ゲスト
(ka0000)
【陶曲】人魚の島、パラディンの来襲
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/07 09:00
- 完成日
- 2018/05/13 03:44
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
自由都市同盟、ヴァリオス近郊の海域。
人魚の長老クアルダが住む島があった。
同盟海軍の大型戦艦ルナルギャルド号は、同盟海域の監視を定期的に行っており、人魚の島に作られた海の拠点にも物資輸送をしていた。
人魚の島には、いくつかの天幕が点在していた。同盟海軍や魔術師協会広報室のキャンプ場である。
物資輸送の護衛として、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)、オートマトンの少年…ディエス(kz0248)は魔術師協会広報室に所属するハンターたちと同行していた。
ルナルギャルド号の副艦長ロジャー・ロルドは、海軍の兵士たちを連れて島に上陸すると、合流した魚人族の戦士たちと共に南の祭壇へと向かっていた。
コーラルという鉱石を祀る儀式が、人魚たちによって執り行われていた。
●
祭壇の上には、宝玉コーラル石が置かれ、人魚たちが様々な花を供えていた。
赤、白、青の花弁が、コーラル石を彩っていく。
魚人族の戦士たちは、社の周辺を廻りながら踊り、人魚たちが砂浜に横たわり、鈴を鳴らしていた。
鈴の音色に合わせて、魚人族の戦士たちが槍を片手に持ち、エイヤ、ホッサイと掛け声をあげながら、海の安全を願う踊りを繰り返していた。
人魚たちが唄う。
古来から語り継がれてきた歌を……。
ナールエリド、エルギッサ、トエラ。
ミールローラ、エルラット、マラサ。
やがて、輪唱となり、『歌』は天空へ飛翔して、大地へと浸透していく。
……ヒトの子らよ。
その声らしきものに呼応するかのように、コーラル石が輝きだした。
淡い輝きが、徐々に七色へと変化していく。
人魚たちにとっても、初めての出来事であった。
儀式に参列していたハンターたちは、互いに顔を見合わせていたが、事の成り行きを見守っていた。
突然のことで、皆がコーラル石に見入っていた。
宝玉コーラル石を媒体として、結晶の下半身に人型の上半身を持つ小さな少女のような姿をした精霊が現れた。
『皆の祈りが、この場へと導いてくれました。私は、アメンスィ……ヒトの子らに伝えておきたいことがあります』
知恵の精霊アメンスィが、静かに話し始めた。
『この大地を滅ぼそうとしている者がいます。その名は、嫉妬王ラルヴァ……私は、大地を守りたいがため、嫉妬王と契約を結びました。……私が嫉妬王との契約を守ることで、大地が傷つくことはないと信じていました』
目を伏せるアメンスィ。
『確かに、今でも嫉妬王との契約は続いています。ですが、ラルヴァの配下であるカッツォ・ヴォイは、契約を都合の良いように解釈して、地の精霊たちを闇に落し、この大地を滅ぼそうとしています』
アメンスィが瞳を凝らすと、宝玉コーラル石が脈打つように輝いていた。
次第に……光が消えていく。
そこには、知恵の精霊アメンスィの姿はなかった。
●
翌日。
海涙石を保管している倉庫を狙い、オート・パラディンが人魚の島に出現した。
同盟の海軍は、直ちに防衛線を展開して、立ち並ぶ倉庫群を死守していた。
「パラディンが、カッツォの手下なら、海涙石とコーラル石を奪う可能性が高い。敵の動向に注意しろ」
副艦長ロジャー・ロルドの指揮で、海軍は盾を構えて、敵の攻撃に備えていた。
「やれやれ、手薄の場所を狙うとは、カッツォの手先にしては考えたな」
マクシミリアンが、武器を構えて、攻撃態勢に入った。
後衛にいたディエスは、仲間たちを援護するため、回復支援をするつもりでいた。
「ボクにだって、できることはあるんだ」
少しずつではあるが、ディエスは戦いにも慣れ始めてきた。
こういう時こそ、油断は禁物だ。
魚人族の戦士たちが、コーラル石を祭壇から運び出し、海中にいる人魚の長老クアルダと侍女たちに手渡す。
「コーラル様、お静かに」
クアルダたちは海中にある祠にコーラル石を安置すると、その場で待機することにした。
コーラルの精霊が眠っている間は、敵も気配には気付くことはないが、万が一に備えて、人魚たちは海中の祠周辺を警戒することにした。
コーラル石が奪われる可能性は低いが、島の本土に保管してある海涙石は、ハンターたちが海中や宇宙で活動する時に使用できる貴重な鉱石だ。
なんとしてでも、守らなければならない。
人魚たちにとっては、古来から大切してきた鉱石でもあるから。
オート・パラディンたちが、海涙石を保管している倉庫へと突撃していた。
立ちはだかるハンターたちに、次々と襲い掛かるパラディンたち。
「まずは海涙石を奪うつもりか?」
それだけではない。人魚の島には、コーラル石もあるのだ。
「これ以上、カッツォの思惑通りにはさせない!!」
ディエスが、叫んだ。
小さな闘志を秘めて。
人魚の長老クアルダが住む島があった。
同盟海軍の大型戦艦ルナルギャルド号は、同盟海域の監視を定期的に行っており、人魚の島に作られた海の拠点にも物資輸送をしていた。
人魚の島には、いくつかの天幕が点在していた。同盟海軍や魔術師協会広報室のキャンプ場である。
物資輸送の護衛として、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)、オートマトンの少年…ディエス(kz0248)は魔術師協会広報室に所属するハンターたちと同行していた。
ルナルギャルド号の副艦長ロジャー・ロルドは、海軍の兵士たちを連れて島に上陸すると、合流した魚人族の戦士たちと共に南の祭壇へと向かっていた。
コーラルという鉱石を祀る儀式が、人魚たちによって執り行われていた。
●
祭壇の上には、宝玉コーラル石が置かれ、人魚たちが様々な花を供えていた。
赤、白、青の花弁が、コーラル石を彩っていく。
魚人族の戦士たちは、社の周辺を廻りながら踊り、人魚たちが砂浜に横たわり、鈴を鳴らしていた。
鈴の音色に合わせて、魚人族の戦士たちが槍を片手に持ち、エイヤ、ホッサイと掛け声をあげながら、海の安全を願う踊りを繰り返していた。
人魚たちが唄う。
古来から語り継がれてきた歌を……。
ナールエリド、エルギッサ、トエラ。
ミールローラ、エルラット、マラサ。
やがて、輪唱となり、『歌』は天空へ飛翔して、大地へと浸透していく。
……ヒトの子らよ。
その声らしきものに呼応するかのように、コーラル石が輝きだした。
淡い輝きが、徐々に七色へと変化していく。
人魚たちにとっても、初めての出来事であった。
儀式に参列していたハンターたちは、互いに顔を見合わせていたが、事の成り行きを見守っていた。
突然のことで、皆がコーラル石に見入っていた。
宝玉コーラル石を媒体として、結晶の下半身に人型の上半身を持つ小さな少女のような姿をした精霊が現れた。
『皆の祈りが、この場へと導いてくれました。私は、アメンスィ……ヒトの子らに伝えておきたいことがあります』
知恵の精霊アメンスィが、静かに話し始めた。
『この大地を滅ぼそうとしている者がいます。その名は、嫉妬王ラルヴァ……私は、大地を守りたいがため、嫉妬王と契約を結びました。……私が嫉妬王との契約を守ることで、大地が傷つくことはないと信じていました』
目を伏せるアメンスィ。
『確かに、今でも嫉妬王との契約は続いています。ですが、ラルヴァの配下であるカッツォ・ヴォイは、契約を都合の良いように解釈して、地の精霊たちを闇に落し、この大地を滅ぼそうとしています』
アメンスィが瞳を凝らすと、宝玉コーラル石が脈打つように輝いていた。
次第に……光が消えていく。
そこには、知恵の精霊アメンスィの姿はなかった。
●
翌日。
海涙石を保管している倉庫を狙い、オート・パラディンが人魚の島に出現した。
同盟の海軍は、直ちに防衛線を展開して、立ち並ぶ倉庫群を死守していた。
「パラディンが、カッツォの手下なら、海涙石とコーラル石を奪う可能性が高い。敵の動向に注意しろ」
副艦長ロジャー・ロルドの指揮で、海軍は盾を構えて、敵の攻撃に備えていた。
「やれやれ、手薄の場所を狙うとは、カッツォの手先にしては考えたな」
マクシミリアンが、武器を構えて、攻撃態勢に入った。
後衛にいたディエスは、仲間たちを援護するため、回復支援をするつもりでいた。
「ボクにだって、できることはあるんだ」
少しずつではあるが、ディエスは戦いにも慣れ始めてきた。
こういう時こそ、油断は禁物だ。
魚人族の戦士たちが、コーラル石を祭壇から運び出し、海中にいる人魚の長老クアルダと侍女たちに手渡す。
「コーラル様、お静かに」
クアルダたちは海中にある祠にコーラル石を安置すると、その場で待機することにした。
コーラルの精霊が眠っている間は、敵も気配には気付くことはないが、万が一に備えて、人魚たちは海中の祠周辺を警戒することにした。
コーラル石が奪われる可能性は低いが、島の本土に保管してある海涙石は、ハンターたちが海中や宇宙で活動する時に使用できる貴重な鉱石だ。
なんとしてでも、守らなければならない。
人魚たちにとっては、古来から大切してきた鉱石でもあるから。
オート・パラディンたちが、海涙石を保管している倉庫へと突撃していた。
立ちはだかるハンターたちに、次々と襲い掛かるパラディンたち。
「まずは海涙石を奪うつもりか?」
それだけではない。人魚の島には、コーラル石もあるのだ。
「これ以上、カッツォの思惑通りにはさせない!!」
ディエスが、叫んだ。
小さな闘志を秘めて。
リプレイ本文
コーラルの儀式を見届けた翌日。
敵は、突然、現れた。
オート・パラディンS、6体が海涙石を奪うため、建ち並ぶ倉庫へと移動していた。
「オーパちゃんが先手にゃー。俺様ちゃんと遊んでくれジャン」
ガルガリンのガルちゃんに搭乗したゾファル・G・初火(ka4407)は、そう言いながらも敵に先手を取られて、少しイライラしていた。
「先手を取られても、できることをやりましょう」
イェジドのコーディに騎乗したアリア・セリウス(ka6424)が『氷輪詩』を詠唱して、パラディンたちのマテリアルを威圧していく。
「ようやくアメンスィが俺達のことを認識してくれたんだ。パラディンが倉庫へ辿り着く前に、返り討ちにしてやるぜ!」
ジャック・エルギン(ka1522)がアリアとタイミングを合わせて、バスタードソード「アニマ・リベラ」による『守りの構え』を取った。
イェジドのフォーコは、ジャックの隣に立ち、前方のパラディンを警戒していた。
魔導型デュミナスのインスレーター・SFに搭乗しているのは、キヅカ・リク(ka0038)だ。
「できるだけ、パラディンの数を減らすんだ」
アリアに隣接する位置に居るインスレーター・SFが、リクの発動する『無ノ領域・撃』によってオーラを纏い、機体と自身が一体化していく。
「まずは、ここで食い止めるじゃん」
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は[SA]機械斧「メクサラ」よる『守りの構え』を取り、パラディンの攻撃に備えていた。
「『カッツォの玩具』如きに負けるかよ!!」
コンフェッサーのGRAND SWORDが、南護 炎(ka6651)の発動する『人機一体』によってマテリアル調和の幻影に包まれていた。
斬艦刀「雲山」を構えたガルガリンの操縦席から、ゾファルはモニターに映るオート・パラディンを睨み据えた。
「喧嘩上等の俺様ちゃんが、受けからとはねー。受けるよ、受けるよ、死にたくねーぇしな」
パラディンのマテリアルブレードが振り下ろされたが、斬艦刀「雲山」で受け止めるガルガリン。
「フォーコ、抜かせるなよ!」
隙間を抜けようとするパラディンたちがいたが、ジャックがバスタードソード「アニマ・リベラ」で、パラディンのマテリアルブレードを受け払い、さらにフォーコが『ブロッキング』で妨害し、パラディン一体を移動不能にさせた。
「海涙石を奪おうとするなど、言語道断だ!」
炎の操縦するGRAND SWORDが、大壁盾「庇護者の光翼」を構え、パラディンが振るうマテリアルブレードを受け流した。
次の瞬間、パラディンのマテリアルレーザーが発射された。ターゲットは、後方の倉庫だ。
「そう簡単に、やらせないわよ」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は、敵の射撃を回避すると『タイム』を発動させ、後方に位置する倉庫を目掛けて移動していく。
倉庫前には、海軍の兵士たちが盾を構えて陣取り、マテリアルレーザーを受け流した。
「やったわ♪ 同盟の海軍も伊達じゃないわね」
カーミンが、兵士たちに呼びかけたこともあり、初手の射撃を食い止めることができた。
「さて、ゲー太、結界地雷、頼んだわよ」
刻令ゴーレム「Gnome」ゲー太が、カーミンの指示でCモード「bind」を作動させ、法術地雷を設置していく。
「反撃、開始だ!」
炎が搭乗するGRAND SWORDが、『マテリアルフィスト』のバリアで保護された斬機刀「轟劾」を構え、パラディンの胴部を斬り裂く。その威力は凄まじく、敵の防御力を貫通して衝撃が迸った。
パラディンは受け流すことができず、その胴部は斬機刀「轟劾」によって貫かれていた。
リクと連動したインスレーター・SFは『マルチロックオン』で二機のパラディンを捕え、斬艦刀「雲山」を振り降ろした。
「ここは、僕の距離だ…!」
その時、リクの脳裏に高瀬 未悠の言葉が浮かんだ。
(誰かが危なくなる前に決着をつけてきて……繋いだ想いを叶える為に、生きて叶える為に)
「必ず、僕は戻るから……生きて、戻るから」
斬艦刀が、リクの想いに応えるように、パラディン二体を斬りつけていき、そのうちの一体が、爆発して消滅していった。
通常では考えられない攻撃であった。それでも尚、消滅したパラディンから、宝石が零れ落ちていた。
だが、今は回収する余裕はない。
コーディに騎乗したアリアは『想思花・月魄』の二刀流で魔導剣「カオスウィース」と双龍剣「ナラク・アグニ」を繰り出し、パラディンの脚を狙い、攻撃が命中すると『想思花・祓月』の斬撃が放たれた。
三撃目の斬撃はオーラとなり、直線状にいた敵を貫き、多大なダメージを受けたパラディンは衝撃で弾け飛び、額の宝石も粉々に砕け散り、消滅していった。
アリアの攻撃は威力が有り過ぎたため、宝石も耐え切れなかったのだ。
「キヅカが倒したパラディンからは、エメラルドの宝石が残っているはず……まだ、望みはあるわ」
リクの機転で、砂浜に宝石が落ちていたが、やはり回収する余裕はなかった。
「アリアさん、リクさん、ボクが宝石を回収するから安心して」
ディエス(kz0248)はリクたちが宝石を助けようとしているのに気付き、自らの意思で砂浜に走り寄り、落ちていた宝石を拾い上げた。
すぐさま、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が剣を取り『守りの構え』で、ディエスのフォローに入っていた。
「俺は、ディエスの護衛に専念する」
「マクシミリアン、ディエスのことは任せたぜ。パラディンは、俺らが全て倒してやるからな」
ジャックは『刺突一閃』で踏み込み、バスタードソード「アニマ・リベラ」を突き出し、パラディンの左脚を貫いた。さらに『ケイオスチューン』を発動させ、守りの構えを維持する。
フォーコはジャックの指示で、パラディンの右脚を狙い『クラッシュバイト』で噛み砕く……連携攻撃により、パラディンの両脚は破壊され、バランスを崩した。
ゾファルの騎乗したガルガリンが『アサルトダイブ』で一気に突撃し、スキルリンカーLv20で活性化させた『一打撃砕「星砕き」』により斬艦刀「雲山」を掲げて、大きく振り下ろす。その一撃はパラディンの頭部から胴部を斬り裂き、その反動で衝撃が走ったかと思うと、敵は爆発して消滅していった。
「すっきりしたじゃーん。てめぇら死にたいらしいな。かかってきな、カマーン」
戦闘の熱気により、ゾファルの気分は高まっていた。
ヴォーイは『ファントムハンド』でパラディン一体を引き寄せ、機械斧「メクサラ」による『渾身撃』を叩き込み、敵に警戒を付与した。
「カヤ、なんとしてでも食い止めるんだ」
ユキウサギのカヤはヴォーイの隣まで移動した後、『紅水晶』の結界を発動させた。
パラディンとの戦闘が続く中、Cモード「bind」の結界で移動不能になっていた兵士がいた。
「海軍の制服を着てるけど、ゲー太のトラップに引っかかってるってことは、あんた、カッツォの手先ね!」
カーミンは洋弓「フォルティトゥード」を構え『ネモフィラ』を発動させ、龍矢「シ・ヴァユ」を番えると、移動不能になっている兵士に狙いを定めて矢を放った。命中して、兵士は攻撃を喰らい、粉々に砕け散り、消滅していった。どうやら手先はヴォイド化した自動人形だった。
「やはり、敵が紛れ込んでいたのね。やることが、セコイのよ」
呆れたように言うカーミン。
パラディンの動向にも注意していたが、カーミンは「私ならこの隙に忍び込む」と考え、兵士たちの動きにも気を配っていたのだ。
案の定、兵士たちの中に、カッツォの手先が隠れて潜んでいたのだ。
「ゲー太のCモード「bind」は、敵味方の識別ができるのよ。味方の兵士には無効だけど、カッツォの手先なら、間違いなく敵だから、罠に引っかかったら逃げられないのよ」
カーミンは、カッツォが悔しがる様子を想像して、楽しげに笑っていた。
残りのパラディンたちが、後方の倉庫を目指して移動しようとしていたが、カヤの紅水晶に遮られて、身動きが取れなくなっていた。
移動不能になったパラディンたちは、マテリアルブレードで攻撃をしかけてきたが、ヴォーイが『鎧受け』で受け流していた。
「海涙石とコーラル石は、渡す訳にはいかないじゃん。なんとしてでも守るぜ!」
「フォーコ、頼むぜ!」
イェジドのフォーコは『フェンリルライズ』のオーラを纏い、ジャックを乗せたまま『ブロッキング』でパラディン一体の動きを妨害した。ジャックも、敵の狙いはハンターではなく、海涙石とコーラル石だと見抜いていたのだ。
「防いでくれて、ありがとう」
リクのインスレーター・SFが、[SW]フライトシールド「プリドゥエン」による『フライトシステム』で飛行……アクティブスラスターを駆使してパラディンの前方に廻り込み、斬艦刀「雲山」で斬りつけていく。
パラディンはインスレーター・SFの攻撃に耐えていたが、それも時間の問題であった。
「俺の『制御不能な覚悟』を見せてやるぜ」
スキルリンカーLv20による『剣心一如』を活性化させたGRAND SWORDが『マテリアルライン』を発動させ、炎の声が響き渡る。
「行け! GRAND SWORD」
斬機刀「轟劾」に『マテリアルフィスト』が宿り、GRAND SWORDの刀がパラディンの胴部を貫き、その激しい繰り出しに、パラディンは木端微塵となって、消滅していった。
「見たか、GRAND SWORDの力を」
炎の闘志が、敵のパラディンを破壊まで導いたのだ。
ゾファルは、なんとなしにリクの考えを読み取り、「とりあえず、足止めじゃん」とばかりにガルガリンを操縦……スキルリンカーLv20によって発動させた『クリムゾンウェスタンラリアット』を繰り出し、斬艦刀「雲山」の刃をパラディン一体に叩き込むと、敵はダメージを受けて移動不能になった。
「パラディンは……本来ならば、エバーグリーン世界を守るために作られたのかもしれない……そうだとしたら、ディエスの仲間だった可能性もあるわ」
だから……葬魂の剣歌を。
アリアは『織花・祈奏』を纏った魔導剣「カオスウィース」を掲げ、パラディンの脚を狙い、攻撃をしかけた。魔導剣が脚に命中し、パラディンが崩れそうになる。
イェジドのコーディは、別のパラディンが傍を通過しないように『ブロッキング』で妨害していた。
後方にいたカーミンは『百日紅』で矢をリロードすると、洋弓「フォルティトゥード」を構えて『ネモフィラ』を発動させて、ターゲットを合わせた。放たれた矢は、パラディンの左脚に命中し、かなりのダメージを与えていた。
ヴォーイが『ファントムハンド』を発動させ、巨大な幻影の腕が浮かび上がると、パラディン一体を引き寄せてから、機械斧「メクサラ」による『渾身撃』を叩き込んだ。
パラディンは、ヴォーイの攻撃で身体に亀裂が走り、胴部が爆発すると同時に、頭部が飛び散り、消滅していく。
「これで終わりだ!」
ジャックがバスタードソード「アニマ・リベラ」を突き出し『刺突一閃』を解き放つと、軌道上にいたパラディンが衝撃に巻き込まれ、塵のように消え去っていった。
●
その後。
「パラディンは全て倒せたけど、まだ気を抜いちゃダメじゃん!」
ヴォーイは、カッツォが出現するのではないかと推測して、コーラル石が安置してある祠付近の浜辺を巡回していた。
人魚の長老クアルダと侍女たちは、海中にある祠の周囲を泳ぎ回り、警戒していた。
しばらく経っても、カッツォは現れなかった。
クアルダが海から上がり、砂浜に姿を現すと、数人の魚人族たちが近づいてきた。だが、その中の二体が、地面に仕掛けられていたCモード「bind」の結界に引っかかり、移動不能になっていた。
「考えたくはなかったけど、ヴォイド化した魚人族もいたのね」
カーミンは周辺を巡回する際に、刻令ゴーレム「Gnome」のゲー太を連れて、Cモード「bind」の結界を張っていたのだ。
洋弓「フォルティトゥード」を構え、水霊の矢を番えるカーミン。
「ヴォイド化したと言っても、クアルダにとっては仲間だもの。だから、私が撃ち取ってあげる」
放たれた矢が、ヴォイド化した魚人族の戦士に命中すると、衝撃で砕け散り、消え去っていった。
「カッツォ……魚人族まで巻き添えにするなんて、許せないじゃん」
ヴォーイが怒りで歯軋りする…『ファントムハンド』で、ヴォイド化した魚人族を引き寄せ、断腸の思いで、機械斧「メクサラ」を振るい、切り裂いた。
魚人族の戦士は、消滅する間際、微かに笑っているように見えた。
その笑みは、自分を救ってくれた者への感謝だったのだろうか。
●
「ディエス、宝石を拾ってくれて、助かったよ」
インスレーター・SFのコックピットから降りたリクは、ディエスからエメラルドを受け取ると『機導浄化術・浄癒』を施した。だが、宝石は黒ずんでおり、輝きを失っていた。
ジャックも海軍の兵士たちと協力して、周囲を巡回していた。落ちていた宝石を見つけると、リクの元へと駆け寄る。
「キヅカ、この宝石も頼む」
ジャックから宝石を受け取り、リクは再び術を施すが、変わった様子はなかった。
それでも、リクは諦めずに機導浄化術・浄癒を使い続けた。
「残り、一回……最後まで、やってみるよ」
不安そうなディエスを安心させるように、リクが微笑む。『機導浄化術・浄癒』…12回目。
固唾を飲んで、見遣るジャック。
その時、不思議なことが起こった。
宝石が七色の光に包まれ、エメラルドの輝きが戻っていた。
気が付けば、小さな少女が、リクの掌に、ふわりと浮かんでいるではないか。
「まるで、花の妖精のようね」
アリアも、リクの傍で見守っていたが、ディエスが驚き喜んでいる顔を見て、穏やかに微笑んでいた。
「ちっちゃな女の子だね。はじめまして。ボクはディエス」
「……あたし……エラル……」
15センチほどの小さな少女は、そう告げた。
「エラル、あなたの名前ね? エメラルドの精霊かしら?」
アリアの問いに、少女は頷いた。
「エラルちゃんか。はじめまして、僕はキヅカ・リク」
リクが優しく声をかけると、エラルはリクの掌に降り立った。ジャックとアリアが、精霊に自己紹介すると、エラルは恥ずかしそうに応えた。
「助けて、くれて、ありがと」
「礼なら、キヅカに言ってくれな」
気さくなジャックに、アリアも同じ想いで頷いた。
「そうよ。キヅカが諦めずに、浄化術でエラルを助けてくれたのよ」
ディエスは、尊敬の眼差しで、リクを見つめていた。
「リクさん、すごいな。精霊さん、助けることができて良かったね」
「なに言ってるんだよ。ディエスがパラディンとの戦闘中に、宝石を拾ってくれたから、精霊を助けることができたんだ。ありがとう、ディエス」
リクにそう言われて、ディエスはうれしそうだった。どこか自信に満ちた笑顔だった。
●
コーラル石は無事に守られ、海涙石を保管していた倉庫も破壊されずに済んだ。
「海涙石とコーラル石、奪われなくて安心したわ」
カーミンがゲー太の能力を上手く使い、潜んでいたカッツォの手先を全て捕まえることができたことも功を奏していた。
「それにしても、マクシミリアン。私のことも、よ・ろ・し・く♪って、言ったじゃない?」
軽い調子のカーミンに、マクシミリアンは真顔だった。
「カーミンは、俺のフォローが無くても大丈夫だろう。今回は、ディエスの援護を頼むとジャックとアリアに言われたからな」
「ボク、役に立ったのかな?」
ディエスの呟きに、GRAND SWORDから降りた炎が、労いの言葉をかけた。
「今回の勝利は君のおかげだ。ありがとな。気負うのも大切だけど、気負いすぎるのも良くないぞ。肩の力を抜くことで、元々ある力が発揮するからな。これからもよろしく頼むぜ」
「南護さん、ボクの方こそ、ありがとうございます。また機会があれば、よろしくお願いします」
ディエスと炎が、固い握手を交わす。
戦いの勝利を祝い、宴が始まった。
ゾファルはガルガリンのコックピット内部で欠伸をしていた。
「やることやったら、暇じゃん…」
儀式にも精霊にも興味がなかったゾファルは、いつのまにか操縦席で眠りに落ちていた。
その頃、ジャックは、イェジドのフォーコにヒーリングポーションを飲ませていた。
「相変わらず、微妙な表情してんな。良薬は口に苦しってやつか」
ジャックが頭と背中を撫でると、フォーコは少し機嫌が良くなった。
「やっぱり苦かったのか?」
フォーコは、ジーッとジャックの瞳を見つめていた。何か言いたげな様子なのは、ジャックにも分かっていた。
「フォーコ、今回もおまえのおかげで助かったぜ。ありがとな」
ジャックがそう言うと、フォーコはうれしそうに尻尾を振っていた。
一方、リクとアリアは、人魚の長老クアルダと面会していた。
「クアルダ、久し振りだね。ラッセは元気かな?」
リクの言葉に反応して、クアルダの後ろに隠れていた少年の人魚がリクに抱き付いた。
「久し振り、リクさん! 僕のこと、覚えててくれたんだね」
「当たり前だよ。ラッセのこと、忘れる訳ないさ。美人のお母さん人魚がクアルダで、ラッセは息子の人魚……そうだよね?」
リクにそう言われて、ラッセは喜び勇んで、両手を上げた。
「うれしいな。これから宴が始まるから、楽しんでいってね。……あれ? その子、誰?」
リクの後ろにいたディエスに気付き、ラッセは首を傾げていた。
アリアがディエスの手を引いて、紹介する。
「この子は、オートマトンのディエスよ。私たちの仲間なの」
ラッセとディエスは互いに緊張していたが、宴が始まると、少しずつ打ち解けていった。
「クアルダ、ワインとブーケ、持ってきたんだ。コーラルの精霊に渡そうと思って」
リクがそう言うと、クアルダが温和な笑みを浮かべる。
「ありがとう、リク。コーラル様は海中の祠でお休み中だけど、社の前にお供えすることもできるわ」
島の本土には、コーラルを祀る社があった。
リクは、ブーケ【信頼の白】とワイン「レ・リリカ」を社の前に置いて、両手を合わせる。
「この間、トパーズの精霊と会ったんだ。エラルちゃん、連れてきたよ」
リクが名を呼ぶと、エメラルドの精霊エラルが、社の前に立っていた。
「あのね……コーラル様が『ありがとう』って言ってる」
「ホント? エラルちゃん、コーラルの精霊とコンタクト取れるんだね」
エラルが小さく頷き、ゆっくりと浮かび上がり、目線をリクに合わせた。
「カッツォが、コーラル様を狙っているから、海から出ないって」
「そっか。その方が良いよね。昨日、アメンスィが現れたのも、コーラル鉱石を海中の祠に安置するようにという意図があったのかもね」
だからこそ、クアルダたちはコーラル鉱石を海中の祠に隠すことにしたのだ。その場所は、カッツォでさえも確認できないのだ。
宴が盛り上がり、アリアは人魚たちに感謝を込めて舞っていた。
海と大地に捧げる歌。
種族も、時も世界も越え、ひとつに繋げたいと、想い込めて……。
運命の輪を繋ぎ、紡ぐ歌舞を。
アリアの願いは、人魚たちの心にも浸透していた。
カーミンが思わず、拍手をした。
「何度聴いても、アリアの歌は素敵ね」
「ありがとう。カーミンの鏃と眼も、鷹の瞳のように鋭くて、私は好きよ?」
アリアが微笑む。珍しく徒めいていた。
「え? そうかしら? 改めて言われると……」
照れ笑いするカーミン。
ディエスは、リクの隣に座り、宴に参加していた。
「これから、どうなるのかな」
不安を漏らすディエス。
リクは、真摯な眼差しで言った。
「力だけが強さじゃない。だけど想いだけでは届かない。じゃあ、どうすれば良いのかってなるじゃん? 答えは簡単でさ。最初は皆、今のディエスと一緒なんだよ。人の心の痛みが解るから、護りたいと思うから」
「ボクも、仲間を守りたい」
「そうだよ。それが原動力になるんだ。ディエスは一人じゃない。カッツォの、嫉妬王の…やつらの好きにはさせない。僕たちで守るんだ。この同盟を、この世界を」
雲一つない青空が広がっていた。潮の香りが、身体にも心地よかった。
これから、いろんな困難が待ち受けていることだろう。
それでも、信頼できる仲間がいれば、乗り越えていける。
リクは、そう確信していた。
何故なら、今、リクが『ここ』にいることが、何よりの証でもあるから。
ジャック、アリア、カーミン、炎、ヴォーイ、ゾファルとの出会い。
ディエスにとって、かけがえのない分岐点となった。
敵は、突然、現れた。
オート・パラディンS、6体が海涙石を奪うため、建ち並ぶ倉庫へと移動していた。
「オーパちゃんが先手にゃー。俺様ちゃんと遊んでくれジャン」
ガルガリンのガルちゃんに搭乗したゾファル・G・初火(ka4407)は、そう言いながらも敵に先手を取られて、少しイライラしていた。
「先手を取られても、できることをやりましょう」
イェジドのコーディに騎乗したアリア・セリウス(ka6424)が『氷輪詩』を詠唱して、パラディンたちのマテリアルを威圧していく。
「ようやくアメンスィが俺達のことを認識してくれたんだ。パラディンが倉庫へ辿り着く前に、返り討ちにしてやるぜ!」
ジャック・エルギン(ka1522)がアリアとタイミングを合わせて、バスタードソード「アニマ・リベラ」による『守りの構え』を取った。
イェジドのフォーコは、ジャックの隣に立ち、前方のパラディンを警戒していた。
魔導型デュミナスのインスレーター・SFに搭乗しているのは、キヅカ・リク(ka0038)だ。
「できるだけ、パラディンの数を減らすんだ」
アリアに隣接する位置に居るインスレーター・SFが、リクの発動する『無ノ領域・撃』によってオーラを纏い、機体と自身が一体化していく。
「まずは、ここで食い止めるじゃん」
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は[SA]機械斧「メクサラ」よる『守りの構え』を取り、パラディンの攻撃に備えていた。
「『カッツォの玩具』如きに負けるかよ!!」
コンフェッサーのGRAND SWORDが、南護 炎(ka6651)の発動する『人機一体』によってマテリアル調和の幻影に包まれていた。
斬艦刀「雲山」を構えたガルガリンの操縦席から、ゾファルはモニターに映るオート・パラディンを睨み据えた。
「喧嘩上等の俺様ちゃんが、受けからとはねー。受けるよ、受けるよ、死にたくねーぇしな」
パラディンのマテリアルブレードが振り下ろされたが、斬艦刀「雲山」で受け止めるガルガリン。
「フォーコ、抜かせるなよ!」
隙間を抜けようとするパラディンたちがいたが、ジャックがバスタードソード「アニマ・リベラ」で、パラディンのマテリアルブレードを受け払い、さらにフォーコが『ブロッキング』で妨害し、パラディン一体を移動不能にさせた。
「海涙石を奪おうとするなど、言語道断だ!」
炎の操縦するGRAND SWORDが、大壁盾「庇護者の光翼」を構え、パラディンが振るうマテリアルブレードを受け流した。
次の瞬間、パラディンのマテリアルレーザーが発射された。ターゲットは、後方の倉庫だ。
「そう簡単に、やらせないわよ」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は、敵の射撃を回避すると『タイム』を発動させ、後方に位置する倉庫を目掛けて移動していく。
倉庫前には、海軍の兵士たちが盾を構えて陣取り、マテリアルレーザーを受け流した。
「やったわ♪ 同盟の海軍も伊達じゃないわね」
カーミンが、兵士たちに呼びかけたこともあり、初手の射撃を食い止めることができた。
「さて、ゲー太、結界地雷、頼んだわよ」
刻令ゴーレム「Gnome」ゲー太が、カーミンの指示でCモード「bind」を作動させ、法術地雷を設置していく。
「反撃、開始だ!」
炎が搭乗するGRAND SWORDが、『マテリアルフィスト』のバリアで保護された斬機刀「轟劾」を構え、パラディンの胴部を斬り裂く。その威力は凄まじく、敵の防御力を貫通して衝撃が迸った。
パラディンは受け流すことができず、その胴部は斬機刀「轟劾」によって貫かれていた。
リクと連動したインスレーター・SFは『マルチロックオン』で二機のパラディンを捕え、斬艦刀「雲山」を振り降ろした。
「ここは、僕の距離だ…!」
その時、リクの脳裏に高瀬 未悠の言葉が浮かんだ。
(誰かが危なくなる前に決着をつけてきて……繋いだ想いを叶える為に、生きて叶える為に)
「必ず、僕は戻るから……生きて、戻るから」
斬艦刀が、リクの想いに応えるように、パラディン二体を斬りつけていき、そのうちの一体が、爆発して消滅していった。
通常では考えられない攻撃であった。それでも尚、消滅したパラディンから、宝石が零れ落ちていた。
だが、今は回収する余裕はない。
コーディに騎乗したアリアは『想思花・月魄』の二刀流で魔導剣「カオスウィース」と双龍剣「ナラク・アグニ」を繰り出し、パラディンの脚を狙い、攻撃が命中すると『想思花・祓月』の斬撃が放たれた。
三撃目の斬撃はオーラとなり、直線状にいた敵を貫き、多大なダメージを受けたパラディンは衝撃で弾け飛び、額の宝石も粉々に砕け散り、消滅していった。
アリアの攻撃は威力が有り過ぎたため、宝石も耐え切れなかったのだ。
「キヅカが倒したパラディンからは、エメラルドの宝石が残っているはず……まだ、望みはあるわ」
リクの機転で、砂浜に宝石が落ちていたが、やはり回収する余裕はなかった。
「アリアさん、リクさん、ボクが宝石を回収するから安心して」
ディエス(kz0248)はリクたちが宝石を助けようとしているのに気付き、自らの意思で砂浜に走り寄り、落ちていた宝石を拾い上げた。
すぐさま、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が剣を取り『守りの構え』で、ディエスのフォローに入っていた。
「俺は、ディエスの護衛に専念する」
「マクシミリアン、ディエスのことは任せたぜ。パラディンは、俺らが全て倒してやるからな」
ジャックは『刺突一閃』で踏み込み、バスタードソード「アニマ・リベラ」を突き出し、パラディンの左脚を貫いた。さらに『ケイオスチューン』を発動させ、守りの構えを維持する。
フォーコはジャックの指示で、パラディンの右脚を狙い『クラッシュバイト』で噛み砕く……連携攻撃により、パラディンの両脚は破壊され、バランスを崩した。
ゾファルの騎乗したガルガリンが『アサルトダイブ』で一気に突撃し、スキルリンカーLv20で活性化させた『一打撃砕「星砕き」』により斬艦刀「雲山」を掲げて、大きく振り下ろす。その一撃はパラディンの頭部から胴部を斬り裂き、その反動で衝撃が走ったかと思うと、敵は爆発して消滅していった。
「すっきりしたじゃーん。てめぇら死にたいらしいな。かかってきな、カマーン」
戦闘の熱気により、ゾファルの気分は高まっていた。
ヴォーイは『ファントムハンド』でパラディン一体を引き寄せ、機械斧「メクサラ」による『渾身撃』を叩き込み、敵に警戒を付与した。
「カヤ、なんとしてでも食い止めるんだ」
ユキウサギのカヤはヴォーイの隣まで移動した後、『紅水晶』の結界を発動させた。
パラディンとの戦闘が続く中、Cモード「bind」の結界で移動不能になっていた兵士がいた。
「海軍の制服を着てるけど、ゲー太のトラップに引っかかってるってことは、あんた、カッツォの手先ね!」
カーミンは洋弓「フォルティトゥード」を構え『ネモフィラ』を発動させ、龍矢「シ・ヴァユ」を番えると、移動不能になっている兵士に狙いを定めて矢を放った。命中して、兵士は攻撃を喰らい、粉々に砕け散り、消滅していった。どうやら手先はヴォイド化した自動人形だった。
「やはり、敵が紛れ込んでいたのね。やることが、セコイのよ」
呆れたように言うカーミン。
パラディンの動向にも注意していたが、カーミンは「私ならこの隙に忍び込む」と考え、兵士たちの動きにも気を配っていたのだ。
案の定、兵士たちの中に、カッツォの手先が隠れて潜んでいたのだ。
「ゲー太のCモード「bind」は、敵味方の識別ができるのよ。味方の兵士には無効だけど、カッツォの手先なら、間違いなく敵だから、罠に引っかかったら逃げられないのよ」
カーミンは、カッツォが悔しがる様子を想像して、楽しげに笑っていた。
残りのパラディンたちが、後方の倉庫を目指して移動しようとしていたが、カヤの紅水晶に遮られて、身動きが取れなくなっていた。
移動不能になったパラディンたちは、マテリアルブレードで攻撃をしかけてきたが、ヴォーイが『鎧受け』で受け流していた。
「海涙石とコーラル石は、渡す訳にはいかないじゃん。なんとしてでも守るぜ!」
「フォーコ、頼むぜ!」
イェジドのフォーコは『フェンリルライズ』のオーラを纏い、ジャックを乗せたまま『ブロッキング』でパラディン一体の動きを妨害した。ジャックも、敵の狙いはハンターではなく、海涙石とコーラル石だと見抜いていたのだ。
「防いでくれて、ありがとう」
リクのインスレーター・SFが、[SW]フライトシールド「プリドゥエン」による『フライトシステム』で飛行……アクティブスラスターを駆使してパラディンの前方に廻り込み、斬艦刀「雲山」で斬りつけていく。
パラディンはインスレーター・SFの攻撃に耐えていたが、それも時間の問題であった。
「俺の『制御不能な覚悟』を見せてやるぜ」
スキルリンカーLv20による『剣心一如』を活性化させたGRAND SWORDが『マテリアルライン』を発動させ、炎の声が響き渡る。
「行け! GRAND SWORD」
斬機刀「轟劾」に『マテリアルフィスト』が宿り、GRAND SWORDの刀がパラディンの胴部を貫き、その激しい繰り出しに、パラディンは木端微塵となって、消滅していった。
「見たか、GRAND SWORDの力を」
炎の闘志が、敵のパラディンを破壊まで導いたのだ。
ゾファルは、なんとなしにリクの考えを読み取り、「とりあえず、足止めじゃん」とばかりにガルガリンを操縦……スキルリンカーLv20によって発動させた『クリムゾンウェスタンラリアット』を繰り出し、斬艦刀「雲山」の刃をパラディン一体に叩き込むと、敵はダメージを受けて移動不能になった。
「パラディンは……本来ならば、エバーグリーン世界を守るために作られたのかもしれない……そうだとしたら、ディエスの仲間だった可能性もあるわ」
だから……葬魂の剣歌を。
アリアは『織花・祈奏』を纏った魔導剣「カオスウィース」を掲げ、パラディンの脚を狙い、攻撃をしかけた。魔導剣が脚に命中し、パラディンが崩れそうになる。
イェジドのコーディは、別のパラディンが傍を通過しないように『ブロッキング』で妨害していた。
後方にいたカーミンは『百日紅』で矢をリロードすると、洋弓「フォルティトゥード」を構えて『ネモフィラ』を発動させて、ターゲットを合わせた。放たれた矢は、パラディンの左脚に命中し、かなりのダメージを与えていた。
ヴォーイが『ファントムハンド』を発動させ、巨大な幻影の腕が浮かび上がると、パラディン一体を引き寄せてから、機械斧「メクサラ」による『渾身撃』を叩き込んだ。
パラディンは、ヴォーイの攻撃で身体に亀裂が走り、胴部が爆発すると同時に、頭部が飛び散り、消滅していく。
「これで終わりだ!」
ジャックがバスタードソード「アニマ・リベラ」を突き出し『刺突一閃』を解き放つと、軌道上にいたパラディンが衝撃に巻き込まれ、塵のように消え去っていった。
●
その後。
「パラディンは全て倒せたけど、まだ気を抜いちゃダメじゃん!」
ヴォーイは、カッツォが出現するのではないかと推測して、コーラル石が安置してある祠付近の浜辺を巡回していた。
人魚の長老クアルダと侍女たちは、海中にある祠の周囲を泳ぎ回り、警戒していた。
しばらく経っても、カッツォは現れなかった。
クアルダが海から上がり、砂浜に姿を現すと、数人の魚人族たちが近づいてきた。だが、その中の二体が、地面に仕掛けられていたCモード「bind」の結界に引っかかり、移動不能になっていた。
「考えたくはなかったけど、ヴォイド化した魚人族もいたのね」
カーミンは周辺を巡回する際に、刻令ゴーレム「Gnome」のゲー太を連れて、Cモード「bind」の結界を張っていたのだ。
洋弓「フォルティトゥード」を構え、水霊の矢を番えるカーミン。
「ヴォイド化したと言っても、クアルダにとっては仲間だもの。だから、私が撃ち取ってあげる」
放たれた矢が、ヴォイド化した魚人族の戦士に命中すると、衝撃で砕け散り、消え去っていった。
「カッツォ……魚人族まで巻き添えにするなんて、許せないじゃん」
ヴォーイが怒りで歯軋りする…『ファントムハンド』で、ヴォイド化した魚人族を引き寄せ、断腸の思いで、機械斧「メクサラ」を振るい、切り裂いた。
魚人族の戦士は、消滅する間際、微かに笑っているように見えた。
その笑みは、自分を救ってくれた者への感謝だったのだろうか。
●
「ディエス、宝石を拾ってくれて、助かったよ」
インスレーター・SFのコックピットから降りたリクは、ディエスからエメラルドを受け取ると『機導浄化術・浄癒』を施した。だが、宝石は黒ずんでおり、輝きを失っていた。
ジャックも海軍の兵士たちと協力して、周囲を巡回していた。落ちていた宝石を見つけると、リクの元へと駆け寄る。
「キヅカ、この宝石も頼む」
ジャックから宝石を受け取り、リクは再び術を施すが、変わった様子はなかった。
それでも、リクは諦めずに機導浄化術・浄癒を使い続けた。
「残り、一回……最後まで、やってみるよ」
不安そうなディエスを安心させるように、リクが微笑む。『機導浄化術・浄癒』…12回目。
固唾を飲んで、見遣るジャック。
その時、不思議なことが起こった。
宝石が七色の光に包まれ、エメラルドの輝きが戻っていた。
気が付けば、小さな少女が、リクの掌に、ふわりと浮かんでいるではないか。
「まるで、花の妖精のようね」
アリアも、リクの傍で見守っていたが、ディエスが驚き喜んでいる顔を見て、穏やかに微笑んでいた。
「ちっちゃな女の子だね。はじめまして。ボクはディエス」
「……あたし……エラル……」
15センチほどの小さな少女は、そう告げた。
「エラル、あなたの名前ね? エメラルドの精霊かしら?」
アリアの問いに、少女は頷いた。
「エラルちゃんか。はじめまして、僕はキヅカ・リク」
リクが優しく声をかけると、エラルはリクの掌に降り立った。ジャックとアリアが、精霊に自己紹介すると、エラルは恥ずかしそうに応えた。
「助けて、くれて、ありがと」
「礼なら、キヅカに言ってくれな」
気さくなジャックに、アリアも同じ想いで頷いた。
「そうよ。キヅカが諦めずに、浄化術でエラルを助けてくれたのよ」
ディエスは、尊敬の眼差しで、リクを見つめていた。
「リクさん、すごいな。精霊さん、助けることができて良かったね」
「なに言ってるんだよ。ディエスがパラディンとの戦闘中に、宝石を拾ってくれたから、精霊を助けることができたんだ。ありがとう、ディエス」
リクにそう言われて、ディエスはうれしそうだった。どこか自信に満ちた笑顔だった。
●
コーラル石は無事に守られ、海涙石を保管していた倉庫も破壊されずに済んだ。
「海涙石とコーラル石、奪われなくて安心したわ」
カーミンがゲー太の能力を上手く使い、潜んでいたカッツォの手先を全て捕まえることができたことも功を奏していた。
「それにしても、マクシミリアン。私のことも、よ・ろ・し・く♪って、言ったじゃない?」
軽い調子のカーミンに、マクシミリアンは真顔だった。
「カーミンは、俺のフォローが無くても大丈夫だろう。今回は、ディエスの援護を頼むとジャックとアリアに言われたからな」
「ボク、役に立ったのかな?」
ディエスの呟きに、GRAND SWORDから降りた炎が、労いの言葉をかけた。
「今回の勝利は君のおかげだ。ありがとな。気負うのも大切だけど、気負いすぎるのも良くないぞ。肩の力を抜くことで、元々ある力が発揮するからな。これからもよろしく頼むぜ」
「南護さん、ボクの方こそ、ありがとうございます。また機会があれば、よろしくお願いします」
ディエスと炎が、固い握手を交わす。
戦いの勝利を祝い、宴が始まった。
ゾファルはガルガリンのコックピット内部で欠伸をしていた。
「やることやったら、暇じゃん…」
儀式にも精霊にも興味がなかったゾファルは、いつのまにか操縦席で眠りに落ちていた。
その頃、ジャックは、イェジドのフォーコにヒーリングポーションを飲ませていた。
「相変わらず、微妙な表情してんな。良薬は口に苦しってやつか」
ジャックが頭と背中を撫でると、フォーコは少し機嫌が良くなった。
「やっぱり苦かったのか?」
フォーコは、ジーッとジャックの瞳を見つめていた。何か言いたげな様子なのは、ジャックにも分かっていた。
「フォーコ、今回もおまえのおかげで助かったぜ。ありがとな」
ジャックがそう言うと、フォーコはうれしそうに尻尾を振っていた。
一方、リクとアリアは、人魚の長老クアルダと面会していた。
「クアルダ、久し振りだね。ラッセは元気かな?」
リクの言葉に反応して、クアルダの後ろに隠れていた少年の人魚がリクに抱き付いた。
「久し振り、リクさん! 僕のこと、覚えててくれたんだね」
「当たり前だよ。ラッセのこと、忘れる訳ないさ。美人のお母さん人魚がクアルダで、ラッセは息子の人魚……そうだよね?」
リクにそう言われて、ラッセは喜び勇んで、両手を上げた。
「うれしいな。これから宴が始まるから、楽しんでいってね。……あれ? その子、誰?」
リクの後ろにいたディエスに気付き、ラッセは首を傾げていた。
アリアがディエスの手を引いて、紹介する。
「この子は、オートマトンのディエスよ。私たちの仲間なの」
ラッセとディエスは互いに緊張していたが、宴が始まると、少しずつ打ち解けていった。
「クアルダ、ワインとブーケ、持ってきたんだ。コーラルの精霊に渡そうと思って」
リクがそう言うと、クアルダが温和な笑みを浮かべる。
「ありがとう、リク。コーラル様は海中の祠でお休み中だけど、社の前にお供えすることもできるわ」
島の本土には、コーラルを祀る社があった。
リクは、ブーケ【信頼の白】とワイン「レ・リリカ」を社の前に置いて、両手を合わせる。
「この間、トパーズの精霊と会ったんだ。エラルちゃん、連れてきたよ」
リクが名を呼ぶと、エメラルドの精霊エラルが、社の前に立っていた。
「あのね……コーラル様が『ありがとう』って言ってる」
「ホント? エラルちゃん、コーラルの精霊とコンタクト取れるんだね」
エラルが小さく頷き、ゆっくりと浮かび上がり、目線をリクに合わせた。
「カッツォが、コーラル様を狙っているから、海から出ないって」
「そっか。その方が良いよね。昨日、アメンスィが現れたのも、コーラル鉱石を海中の祠に安置するようにという意図があったのかもね」
だからこそ、クアルダたちはコーラル鉱石を海中の祠に隠すことにしたのだ。その場所は、カッツォでさえも確認できないのだ。
宴が盛り上がり、アリアは人魚たちに感謝を込めて舞っていた。
海と大地に捧げる歌。
種族も、時も世界も越え、ひとつに繋げたいと、想い込めて……。
運命の輪を繋ぎ、紡ぐ歌舞を。
アリアの願いは、人魚たちの心にも浸透していた。
カーミンが思わず、拍手をした。
「何度聴いても、アリアの歌は素敵ね」
「ありがとう。カーミンの鏃と眼も、鷹の瞳のように鋭くて、私は好きよ?」
アリアが微笑む。珍しく徒めいていた。
「え? そうかしら? 改めて言われると……」
照れ笑いするカーミン。
ディエスは、リクの隣に座り、宴に参加していた。
「これから、どうなるのかな」
不安を漏らすディエス。
リクは、真摯な眼差しで言った。
「力だけが強さじゃない。だけど想いだけでは届かない。じゃあ、どうすれば良いのかってなるじゃん? 答えは簡単でさ。最初は皆、今のディエスと一緒なんだよ。人の心の痛みが解るから、護りたいと思うから」
「ボクも、仲間を守りたい」
「そうだよ。それが原動力になるんだ。ディエスは一人じゃない。カッツォの、嫉妬王の…やつらの好きにはさせない。僕たちで守るんだ。この同盟を、この世界を」
雲一つない青空が広がっていた。潮の香りが、身体にも心地よかった。
これから、いろんな困難が待ち受けていることだろう。
それでも、信頼できる仲間がいれば、乗り越えていける。
リクは、そう確信していた。
何故なら、今、リクが『ここ』にいることが、何よりの証でもあるから。
ジャック、アリア、カーミン、炎、ヴォーイ、ゾファルとの出会い。
ディエスにとって、かけがえのない分岐点となった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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質問卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/05/06 22:08:43 |
|
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相談卓 アリア・セリウス(ka6424) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/05/07 01:23:27 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/02 17:35:38 |