ゲスト
(ka0000)
星空に浮かぶ船
マスター:虚現亭九楽

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/18 09:00
- 完成日
- 2014/12/25 22:30
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
小さな港町で、今年も星空船の運行が始まった。
街に明かりが灯り始める日暮れ時、星空船は出港する。船がゆったりと進むあいだ、乗客はまず食事や演奏会を楽しむことになる。
すっかり日が落ちた頃、街の明かりが届かない暗い海の上で、さらに船上の明かりも消される。
見渡すかぎりの闇のなか、屋内にいた乗客が一斉にデッキへ出てくる。コートの襟元を締め、腕を抱きしめ、白い息を吐きながら、寒さをこらえる。
デッキチェアに寝転がり、首まで毛布をかぶる。波の揺れがふわふわと、体に浮遊感を与える。
見上げれば、降ってきそうな満天の星空だ。
『まるで宇宙にいるようだった』とは、ある乗客の感想だ。
もともと海と川に挟まれ、小さな運河がいくつも通るこの街では、古くから水上交通が盛んだった。平坦な地形は立派な水上交通網を築いたが、しかし星を見るにはいささか不便だ。
この地域では寒い季節になると、空気が澄んで星がよりくっきりと見えるようになる。そこで、海風がきつくなり観光客が減る寒い季節に、新たな目玉となる観光資源を、と始めたのが星空船だ。もともとは漁師が趣味で始めたものだが、今では街の名物となっていて、これ目当ての観光客も多い。
●
足取り軽く、街を散策する少女がいた。見るもの全てが新鮮だといった風で、時計台を指さしては歓声を上げ、屋台船から漂ってくるクリームスープの匂いに腹を鳴らし、運河を滑っていくゴンドラを見送る。
「すごいよ、お母さん。いい街だね」
少女は、後ろを歩く母を振り返った。
「あまりはしゃぎすぎないようにね。ひとりでずんずん行っちゃうんだから」
「ごめんごめん。でもほんと、来てよかったぁ」
港には大小様々な船が停泊している。その中には、異様なほど真っ黒に染まった小さな船が何隻かあったのだが、少女は別の船に夢中で、気付かなかった。
「ほらお母さん、あそこ、あれが星空船だよきっと」
少女が、星空船の受付窓口の方へと走っていった。
「ちょっと、待ってったら」
少女は受付に着くと、弾んだ息を整えようともせず、勢いそのままに言った。
「あの、今夜の星空船のチケット2枚、ください!」
受付の職員は、申し訳なさそうな顔で言った。
「お客様、あの、大変申し訳ありませんが、星空船は現在、運行を中止しているのです」
「えっ、どうしてですか!」
「どうしたんだい?」
母が、少女の後ろから窓口を覗きこんだ。
「少し沖で、巨大なイカのような怪物が現れたらしいのです。何隻かの漁船が襲われたみたいで。安全が確認されるまでは、運行はできないのです」
「そんな……」
少女が肩を落とした。
「仕方ないねえ」
その肩に、母が手を置いた。
「申し訳ありません。怪物の退治についてはハンターに依頼を済ませてあるそうです。我々としても、1日でも早く運行を再開したいと思っているところです」
少女と母は、足取り重く、港を去っていった。
●
街に到着したハンターに、駆け寄る少女がいた。
「あの、ハンターの方々ですか?」
少女は胸の前で両手を握りしめ、言った。
「もうすぐ母の誕生日なんです。母がずっと乗りたいって言ってた星空船に、どうしても乗せてあげたいんです。だから、身勝手かもしれないけど、怪物の退治、お願いします!」
小さな港町で、今年も星空船の運行が始まった。
街に明かりが灯り始める日暮れ時、星空船は出港する。船がゆったりと進むあいだ、乗客はまず食事や演奏会を楽しむことになる。
すっかり日が落ちた頃、街の明かりが届かない暗い海の上で、さらに船上の明かりも消される。
見渡すかぎりの闇のなか、屋内にいた乗客が一斉にデッキへ出てくる。コートの襟元を締め、腕を抱きしめ、白い息を吐きながら、寒さをこらえる。
デッキチェアに寝転がり、首まで毛布をかぶる。波の揺れがふわふわと、体に浮遊感を与える。
見上げれば、降ってきそうな満天の星空だ。
『まるで宇宙にいるようだった』とは、ある乗客の感想だ。
もともと海と川に挟まれ、小さな運河がいくつも通るこの街では、古くから水上交通が盛んだった。平坦な地形は立派な水上交通網を築いたが、しかし星を見るにはいささか不便だ。
この地域では寒い季節になると、空気が澄んで星がよりくっきりと見えるようになる。そこで、海風がきつくなり観光客が減る寒い季節に、新たな目玉となる観光資源を、と始めたのが星空船だ。もともとは漁師が趣味で始めたものだが、今では街の名物となっていて、これ目当ての観光客も多い。
●
足取り軽く、街を散策する少女がいた。見るもの全てが新鮮だといった風で、時計台を指さしては歓声を上げ、屋台船から漂ってくるクリームスープの匂いに腹を鳴らし、運河を滑っていくゴンドラを見送る。
「すごいよ、お母さん。いい街だね」
少女は、後ろを歩く母を振り返った。
「あまりはしゃぎすぎないようにね。ひとりでずんずん行っちゃうんだから」
「ごめんごめん。でもほんと、来てよかったぁ」
港には大小様々な船が停泊している。その中には、異様なほど真っ黒に染まった小さな船が何隻かあったのだが、少女は別の船に夢中で、気付かなかった。
「ほらお母さん、あそこ、あれが星空船だよきっと」
少女が、星空船の受付窓口の方へと走っていった。
「ちょっと、待ってったら」
少女は受付に着くと、弾んだ息を整えようともせず、勢いそのままに言った。
「あの、今夜の星空船のチケット2枚、ください!」
受付の職員は、申し訳なさそうな顔で言った。
「お客様、あの、大変申し訳ありませんが、星空船は現在、運行を中止しているのです」
「えっ、どうしてですか!」
「どうしたんだい?」
母が、少女の後ろから窓口を覗きこんだ。
「少し沖で、巨大なイカのような怪物が現れたらしいのです。何隻かの漁船が襲われたみたいで。安全が確認されるまでは、運行はできないのです」
「そんな……」
少女が肩を落とした。
「仕方ないねえ」
その肩に、母が手を置いた。
「申し訳ありません。怪物の退治についてはハンターに依頼を済ませてあるそうです。我々としても、1日でも早く運行を再開したいと思っているところです」
少女と母は、足取り重く、港を去っていった。
●
街に到着したハンターに、駆け寄る少女がいた。
「あの、ハンターの方々ですか?」
少女は胸の前で両手を握りしめ、言った。
「もうすぐ母の誕生日なんです。母がずっと乗りたいって言ってた星空船に、どうしても乗せてあげたいんです。だから、身勝手かもしれないけど、怪物の退治、お願いします!」
リプレイ本文
●
寒風吹きすさぶ港で、メリエ・フリョーシカ(ka1991)は腕を組んで寒さに震えつつ、この先の戦いに思いを馳せていた。
「冬の海……上も下も寒そうなことこの上ないですねぇ……さっさと解決したいとこです」
そういえば、とメリエはつぶやく。
「海に来るたび巨大イカとやりあってるような……いや、気のせいだねきっと」
この点に関してはアルメイダ(ka2440)にも、何か因縁めいたものがあるようだった。
「イカか……本当にその手の雑魔に縁があるなあたし。まあ、その分対処の仕方もわかるからマシではあるが」
その後ろでは、アルカ・ブラックウェル(ka0790)が風になびく長い金髪を手で押さえながら、やや緊張した面持ちでいた。
(初めての依頼だからな……少しドキドキするけど、頑張ろうっと!)
港には活気がなく、人もまばらだった。普段であれば星空船のチケットを買い求める客が列を作っているはずの受付窓口には誰もおらず、運行中止のお知らせ、と書かれた簡素な紙が貼られているだけであった。
「せっかくの素敵なイベント、早く解決しなきゃね」
ルナ・レンフィールド(ka1565)が寂れた雰囲気を追い払うように、腕を振るった。
「星の海を航る船……ふふ、素敵な物語が見れそうね」
エルティア・ホープナー(ka0727)が口元をゆるめた。
「なら私は星々の綴る物語の邪魔をする敵を射殺すわ」
しかし青い瞳は、冷たく、鋭かった。
ルゥルゥ・F=カマル(ka2994)の赤い瞳には、感慨がある。
「海を見るのは久しぶりだな。あの時はゆっくり眺める暇もなかったが」
「ルゥちゃん、もう一度海を見たいって、言ってたよね」
ソレイル・ラ=ジャンティ(ka3083)が、ルゥルゥに微笑みかけた。
「覚えていてくれたのか、ソル」
「折角の綺麗な海と星空、楽しみの邪魔する敵は倒さないと、ね」
港の端の方で、襲われた漁船が陸に引き上げられ、漁師達によって修復作業が行われていた。損傷はそれほどひどくないにしても、墨に黒く染められた船の姿は無残だった。
海で育ったラグナ・アスティマーレ(ka3038)にとってそれは、耐え難い光景だった。
(船は海の男の相棒で宝だ、これ以上襲わせん)
●
雑魔が出現する海域へ行くために用意された漁船は2隻、いずれもほぼ同じ型の、小さな帆船だった。マストが中央に1本、その前後に三角の縦帆が1枚ずつあり、船尾に舵取り棒がある。
「操船のために、一緒に来てもらえないだろうか?」
アルメイダがそう言うと、漁師らは一様に渋い顔をした。
「船上から確実に敵を仕留めるには、確かな操船技術を持った人間の協力が不可欠なんだ」
アルメイダの説得に名乗りでたのは、年老いた男性2人だった。
「こういう仕事は若いもんには任せられんからな」
「わしらはそれほど先が長くないしの」
「貴方達の安全は保証するわ。だから安心して余生を送ってちょうだい」
エルティアが、老漁師に言った。
「船共々、無事に街に帰すまでが仕事だ。海なら……俺は、負けん」
ラグナの言葉には、静かな気迫があった。
ハンター達はA班とB班に分かれて、2隻の船に乗り込むことになった。
A班の船は、ラグナ、メリエ、ルナ、アルカの4人。
B班には、エルティア、ルゥルゥ、ソレイル、アルメイダが乗る。
「照明は積めるだろうか。イカなら光に反応するかもしれない」
ラグナが漁師に尋ねた。
「ふんむ、この船ではなあ。ランタンなら吊るせるじゃろうが」
「ならばいい。これを試してみるか」
ラグナは持参してきていたLEDライトを取り出した。
帆が広げられ、船が港を離れていく。ハンター達は、船首と左右のへりにそれぞれ座り、注意深く、雑魔の出現を警戒する。ラグナとエルティアは漁師の護衛をするため、船尾で舵を取る漁師の傍らに付いている。
「うぅ寒い……出るならもう早く出てよね」
メリエが腕を抱きながら、海を見回す。ルナは船に備え付けられている浮き輪の紐を、きつく縛り直していた。
「思ってたより揺れるね。ぶつかったりしないように気をつけないと」
アルカが言った。確かに風が強く、海面はやや荒い。
2隻の船は適度な距離を保ちながら、目的の海域まで進んでいった。
●
B班が乗る船の右舷、海面に不穏な影が浮かび上がった。最初に気づいたのは右舷にいたアルメイダだったが、狙われたのは船首のルゥルゥだった。
「ルゥルゥ! 右だ!」
身を乗り出して海面を覗き込んでいたルゥルゥが、アルメイダの声に振り向いた。その時にはすでに、巨大なイカ足がルゥルゥの眼前まで迫ってきていた。
「おうっ」
ルゥルゥはとっさにかわしたが、空を切ったイカ足はそのまま船首に張り付いた。船が激しく揺れ、右へ、引き込まれるように傾いた。
「ルゥちゃん、こっちへ」
ソレイルがそう言うと、ルゥルゥは浮き上がった左舷へ移動した。ソレイルは、へりにしがみついたルゥルゥにストーンアーマーをかけた。実際の重量はさほど増すわけではないが、それでも気休め程度にはなる。転覆しないよう、ルゥルゥとソレイルが左舷に目一杯の体重をかけた。
その間に、アルメイダが船首に向かい機導剣を放った。
「離せ!」
光剣が、巻き付いていた足を斬り裂いた。船は、反動で逆向きに大きく傾いた後、やがて安定を取り戻した。
「大丈夫?」
エルティアは漁師が海に落ちないよう、しっかりと漁師の体を支えていた。
「ふう、中々のスリルじゃな。その蛇ちゃんもクールじゃ」
漁師を支えるエルティアの腕には、漆黒の蛇の幻影が巻き付いていた。
「ありがとう」
エルティアが立ち上がり、弓を構えた。
「大丈夫。全て射ち墜とすわ」
遅れて、A班の船が回りこんだ。2隻の船が巨大イカを直角に挟み込み、十字砲火の陣形を取った。
「出ましたね! ハンティングのお時間ですよ!」
メリエの背中から、陽炎が揺らめいた。
「さあ、奏でましょう」
杖を振るルナの体を、無数の光る音符が螺旋を描くように包み込んだ。
「被害状況は?」
ラグナが、魔導短伝話でB班のエルティアに通信した。
「大丈夫、被害はないわ」
「了解。やつをこちらにおびき寄せてみよう」
ラグナが、海面にLEDライトを向けて、ゆらゆらと揺らした。反応したのか、影はじわじわとA班の船に近づく。
「来るぞ!」
飛び出してきたイカ足は3本。A班の船に襲いかかる。
そのうちの1本は、短剣を手に待ち構えていたメリエが渾身撃を振るい、早々に斬り落とした。
「イカとやりあうのは二度目まして! 何度出てこようと海の藻屑にしてやる!」
ひときわ長い触腕は、なぎ払うように船首から襲いかかっていた。船首には、アルカがいた。
「おっと」
アルカがしゃがんで回避する。触腕は、アルカから発せられた揺らめく焔の残像だけを掠めていった。通り過ぎた触腕は、そのまま前方の帆もろともマストへ巻き付こうとした。
「そうはさせないよ!」
すかさず、アルカが触腕にワイヤーを絡ませた。触腕をマストから引き剥がし、なおも引っ張り、自由を奪った。
船尾に向かった足は、ラグナが身を挺して受けた。太い足がラグナに直撃したが、あらかじめ動かざるものを付与していたこともあってダメージはほとんどない。アックスブレードを掲げ、クラッシュブロウでイカ足を叩き斬った。
「お前さん、すごいのう」
漁師が、目の前で繰り広げられている攻防に、目を丸くさせた。特に、覚醒したラグナの姿は慣れていない者にとっては目を引くものがあった。
「勇ましい姿じゃ」
「どうも。怪我は?」
「心配いらん、おかげさまでな。海の男をなめちゃいかんぞ」
漁師の言葉に、ラグナは小さく微笑んで頷いた。
やがて、胴体が水面に浮かび上がってきた。すると、イカが水中で体をふくらませて、蠕動するように震わせた。次に何が起こるのかは、誰の目にも明らかだった。
その瞬間を狙っていたのはルナとエルティア。ルナがマジックアローを放つと同時に、B班の船からはエルティアの矢が、墨の吹き出し口へ放たれた。
墨は噴射されず、その場で飛び散った。黒く染まった海面に、イカの体が浮遊する。
「水には、石。援護します」
ソレイルがアースバレットを打ち込んだ。
アルメイダもプフェールトでイカを狙うが、
「遠距離からの攻撃だけでは埒があかないな」
イカは確かに弱りつつあった。しかし決定打に欠けた。イカの体は柔らかく、かつ水中にいるということもあって、致命的なダメージを与えきれずにいた。
ストーンアーマーの解けたルゥルゥが、槍を手に立ち上がった。
「ならば、これでトドメを刺してこよう。このままでは日暮れまでに間に合わないから、ね」
ルゥルゥは大きく息を吸ってから、イカの体めがけて、海に飛び込んでいった。
「これでどうだ!」
イカの目に、槍を突き刺す。イカは苦しみのあまり、大きく体を揺すり、足を暴れさせる。
槍を引き抜きイカの体から離れようとしたルゥルゥへ、滅茶苦茶に暴れまわる足が襲いかかってきた。ルゥルゥは海中でイカ足をかわそうとするが、1本残っていた触腕がルゥルゥに巻き付いてしまった。
「ルゥちゃん!」
ソレイルが、身を乗り出してルゥルゥへ手を伸ばす。
「わたしが行きます!」
A班の船から、メリエが叫んだ。
「心頭滅却! お父さん言ってます! 『やるべき時は迷うな』! 寒中水泳怖くて傭兵できるか!」
メリエが海に飛び込んだ。
「アルカ嬢、イカが潜らないようにそのまま引っ張るんだ」
ラグナが言った。
「わかってる!」
アルカがワイヤーを引く力を強めた。
「仲間は返してもらいますよ!」
メリエが、ルゥルゥを掴む触腕へ渾身の一撃を振り下ろした。体の自由を取り戻したルゥルゥが、海面に浮かび上がり、ぶはあー、と大きく息をした。
ルナがすかさずマジックアローを放ち、イカの追撃を阻害する。アルメイダもプフェールトで援護する。
続けてエルティアが矢を放つ。
「この物語、一頁だって奪わせはしない」
メリエは短剣を振り回し、水中で暴れるイカ足を片っ端から斬りつけていた。
「誰が餌になんぞになるか!」
その隙を見て、ルゥルゥが再びイカの胴体へ接近し、水中から勢いよく飛び出した。
「これで終わりだっ!」
大きく振り下ろされた槍が、イカの頭を貫通した。
イカの体は、一度大きく跳ねた後、小さな痙攣を繰り返し、やがて動きを止め、消滅した。
ルゥルゥとメリエが、それぞれ投げ込まれた浮き輪に掴まった。
B班の船まで辿りついたルゥルゥを、ソレイルが引き揚げた。
「ルゥちゃん、大丈夫?」
「ありがとう、大丈夫だ。ふぅ、しかし危なかったな」
「もう、無茶しないでよ」
ソレイルはほっとして、息をついた。
A班の船に上がったずぶ濡れのメリエは、体の震えが止まらない。
「とりあえず、可及的速やかに暖を取りたいです! 風邪引きますよコレ!」
●
日暮れ時、港にはかつての活気が取り戻されていた。星空船の運行再開を待ちわびていた人々が集まり、列を作っていた。
ハンター達は、雑魔退治のお礼にと、運行再開第1号の船に招待された。
「わー、これが星空船……楽しみですねっ」
ルナが、感激しながら船に乗り込んだ。
「ワクワクするなぁ。さ、ルゥちゃんいくよ」
ソレイルはルゥルゥの手を引き、嬉々として乗船した。
星空船が出港する時、港から歓声が上がった。海の平和が取り戻されたことを祝い、それをもたらしてくれたハンター達への感謝を込めて、港の人々が大きく手を振った。そこには、漁師達の姿もあった。
やがて船は港を離れ、人々も街の明かりも、小さくなっていった。
「ふぅ、あったかいですぅ」
スープを口にしたメリエが、脱力したように言った。
船内では食事が供されていた。郷土料理中心のメニューで、特に魚介系のクリームスープは、冷えきったハンター達の体を暖めてくれた。
「ほら、これとか美味しそうだよ」
「む? 最近ソルが美味しい物ばかり食べさせるから、ちょっと太……いや、まぁ良いか、いただくよ」
ルゥルゥはやや困り顔で、ソレイルが勧めてくる料理を次から次へと食べていた。
船内に、陽気で心地良い弦楽四重奏が響き始めた。
「素敵な演奏……」
ルナが目を閉じて演奏に耽る。
エルティアは、演奏に耳を傾けつつ、小さな魔導書の様な羊皮紙に青のインクで、此度の物語を綴っていた。
食事に夢中になっていたアルカも、演奏が始まると今度はそちらに夢中になった。父母がともに吟遊詩人であったアルカは、幼い頃から音楽が好きだった。
曲が終わったところで、アルカが演奏者の元へ近づいた。
「ボクも歌っていいかな?」
演奏者らは、笑顔で頷いた。
アルカの歌声は弦楽器に良く調和し、明るく響き渡った。
船上の明かりが消されると、海が満天の星空に包まれた。
「綺麗……」
ルナがうっとりと、白いため息を吐いた。
「船の上での天体観測も中々だろ?」
ラグナが言った。
「俺も船の上でよく星を見るが……いつも一人だ。……仲間と見るのも、悪くないな」
「うん、山の中で見る星も綺麗だけど、海の上もまたいいね」
アルメイダが頷いた。
「故郷の村から眺める星空も綺麗だったっけ……父さんと母さん、じいちゃんとばあちゃん、元気かな……」
アルカが遠く、星空の向こうへ想いを馳せた。
エルティアは毛布を羽織り、星空と、それを映す海とを眺めていた。境目のない海と空と宇宙に瞬く、星々の物語に耳を澄ませていた。
「水面にまで映って煌くさまは凄いな、どちらが空かわからなくなりそうだ」
ルゥルゥが、口元で両手をこすりながら言った。
「こうしたほうが、もっとあったかいよ」
ソレイルがルゥルゥを抱きしめ、毛布にくるまった。
「ん、確かにこれは暖かい……暖かい、が……」
(何かソルの顔が近いな……私の頬、赤くなってないよな?)
「まるで、星の海の中にいるみたいだね……」
ルゥルゥはどぎまぎしながらも、ソレイルと2人、身を寄せ合って星空を眺めた。
●
月明かりに照らされたデッキに、母娘がいた。街に到着した時に話しかけてきた少女だと気づいたルナが、そっと近づいた。
少女がルナに気づくと、慌てて頭を下げた。
「あ、あの、ありがとうございました。おかげで、こうして、母を星空船に乗せてあげることができました」
母も、深く頭を下げる。
「本当にありがとうございました。おかげさまで、一生の思い出ができました」
「いえいえ。それよりも」
ルナが、リュートを取り出した。
「お誕生日おめでとうございます。これもご縁ですし、1曲プレゼントさせてください」
ルナの演奏が、海に空に広がってゆく。
(母思いの少女と、母と。これを聞く全ての人に、素敵な時間を……)
満天の星空に溶け込むようなアルペジオ。
ゆったりと静かな旋律が、星空に浮かぶ船を優しく包み込んだ。
寒風吹きすさぶ港で、メリエ・フリョーシカ(ka1991)は腕を組んで寒さに震えつつ、この先の戦いに思いを馳せていた。
「冬の海……上も下も寒そうなことこの上ないですねぇ……さっさと解決したいとこです」
そういえば、とメリエはつぶやく。
「海に来るたび巨大イカとやりあってるような……いや、気のせいだねきっと」
この点に関してはアルメイダ(ka2440)にも、何か因縁めいたものがあるようだった。
「イカか……本当にその手の雑魔に縁があるなあたし。まあ、その分対処の仕方もわかるからマシではあるが」
その後ろでは、アルカ・ブラックウェル(ka0790)が風になびく長い金髪を手で押さえながら、やや緊張した面持ちでいた。
(初めての依頼だからな……少しドキドキするけど、頑張ろうっと!)
港には活気がなく、人もまばらだった。普段であれば星空船のチケットを買い求める客が列を作っているはずの受付窓口には誰もおらず、運行中止のお知らせ、と書かれた簡素な紙が貼られているだけであった。
「せっかくの素敵なイベント、早く解決しなきゃね」
ルナ・レンフィールド(ka1565)が寂れた雰囲気を追い払うように、腕を振るった。
「星の海を航る船……ふふ、素敵な物語が見れそうね」
エルティア・ホープナー(ka0727)が口元をゆるめた。
「なら私は星々の綴る物語の邪魔をする敵を射殺すわ」
しかし青い瞳は、冷たく、鋭かった。
ルゥルゥ・F=カマル(ka2994)の赤い瞳には、感慨がある。
「海を見るのは久しぶりだな。あの時はゆっくり眺める暇もなかったが」
「ルゥちゃん、もう一度海を見たいって、言ってたよね」
ソレイル・ラ=ジャンティ(ka3083)が、ルゥルゥに微笑みかけた。
「覚えていてくれたのか、ソル」
「折角の綺麗な海と星空、楽しみの邪魔する敵は倒さないと、ね」
港の端の方で、襲われた漁船が陸に引き上げられ、漁師達によって修復作業が行われていた。損傷はそれほどひどくないにしても、墨に黒く染められた船の姿は無残だった。
海で育ったラグナ・アスティマーレ(ka3038)にとってそれは、耐え難い光景だった。
(船は海の男の相棒で宝だ、これ以上襲わせん)
●
雑魔が出現する海域へ行くために用意された漁船は2隻、いずれもほぼ同じ型の、小さな帆船だった。マストが中央に1本、その前後に三角の縦帆が1枚ずつあり、船尾に舵取り棒がある。
「操船のために、一緒に来てもらえないだろうか?」
アルメイダがそう言うと、漁師らは一様に渋い顔をした。
「船上から確実に敵を仕留めるには、確かな操船技術を持った人間の協力が不可欠なんだ」
アルメイダの説得に名乗りでたのは、年老いた男性2人だった。
「こういう仕事は若いもんには任せられんからな」
「わしらはそれほど先が長くないしの」
「貴方達の安全は保証するわ。だから安心して余生を送ってちょうだい」
エルティアが、老漁師に言った。
「船共々、無事に街に帰すまでが仕事だ。海なら……俺は、負けん」
ラグナの言葉には、静かな気迫があった。
ハンター達はA班とB班に分かれて、2隻の船に乗り込むことになった。
A班の船は、ラグナ、メリエ、ルナ、アルカの4人。
B班には、エルティア、ルゥルゥ、ソレイル、アルメイダが乗る。
「照明は積めるだろうか。イカなら光に反応するかもしれない」
ラグナが漁師に尋ねた。
「ふんむ、この船ではなあ。ランタンなら吊るせるじゃろうが」
「ならばいい。これを試してみるか」
ラグナは持参してきていたLEDライトを取り出した。
帆が広げられ、船が港を離れていく。ハンター達は、船首と左右のへりにそれぞれ座り、注意深く、雑魔の出現を警戒する。ラグナとエルティアは漁師の護衛をするため、船尾で舵を取る漁師の傍らに付いている。
「うぅ寒い……出るならもう早く出てよね」
メリエが腕を抱きながら、海を見回す。ルナは船に備え付けられている浮き輪の紐を、きつく縛り直していた。
「思ってたより揺れるね。ぶつかったりしないように気をつけないと」
アルカが言った。確かに風が強く、海面はやや荒い。
2隻の船は適度な距離を保ちながら、目的の海域まで進んでいった。
●
B班が乗る船の右舷、海面に不穏な影が浮かび上がった。最初に気づいたのは右舷にいたアルメイダだったが、狙われたのは船首のルゥルゥだった。
「ルゥルゥ! 右だ!」
身を乗り出して海面を覗き込んでいたルゥルゥが、アルメイダの声に振り向いた。その時にはすでに、巨大なイカ足がルゥルゥの眼前まで迫ってきていた。
「おうっ」
ルゥルゥはとっさにかわしたが、空を切ったイカ足はそのまま船首に張り付いた。船が激しく揺れ、右へ、引き込まれるように傾いた。
「ルゥちゃん、こっちへ」
ソレイルがそう言うと、ルゥルゥは浮き上がった左舷へ移動した。ソレイルは、へりにしがみついたルゥルゥにストーンアーマーをかけた。実際の重量はさほど増すわけではないが、それでも気休め程度にはなる。転覆しないよう、ルゥルゥとソレイルが左舷に目一杯の体重をかけた。
その間に、アルメイダが船首に向かい機導剣を放った。
「離せ!」
光剣が、巻き付いていた足を斬り裂いた。船は、反動で逆向きに大きく傾いた後、やがて安定を取り戻した。
「大丈夫?」
エルティアは漁師が海に落ちないよう、しっかりと漁師の体を支えていた。
「ふう、中々のスリルじゃな。その蛇ちゃんもクールじゃ」
漁師を支えるエルティアの腕には、漆黒の蛇の幻影が巻き付いていた。
「ありがとう」
エルティアが立ち上がり、弓を構えた。
「大丈夫。全て射ち墜とすわ」
遅れて、A班の船が回りこんだ。2隻の船が巨大イカを直角に挟み込み、十字砲火の陣形を取った。
「出ましたね! ハンティングのお時間ですよ!」
メリエの背中から、陽炎が揺らめいた。
「さあ、奏でましょう」
杖を振るルナの体を、無数の光る音符が螺旋を描くように包み込んだ。
「被害状況は?」
ラグナが、魔導短伝話でB班のエルティアに通信した。
「大丈夫、被害はないわ」
「了解。やつをこちらにおびき寄せてみよう」
ラグナが、海面にLEDライトを向けて、ゆらゆらと揺らした。反応したのか、影はじわじわとA班の船に近づく。
「来るぞ!」
飛び出してきたイカ足は3本。A班の船に襲いかかる。
そのうちの1本は、短剣を手に待ち構えていたメリエが渾身撃を振るい、早々に斬り落とした。
「イカとやりあうのは二度目まして! 何度出てこようと海の藻屑にしてやる!」
ひときわ長い触腕は、なぎ払うように船首から襲いかかっていた。船首には、アルカがいた。
「おっと」
アルカがしゃがんで回避する。触腕は、アルカから発せられた揺らめく焔の残像だけを掠めていった。通り過ぎた触腕は、そのまま前方の帆もろともマストへ巻き付こうとした。
「そうはさせないよ!」
すかさず、アルカが触腕にワイヤーを絡ませた。触腕をマストから引き剥がし、なおも引っ張り、自由を奪った。
船尾に向かった足は、ラグナが身を挺して受けた。太い足がラグナに直撃したが、あらかじめ動かざるものを付与していたこともあってダメージはほとんどない。アックスブレードを掲げ、クラッシュブロウでイカ足を叩き斬った。
「お前さん、すごいのう」
漁師が、目の前で繰り広げられている攻防に、目を丸くさせた。特に、覚醒したラグナの姿は慣れていない者にとっては目を引くものがあった。
「勇ましい姿じゃ」
「どうも。怪我は?」
「心配いらん、おかげさまでな。海の男をなめちゃいかんぞ」
漁師の言葉に、ラグナは小さく微笑んで頷いた。
やがて、胴体が水面に浮かび上がってきた。すると、イカが水中で体をふくらませて、蠕動するように震わせた。次に何が起こるのかは、誰の目にも明らかだった。
その瞬間を狙っていたのはルナとエルティア。ルナがマジックアローを放つと同時に、B班の船からはエルティアの矢が、墨の吹き出し口へ放たれた。
墨は噴射されず、その場で飛び散った。黒く染まった海面に、イカの体が浮遊する。
「水には、石。援護します」
ソレイルがアースバレットを打ち込んだ。
アルメイダもプフェールトでイカを狙うが、
「遠距離からの攻撃だけでは埒があかないな」
イカは確かに弱りつつあった。しかし決定打に欠けた。イカの体は柔らかく、かつ水中にいるということもあって、致命的なダメージを与えきれずにいた。
ストーンアーマーの解けたルゥルゥが、槍を手に立ち上がった。
「ならば、これでトドメを刺してこよう。このままでは日暮れまでに間に合わないから、ね」
ルゥルゥは大きく息を吸ってから、イカの体めがけて、海に飛び込んでいった。
「これでどうだ!」
イカの目に、槍を突き刺す。イカは苦しみのあまり、大きく体を揺すり、足を暴れさせる。
槍を引き抜きイカの体から離れようとしたルゥルゥへ、滅茶苦茶に暴れまわる足が襲いかかってきた。ルゥルゥは海中でイカ足をかわそうとするが、1本残っていた触腕がルゥルゥに巻き付いてしまった。
「ルゥちゃん!」
ソレイルが、身を乗り出してルゥルゥへ手を伸ばす。
「わたしが行きます!」
A班の船から、メリエが叫んだ。
「心頭滅却! お父さん言ってます! 『やるべき時は迷うな』! 寒中水泳怖くて傭兵できるか!」
メリエが海に飛び込んだ。
「アルカ嬢、イカが潜らないようにそのまま引っ張るんだ」
ラグナが言った。
「わかってる!」
アルカがワイヤーを引く力を強めた。
「仲間は返してもらいますよ!」
メリエが、ルゥルゥを掴む触腕へ渾身の一撃を振り下ろした。体の自由を取り戻したルゥルゥが、海面に浮かび上がり、ぶはあー、と大きく息をした。
ルナがすかさずマジックアローを放ち、イカの追撃を阻害する。アルメイダもプフェールトで援護する。
続けてエルティアが矢を放つ。
「この物語、一頁だって奪わせはしない」
メリエは短剣を振り回し、水中で暴れるイカ足を片っ端から斬りつけていた。
「誰が餌になんぞになるか!」
その隙を見て、ルゥルゥが再びイカの胴体へ接近し、水中から勢いよく飛び出した。
「これで終わりだっ!」
大きく振り下ろされた槍が、イカの頭を貫通した。
イカの体は、一度大きく跳ねた後、小さな痙攣を繰り返し、やがて動きを止め、消滅した。
ルゥルゥとメリエが、それぞれ投げ込まれた浮き輪に掴まった。
B班の船まで辿りついたルゥルゥを、ソレイルが引き揚げた。
「ルゥちゃん、大丈夫?」
「ありがとう、大丈夫だ。ふぅ、しかし危なかったな」
「もう、無茶しないでよ」
ソレイルはほっとして、息をついた。
A班の船に上がったずぶ濡れのメリエは、体の震えが止まらない。
「とりあえず、可及的速やかに暖を取りたいです! 風邪引きますよコレ!」
●
日暮れ時、港にはかつての活気が取り戻されていた。星空船の運行再開を待ちわびていた人々が集まり、列を作っていた。
ハンター達は、雑魔退治のお礼にと、運行再開第1号の船に招待された。
「わー、これが星空船……楽しみですねっ」
ルナが、感激しながら船に乗り込んだ。
「ワクワクするなぁ。さ、ルゥちゃんいくよ」
ソレイルはルゥルゥの手を引き、嬉々として乗船した。
星空船が出港する時、港から歓声が上がった。海の平和が取り戻されたことを祝い、それをもたらしてくれたハンター達への感謝を込めて、港の人々が大きく手を振った。そこには、漁師達の姿もあった。
やがて船は港を離れ、人々も街の明かりも、小さくなっていった。
「ふぅ、あったかいですぅ」
スープを口にしたメリエが、脱力したように言った。
船内では食事が供されていた。郷土料理中心のメニューで、特に魚介系のクリームスープは、冷えきったハンター達の体を暖めてくれた。
「ほら、これとか美味しそうだよ」
「む? 最近ソルが美味しい物ばかり食べさせるから、ちょっと太……いや、まぁ良いか、いただくよ」
ルゥルゥはやや困り顔で、ソレイルが勧めてくる料理を次から次へと食べていた。
船内に、陽気で心地良い弦楽四重奏が響き始めた。
「素敵な演奏……」
ルナが目を閉じて演奏に耽る。
エルティアは、演奏に耳を傾けつつ、小さな魔導書の様な羊皮紙に青のインクで、此度の物語を綴っていた。
食事に夢中になっていたアルカも、演奏が始まると今度はそちらに夢中になった。父母がともに吟遊詩人であったアルカは、幼い頃から音楽が好きだった。
曲が終わったところで、アルカが演奏者の元へ近づいた。
「ボクも歌っていいかな?」
演奏者らは、笑顔で頷いた。
アルカの歌声は弦楽器に良く調和し、明るく響き渡った。
船上の明かりが消されると、海が満天の星空に包まれた。
「綺麗……」
ルナがうっとりと、白いため息を吐いた。
「船の上での天体観測も中々だろ?」
ラグナが言った。
「俺も船の上でよく星を見るが……いつも一人だ。……仲間と見るのも、悪くないな」
「うん、山の中で見る星も綺麗だけど、海の上もまたいいね」
アルメイダが頷いた。
「故郷の村から眺める星空も綺麗だったっけ……父さんと母さん、じいちゃんとばあちゃん、元気かな……」
アルカが遠く、星空の向こうへ想いを馳せた。
エルティアは毛布を羽織り、星空と、それを映す海とを眺めていた。境目のない海と空と宇宙に瞬く、星々の物語に耳を澄ませていた。
「水面にまで映って煌くさまは凄いな、どちらが空かわからなくなりそうだ」
ルゥルゥが、口元で両手をこすりながら言った。
「こうしたほうが、もっとあったかいよ」
ソレイルがルゥルゥを抱きしめ、毛布にくるまった。
「ん、確かにこれは暖かい……暖かい、が……」
(何かソルの顔が近いな……私の頬、赤くなってないよな?)
「まるで、星の海の中にいるみたいだね……」
ルゥルゥはどぎまぎしながらも、ソレイルと2人、身を寄せ合って星空を眺めた。
●
月明かりに照らされたデッキに、母娘がいた。街に到着した時に話しかけてきた少女だと気づいたルナが、そっと近づいた。
少女がルナに気づくと、慌てて頭を下げた。
「あ、あの、ありがとうございました。おかげで、こうして、母を星空船に乗せてあげることができました」
母も、深く頭を下げる。
「本当にありがとうございました。おかげさまで、一生の思い出ができました」
「いえいえ。それよりも」
ルナが、リュートを取り出した。
「お誕生日おめでとうございます。これもご縁ですし、1曲プレゼントさせてください」
ルナの演奏が、海に空に広がってゆく。
(母思いの少女と、母と。これを聞く全ての人に、素敵な時間を……)
満天の星空に溶け込むようなアルペジオ。
ゆったりと静かな旋律が、星空に浮かぶ船を優しく包み込んだ。
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星空を渡る船を護れ【相談卓】 エルティア・ホープナー(ka0727) エルフ|21才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/12/17 22:46:21 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/15 07:23:24 |