉に遠い目をした。どう考えても敵は固そうだ。「皆さんを立っている状態にはしてくれる」と職員が冗談ぽく言っていたことが現実になりそうだった。
「やってみるのが先だねぇ」
百舌鳥は戦槍を構えた。
「【プロテクション】かけますね」
「助かるねぇ。キミも行くぞ」
パールと百舌鳥が戦闘準備をするにあたり、ミクは心を固める。
「分かった。百舌鳥、できるだけ相手を押さえて。魔法で攻撃していく」
「倒せれば一番いいんだよね」
ミクの言葉に百舌鳥が敵の頭上を見る。形状として、壁の形であり、後方に倒れる可能性が見える。うまくいくことを願った。
まず、乱戦状態になっていないうちにミクが【ファイアスローワー】を放つ。敵が身じろぎはしているが、回避行動はなかった。
「……これは暑がっているというものだろうか?」
動きからそう判断できる。それにしても、壁を焼くが手ごたえは感じない。かすかに動いているから、効いているのだろうと感じられるが。
百舌鳥が【ノックバック】を試みる。一体を後方に移動させることはできた。
「これは下手に懐に入ると危険だねぇ」
なんとなく、壁の形状から押し戻される、踏みつぶされるということが想像できる。一体ずつ交互に攻撃していくことになりそうだ。
「弓で攻撃をしておきますね」
少しでも壁を削るためにパールが矢を放った。ぷすりとちょっと刺さった。
ここで思ったことは「時間、かかりそうだな」ということ。
敵は動きが鈍いのか、ひとまず、じっとしていた。
用心をしつつ、ハンターは同じ攻撃をしていく。攻撃は当たるが、手ごたえを感じない。
再び……と何度か攻撃をした後、突然それは動いた。
異様に素早く動き、ミクの前に一体が立ち、のり面に平行するように一体が立った瞬間、崖から突き落とそうとしてきた。
「あっ」
ミクは斜め後方に飛んだのは良かったが、ずり落ちた。
「あーーーーーーーーーーーー」
魔導ワイヤーが役に立った。壁の足元にある隙間に巻き付け、落下はまぬかれた。
「ミクさんー!」
「なるほど……一見行動しないように見えるのはタイミングを計っているというわけだねぇ」
「私は自力で登る。敵をどうにかしてくれ」
パールと百舌鳥に声をかけた。
ラカが覗き込んで怪我していないことを確認していた。
「頑張ってください」
「確かに……」
「そのワイヤーがあれば行けますわ」
ラカがグッとこぶしを握り締め見せた。本当に手助け不要ならしないようだ。
ミクは頑張って登ることにした。壁が変な動きをしない限り、登るのはできそうだ。
ミクが戦線離脱中、百舌鳥が攻撃を引き受け、パールは【プロテクション】を掛け直したりする。
「スキル切れたねぇ」
百舌鳥が少し困った声を出した。
「地道にたたくしかないですね」
パールの声にうなずくしかなかった。
ミクもちょっとすれば登ってきたので、攻撃に加わる。
「たたいて行けばいずれはどうにかなる……というか、薄くなっているか」
ミクが登る最中に見えていた壁の厚さは、正面から見たときより、薄くなっているようであった。
「まだ、私の魔法は残っているから」
「それは効きやすいのか、複数行けますので効率はいいですね」
パールがうなずいた。
ハンターたちはせっせと力の限り戦った。敵の動きがわかれば、どう逃げるかも検討が付く。
長い間戦い、スキルも全部切れるのではないかと思ったころ、壁は砕けて消えた。
●何とかなった
討伐完了となり、三人は肩で息をしていたが大きく息を吐いて呼吸を整え始めた。
ラカが「お疲れ様でしたわ」と声をかける。ポケットから顔を出す、白い毛並みのフェレットが落ちないように片手はそこに添えられている。
「ところで、敵に有効そうな攻撃は考えてこなかったんですの?」
ラカが首をかしげて問う。
「一応、倒れたら攻撃しやすいとは考えたんだよ?」
百舌鳥は意外とどっしりしていた敵に当ては外れた。【ノックバック】は弾き飛ばす技なため、倒すのは難しかったかもしれない。
「機導術も効率は良いけれど、こう、手ごたえを感じなかった……効果はあったみたいだけれど」
ミクはうーんとうなる。
「ひょっとして、ボクは攻撃できる魔法を持ってきた方が良かったですかねぇ?」
パールの弓矢は刺さってはいた。刺さっていたが、深くは刺さっていない。
「地道な作業でしたが倒せたのは事実です。見た目が地味ですわね……ひょっとしたら楽に倒せる方法があったかもしれません。ほら、城壁壊す時は槌みたいなの使いますわよね?」
ラカは愛用のモーニングスターをしまう。壁をたたくにはよさそうな物体にも見えなくはない。
「……あー」
三人は何とも言えない声が出る。滑落した人間の方が気になっていたのは事実。
城壁壊すのにはもっと大きな兵器がいるとか思っても疲れた三人はツッコミを入れない。
「さて、ケガはありませんか? それを治すのが私の仕事ですわ」
微笑むラカと彼女のポケットから愛嬌を振りまくフェレットに、三人は大きな息を吐いた。冗談とか説教とかより、ベッドに潜り込みたいほど疲弊していた。
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雑魔退治の話し合い+α ミク・ノイズ(ka6671) エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/04/26 15:23:37 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/26 01:59:32 |