見上げた夜空の星粒を

マスター:一要・香織

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/05/06 12:00
完成日
2018/05/12 11:14

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 夜の帳が下り、月明かりが優しく辺りを照らしている。

 微かに聞こえる虫の音を聞きながら、レイナ・エルト・グランツ(kz0253)はテラスで1人夜空を見上げていた。
 日中の汗ばむ気温とは裏腹に、気持ちが引き締まる様な冷たい空気が肌を撫でる。
 レイナはこの空気が好きだった。
 湧き出でる清流の様に澄んだ空気は、疲れた気持ちを洗い流してくれる気がするからだ。
 聖堂のステンドグラスの様な神秘的な光を放つ月も、レイナの心を清らかにしてくれる。
 濃紺の空には星が輝き、存在を主張していた。
「今日は何時もより星が明るく見えますね」
 誰に言うでもなしに呟くと、それに応える様に星の林が瞬いた。
 髪を揺らし頬を撫でる冷たい風に背筋が震え、肩に掛けたショールを掻き合わせると、
「くしゅんっ!」
 小さなくしゃみが零れた。
 いつの間にか身体が冷えている事に気付き、最後にひとつ大きく息を吸い込むと、レイナは肩を擦りながら部屋に戻ろうとした―――――、その時、視界の端がやけに眩しく感じ、レイナは勢いよく振り返った。
「っ!」
 そして、目にした物に息を飲む。
 そこには強く光を放ちながら夜空を駆ける何かがあった。
 チカチカと時折鋭く光り、鳥の様に降下していく……。
「あれは、何……?」
 レイナはテラスから身を乗り出し、強い光のまま徐々に小さくなっていくそれを目で追った。それは一際強く光った後、東の森の中に消えた。
「何だったのでしょう……」
 そう呟いた途端――、
「くしゅん!」
 再びのくしゃみに身体が粟立ち、忘れていた寒気が襲い掛かった。
 レイナは急いで部屋に戻ると、先程の不思議な光景を思い返しながらベットに潜り込んだ。

 翌朝、
「昨夜はよくお休みになれましたか?」
 執事のジルが紅茶をサーブしながら尋ねた。
「はい。よく眠れました」
 そう答えると、ジルは微笑みながらレイナの前にカップを置いた。目の前に置かれたカップに添えられた銀のスプーンが 太陽の光を反射しキラリと光る。
 その光が、昨夜見た光景を思い出させた。
「そう言えば、昨夜不思議なものを見ました」
 紅茶の入ったカップを持ち上げレイナが口を開くと、
「不思議な物、ですか?」
 ドアの前に立った私兵のサイファーとジルの声が重なった。
「ええ。夜空に……光の矢が飛んでいたんです。キラキラ光っていて、とても綺麗でした。あれは……なんだったのでしょうね?」
 光景を思い浮かべながら、レイナが首を傾げると、
「ああ、それはきっと、隕石……と言うものだと思います」
「隕石?」
 問い返すレイナを見つめ、サイファーは笑みを浮かべ答えた。
「はい。昔、リアルブルーから来たハンターに聞いたことがあるのですが、空のずっとずっと高い所、宇宙と言う空間を漂う星の欠片が落ちてきた物を隕石と言うそうです」
 宇宙に関して知識の少ないクリムゾンウェスト人にとっては不思議な話だが、実際にあの光を見たレイナにはなんだかとても素敵な事の様に思えた。
「そうなのですね。リアルブルーもあの夜空で輝く星のひとつ……それと同じ空間にあった物が、落ちてきたなんて! いったいどんな色をしてどんな形をしているのでしょう?」
 少し興奮した様に声を弾ませながらレイナが呟くと、サイファーとジルは顔を見合わせ微笑んだ。
「俺も実物を見たことは無いのでわかりませんが、とてもロマンを感じますね」
 サイファーがそう言うと、
「ロマン……そうですね! 実際にこの目で見てみたくなりますね」
 レイナは微笑み答えた。
「………」
 その顔をジーっと見詰めていたサイファーは、目を瞬かせた。
「レイナ様がこんなに隕石に興味を持たれるなんて、思いませんでした……」
「え……、そう?」
 レイナが少し寂しさを滲ませる表情を見せると、サイファーは唇を噛み、そしてハッとした様に目を見開いた。
「そうだ! レイナ様、隕石探しに行ってみては如何ですか?」
「え!?」
「どの辺りに落ちたのがご存じなのでしょう? でしたら」
 その言葉にレイナは勢いよく首を振る。
「で、でも……今日は……」
「大丈夫です。今日は治安巡回だけですから、俺達兵団だけで見回れます」
 レイナは困った様に眉を下げた。
「ですが、それだと皆さんに悪いです……」
 おどおどと言葉を探すレイナに微笑み、サイファーは続ける。
「なら、暫らく休みを取っていませんでしたし、休息だと思って気晴らしに行ってきてください」
「っ……」
 言葉を詰まらせるレイナに、更に一押し。
「じゃあ決まりです。同行してくれるよう、ハンターに依頼しておきますね」
「え……ちょっと待って!!」
 制止するレイナに構わず、サイファーは楽しげに広間を後にした。
 扉の向こうに消えていく背中を見詰めながら、レイナは小さく息を吐いた。
「……いいのでしょうか?」
 ポツリと呟くと、
「いいと思いますよ」
 ジルが静かに頷いた。
「ハンターの皆様と楽しんでいらしてください」
 優しい声に少し安心しレイナは、はい! と頷いたのだった。

リプレイ本文

 朝食を終えたレイナ・エルト・グランツ(kz0253)は、直ぐ様ハンターオフィスに赴いた。
 遠足に出かける子供の様な気持ちを胸に仕舞い、ゆっくりとオフィスのドアを開く。
「おはようございます」
 そう言って顔を覗かせると、
「レイナさん、おはようなのですよ」
「おはよう、レイナさん」
 顔見知りのハンターカティス・フィルム(ka2486) と鞍馬 真(ka5819) が笑顔で迎えるとレイナの顔が綻んだ。
「カティスさん、真さん! 今日は一緒に行って下さるのですね。嬉しいです」
 そう言って更に微笑むと、
「よう、レイナ。久しぶりだな」
 低く響く声に振り向き、壁に寄り掛かる褐色の肌の男性、トリプルJ(ka6653)に駆け寄った。
「お久しぶりです。トリプルJさんもご一緒して下さるのですか?」
「ああ、隕石探しと聞いてな」
 お願いします、とレイナが頭を下げると、
「わたしもご一緒しますよ」
 そう言って、クオン・サガラ(ka0018)、春日(ka5987) 、ソラス(ka6581) が歩み寄った。
「レイナと申します。今日はどうぞよろしくお願いしますね」
 レイナは微笑むと深く頭を下げた。

 オフィスを出ると、
「レイナさん、早速ですが隕石の出現方向や光った秒数、落ちた方角など聞きたいのですが」
 ソラスが早口に尋ねた。
「あ、はい。光は屋敷の正面から東に向かって、あの……」
 そう言うとレイナは東の森を指差した。
「あの森に一本だけ背が飛び出た木がありますよね? あの手前くらいで光が消えました。光っていたのは1秒か2秒……でしょうか」
 レイナがおずおずと答えると、ソラスはそれをメモに取っていく。
「無事見つけることが出来たら、サンプルを回収してもいいですか?」
 クオンが尋ねると、
「ええ、もちろんです」
 レイナは頷き返事をした。
「星を探しに行くやなんて、とっても素敵ね。ワクワクしますな」
 春花色の花びらが舞う様に髪をふわりとなびかせ、春日がフフフッと笑うと、釣られるようにレイナも笑った。
 その横顔を眺めながら、
(意外と好奇心旺盛なんだな。領主をやっている時は張りつめているから、歳相応の反応を見れて安心した)
 そんな事を思いながら、真は小さく息を吐きだした。
「そんじゃあ、出発するか」
 トリプルJの声を合図に、隕石探しの冒険が始まった。

 民間の宇宙飛行士のクオンと、天体の研究をしているソラスは互いの見解やデータを見せ合い隕石について話し始めた。
 森の入り口に着くと、
「簡易の虫除けで人が居るのを動物にも分からせるからな。ただ俺は元々ヘビースモーカーだが、レイナが吸うのは止めとけよ?」
 そう言ってトリプルJは咥えた煙草を摘み、フーっと煙を吐き出した。
 はい。そう短く返事したレイナは森の中に視線を移し、ゴクリと唾を飲みこんだ。
 そんなレイナの背中を春日が優しく叩くと、二人は顔を見合わせて森の中へと踏み込んだ。
 重なり合う枝や葉が暗く影を落とし、太陽の光を遮る。踏みしめる度、落ち葉や土の匂いが鼻を擽った。
「リアルブルーの小説にゃSFってジャンルがあってな? サイエンスフィクションやスペースファンタジーやら言われていて、荒唐無稽でも起こり得ることとか起こりそうでもあり得ない事とかを扱ってんだ。宇宙からやってきた隕石を探しに行くなんざまさにこれだろ? まぁ、SFだと隕石は宇宙からの侵略だったり宇宙に居る別の知的生命体からのメッセージだったりするな」
 煙を吐き出したトリプルJの口元が悪戯に歪む。
「し……侵略ですか……」
 不安そうに眉を顰めたレイナに、
「宇宙を移動してきたそのままの速度でこの星の空にきて、この地面の引力に引かれて更に速度を増して落ちてきた星の欠片です。侵略ではありませんよ」
 ソラスが小さく笑い声を掛けると、腰に付けたトントゥの鈴が小さく鳴った。
「そ、そうですか」
 ホッとした様にレイナが息を吐くと、トリプルJが可笑しそうに喉の奥でクツクツと笑った。
「リアルブルーにはお星さまの歌があるて聞いたさかい。ご存知の人がいたら教えて貰えると嬉しなぁ」
 春日が思い出したように尋ねた。
「確かにリアルブルーには星にまつわる歌があるね」
 そう呟いた真がゆっくりと口ずさむ。
 夜空を思わせるゆったりとした旋律に、輝く星の様に力強く透き通った真の声が森の中を駆け抜けた。
 目を閉じれば昨夜の光景が浮かぶようで、皆はうっとりとその声に耳を傾けた。
「星に関係する歌は結構あるけど、静かで綺麗な曲が多いね」
 そう言って口を閉じると、
「わあ、素敵なのです」
「とってもお上手ですね」
 カティスとレイナが小さな拍手を送る。
「あとでうちに教えてもらえんやろか? うちも覚えて歌いたいさかい」
「もちろんだよ」
 春日が楽しげに呟くと真は快く返事した。

 暫らく歩くと、動物が通ったとみられる小さな獣道に出くわした。
「ここは、何かの動物の縄張りかもしれないね」
 機械指輪のベリヴァロンを掲げながら、クオンが周囲を見回す。
「クオンさん、何をされているのですか?」
 レイナが疑問に思い尋ねると、
「隕石は未知の物なので、辺りに悪い影響を及ぼしていないか手順を踏んで調べています」
「そうなのですね」
 レイナが感心した様に頷いた、刹那、
「後ろや!!」
 春日の鋭い声が飛び、皆は一斉に振り返った。
 でっぷりと肥えた大きな体に鋭い牙を生やした猪が、こちらを目掛け突っ込んでくる。
「っ!!」
 レイナがハッと息を飲むのと同時に、トリプルJがファントムハンドで猪を拘束。
 刹那、
「眠りに誘いし白雲よ! ―――スリープクラウド!」
 ソラスの声が響き渡り、猪は倒れた。
「びっくりしたのですよ」
 カティスがポツリと零すと、レイナもコクコクと頷く。
「鋭敏視覚や生命感知で気配を避けても、向こうから来はりよったらしゃあないなぁ」
 春日は眉尻を下げて申し訳なさそうに呟く。
 上下する猪の腹を見つめていると、
「猪が寝ている今のうちに行こう」
 クオンがそう声を掛け足を進めた。

「そういえば、以前パーティの際に差し上げたお茶は如何でしたか?」
 カティスがそわそわした様子でレイナに尋ねた。
「はい。あの時はありがとうございました。お茶、とても美味しかったです。香りが良くて後味もふんわりと甘くて。ジルとサイファーと一緒に頂きました」
 レイナはその時を思い出すように目を細め答えた。
「それは、よかったのです。いつもどんなお茶を飲むのですか?」
「私はアールグレイが好きです。あの香りが、気持ちを落ちつかせてくれるので」
「ベルガモットの香りですね。私はお茶はどれも好きですが、良く飲むのはレモンティーなのです」
 カティスとレイナはお互いの好きなお茶の話で盛り上がった。
「……実は今回、別のお茶を持ってきたのですよ。どんなのかは、休憩の時のお楽しみなのです」
 そう言ってカティスは楽しげに髪を揺らした。

 斜めに射し込んでいた光が真上からに変わり、ハンター達は森の中で休憩を取る事にした。
 枯れ木を集めカティスがリトルファイアで火を付けると、即席の焚き火は赤々と燃えた。
 途中で汲んだ湧水を沸かし、カティスが持参したカスタービレを皆に振る舞った。
「温かくて、ええねぇ」
 カップを両手で持った春日が陽だまりの様な笑みを溢す。
「日陰が続くと少し肌寒いですよね」
 同調するようにクオンも呟く。
「とても美味しいです」
 レイナも嬉しそうに呟いた。
「良かったです。なら、これはプレゼントなのですよ」
 そう言って、カティスはお茶の缶をレイナに差し出した。
「わぁ、ありがとうございます」
 レイナは大事そうに缶を受け取り微笑んだ。
「少しお腹が空いたでしょう? パンとマシュマロもありますからお茶のお供にどうぞ」
 ソラスがパンとマシュマロを振る舞うと、ハンター達は枝に刺して焚き火で焼き、それを見たレイナは目を瞬く。
「レイナさんもどうぞ」
 ソラスが焼いたマシュマロ串を手渡すと、珍しそうにそれを受け取った。
「あつっ! ……でも、凄く美味しい」
 熱々のマシュマロに驚くも、満面の笑みを浮かべた。
 ゆっくりとお茶の香りを楽しんでいると、
「レイナさんは星を見るのが好きなんですか?」
「はい。ソラスさんは、天体の研究をしていらっしゃるのですね。少しお話を聞かせて下さいませんか?」
 ソラスはアルス・パウリナをレイナに見せ、夜空に浮かぶ星座やその意味を聞かせてあげた。

 少し疲れがとれると、ハンターとレイナは再び森の中を歩き始めた。
 先程よりも木々の間隔が狭く足元が暗い。
 トリプルJはレイナが滑ったり躓いて転倒しないように灯火の水晶球で足元を照らし、頭上の枝などが当たらないよう、互いに声を掛けあった。
 ソラスのモフロウは偵察として先行をパタパタと羽ばたいている。
 その姿を目で追っていた春日の視界に、異様な光景が移った。
 木の幹に抉るようにつけられた3本の線。
「これは熊さんの爪の痕やろか?」
 幹に走る跡をなぞり春日が呟くと、
「そうみてぇだな。ここは熊の縄張りだ」
 トリプルJは咥え煙草のまま不敵に笑う。
「急いでここを離れましょう」
 クオンがそう声を掛けた瞬間、小枝を踏み折る音が近付く。
「熊だ!」
 真が指差す方向に、茶色の毛を逆立てた熊がゆっくりと姿を現した。
「きゃあ!」
 その姿を見て悲鳴を上げたレイナに、熊の意識が向いた。
 威嚇するように仁王立ちになった熊は鋭くレイナを睨みつける。
 ビクリと身体を揺らすレイナの前に素早く真が入り、熊と視線を合わせるとテンプテーションで強引に注意を引く。
 熊が手を振り上げた直後、春日の地縛符が熊の足を縫いとめ、間髪入れずグリムリリースを付与したカティスのスリープクラウドが、熊を眠りへと誘った。
 地を這うような音をさせ熊が倒れると、皆は一斉に息を吐きだした。
「レイナさん、大丈夫ですか?」
 驚きに呼吸を忘れ金縛りにあったように立ち尽くすレイナにソラスが声を掛けると、呪文から解放されたようにゆっくりと息を吐き
「この時期に森に立ち入る事がどれほど危険か、身を持って実感しました」
「まぁ、この危険を乗り越えるからこその、ロマンだろ!」
 トリプルJは楽しげに呟いた。
「隕石が落ちた、背の高い木の近くまで来ていると思う。もうすぐですよ」
 クオンの言葉に頷くと再び歩き始めた。
 真は先程の熊でびくびくとするレイナの気が紛れるよう、話しかけた。
「そういえば、最近サイファーさんとはどう?」
(……きっとレイナさん自身は向けられる思いに気付いてないのだろうけど)
 そう思いながら尋ねると、案の定、
「はい、実は今日の隕石探しもサイファーが提案してくれたのです。本当は領内の巡回に同行するはずだったのですが、取り計らってくれて……。いつもサイファーの優しさに甘えてしまってばかりです……」
 そう言ってレイナは眉を下げた。
「いいんじゃないですか? サイファーさんはレイナさんが喜ぶ顔が見たいんだと思います」
「そうでしょうか?」
 心配そうに尋ねるレイナに、真は優しく頷く。
 それに安堵した様にレイナは笑みを取り戻した。

「もうすぐやねぇ。隕石はどんな色や形をしてるんか気になりますなぁ」
 ハンターとレイナは、昨夜隕石が落ちたであろう地点へと辿りついた。
「夜空を飛んでいた時はキラキラと光っていたので、虹の様な色ではないでしょうか?」
「私もそう思うのです」
 レイナが夢見るように目を輝かせ呟くと、カティスも同じく目を輝かせる。
 真やソラス、クオンは、困った様に苦笑し、
「どんなのかは、見つけてのお楽しみだな」
 トリプルJはニヤリと唇に弧を描いた。
「隕石が落ちた場所は衝撃で窪んでいることがあります」
「手分けして探しましょう」
 ソラスとクオンがそう言うと、ハンター達は分かれて周囲を探し始めた。
 クオンはペリヴァロンで周囲の変化を調べつつ一歩一歩進んでいく。
 春日は銀天球を使って占術で隕石の場所を占う。
 皆が目を凝らし、地面をジッと見つめていると……。
「皆さん、来てください」
 ソラスの高く弾んだ声が辺りに響いた。
 皆がソラスに駆け寄ると、その足元には衝撃で窪んだ穴があった。
 その穴にあるのは………、なんの変哲もない小石……?
「これが隕石?」
「危険が無いか調べてみますね」
 そう言ってクオンが前に進み出ると、状況をまとめながらテクニカルグローブを駆使しサンプルを容器に納めた。
「大丈夫そうです。危険はないでしょう」
 クオンはそう言うと拾い上げた隕石をレイナの掌に置いた。
 レイナがそれを指で摘み上げると、
「っ!!」
 射し込んだ光にキラリと輝く。
「綺麗……」
 道端に落ちている石にはないその煌めきが、隕石であると証明しているようだ。
「これは鉄とニッケルが含まれているので、キラキラと光りに反射しているんですよ」
 ソラスがそう説明すると、
「綺麗やねぇ」
「はい、キラキラのお星さまの欠片なのです」
 春日とカティスは顔を見合って微笑んだ。
「虹の色じゃなくてがっかりした?」
 真がレイナに尋ねると、
「いいえ。とても綺麗です。見つかって嬉しい」
 レイナは満面の笑みを浮かべた。
「良かったですね」
 カティスがそう呟くとトリプルJも満足そうに煙草の煙を吐き出した。
「はい。本当にありがとうございます。……実は私、子供の頃に本で読んだ宝探しに憧れていて、今日それが叶って……皆さんと一緒に探せて凄く楽しかったです」
 レイナは子供の様な無邪気な笑顔を見せた。
「うちも楽しかったわぁ」
「はい、貴重な体験ができました」
 春日とソラスも呟いた。
「お膳立てしたサイファーさんにも見せてあげないとね」
 真がそう言うとレイナは、はいっ、と目尻を下げて頷いた。

 森から出ると、辺りは薄暗くなり小さく一番星が輝いている。
 どれだけの時間歩いただろう。
 しかし、宝物を見つけた後だからだろうか、不思議と疲れは感じなかった。
「本当に今日はありがとうございました」
 レイナが深く頭を下げた。
 その嬉しそうな様子に皆は自然と笑みを浮かべる。
「レイナ、頑張ったご褒美だ。ちょっといいか?」
 そう言って近づいたトリプルJは軽々とレイナを抱き上げると、天駆けるもので飛び上がった。
「きゃっ!」
 ビックリしたレイナは思わずトリプルJの首にしがみついた。
「こういう時じゃなきゃ出来ねえからなあ。どうだ、レイナ?」
 レイナが恐る恐る顔を上げると、茜と紫紺が混ざり合う空を背景に、グランツの領地が目に飛び込んできた。
 小さく見える村には星粒のような光が灯り、草原は穏やかな風に揺れている。
 レイナはその心温まる風景に、グッと込み上げるものを感じたのだった。


 帰っていくハンター達の空高く、流れ星がまた一つ、―――駆け抜けて行った。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • ティーマイスター
    カティス・フィルム(ka2486
    人間(紅)|12才|女性|魔術師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 太陽を写す瞳
    春日(ka5987
    人間(紅)|17才|女性|符術師
  • 知るは楽しみなり
    ソラス(ka6581
    エルフ|20才|男性|魔術師
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン ご相談
ソラス(ka6581
エルフ|20才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2018/05/06 08:42:56
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/05/04 00:39:30